① 南海トラフ巨大地震対策
南海トラフの巨大地震で想定される最大クラスの震度分布・津波高は,中央防災会議(平成 15 年)における東海・東南海・南海地震の想定に比べ,震度 6 弱以上の市町村数で約 2 倍,津波高 10m 以上の市町村数で約 9 倍となる等,極めて厳しい災害様相が想定されている。
また,震源断層域が陸地に近いことから,津波到達時間が非常に短い地域が存在するとともに,
津波高がこれまでの想定より大幅に高くなる地域がある。さらに,津波が広域に襲来することか ら,被害の様相は,都市の形成や地形(大都市,中小都市,平野部及びリアス式海岸部)によって 大きく異なることが想定される。この想定に対して,被害を最小にする「減災」の考え方に基づき 対策を講じることが必要である。
まず,海岸堤防をはじめとする海岸保全施設等の整備については,基本的には発生頻度の高い津 波を対象とすることとされているが,津波が想定される地域の海岸保全施設等については,できる だけ過去に遡って津波の発生をより正確に調査した上で,海岸堤防によるせりあがりを考慮した津 波高と高潮による波浪の打ち上げ高を考慮し,海岸保全施設等の整備計画の再検討が求められる。
さらに,東日本大震災の教訓を踏まえて新たに想定した最大クラスの津波に対しては,住民避難 を軸とした,ソフト・ハードを組み合わせた総合的な災害対策が求められる。南海トラフ巨大地震 の調査研究・観測態勢の強化や情報伝達手段の多重化・多様化等による津波警報等の確実な情報伝 達体制の整備に加えて,津波ハザードマップの作成や,避難に関するルール・計画の見直し,防災 教育・訓練の充実等のソフト対策と,避難場所,避難施設,避難路等の整備といったハード対策,
土地利用の在り方も含めた地震・津波に強いまちづくり等の様々な津波対策について,都市形成や 地形が異なる各地域の特性を考慮し,これらの対策の組み合わせによる有効な津波対策の進め方を 提示していく必要がある。また,津波到達時間が非常に短いと想定される地域が存在することか ら,特にこのような地域に対してどのような対策をとるべきか,例えば,役場庁舎,病院,学校,
社会福祉施設等の施設の配置の在り方や,住宅等の高台移転の推進方策等について検討が求められ る。
南海トラフ巨大地震は,超広域にわたり強い揺れも想定されている。そのため,建築物の耐震 化・不燃化,液状化,長周期地震動対策やインフラ・ライフラインの耐震化・老朽化対策,石油コ
東日本大震災を踏まえた災害対策
第第
1 1部部
ンビナート等危険物施設の地震対策等,揺れによる被害を軽減する対策を進めていくことも重要で ある。
また,南海トラフ巨大地震は超広域に甚大な被害が想定されるため,あらかじめ広域的な災害応 急体制を確立しておくことが重要であり,救助部隊,救援物資調達・輸送,医療体制等の実効性の 確保のほか,南海トラフ巨大地震を想定した応急対策活動要領の策定に取り組む必要がある。さら に,このような広域にわたる被災は,我が国の経済活動にも大きな影響を与えることから,企業等 の事業継続計画(BCP)の充実・強化のための支援や,サプライチェーンの確保等,広域的な被災 にあっても生産活動・経済活動が維持できるような方策についても検討していく必要がある。
こうした対策を推進していくため,南海トラフ巨大地震を対象とした地震対策大綱の策定等に取 り組むほか,地方公共団体等への支援措置の在り方,東海地震,東南海・南海地震それぞれに存在 する既存の法制度の在り方についても検討を進めていく必要がある。
② 首都直下地震対策
首都直下地震で想定される最大クラスの震度分布・津波高は,現行の首都直下地震の想定対象と されていない相模トラフ沿いの規模の大きな地震を含め,最新の科学的知見に基づいて検討を行う こととしている。首都直下地震が発生した場合,首都圏における被害の大きさや社会経済に与える 影響は極めて甚大であり,首都中枢機能の継続性確保,膨大な数の避難者対策,広域応援体制,帰 宅困難者対策等について,東日本大震災を踏まえた検証の上で,その対策を強化する必要がある。
首都直下地震においては,我が国全体の国民生活,経済活動への影響,海外への経済の影響,経 済中枢機能の障害による日本経済の停滞・混乱,危機管理機能の低下による救援活動の遅れ等,他 の地域での地震災害とは異なる影響や被害が発生する可能性がある。これらの被害を極力抑えるた め,首都中枢機能の維持が求められる。そのため,国民の安全,国防・外交の維持,経済の安定,
