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住民が主体となった天然資源管理 天然資源の持続的利用には適切な

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第 4 章 自然および社会環境と水資源開発・管理

4.4 住民が主体となった天然資源管理 天然資源の持続的利用には適切な

管理が欠かせない。ここでは、水、森 林、漁業資源などの天然資源を管理す るうえで、行政の財政的・技術的支援 を受けつつ、住民が主体的な役割を果 たした例について述べる。これらの事 例から得られた学びが他地域におけ る天然資源管理にも役立つものと考 えられる。

(1) Huai Sam Mo流域における流域 管理

Huai Sam Mo流域はチー川流域の1 つの小流域であり、コンケン県の K.

Khok Pho Cha郡、Consawan郡、Kaeng Khlo 郡 、 チ ャ イ ヤ プ ー ム 県 の Phu

18 Khon Kaen University (Faculty of Environmental Engineering), 2006, Final Report of Study on Management of Nong Han Kumpawapi Wetlands Area

4.4.1 住民が主体となった天然資源管理事業の位置図

タイ国タイ東北地方の水資源管理に係る基礎情報収集・確認調査 ファイナルレポート Khieo郡に広がっている。流域の面積は72,904ha(455,652 rai)でチー川全流域面積の1.47%を占 めている。DWRの統合天然資源管理政策のもと、水問題を解決するために住民参加と良い統治を 推進するパイロットプロジェクト地域としてこの流域が選定された。選定の理由は 1)複数の県 に広がっている、2)研究のための十分なデータがある、および3)タイ東北地方における流域の 代表的な地形的特長を備えている点である。小流域ワーキンググループが2006年に設立され、地 方自治体も積極的に参加した。Huai Sam Mo小流域委員会では次のような5つの戦略を設定した。

1. 村による水資源開発

2. 有機農業と生計向上活動の促進 3. 組織開発および環境の復興

4. 地元のカリキュラム、地元の知恵および村のルールの開発 5. 女性・青少年の役割促進

2002~2009年にかけて、メコン委員会、GTZ、世界銀行、WWF、コンケン大学など複数の機関

がHuai Sam Mo流域における流域管理活動のニーズと戦略設定のための支援を行っている。また、

1)流域開発女性ボランティア、2)流域開発青少年、3)学校、4)Huai Sam Mo流域委員会、の4

つのネットワークが設立され、これらが上記のHuai Sam Mo流域管理における5つの戦略の推進 にあたっている。

小流域委員会の設立ののち、各種の調査、研修、能力向上活動が住民および地方自治体により 実施された。また、2008年にはコンケン大学により、Huai Sam Mo流域における地元の伝統的知 識・知恵などをとりまとめ、それらを適切な天然資源管理に活用し、他地域にも拡大するための 多方面の学術調査が実施された。この調査チームは土壌、水、森林をキーワードとして、これに まつわる情報を収集した。また、流域管理にかかる参考となる活動があるかどうかも同時に住民 に確認した。以下に、調査結果の概要を示す。

• 有機農業研究センター

コンケン県のKaeng Khlo郡Baan Nong Saiwan Tai村では、有機農業研究センターと村所有のキ ノコ栽培センターがある。これは2006年に建設されたばかりでまだ日も浅いが、その成長は著し く、既に目覚しい成果を上げている。きのこ栽培から得られた収入は村の開発資金としてさらな る学習、有機肥料、有機農薬の生産、栽培試験のために当てられる。また、研修への参加者のジ ェンダーバランスにも配慮し、女性の能力向上を促している。この研究センターは 2つの強みが あり、ひとつは経済的利益を生み出していること、もうひとつは地域の伝統的な知恵と科学的有 機農業の蓄積を統合させてさらなる成果を生み出していることである。

また、この研究センターから提供された有機肥料や有機農薬の生産は、化学肥料および農薬の 購入費の大幅節減に貢献している。伝統的なやり方を科学的知識をもとに改善し、有機肥料・農 薬の作成を低いコストで容易に生産することを可能にしている。たとえば、もっとも農民が悩ま されている害虫であるジャンボタニシ(Ampullariidae)を集めて砕き、それを有機肥料の材料と する、あるいは苦味のある野草(Tinospora crispa)を煮こんでその煮汁を野菜に撒き、害虫を追 い払う、といったやり方を採用している。そのほかにも腐った果物も有機肥料に出来る。これら は全て資金をかけずに農民が実践できるものである。

