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第七章 物に対する働きかけ

7.1. 変化

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razbiti/slomiti 「 割る 」 、 skratiti 「短 くす る ] 、ribati 「磨 く」 、 otvoriti 「 開け る」、ugasiti「(火/電気)を消す」、brisati 「(ガラス/窓を)拭く」 、upaliti

「(火/電気)をつける)、zapaliti 「燃やす」、osvetljavati 「照らす」,seći「切 る」、prati「洗う」、bojiti/obojiti「色をつける」、farbati/ofarbati「染める」、

raširiti 「 開 く / 広 げ る 」 、 razvijati 「 ( 地 図 を ) 開 く 」 、 zašiljavati 「 研 ぐ 」 、 pakovati「(荷物を)詰める」、spremati (kovčege)「(旅行かばんに荷物を)詰める」、

ukrašavti 「飾る」、sređivati 「片付ける」、 okvasiti 「濡らす」、rastrljavati

「(涙を)拭う」、 porusiti/rušiti 「(建物)を壊す」、popraviti「修理する」、

pržiti「揚げる」、šminkati「(誰かを)化粧する」、povući 「(筏を)引っ張る」、

otključati「(錠を)開ける 」、zalupiti 「ドアをバタンとしめる」、podešavati「(楽 器を)調律する」、zagraditi 「(通りを)ブロックさせる」、ograditi 「(川を)囲み 込む」、okruživati 「囲む」、 zakovati 「(門を)釘付けする」、oboriti 「(頭を)

下げる」、pognuti 「(頭を)下げる」、plesti (kosu u kurjuk)「(髪を)三つ編みにす る」、nakriviti 「(帽子を)傾ける」、mešati[(水をワインと)混ぜる]、opustiti (noge)「(足を)リラックスさせる」、pomicati「(足を)動かす」、 sakatiti「(手足を)

不 自 由 に す る 」 、 zadaviti/podaviti 「 絞 殺 す る 」 、 ubiti/pobiti 「 殺 す 」 、 pružiti

「(手を)差し出す/伸ばす」、 jesti「食べる」、rskati 「(栗をポリポリ)かみ砕 く」、piti「飲む」、progutati 飲み込む、 uzjahati 「乗馬する」

「変化」を表す組み合わせはしばしば変化の[結果の状態]という文法的な意味を表す要素 と組み合わさる。また、典型的に[主体]の意志的な動作を表しているものである。その例を 以下に挙げる。

(159) Gosp-a Nol-a pocrvene-ø naglo...

婦人-NOM:SG 個人名-NOM:SG 赤くなる-AOR:3SG 急に dohvati-ø čaš-u vod-e i raširi 取る-AOR:3SG グラス-ACC:SG 水-GEN:SG ~も 開く-AOR:3SG prozor-ø širom... (Hronika palanačkog groblja)

窓-ACC:SG 広く

「ノラ夫人は急に顔が赤くなり、水のグラスを取って窓を広く開いた...」

(160) Rek-oh da ću oboji-ti prozorsk-i okvir-ø 言う-AOR:1SG 〜ように 染める-FUT:1SG 窓の-ACC:SG 枠-ACC:SG u crven—o ili zelen-o. (Proljeća Ivana Galeba) 〜の中に 赤-DAT:SG ~か 緑色-DAT:SG

「(私は)窓枠を赤くあるいは緑色に染めると言った。」

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また、[道具]あるいは[手段]という文法的な意味を表す要素と組み合わさることがある。

(161) Okrenu-o se oko drvet-a... priša-o dvorišn-oj 回る-PST:3SG 〜の周り 木-GEN:SG 近づく-APP:M:SG 中庭-DAT:SG kapij-i i oprezno je zatvori-o

門-DAT:SG ~も 用心深く それ-ACC:SG 閉める-APP:M:SG madanal-om.

掛けがね-INST:SG

「(彼は)木の周りをくるりと周り、中庭の門に近づいて、用心深く(それ を)掛けがねで閉めた。」(Derviš i smrt)

したがって、「変化」を表す組み合わせの構造を次のようにまとめることができる。

[主体]NOM V 変化 [対象]ACC [変化の結果の状態] [道具/手段]INST

〈人〉 〈もの/身体部位〉 〈もの〉

「 変 化 」 を 表 す も の に は 異 な る 変 化 の 過 程 の 例 が 見 ら れ る 。 例 え ば 、 表 面 的 な 変 化 (zakovati kapije「ドアを釘付けする」、nakriviti šešir「帽子を傾ける」、brisati prozor 「窓ガラスを拭く」など) 、あるいは内部的な変化(razbiti prozor「窓ガラスを 割る」、ubiti nedužnog čoveka 「無実の人を殺す」、rskati kestenje「栗をポリポリか み砕く」、sakatiti udove 「手足を不自由にする」など) を表すものが挙げられる。前者 は[主体]の働きかけによって[対象]の様子が変わるが、後者は[対象]の内部的な性質も変わ る側面も含まれていると言える。また、[対象]の姿が消えるという変化(ugasiti vatru