国としての信頼性を確保するための国内外への情報発信等,国全体としての業務継続目標を明確化 し,これに基づいた対策を推進する必要がある。各府省庁は,これまで首都直下地震を想定した業 務継続計画を策定してきているが,業務を継続するための職員の確保,非常用電源の確保等,その 実施体制は必ずしも十分ではないことから,首都直下地震発生時の過酷な状況も想定して業務継続 体制の充実・強化に取り組む必要がある。さらに,これまで業務継続が困難な場合の代替拠点の選 定は各府省庁に委ねられていたが,政府全体としてのバックアップ機能を確保するため,首都圏内 及び首都圏外での代替拠点の確保方針を明確にして取組を進める必要がある。また,首都中枢機能 を確保するためには,インフラ・ライフラインの早期復旧のほか,国から事業者まで一貫した業務
(事業)継続体制を構築する等,防災関係機関の組織を超えた連携を進めていく必要がある。
首都直下地震では,揺れによる大きな被害,広範囲での火災延焼により膨大な数の避難者が発生 すると想定されている。また,交通寸断と機能支障による人流・物流への影響,大量の帰宅困難者 の発生,燃料,電力等のエネルギー不足の懸念,域内交通の長期途絶等による住民の生活物資の不 足等が想定される。
こうした膨大な被害に対して,まずは,建築物の耐震化,木造住宅密集市街地の解消,都市空間
(オープンスペース)の確保,長周期地震動対策,液状化対策等,地震に強いまちづくりの推進,
インフラ・ライフラインの耐震化・老朽化対策,石油コンビナート等危険物施設の地震・津波対策 の強化等,被害を軽減させる予防対策に重点的に取り組む必要がある。膨大な避難者への対応とし ては,大規模な火災に際しての安全かつ迅速な避難誘導の実施体制,緊急的に避難する場所の確保 を図るとともに,復旧・復興のための長期の避難者対策として,広域避難の事前検討,民間賃貸住 宅活用や応急仮設住宅用地の確保等の事前検討を行う必要がある。
東日本大震災の首都圏における大きな教訓である帰宅困難者等対策については,官民により構成 される「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」の中間取りまとめに基づき,「むやみに移動を開 始しない」ことの周知等による一斉帰宅抑制や,一時滞在施設の確保,帰宅困難者等への情報提供
東日本大震災を踏まえた災害対策の推進東日本大震災を踏まえた災害対策の推進第第
2 2編編
第
3 章
政府 と し て 今 後更 な る 取 組が 求 め ら れ る災 害 対 策
体制,災害時帰宅支援ステーションを始めとする徒歩帰宅支援体制,鉄道不通の長期化に伴う帰宅 困難者等の搬送体制等,官民連携による帰宅困難者対策を具体化していく必要がある。
また,経済中枢機能が集中する首都直下の地震に対しては,企業の事業継続計画(BCP)の充 実・強化,サプライチェーンの確保,災害時の規制緩和措置の事前検討等,経済機能を支える企業 の防災力を向上させる対策を検討していく必要がある。
広域的な災害応急体制としては,交通規制等の実効性を確保し,救助部隊,救援物資調達・輸送 及び医療体制を確立すべく,国の首都直下地震応急対策活動要領を見直す必要がある。また,防災 意識の向上に向けた防災教育を推進するとともに,行政,住民,企業等が一体となった防災訓練を 実施していく必要がある。
復旧・復興に関しては,インフラ・ライフラインの早期復旧方策を検討するとともに,迅速に復 旧・復興するため,復興目標となる首都圏整備の基本方針を明確化していく必要がある。
こうした対策を推進していくため,現在の首都直下地震対策大綱を見直すほか,対策実施のため の支援措置の在り方についても検討を進めていく必要がある。
③ 火山災害対策
火山災害への対応として,これまで火山防災協議会の設置,噴火警戒レベルに対応した具体的で 実践的な避難計画の策定などの促進を図ってきたところであるが,全国 110 の活火山のうち防災上 監視を強化すべきとして火山噴火予知連絡会によって選定された 47 火山において,これらはいま だ十分な成果を上げてきていないのが現状である。
さらに,大規模噴火が発生した場合の対応については,必要な国・地方公共団体の連携,広域避 難体制,広域火山灰対策等に関する検討がほとんど手つかずの状態といっても過言ではない。この ような状況の下で,大規模な噴火が発生すれば,地域への影響はもとより,全国規模の深刻な被害 をもたらしかねない。このため,改めてこれまでの対策の検証を徹底的に行い,法制度の在り方も 含めて,火山防災体制の構築・改善を抜本的に進める必要がある。
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