• 検索結果がありません。

4. 火山災害における避難指示と想定外リスク

5.4 実証分析

5.4.3 分析結果

122

図 5‐4 構築したオントロジー(1)

り当てる.概念候補の内,出現回数の総和が最大となる概念を選択する.同一文中の概念が似 た階層構造を持つ場合,その概念のパスを構成する概念の出現回数は大きくなる.よって,出 現回数の総和が最大である概念は,他の同一文中の概念と似た階層構造を持ち,意味的に類似 している.

123

図 5‐5 構築したオントロジー(2)

であることから,意味として「容態」の概念を含む,類似した概念であることが容易に理解で きる.

5.4.2で説明した方法で構築した図 5 - 4,図 5‐5のオントロジーは,解釈をする上であま

り重要でない概念が多数含まれる.次節における結果の解釈と政策的示唆の導出を容易にする ために,災害応急対策立案のために重要と考えられる階層構造を抽出した結果を図 5‐6 に示 す.抽出した階層構造は図 5‐4,図 5‐5で青い○で囲まれた階層構造を指す.

図 5‐6

から,「住所」「郵便」「アフターケア」「体調」「プライバシー」「住居」「間仕切り」

「農業」「漁業」「路線」「列車」「道」「道路」「ペット」などの概念を発見できる.「住所」の上 位概念が「通信」であることから,連絡先として「住所」を要求していることが分かり,「郵便」

の概念も要求していることから,連絡先が分からず,郵便物を届けられない実情が窺える.「ア フターケア」は避難後の配慮に関して要求していることが想定でき,これと関連して「プライ バシー」「間仕切り」は避難所生活における避難住民の要求であることが想定できる.「農業」

「漁業」に関して「産業」が上位概念,あるいは兄弟概念であるため,仕事としての「農業」

「漁業」を人々が要求していることが分かる.これは,避難によって「農業」「漁業」に関する

124

図 5‐6 剪定したオントロジー

作業ができず困っていることが想定できる.「列車」「道路」等に関して,噴火によって人々の 移動手段や物資の輸送手段が無く,支障をきたしていることが想定できる.「ペット」に関して,

自宅に置いてこざるを得なかったペットを心配していることが窺える.

表 5 - 7

に記載したマクロ討論領域の発言内容と剪定されたオントロジーとを比較してみよ う.構築したオントロジー中の概念は,表 5 - 7中の上位概念・下位概念に記載された内容を 概ねカバーしていることがわかる.さらにオントロジーを用いてマクロ討論を構造化した結果,

個別の概念単独としてのみではなく,概念間の相互関係を一定程度把握することに成功してい る.このことは,マクロ討論において話題となっている項目を抽出するにとどまらず,表 5 -

7

における上位概念と下位概念との関係という,階層構造を抽出することに成功していること を意味する.5.3.3 で述べたように,マクロ討論領域における意思決定の正統性を評価するた めに行われている討論を俯瞰的・網羅的に把握することが必要である.本章におけるオントロ ジー構築を通じて,討論的代表性の観点からマクロ討論の正統性を担保することができたと考 えられる.

125