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第 9 章 輻射補正

9.4 外線の繰り込み

■正則化(9.21)について 式(9.21):

1

k2+ 1

k2−λ2+iε− 1

k2Λ2+ = Λ2−λ2

(k2−λ2+iε)(k2Λ2+iε)

のように置き換えると,これはk→0において分母が有限の値に留まり,k → ∞において1/k2の代わり に1/k4のように振舞う.このためie02Σ(p)の式(9.20)から赤外発散と紫外発散を取り除けるものと考えら れる.

■「Lorentz不変性により,Σ(p)は運動量pに対して……だけを通じて依存する」(p.199,l.16,17)について p2= /p/pは公式(A.19b)による.ここから/pはLorentzスカラーであることが分かる.これを踏まえると,式 (9.24)の書き換えがLorentz不変性を持つためには,今の場合,書き換えの前後で分母がLorentzスカラーと なっていれば良い.よってΣ(p)もまたLorentzスカラーでなければならないから,それを「運動量pに対し て/pp2(= /p/p)だけを通じて依存する」と考えるのはもっともらしい.

■式(9.28–30)の確認 修正された伝播関数(9.24)の分母にΣ(p)の展開(9.26)を代入し,/p−mと等置す ると

/

p−m0+e02{A+ (/p−m)B+ (/p−m)Σc(p)}= /p−m

となる.これに/p=mを代入するとδm=−e02A:(9.28)を得る.このため伝播関数(9.24)の分母に他なら ない上式左辺は,/p−m0+e02A= /p−mであることに注意して/p−mでくくると

(/p−m)(1 +e02B+e02Σc(p)) となる(式(9.29)).さらに式(9.29)は

i (/p−m)

{

1 +e02B+e02Σc(p) + / pm

}+O(e04)

= i

/ p−m

{

(1−e02B)−e02Σc(p) / p−m

}

+O(e04)

= i

/

p−m+iε{(1−e02B)−e02Σc(p)}+O(e04) : (9.30) と書き換えられる.

なお式(9.28):δm=−e02A=−e02Σ(p)|/p=mm0ではなく物理的な質量mを既知として,そのm0との 差δmを表した式である.実際,我々の観測するのは裸の粒子の質量m0ではなく,物理的粒子の質量mで ある.式(9.28)を既知のm0からmを求める式と(誤って)解釈した場合,これは未知量δmを未知量mで 表した式に過ぎなくなる.

■繰り込みについて 9.2節,9.3節では2次の輻射補正として,光子とフェルミオンの伝播関数に対する自 己エネルギー部分の挿入を考察した.このような伝播関数の修正は等価的に電荷や質量の繰り込みとして表現 され,それ故,自己エネルギー部分は裸の粒子を物理的な粒子へと移行させる過程と解釈できる.

図15 始状態側の電子の外線に対する2次補正(教科書の図9.11(p.203))

図16 フェルミオン自己エネルギーループ(教科書の図9.12(p.204))

例として入射電子の(外)線の輻射補正を,9.3節における質量の繰り込みを行う2つ目の方法(p.200,l.3

〜p.201,l.24)に従って図15のように考える.対応する式は u(p)→u(p) + i

/

p−m+[ie02Σ(p) +iδm]u(p)

= [

1 e02 /

p−m+(/p−m)B ]

u(p) (127)

である.

Bに比例する項の不定性を取り除くために,断熱仮説を導入する.これは散乱を,実質的に相互作用の起き ている間よりも遥か以前・以後の記述に依らないものと仮定してt→ ±∞において相互作用項HIをゼロに し,始・終状態の粒子を裸の粒子とする扱いを正当化するものである.そのためにはt→ ±∞においてゼロ になり,散乱過程の[実質的な]時間よりも充分長い時間T においてほとんど1となるような関数f(t)を用 い,相互作用項

HI=−e0ψ¯/ −δmψψ,¯ δm=−e02A

におけるe0e0f(t)に置き換えれば良い(6.2節).このように相互作用を修正すると,図16のようにグラ フは,結節点においてエネルギーの保存しないグラフに置き換わる(q= (E,0), q = (E,0)).[時間並進対称 性はエネルギー保存則に関係していることを思い出そう.]これに対応して

f(t) =

−∞

F(E)eiEtdE=

−∞

F(E)eiq·xdE とFourier展開すると,式(127)は

u(p)→ [

1

dEdEF(E)F(E) e02B /

p−/q−/q−m+(/p−/q−m) ]

u(p)

=· · ·=Z21/2u(p), Z21−e02B: (9.35)

と変更される.最終的な結果はF(E)に依らないため,断熱仮説を導入する前のf(t) = 1の理論に戻した結 果と見ても良い.

以上は2次の輻射補正に関する結果であるけれど,実はフェルミオン線の各外線および光子の外線に対して 任意の次数の摂動論において

u(p)→Z21/2u(p), u(p)¯ →Z21/2u(p),¯ v(p)→Z21/2v(p), v(p)¯ →Z21/2¯v(p), εµ(k)→Z31/2εµ(k)

となる.よって外線の繰り込みは,外線に接続する結節点に関係する電荷を e0→e=Z31/2e0, e0→e=Z21/2e0 と繰り込みさえすれば良い(冒頭の措置m0→mも併せて行う).

9.4 について

■外線に対する補正の式(9.38)について 図15に対応する置き換え u(p) u(p) + i

/

p−m+[ie02Σ(p) +iδm]u(p) を書き,式(9.33b)を代入して得られる.

■「F(E)は……幅1/T のピークを持つ,……関数である」(p.203,l.15)について 文献 [5, pp.162–163]

参照.

■断熱仮説の下での外線に対する補正の式(9.43)について 式(9.39)における分母/p−m+pは図 9.12(a)(p.204)右端のフェルミオン伝播関数の引数であり,e02B(/p−m)におけるpは同図(a)中央の補正項 ie02Σ(p)の引数である.これを踏まえると図9.12(b)に対応する式を書くには,以上の2つのpを式(9.43) のようにそれぞれp−q−q, p−qに置き換えれば良い.さらに電荷e0f(t)のFourier展開に由来する,不定 のエネルギーE, Eに関する積分が施される.もしFourier展開を式(9.41)の代わりに

f(t) =

−∞

F(E)eiEtdE 2π のように定義したならば,式(9.43)にも1/(2π)2が現れると考えられる.

■p.204,l.6の置き換えについて 今考えている積分

I=

dEdEF(E)F(E) e02B /

p−/q−/q−m+ 1

2(/p−2/q−m) は,積分変数E, Eを入れ替えた式

I=

dEdEF(E)F(E) e02B /

p−/q−/q−m+ 1

2(/p−2/q−m) と辺々足すことによって,

I=

dEdEF(E)F(E) e02B /

p−/q−/q−m+ 1

2(/p−/q−/q−m) とも書くことができる.結果的に

1

2(/p−2/q−m) 1

2(/p−/q−/q−m) と置き換わっている.

図17 2次の結節点補正(教科書の図9.13(p.206))