• 検索結果がありません。

声母と頭子音との対応関係

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 42-45)

第 4 章 中日漢字音の音韻対照

4.4 結果と考察

4.4.1 声母と頭子音との対応関係

1,759 漢字の考察範囲では、声母と頭子音の対応関係は次の表 4−4 のとおりになる。

22 の声母と 14 の頭子音の対応関係は複雑さにより、三種類に分けられる。

種類Ⅰは「1 対1」である。/l/・/g/・/k/の三声母は、ごく僅かの例外を除くと、それ ぞれ日本語においては頭子音/r/・/k/及び/k/としか対応しない。

種類Ⅱは「1 対 2」である。/h/・/z/・/c/・/s/・/b/・/p/・/f/・/m/・/d/・/t/・/r/・/sh/な どの声母は幾つかの例外を除くと、それぞれ日本語では二つの頭子音と対応している。

種類Ⅲには「1 対多数(3 以上)」である。/zh/・/ch/・/j/・/q/・/x/・/n/・♯などの声母 はそれぞれ日本語では 3 以上の頭子音と対応している。その中の/n/・♯声母は基本的に 有声子音としか対応しない。

一見して種類Ⅰの「1 対 1」(/l/・/g/・/k/)の対応関係以外は直接利用できないよう に見える。実際は種類二のものも、清濁の区別を考えなければ殆ど「1 対 1」の関係(/m/

と/r/が例外)となるため、学習者の漢字音学習に役立つと考えられる。また、/r/・/n/

と#の 3 声母の場合、数少ない例外を除けば、有声音しかと対応しないことも確認でき る。これは、漢字音の学習のヒントともなれる。具体的には、この三つの声母は/g/、

/z/と/d/ではじまる濁音と深く関連しているのである。特に、後でも述べるように/g/

ピンイン読みを用いて「常用漢字表」にある音読みを効率よく学習できることを目的としているため、

音読みの出自を問わず直接ピンイン読みと「常用漢字表」にある音読みの対照を行うわけである。

27 本研究では、声調の違いを考慮しないため、声調だけが違う複数のピンインを持つ字(例:教 jiāo/jiào)を「多音字」としない。また、複数のピンインを持っていても片方のピンインしか日本語 の語例に現れない字(例:的 di○/de×)も、「多音字」として扱わない。以上の基準で「多音字」とし て選出されたのは以下の 24 字である。「薄///差/称/禅/畜/長/朝/臭/亀/給/角/降/迫/奇/騎/宿/

識/拓/弾/調/校/伝」

の多くは/n/・#に由来したものである。この点については、学習者に提示し説明すれば、

学習者の清濁音の学習にも役立つであろう。

表 4−4 声母と頭子音の対応関係

声母 頭子音 字数 字例 例外字

/l/ /r/ 99(1)28 来/老 賃 /g/ /k/ 78(4) 国/功 蓋/該/概/剛 /k/ /k/ 44(2) 課/苦 慨/拷 /h/ /k/・/g/ 72(5) 婚/号 彙/横/話/賄/惑 /z/ /s/・/z/ 50(2) 姿/増 択/沢 /c/ /s/・/z/ 37 参/辞

/s/ /s/・/z/ 45 送/俗 /b/ /h/・/b/ 85 把/別 /p/ /h/・/b/ 37 俳/培 /f/ /h/・/b/ 75 飛/防

/m/ /m/・/b/ 71(1) 魔/漠 秘 /d/ /t/・/d/ 88(3) 督/独 盾/畳/錠 /t/ /t/・/d/ 71(2) 停/銅 推/条 /r/ /z/・/n/ 24(6) 壌/燃 染/栄/鋭/融/溶/容 /sh/ /s/・/z/ 104(2) 淑/塾 適/輸 /ch/ /s/・/z/・/t/ 65 抄/常/超

/zh/ /s/・/z/・/t/ 125(1) 振/震/制 濁 /j/ /k/・/g/・/s/・/z/ 147 価/技/祭/絶

/q/ /k/・/g/・/s/・/z/ 65(1) 器/欺/七/前 鉛 /x/ /k/・/g/・/s/・/z/ 115(2) 休/現/秀/序 蓄/雄 /n/ /d/・/n/・/k/・/g/ 33(4) 諾/難/逆/醸 弄/耐/鳥/匿