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• 漁業資源の保全

これはHuai Sam Mo流域内のNon Kyrum村、Kud Lop村で行われているものである。ため池も 水量も十分にあるにもかかわらず、漁獲量が大幅に減少したことに住民が気づいたことから、湿 地内にある既存のため池 2箇所を禁漁区に設定することとなった。このアイデアは住民からも受 け入れられ、数度にわたる村落委員会の会議および村落全体の会議を経て、禁漁区にかかるルー ルや制限が設けられた。その禁漁区内では漁業を制限され、それにより魚が保護されて繁殖が促 進される。禁漁区の設置により、漁獲高は大幅に増加した。成功の第 1の理由として、リーダー が優れていたこと、第2 の理由としては禁漁区の設定について住民自身がアイデアを持ち寄り、

設置場所についても合意の上で決定していたことが挙げられる。

• 森林保全

森林の保全は人々の信仰心と深い関係がある。Nong Kae villageにおいては、僧が森林の劣化を 防止するために30年前から植林を率先して実施し、住民もこれに協力して植林を続けてきた。現

在では9.6ha(60rai)にまで森林面積が増加し、人々にとっては重要な瞑想の場となっている。

上記のうち、禁漁区の設置や有機農業は目に見える成功を収めて居り、村単位の活動で容易に かつ低い予算で実施できるものである。このような事例を流域内で拡大することが可能である。

植林はその効果発現に時間がかかるため、継続した調査が今後も必要である。流域小委員会が設 立されてからまだ数年しか経過しておらず、具体的な事業は限られているが、これらの成功事例 をさらに収集・確認し、活動を促進、支援することが求められる。

また、1978年からコンケン大学とニュージーランドが共同で、タイ東北地方における小規模水 資源開発を支援している。1980年代半ばにかけて、この事業により小規模の堰が100箇所余り建 設されている。以下に紹介するのはHuai Sam Mo流域内に建設された堰である。

• 堰の建設

Huai Sam Mo 流域の Srisamran郡には Nong

Nok Ngoと呼ばれる湿地帯があり、約30年前

までは雨季には毎年のように湿地帯周辺では 洪水が発生する一方、同じ郡内の別の地域では 水不足に悩まされていた。ひとりの村会議員は 洪水を防止しかつ水田に配水するために堰の 建設を考えていた。たまたま、彼はコンケン大 学とニュージーランドの共同事業を新聞で知 り、コンケン大学の技術者に堰の建設を依頼し た。基本的な堰の設計はコンケン大学環境工学 部が作成した設計・建設ガイドラインに基づい て行われたが、堰の規模などには住民の意見も

反映された。材料費はプロジェクト実施機関が負担し、30 万バーツで 1982 年に最初の堰を建設 した。1983年には地方自治体からの支援で2基目の堰が建設され、現在も運用されている。

1982年に建設された堰(2010年7月)

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(2)Bung Khon Long保護区(ラムサール登録湿地)における保全

Bung Khong Long湖はタイ東北地方の中でも最大規模を誇る湖のひとつであり、ノンカイ県の

Bung Khong Long 郡に位置する。東西に2km、南北に13kmに広がり、22.1km2の面積を有する。

Bung Khong Long保護区には涼季の渡り鳥、絶滅危惧種の魚類、水生植物、湿原に特有の野生動

物など多様な動植物が生息している。また、湖は魚の繁殖地として近隣住民に漁業資源を提供し、

人々の生活を支えている。この保護区は2001年にラムサール条約登録湿地として認可されており、

現在タイ東北地方で唯一のラムサール登録地である。

ラムサール湿地としての登録の初 期段階で、ラムサールプロジェクト 事務所は保護区の境界線を周辺住民 の協力を得て決定した。したがって、

この登録は住民にも支持され、住民 はこの保護区を自分達の資源として 認識している。2007 年に周辺の 11 の村は保護区内の湖にそれぞれ 0.08

~0.16ha(5~10 rai)程度の禁漁区を 設けた。これは、ラムサールプロジ ェクト事務所と住民が共同で設定し たものであり、ゴムの浮きで境界線 を示し、1 年を通じ誰もその中に侵

入できないようにした。その結果、漁業資源も増加し住民もこの状況を歓迎している。また、県 事務所職員が議長を務める保護区保全委員会も立ち上げられ、メンバーには地域住民やTAO職員 も参加している。この保護区はRFDとラムサールプロジェクト事務所の共同管理下にある。

ラムサール登録前から周辺住民は湖の水をポンプにより稲作への灌漑に利用しており、3 年前 には可動ポンプを使った灌漑も南端部で始まっている。留意すべき点は、住民が漁業資源や水資 源を登録後にも引き続き利用しているということである。そして、それが住民の保全意欲を高め ていると考えられる。ラムサール条約は、湿地帯の保全に加えて賢明な利用を強調しており、天 然資源の保全のために住民を除外するということはしていない。現在、水資源は豊富であること から特に水争いなどの問題は発生しておらず、今後も持続的な資源の利用が望まれる。

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