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二重対格の名詞的な単位を含む構造

第六章 セルビア語における対格名詞の現れ方のパターン

6.2. 二重対格の名詞的な単位を含む構造

セルビア語では二重対格の名詞的な単位を含む構造がある。

(131) Uči-ti đak-e pesm-u

教える-INF 生徒-ACC:PL 歌-ACC:SG 「生徒に歌を教える(〈直〉生徒を歌を教える)」

(132) Pita-ti nek-oga pitanj-e

聞く-INF 誰か-ACC:SG 質問-ACC:SG 「誰かに質問をする(〈直〉誰かを質問を聞く)」

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こ の タ イ プ の 構 造 を 作 る 動 詞 の 数 は 限 ら れ て お り 、 内 容 を 教 え る こ と を 表 す učiti/naučiti/poučiti(教える)、依頼を表す moliti/zamoliti(頼む、願う)、尋ねること を表す pitati/zapitati/upitati(聞く)と savetovati(アドバイスする)が典型的な例である。

これらは対象的な関係がある程度認められる点で 6.1.に類似しているが、二つの対格名詞 的な単位を要求するため、6.1.とは異なる構文的なふるまいをするものとして扱うことが ふさわしいと思われる。

この構造において、一番目の対格名詞的な単位は動詞が表す過程に含まれる人であり、二 番目は動詞の過程の内容あるいは目的を詳しく指定している。つまり、それぞれのカテゴリ カルな意味は〈人〉と〈内容〉になる。したがって、このタイプの組み合わせは広い意味で 内容伝達を表すと言える。このように、これらにおける一つの対格の名詞的な単位の文法的 な意味は[対象]よりも[伝達相手]であり、もう一つの対格の名詞的な単位は[伝達対象]であ ると言える。この特徴を考慮に入れると、このタイプの組み合わせではある程度対象的な関 係が認められるが、先の例(125)〜例(127)に比べると、その関係が異なり、対象性が低い。

セルビア語学ではこのタイプの組み合わせにおける対格名詞的な単位が二つとも直接目的語 だとされてきたが、以上述べたことを考えると、やはり二つの性質が異なることが分かる。

直接目的語の中でも多様な関係を表すものが存在することを指摘する必要がある。

このタイプの組み合わせが成り立つことはスラブ諸語の中でもセルビア語の特徴であるた め、構文的に興味深い現象であるが、内容を教えることを表す動詞と名詞的な単位との組み 合わせ以外、組み合わさる名詞的な単位の数が非常に限られており、不定代名詞 nešto

(何か)、否定代名詞 ništa「何も」、指示代名詞46(例(133))あるいは ovu/tu/onu stvar

「この/その/あのこと」のような、不定の内容を表している表現がほとんどである。例えば、

(133) Ja bih Vas moli-o47 私-NOM:SG である-AOR:1SG あなた-ACC:SG 願う-APP:M:SG sada još ov-o.

今 〜さらに これ-ACC:SG

「私は今あなたにさらにこれもお願いしたいです。(〈直〉私は今あなたを さらにこれをお願いしたいです。)」(Gortan-Premk)

依頼を表す動詞は、類似した文脈で以上挙げた名詞的な単位とは別の要素と組み合みわさ る場合、za(〜のため)と対格の名詞的な単位からなる前置詞句を取ることが現代語で自然 である。

46 指示代名詞は ovo「これ」、to「それ」、ono「あれ」である。

47 セルビア語では条件法が biti(「be 動詞」)のアオリストと能動過去分詞から成り立つ。例(133)では「bih molio」になる。biti(「be 動詞」)のアオリスト(bih)と能動過去分詞 (molio)の間に、他の単語が入ること がある。

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(134)Zamoli-o bih te za pomoć-ø 願う-COND.M:1SG あなた-ACC:SG 〜のために48 手伝い-ACC:SG 「あなたに手伝いをお願いしたい。(〈直〉あなたを手伝いのためにお願いし たい。)」

また、pitati「聞く」は多くの場合は、対格ではなく、o「〜について」、あるいは、za

「〜のために」と所格という前置詞句を取る必要がある。

(135)Pita-ti majk-u o očev-oj bolest-i/

聞く-INF 母-ACC:SG 〜について 父の-LOC:SG 病気-LOC:SG za očev-u bolest-ø

〜のために 父の-ACC:SG 病気-ACC:SG

「母に父の病気について聞く(〈直〉母を父の病気について/のため聞く)」

Gortan-Premk(1971)は、pitati「聞く」を含む句について、不定代名詞あるいは類似し た表現と組み合わさることから、これらを二重対格を含む句ではなく、不変化要素との組み 合わせとして見る必要があると述べている。同じことが savetovati「アドバイスする」に ついても言えるとし、セルビア語での不定代名詞の不曲用化の傾向について指摘している。

(Gortan-Premk 1971:118)

ただし、尋ねることを表す動詞が、不定代名詞や類似した表現の他に 、pitanje「質問」、

uzrok「原因」、razlog「理由」、istina「事実」など限られた数の名詞との組み合わせも 考えられるので、依頼を表す動詞とは少し異なる性質を持つことが挙げられる。また、不定 代名詞や類似した表現と組み合わさることが pitati「聞く」と savetovati「アドバイズす る」だけでなく、二重対格の名詞的な単位を取る動詞全ての特徴として強調する必要がある。

それでも、これらの組み合わせの今後の不曲用化が進み、生産性が低くなることが確かに予 測できると思われる。

なお、このタイプの組み合わせは、Gortan-Premk(1971)も指摘している、他の格を取る 名詞的な単位との類義の用法が見られる。例えば、

48 日本語の感覚からすると、なぜ「~のために」という前置詞を使うかが分かり難いが、この文章は「あなたを 手伝いのために(=手伝ってもらうために)」のような意味になる。

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(136) Uči-ti neko-ga astronomij-u/astronomij-i 導く-INF 誰か-ACC:SG 天文学-ACC:SG/DAT

「誰かを天文学に導く(〈直〉誰かを天文学を/天文学に導く)」

内容を教えることを表す動詞に関しては、二つの格の名詞的な単位の用法が類義であると 言える。

また、savetovati「アドバイスする」は、一番目の対格名詞的な単位、つまり、 動詞が 表す過程に含まれる人を表す要素が与格になることができる。

(137)Savetova-ti njeg-a/njem-u nešto

アドバイスする-INF 彼-ACC:SG/DAT:SG 何か-ACC:SG

「彼に何かをアドバイスする(〈直〉彼を/彼に何かをアドバイスする)」

しかし、この場合、異なる格を取る用法では異なる意味的関係が認められる。つまり、対 格を取る場合は二番目の対格の名詞的な単位を省くことができる。その場合、「誰かにアド バイスを与える」という、savetovati の最も基本的な意味よりも、「アドバイスにより誰 かを助ける、支える」という意味になる。与格をとる場合は、二番目の対格の名詞的な単位 あるいは他の補充的な要素で補う必要がある。

6.3. 人の「生理的な状態」と「心理的な状態」を表す組み合