第 3 章 事例分析
3.6 定性的調査のデザイン
日中間で、考え方の違いに対する明確化方法は異なるか?
日中間で、知識の共有方法は異なるか?
日中間で、プロジェクトにおける共通理解を持つことができたか?
プロジェクトにおける知識はどのように変わったか?
文化は上記すべての項目に対して、どのような影響を与えているか?
特にアンケート調査のデータ分析結果で、さらに分析が必要となった「共通 理解は、最終的に出来ているか、それはどのような形か?」「プロジェクトにお ける知識はどのように変わったか?」「文化が知識経営スタイルに影響を与える か?」を確認する。
3.6.3 インタビュー調査の対象者
表 3-22にインタビュー調査対象者のデモグラフィック特性とインタビュー日 時を示す。
表 3-22: インタビュー対象者
対象者 国籍 所属 勤務地 インタビュー日時 職種
C1 中国 深圳 深圳 2013/12/30
11:00-12:00 JST GD コンタクトマネジャー(中国
側窓口)
C2 中国 深圳 深圳 2013/12/30
13:00-14:00 JST オペレーションマネジャー
C3 中国 深圳 深圳 2013/12/31
10:00-11:00 JST PMサポート リソースマネジャー
C4 中国 深圳 深圳 2013/12/31
13:00-14:00 JST プロジェクトマネジャー
C5 中国 深圳 深圳 2014/01/17
18:00-19:00 JST GD マネジャー(深圳サーバ構築
部門のマネジャー)
JC1 中国 日本 東京 2014/01/08
15:00-16:00 JST 元ブリッジSE、日本滞在期間17
年。日本側で業務を行う。
J2 日本 日本 深圳 2014/01/09
16:00-17:00 JST
深圳駐在員、クオリティ・マネジ ャー(2012/半ば~2014/1駐在中)
J3 日本 日本 東京 2014/01/10
10:00-11:00 JST 2011-2012 年まで深圳駐在員。立
ち上げ期間をサポート
J4 日本 日本 東京 2014/01/10
11:30-12:30 JST GD コンタクトマネジャー(日本
側窓口)
J5 日本 日本 東京 2014/01/10
13:00-14:00 JST SE兼PM
3.6.4 データ収集方法
中国側の人選は、日本側のGD コンタクトマネジャー経由で、深圳のGDコン タクトマネジャーに依頼した。深圳 GD マネジャー(深圳サーバ構築部門のマ ネジャー)配下で、なるべく偏りのないように組織を代表する 5 人の人選を依 頼している。日本側の人選は、日本側のGD コンタクトマネジャーの了承の元、
筆者が人選した。日本のサーバ構築部門のマネジャー配下で、GDプロジェクト 経験の長いマネジャーおよびSE、あるいはPMを選んでいる。実施時期は、2013 年12月30日~2014年1月17日、インタビューは、半構造化であり、質問数は
項目11(表 3-23)を用意したが、インタビューの流れによって質問内容や数は
変更する。所要時間は約60分間で、使用言語は、日本語である。中国に対する インタビューは、電話とインスタントメッセージングを併用した。ただし、深
圳GD マネジャーに対しては、VSEEという動画とパソコンのスクリーン共有が
リアルタイムで可能なビデオ会議ソフトウェアを使用した30。日本へのインタビ ューは対面による。インタビュー内容はすべて了承のもと、IC レコーダーで録 音し、後日、テキストファイルに書き起こした。
3.6.5 インタビュー調査の項目
定量分析および定性分析共通の調査項目(3.4.2 参照)に対応するインタビュ ー調査の項目を以下、表 3-23に示す。表の大項目は、定量分析における大項目 の番号である。これにより、定量分析の項目と定性分析のインタビュー調査の 項目の対応関係を示す。
30http://vsee.com/ (2014/8/20)。
表 3-23: インタビュー調査の項目
大項 目*1
定量・定性共通
調査項目*1 インタビュー調査の項目
i
日中間で、プロジェク ト管理項目に対する 考え方の違いはある か?(考え方の違い、
文化影響)
相手(中国の場合は日本、日本の場合は中国)と(プロジェク ト)業務を行う上で気がついたこと、気になること、こうやっ たほうがよい、という希望など(コミュニケーション、文化的 な側面で)はありますか?
