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奥田(1968-1972)「を格の名詞と動詞とのくみあわせ」と本研究との関連

第四章 先行研究

4.2. 日本語を対象とした研究

4.2.2. 奥田(1968-1972)「を格の名詞と動詞とのくみあわせ」と本研究との関連

奥田(1968-1972)は、日本語におけるヲ格名詞と動詞との組み合わせの単なる分類とし てでなく、他の言語にも参照可能な一般言語学的な貢献として見ることがふさわしいように 思われる。奥田は、奥田(1968-1972)に限らず、動詞と名詞の語彙的な性質と文法的な性 質、また、文の他の要素の語彙的な性質と文法的な性質を考慮に入れながら、これらの現れ 方の条件を一般化し説明しようとしている(例えば、奥田(1967)などもそうである)。

奥田は単語の語彙的な意味の記述にあたって、個別の例における意味を記述するのではな く、豊富な用例を元に、単語の意味が現れる条件を設定し、そこから意味の一般化を行う重 要性を主張している。その際に動詞と名詞との組み合わせの他にも文の他の要素との関係も 十分に考慮に入れながら、言語の現象を分析していく。それにあたって、単語の語彙的な性 質と文法的な性質が相互に結びついている、という立場に立っている。このような方法論で 言語の現象を説明していくことは奥田の言語学における重要な貢献であると認められる。

ゆえに、このような分析の仕方はセルビア語の対格名詞と動詞との組み合わせの分析にお いても応用できるように考えられる。セルビア語の分析を日本語のヲ格名詞と動詞との組み 合わさり方と対照しながら行いたい。それは、日本語のヲ格名詞と動詞との組み合わせの現 れ方がセルビア語の対格名詞と動詞との組み合わせの現れ方に類似し、共通点が多いととも に、相違点も大いに見られるために、必要であるように思われる。

セルビア言語学では、ここまで述べたように、対格名詞に関する研究が当然あるが、上述 の奥田のような方法論を使って対格名詞と動詞との組み合わせの体系を分析している研究は 一切存在しない。

それだけでなく、奥田は多様な下位カテゴリーを詳細に記述しているだけでなく、ヲ格名 詞と動詞との組み合わせが構成する体系の総合性を徹底的に説明していることが最も重要な 貢献であるように思われる。カテゴリー間の相互関係、連続性、一つのカテゴリーから他の カテゴリーへの移行やカテゴリーの間の境界的なものなどを全般的に説明している。この点

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では日本語学においてもセルビア語学においても類似した研究が見当たらない。そのために、

本論文ではこの考え方も取り入れ、セルビア語における対格名詞と動詞との組み合わせの体 系を分析していきたい。

このように、本研究は奥田の研究を大いに参考にするのだが、セルビア語は日本語とは異 なる言語なので、奥田の分析をそのまま当てはめることはできない。本研究ではセルビア語 の特徴を十分に考察しながら、奥田の分析のし方に基づく方法論を使い、セルビア語の対格 名詞と動詞との組み合わせの体系を分析したい。

なお、本研究の方法論には奥田の方法論とは異なる点もある。主として次の 2 点である。

(1) 主格名詞も考慮に入れること

第一に、分析を行う際に、動詞の要求する主格名詞の語彙的な性質と文法的な性質も必要 に応じて考慮に入れることである。42それは、セルビア語の対格名詞と動詞との組み合わせ の分析において主格名詞が全体の意味に影響を与えることが少なくないので、無視すること ができないためである。例えば、セルビア語では既に挙げているように、次のような組み合 わせがある。

例: Guš-i ga kašalj-ø.

息苦しくさせる-PRES:3SG 彼-ACC:SG 咳-NOM:SG

「彼は咳で息苦しくなっている 。(〈直〉咳が彼を息苦しくさせる。)」

例: Bol-i ga nog-a.

痛む-PRES:3SG 彼-ACC:SG 足-NOM:SG 「彼は足が痛い。(〈直〉足が彼を痛くさせる。)」

このような組み合わせは、主格名詞なしに存在しないわけである。しかし、このタイプの 組み合わせは対格名詞の現れ方を示している用法である以上、本論文の考察に含める必要が ある。それは主格名詞なし無理になる。

他にも、主格名詞を除くと、組み合わせ全体の意味が不明確になる場合がある。例えば、

次のような例もそうである。

例: Ov-o tež-i jedan-ø kilogram-ø.

これ-NOM:SG 重さがある-PRES:3SG 一-ACC:SG キロ-ACC:SG 「これは一キロの重さがある。」

42 日本語のガ格と類似た用法を持つ。

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つまり、上に挙げた例では主語の ovo「それ」を除くと、teži jedan kilogram「一キロ の重さがある」の意味は不完全になる。

本論文の筆者はこのタイプの組み合わせを 12.2.2.で「物事の重さ、物事の価値、値段を 表す組み合わせ」として扱う。

また、この場合以外にも、主格名詞で示される要素は構造上の重要な特徴を示すことが ある。例えば、次の実例では主格名詞が特定の状態を起こす[原因]として見るべきであり、

例: Naprasan-ø odlazak-ø najpopularnij-eg Makedonc-a

突然-NOM:SG 辞去-NOM:SG 一番人気の-GEN:SG マケドニア人-GEN:SG ražalosti-o je i rasplaka-o i

悲しませる-PST:3SG ~も 泣かせる-APP:M:SG 〜も staro-ø i mlado-ø.

年寄り-ACC:SG 〜も 若者-ACC:SG

「最も人気のあるマケドニア人の突然の辞去は年寄りも若者も悲しませ、泣かせ た。」(Politika)

このような実例を 8.1.で人の「生理的な変化」として扱う。

[原因]を表す要素としての主格名詞を対格名詞の用法の分析に含める必要をセルビア語学 においても指摘している学者がいる(Ivić 2002)。

また、日本語学においてもガ格名詞の語彙的な性質と文法的な性質を言語の現象の分析に 含める必要性を主張している研究が見られる。43したがって、必要に応じて主格名詞の性質 も分析に取り入れることを奥田の方法論の拡大として考えられる。

(2)語彙的な意味、カテゴリカルな意味、文法的な意味という概念の導入

第二に、奥田は単語の語彙的な性質と文法的な性質を十分に考察しているが、それを明確 に強調しない場合もあるように思われる。そのために、本研究では早津(2009、2015、2016)

に習い、奥田の方法論を広げる立場になる。その際、単語の語彙的な意味、カテゴリカルな 意味と文法的な意味という概念を分析に導入する。この三つの概念については次の章で詳細 に説明するが、本論文の筆者は語彙的な意味、カテゴリカルな意味と文法的な意味を考慮に 入れながら、対格名詞と動詞の組み合わせが作られる条件を設定し、一般化することを目指 している。

43 本研究では主に早津(2009、2015、2016)、三代川(2015)を参考にする。

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第五章 本研究の分析対象および方法論