♯・/g/ 24(5) 愛/岸 餌/耳/二/弐/厄 /y/ ♯・/g/・/y/ 152(3) 意/儀/用 詣/蛍/研 /w/ ♯・/g/・/b/・/m/ 53(6) 屋/頑/晩/問 渦/完/危/沃/腕/湾

合計 1759

さらに、逆から考察してみると、一つの頭子音(/r/)が一つの声母としか対応しな い場合もあれば、同じ頭子音(/k/など)が複数の声母と対応していることもある。そ の中で、対応状況が比較的に複雑なのは/k/・/g/・/t/・/d/・/s/と/z/などの頭子音である。

具体的には、頭子音/k/と/g/は声母/g/・/k/・/ h/および声母/j/・/q/・/x/、さらに声母 /n/・♯と対応し、頭子音/t/と/d/は声母/d/・/t/と声母/zh/・/ch/と対応し、そして頭子 音/s/と/z/は主に声母/j/・/q/・/x/、声母/zh/・/ch/・/sh/と声母/z/・/c/・/s/などの声母 と対応している。ところが、同じ頭子音はそれぞれの声母とランダムに対応しているわ けではない。本章の調査漢字の範囲で、該当漢字のピンイン読み及び音読みを集計する と、いくつかの特徴があることがわかった。まずはそれぞれの結果を記した、図 4−3、

図 4−4 及び図 4−5(縦軸は漢字数)を参照しながら説明していく。

28 括弧内の数字は例外の数を表わす。

図 4−3 頭子音/k/と/g/

図 4−3 で示しているように、声母/g/・/k/・/h/と声母/j/・/q/・/x/を持つ漢字について 日本語音読みにおいては濁音(/g/)より清音(/k/)の方が圧倒的に多い。特に声母/g/・

/k/はそれぞれの濁音の数も数字(/g/:蓋/該/概/剛;/k/:慨/拷)に留まっているた め、例外として提示していいと考えられる。また、濁音(/g/)の方を見てわかるよう に、/n/と#声母と対応しているものの方が極めて多い。そして段ごとに見てみると、

ア段とオ段においては/g/・/k/・/h/声母を持つものが圧倒的に多いのに対し、イ段、ウ 段とエ段においては/j/・/q/・/x/声母を持つものが圧倒的に多い。こういう意味では、

/g/・/k/・/h/声母を持つ漢字と/j/・/q/・/x/声母を持つ漢字の漢字音は相補分布の関係 を成していると言える。

図 4−4 頭子音/t/と/d/

また、図 4−4 を見てわかるように、ア段、エ段とオ段においては/t/・/d/由来のもの が圧倒的に多い。とくにオ段には/zh/・/ch/由来のものが現れていない。一方、イ段に おいては/zh/・/ch/由来のものが圧倒的に多い。そして、濁音の方(/d/)では、/zh/・/ch/

由来のものはほとんど現れないこともわかる29

29 「濁」という 1 字しかない。

0 20 40 60 80 100 120

/ka/ /ki/ /ku/ /ke/ /ko/ /ga/ /gi/ /gu/ /ge/ /go/

/g/・/k/・/h/

/j/・/q/・/x/

/n/,#

0 10 20 30 40 50 60 70

/ta/ /ti/ /tu/ /te/ /to/ /da/ /di/ /du/ /de/ /do/

/zh/・/ch/

/t/・/d/

図 4−5 頭子音/s/と/z/

図 4−5 から、ア段とオ段においては/z/・/c/・/s/の方がもっとも多い。一方イ段とエ 段にあるものはほとんど/j/・/q/・/x/と/zh/・/ch/・/sh/由来のものである。特にイ段で は/zh/・/ch/・/sh/由来のものが圧倒的に多い。また、濁音の方(/z/)を見ても、/zh/・

/ch/・/sh/由来のものが一番多い。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 42-45)