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第四章 先行研究

4.1. セルビア語学の先行研究

4.1.2. Arsenijević(2012)『セルビア標準語の直接目的語を表す格』における直接目的

4.1.2.3. 分析について

I 動作的動詞の他動性 操り動詞を含む目的語句

動作とその動作によって含まれる消極的な役割を持つ参加者との関係を表す句のことであ る。その参加者一種の操作によって影響される対象である。その操作には動的、変化的、生 産的、破壊的性質、あるいは、一般的な操りの性質が見られる(baciti kamen「石を投げ る」、čistiti ribu「魚をさばく」等)

移動的関係を表す目的語句 運動的関係

これらの句では動詞の意味には他動性と空間性という二つの性質が混合し、それが対象と の関係に影響を与え、このタイプの句には移動的性質が見られる。移動的動作によって消極 的な役割を持つ対象が一つのところから他のところに移る関係を表している。このタイプの 句 は 対 象 の 意 味 に ほ と ん ど 制 限 が な い と 見 ら れ な い 。 例 え ば 、 preneti orman/bolesnika/poruku/gripu「物入れ/病人/メッセージ39/インフルエンザを移す」とい う例がこれを示している。

例:navući dugačke pantalone「長いズボンを履く」、obući blejzer「ジャケット を着る」、skinuti nekome ciplele「誰かに靴を脱がせる」、staviti lepezu na usne「扇 子を唇に当てる」、staviti vedricu pred njega「彼の前にバケツを置く」、zabosti sablju u zemlju「刀を地面に突き刺す」、doneti nekome prsten「誰かに指輪を持ってく る」、nositi cipele na terasu「靴をバルコニーに持っていく」、nositi rakiju na imanje「お酒を土地に持って行く」、prineti mu klarinet「クラリネットを彼の方に寄せ る」

39 「メッセージを伝える」という意味になる。

49 除去運動的関係

対象の除去を表す関係のことである。このグループでは、除去の対象と除去先が統一のも のとして知覚される場合だけが扱われている。そして、対象の除去が動作の目的であり、そ の動作によって続いていた統一性が崩れる例だけがこのグループに入る。

例:(kidati rese na šalu「マフラーの糸を破る」、otkinuti list sa grane「葉っ ぱを枝から取る」)、otkinuti dugme sa košulje「ボタンをシャツから引きちぎる」

刺激運動的関係

対象は人であるが、意志を持ち自由に行動するのでなく、他の人の影響によって、つまり、

外から影響されて移動する。

例:okretali me uokrug「私をぐるぐると回した」、odgurnuti ga「彼を押しのけ る」、gurnuti devojku lepezom「少女を扇子で押す」、izvesti momka nasred mehane「少 年をビストロの真ん中に連れ出す」、povući ga za čakšire「彼のズボンを引っ張る(*彼 をズボンに引っ張る)」、povući me za jezik「私の舌を引っ張る(*私を舌に引っ張 る)」、voditi muža do hrama「主人を寺まで連れていく」

このタイプの句では人を表す二重項が見られる。主語が文中の動作主でもあり、動作を刺 激する主体でもあるが、人を表す目的語が刺激を受ける被動者であると同時に運動の主体で もある。

転換的関係

このタイプの関係の特徴は、人間である参加者の間の対象の対象の所有権・所持権の置き 換えである。二人の参加者の中の一人は送り手であり、もう一人は受け手である。したがっ て、このタイプの句はどの動詞と名詞的成分の組み合わせでも、 その意味に転換を表す

「あげる-もらう」という対が基本的に含まれている。

例 : dati nekome kaput 「 誰 か に コ ー ト を あ げ る 」 、 davati slobodne dane zaposlenima「従業員に休暇を与える」、poslužiti prijatelju laku večeru「友だちに軽 い夕飯を出す」、deliti vino i šećer「ワインと砂糖を配る」、nuditi im kokain「彼ら にコカインを勧める」、isporučivati oružje Iraku「イラクに兵器を提供する」、dati Mariji Vertera da čita「マリアにウェルテルを読ませる(*マリアに読むためにウェルテ

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ルをあげる)」、dobiti katalog「カタログをもらう」、dobiti pismo od prijatelja「友 だちから手紙をもらう」、primiti moje pismo「私の手紙をもらう」、primati njene tvrdnje ili pitanja sa ironijom「彼女の宣言や質問を皮肉的に受け取る」、istrgnuti crkvenjaku pero iz ruke「神父の手から筆をもぎ取る」、ukrasti mu konja「彼に馬を盗 む」

賠償的関係

この関係の句では、同時に二つの方向に向かった移動と二重移動が見られる。一つは対象 の移動であり、もう一つは代償の移動である。よく売買関係を表すものが見られる。時には 単なるものの取り替えを表すことがある。このタイプの句で二つの対象が見られる。一つは 明示的な構文的目的語であり、もう一つは暗示的な代償であるが、常に金銭に限られるわけ でない。

例 : prodati vinograde 「 ぶ ど う 園 を 売 る 」 、 kuiti zgradu 「 建 物 を 買 う 」 、 iznajmiti sobu「部屋を借りる」、plaćati porez「税金を払う」、dobiti dobru ocenu「良 い成績をもらう」、primiti nagradu「賞を受ける」、osvetiti smrt oca「父の死の復讐を する」、opravdati ćerku「娘(の行動)を大目にみる(*娘を大目にみる)」

