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 医薬品卸業に従事する薬剤師は、医薬品の適正供給と安全性確保の観点から、医療機 関、介護施設、薬局、その他医薬品販売業等の他業態に従事する薬剤師との積極的な交 流や、現在課題となっている在宅医療等の支援を含め、各業態での問題点や要望等の相 互理解を得て、薬剤師間の共通認識を醸成する必要がある。また、円滑な卸流通の推進 と医療安全の向上を図るため、薬務行政をはじめ社会から、卸業務について適正な理解 を得られるよう努めることが必要である。

Ⅶ.まとめ

 「医薬品卸業に従事する薬剤師は、これからどうあるべきか?」・・・。

それを深く考察し行動していくことが、今我々に求められている。

 日本の医薬品卸業は、人々の生命・健康に直接影響を及ぼす多種・多様の医薬品や医 療機器等を、全国 23万ケ所にも及ぶ医療提供施設等の求めに応じ、きめ細かい毛細血 管型流通網によって効率的に届け、日本の医療を支える社会的使命を果たしている。ま た、医薬品卸業には2,000名以上の薬剤師が従事し、卸業が持っている多岐にわたる機 能でその役割を担い、医療における流通を薬の専門家(プロフェッション)として支え ている。

 医薬品業界を取り巻く環境は急速に変化している。薬局が医療提供施設として位置付 けられ、医薬分業率も60%を超えた。ジェネリック医薬品の導入と処方箋様式の再変更、

一般用医薬品の分類、セルフメディケーションの推進などの環境変化が進んでおり、ま た、医療、介護、年金など社会保障制度全般の改革も進展中である。さらに、薬学教育 6年制のスタートや、医療現場における薬物療法の高度化や重要性が 大するに伴い、

チーム医療における薬剤師の重要性がますます認識されてきていることなど、正に薬剤 師新時代の到来を予感させる。

 全ての薬剤師は今、大きな転換点を迎えており、各職域において、社会的認知度や評 価を高め、その職能を確立しようと努力している。いまこそ、現在日本にしか存在しな い医薬品卸業に従事する薬剤師は、医療現場をバックアップし、医薬品流通を通して、

医薬品の適正使用を可能にする品質管理、副作用防止等の情報の収集と提供に努め、責 任をもって国民の安心・安全に寄与する必要がある。そのことは、必ずや医薬品卸業に 従事する薬剤師の社会的認知度と評価を高めることに繋がるであろう。

 今回の将来ビジョンの検討は、医薬品卸業の薬剤師にとっても、職能を進化させ、よ り確立するための時宜を得た重要な課題であった。医薬品卸業に従事する薬剤師や就業 を希望する薬剤師に夢や希望を確信させ、患者の目線に立てる、また、医療側の多様な ニーズに応えられる職種として、国民への健康に奉仕する精神を基盤に、付加価値を創 造しつつ、医薬品卸業の勤務薬剤師として、真に社会に貢献していくものである。

【参 考】

○JGSPと管理薬剤師

JGSPは、第1章 意義と役割、第2章 組織と任務、第3章 供給と品質管理、

第4章 安全確保業務、第5章 教育訓練 からなる。

第1章 JGSPの意義と役割

自主規範であるが社会的責任が生じる。実践することにより社会的な信頼を 獲得する。

第2章 組織と任務

実践する際のJGSP実施管理者として明記されている。

第3章 医薬品等の供給と品質管理

供給環境:構造設備、汚染防止、保管区分、温度管理などに関し、薬事法等 の関係法規に準拠し品質の確保と有効性及び安全性を確保しているか管理 する。

供給と品質管理:入出荷業務(整理整頓・先入れ先出し)、配送業務、麻薬 等の特殊品の管理、廃棄や記録の管理を行う。また、販売して良いかどう かの管理を実施する。

第4章 安全確保業務

製造販売業者と医療機関の橋渡しとして、①安全管理情報の収集、並びに検 討の結果に基づく必要な処置を実施する。具体的には、不具合情報、有効性・

無効性情報、有害事象をMSの力で収集を行う。安全性情報や改定添付文書 を伝達・配布・管理する。製造販売業者から依頼された添付文書を在庫品に 貼付する。②回収と返品の管理を行う。③トレーサビリティ取扱商品を製造 番号別に把握し、流通履歴を管理する。④自己点検安全確保業務にかかわる 点検を、自己点検表により点検する。

第5章 教育訓練

①医薬品取り扱いの倫理、②医学・薬学の基礎知識、③医薬品の品質・供給 に必要な基礎知識、④安全確保業務、⑤その他必要な業務 などの教育訓練 を行う。

 学校薬剤師とは、薬剤師が、広く薬事衛生をつかさどる専門職としての立場から、法に 基づき学校における保健・安全管理について実践及び指導、助言を行うために設けられた 制度である。

 児童生徒等の心身の健康の保持 進を図るためには、学校環境衛生活動が重要な役割を 担っている。しかしながら、従来の「学校環境衛生の基準」(文部省体育局長裁定)に基 づいた定期検査等は、必ずしも完全に実施されておらず、改善が求められてきた。こうし た状況を踏まえ、平成21年(2009年)4月1日から「学校保健安全法」が新たに施行され、

文部科学大臣自らが「学校環境衛生基準」を定めるものとされるなど、学校薬剤師の職務 内容について法的位置づけが明確となった。

 さらに国民生活の変化の中で、学校薬剤師の職務は、新「学校環境衛生基準」に基づく 検査項目・基準の変更への対応にとどまらず、より幅広い活動が求められるようになった。

具体的には、一部の青少年による喫煙・シンナー・大麻・覚せい剤といった薬物事犯を未 然に防ぐための薬物乱用防止活動、健全なスポーツ育成のためのドーピング防止といった 社会的要請に応えた新たな啓発活動、学校給食衛生管理基準に基づく指導助言の実施によ る検査の徹底と食中毒防止や食育、学校での医薬品及び薬品・毒劇物の管理、建築物内の 揮発性有機化合物やダニアレルゲン等への対策、といった活動が期待されている。

 加えて、平成18年(2006年)の薬事法改正により一般用医薬品の販売制度等が改められ た際、参議院厚生労働委員会より16項目にわたる付帯決議が表明された。その中で「新た な一般用医薬品の販売制度について、十分な周知を図ると共に、医薬品を使用する消費者 が医薬品の特性等を十分に理解し、適正に使用することができるよう、知識の普及や啓発 のための施策の充実を図ること。また、学校教育においても医薬品の適正使用に関する知 識の普及や啓発に努めること。」とされており、学校薬剤師は、 児童生徒等や学校関係者 の保健管理と同時に、薬剤師職能としての根幹をなす医薬品の適正使用に向けた教育・啓 発活動についても対応を迫られている。

 そして最後に、薬学教育実務実習の実施に呼応して、学校薬剤師の業務に関する教育体 制の更なる充実も喫緊の課題である。

 本章では、このような環境変化も踏まえ、学校薬剤師の現状・課題と、今後の取り組み について整理した。

Ⅰ.現状と課題