「火を消す」など)や[対象]が定の状態に引き込まれるという変化(opustiti noge「足を リラックスさせる」)を表すものがある。

動詞 jesti「食べる」、piti「飲む」など、摂食に関するものは[対象]がどうなったかを 第一問題にしない点で「変化」を典型的に表すものとは異なるが、これらを含む対格名詞と の組み合わせでは動詞が表す動作によって[対象]の性質が変わる側面が含意されているので、

このタイプの組み合わせも「変化」を表すものとして認められる。

これらの動詞は[対象]の変化を問題にしないため、[対象]を表す名詞と組み合わさらず、

自動詞として使うこともある。この場合、[対象]の存在が含意され、形態的に補語で表さ

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なくてもよい。その際、[対象]が単に省略される場合もあるが、[対象]を表さないことに よって特殊な意味を帯びる場合もある。

例えば、nema da jede58「食べられない(〈直〉食べるためには(十分にお金を/物を)持 っていない59。)」という表現は[対象]という文法的な意味を表す要素を取らず、文字どお りの意味は「〈直〉食べるためには(十分にお金を/物を)持っていない。」であるが、実 際、食べ物の不足より「非常に貧しい状態である」あるいは「非常に貧しい生活を送る」と いう特殊な意味を帯びている。このふるまいは日本語の動詞「食べる」の「(こんな少ない 給料では)食べられない」 のような用法に類似していると言える。

(162) Što tolik-o parč-e, gotovo pola なぜ そんなに(大きい)-ACC:SG:N スライス-ACC:SG ほぼ 半分 tepsij-e, da ti da-la ?

オーブン皿-GEN:SG 〜ように あなた-DAT:SG あげる-APP:SG:M Nem-a ni ona da jede...

ない-PRES:3SG 否定小辞 彼女-NOM:SG 〜ように 食べる-PRES:3SG 「なぜ(彼女が)そんなに大きいスライス、ほぼオブーン皿の半分を(あなた に)あげたの。彼女だって食べられなくて...(〈直〉彼女も食べるためには (十分にお金を/物を)持っていない....)」(Nečista krv)

あるいは、次の例では piti「飲む」は[対象]を表す要素と組み合わさらないが、「酒を たくさん飲む」という特殊な意味を表している。

(163) Zašto li sam uze-o njeg-a za slug-u ? ...

なぜ 小辞 取る-PST:1SG 彼-ACC:SG ~のために 召し使い-ACC:SG Ne samo da pij-e... nego je

否定小辞 だけ 〜ように 飲む-PRES:3SG 〜だけでなく である-PRES:3SG

58 Nem-a da jed-e.

ない-PRES:3SG ~ように 食べる-PRES:3SG

「食べられない。(〈直〉食べるためには(十分に物を)持っていない。)」

59 「食べられない。(〈直〉食べるためには(十分に物を)持っていない。)」という意味の表現になるが、具 体的に[対象]を表す要素、つまり、何を食べるかを表す要素とは組み合わさらない。

112 i bezobrazan-ø.

~も 失礼-NOM:SG:M

「いったいなぜ彼を召し使いに雇ったのか。(たくさん酒を)飲むだけでな く、失礼でもある。」

つまり、例(162)や例(163)のような用法は人の特徴あるいは事情を表している。

奥田の分類でも「くう」、「のむ」のような動詞は「もようがえ」を表しているものして 挙げられている。

他に、zadaviti「絞殺する」、ubiti「殺す」のような動詞の用法にも注目する必要があ る。このタイプの動詞は[対象]を表す要素の語彙的な意味が「人」を表しているため、そ のカテゴリカルな意味も〈人〉になると言えそうであるが、このような文脈での「人」は

「自由に行動し、意思を持った主体」ではなく、むしろ「消極的な役割の存在」または「消 極的な対象」として捉えることができるため、物扱いにすることが適切であると考えられる。

したがって、このような例における「人」のカテゴリカルな意味を〈もの〉として扱うこと が適切であるように思える。

(164) ....i ček-a da ga zadav-e i ~も 待つ-PRES:3SG 〜ように 彼-ACC:SG 絞殺する-PRES:3PL ~も mrtv-a spust-e u to blat-o 死んだ状態の-ACC:SG 下ろす-PRES:3PL 〜の中に その-ACC:SG 泥-ACC:SG 「...そして、(自分が)絞殺されて、死んだ状態でその泥に下ろされるこ とを待っている。」 (Derviš i smrt)

日本語に関しても奥田のヲ格名詞と動詞との組み合わせの意味分類を考えると、「人を殺 す」、「人を絞殺する」のような用法は「物に対する働きかけ」の中の「もようがえ」を表 すものとして見ることができる。奥田は「人を殺す」と「人をしなせる」を物の「もようが え 」 と 人 の 「 生 理 的 な 状 態 変 化 」 と の 違 い を 示 す 例 と し て 挙 げ て い る ( 奥 田 1968-1972[1983:47])が、セルビア語では「人をしなせる」のような用法はあまり見られない。

日本語では「人を絞殺する」の他にも「(人の)首を絞める」という言い方があるが、セル ビア語では同じ意味の zadaviti が[対象]として〈身体部位〉を表す要素を取ることがな い。

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