所在関係を表す目的語句

接続的関係

このタイプの句は、主体と対象との間の多様な接続関係が成り立つための操作という側面 を表している。主に主語が目的語と一種の物理的な接続をなすが、その際は主体の手以外の 手段が必要となっていない。対象を表すものには有情物より無情物の方が多い。このタイプ の句の特別な現れとして動詞 nositi「着る」と服を表す目的語との組み合わせがあり、そ れが「自分の体に(何かを)持つ」という意味に近い。よく対象の位置を指定する要素と共 起することがある。

例:uhvatiti ručku kofera「スーツケースのハンドルを取る」、držati rukavicu desne ruke「右手の方の手袋を持つ」、držati njegovu ruku「彼の手を握る」、dodirnuti zid 壁に触る(*壁を触る)」、nositi mušku kapu「男性用の帽子をかぶる」、nositi čizme「ブーツを履く」、nositi srebrni puder u kosi「髪の毛に銀色のパウダーをつけ る」、nositi knjigu za pojasom「帯に本をつける」

51 位置的関係

単なる接続が目的である行為を超える関係であり、一種の接触を表す組み合わせである。

接触の際は主体の手以外の手段が使われているか、あるいは、主体の外に存在する手段が使 われている。対象には多様な種類のものが見られるが、人を表すものが多く見られる。それ でも、その人が静的な存在として知覚される。

例: potapšati me po ramenu「私の肩を叩く(*私を肩に叩く)」、milovati kravu i tele「牛と小牛をなでる」、udariti ga「彼を殴る」、pokriti lice rukama「両手で顔 を覆う」、pokriti maramom testo za krofne「スカーフでドーナツの生地を覆う」、

zapušiti mu usta rukavicom「手袋で彼の口を閉じる」、mazati kosu vinom「髪の毛をワ インで塗る」、razgolititi grudi「胸をむき出しにする」、iskapiti čašu「グラスを飲み 干す」

主体による操作の位置が明示的に示される場合もあれば、暗示的に含まれる場合もある。

変更的関係を表す目的語句 運動形成的関係

身体に対してその身体部位が動くことを表す句である。身体から離せない部分である以上、

身体部位をむしろ静的対象のように見ることができる。動作の目的は対象の位置を変えるこ とである。身体部位の他に衣服を表すものもこの関係を表す対象になる。位置を変える目的 で対象を操る関係を表す句には、目的語が日常生活によく使われるものを表すものもある。

例:podići ruku「手を挙げる」、nagnuti glavu ulevo「頭を左に傾ける」、

isplaziti jezik 「舌を出す」、raširiti ruke「手を開く」、prevući pantalone preko kolena「ズボンをひざの上までたくし上げる」、zasukati rukav「袖を巻き上げる」、

nakriviti šešir「帽子を傾ける」、otvoriti prozor「窓を開ける」、zalupiti vrata「ド アをバタンと閉める」、podići krevet「ベッドを上げる」、okrenuti jastuk「枕をひっく り返す」

変化的関係

この関係を表す句の特徴は質的変化あるいは量的変化を表すことである。その変化は、対 象の形成、形、性質に関わるが、変化の程度は異なる。対象が完全に変わる場合もあれば、

その一部だけ変わる場合もある。変化の最終的な結果という観点から、このグループに入る 動作を破壊的なものと生産的なものに分けることができる。

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例: kvasiti kosu「髪の毛を濡らす」、zapaliti sveće「「ろうそく(に火を)つ ける(〈直〉ろうそくをつける)」、bojiti cigle「かわらを(色で)塗る」、lampa osvetljava sobu「ランプが部屋を照らす」、izmeniti svoju garderobu「自分の服を替え る」、menjati ime「名前を変える」、prevoditi novinske članke「新聞記事を訳す」

上に挙げた例は外から見ればすぐ分かる変化であるが、対象の外から見る様子に変化が知 覚できなくても、変化の結果が見られるようなものもある。

例:lečiti zube「歯を治療する」、vlažiti kožu「肌を保湿する)、jagode čiste organizam「いちごが体をきれいにする」、jačati imunitet「免疫を強くする」、izmeniti svoje navike「自分の習慣を変える」、opravljati sat「時計を修理する」

変化的関係を表す句には質的変化が含まれるものもあれば(čistiti ribu「魚を捌く」、

razmutiti kašičicom šećer「小さじで砂糖を溶かす」、tuga joj smrkne lice「悲しみが 彼女の顔を暗くする(〈直〉悲しみが彼女に顔を暗くする)」)、量的変化を表すものもあ る(hladiti vino「ワインを冷たくする」、potamneti belinu tena「肌の白さを黒くす る」、oštriti nož 「ナイフを鋭くする」、obogatiti asortiman robe「商品の選択を豊か にする」)。

破壊的関係

対象の本質的な性質が崩れるか、あるいは、破壊することを表している。この対応の句に おける対象を「破壊対象」と呼ぶ。

対象の分解

そのタイプの句では、動詞が表す破壊的な過程により対象の全体が分解されていくことが 表される。その際、対象の性質の最低限が残っている。破壊の過程を途中で中止した場合、

その対象の本質が存在する。例えば、家を破壊する過程では対象が最後まで「家」だという ことが認められるわけである。

例 : prekidati razgovor 「 話 を 遮 る 」 、 rušiti kuću 「 家 を 壊 す 」 、 proces oksidacije razgrađuje hranljive materije「酸化の過程が栄養成分を分解する」、seći kolače「ケーキを切る」、seći krila guskama「かもの翼を切る(〈直〉かもに翼をきる)」

もし、この関係が表す動詞が完了体になった場合でも、最終的な破壊の結果が見られるに もかかわらず、対象の最初の本質が明らかで完全に消えるわけではない。例えば prekinuti