(プロジェクト)業務を行う場合に、相手(中国の場合は日本、
日本の場合は中国)に気をつけてほしいことはありますか?
中国と日本で業務において、違いはどのような部分にあると思 いますか?
「間に落ちるもの」とは何だと思いますか?どのようにしたら 拾えると思いますか?(日本のお客様は「間に落ちるもの」を やってほしいという場合が多い。間に落ちるタスクは、暗黙的 であり、量も多く、文書化は難しい。そのため、文書などはな いが、対応してほしいという要望はある。)
知識の対象(日中間で違いがあると思う対象(品質、リスクな ど))は変わらないが、とらえ方が違うという結果がアンケート で出ています(日本:なんとなく、中国:明確に違う)。違いが ある場合、その違いはどのようなものだと思いますか?違いは あると思いますか?
ii
日中間で、考え方の違 いに対する明確化方 法は異なるか?
知の対象(日中間で違いがあると思う対象(品質、リスクなど)) には違いがなく、違いを気づく時期が異なる。
中国は最後に違いに気づく人がいるが、日本にはいないという 結果がアンケートで出ている。
→このような経験(最後に「わかった」ということがプロジェ クトでありましたか?ご自身ではいかがでしょうか)
違いを明確化したことで、中国は、自分の考え方が変わったと いう人が多い(日本は多くない)。→日本が変わらない理由は想 定がつきますか?
リモートでやりとりをすると、やりづらいことはありますか?
どのようにしたら、やりやすくなると思いますか?
明確化の方法では、日本はミーティング、中国はインスタント メッセージが多い。なぜだと思いますか?
iii 日中間で、知識の共有 方法は異なるか?
共有化の方法では、日本はメール等、中国はDBで共有してい る。なぜだと思いますか?共有化対象は何でしょうか?
iv
日中間で、プロジェク トにおける共通理解 を持つことができた か?
中国は、プロジェクトの最後では、共通理解がもてたという回 答が多い。
→共通理解とは何だと思いますか?
→日本が少ない理由は想定がつきますか?
N/A
プロジェクトにおけ る知識はどのように 変わったか?
N/A(上記に包含される)
N/A
文化は上記すべての 項目に対して、どのよ うな影響を与えてい るか?
N/A(上記に包含される)
*1 表 3-7、表 3-8参照
3.6.6 インタビュー調査の分析方法
録音されたインタビュー内容は、テキストファイルに書き起こし、質的デー タ解析ソフトウェアである、MAXQDA31 を使用し分析した。また、同様にアン ケート調査における自由記述回答の結果も、MAXQDAを使用し分析した。分析 は、グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき、以下に記した手順で行 った(佐藤, 2008)。グラウンデッド・セオリー・アプローチは、社会科学にお ける質的な分析手法で、Glaser と Strauss Glaser and Strauss (1967) によって提唱さ れた。
i. インタビュー結果をテキストに書き起こす。
ii. 書き起こされたテキストにコードを付与し、セグメントに分割する。
これを脱文脈化と呼ぶ。脱文脈化は、文脈を除き、特徴を抽象化する 分析手法である。セグメントに分けられたパーツはオリジナルの文脈 からは独立し、さらに、特徴によってグループに分けられる。
iii. セグメントに分けられたパーツ、あるいはグループはストーリーに
基づいて、再文脈化され、コード間の関係性を示すリレーション・
マップが完成する。
図 3-31. グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいた分析手法
(出典:Sato, 2008. に基づいて筆者作成)
31http://www.maxqda.com/ (2014/8/20)。