• 検索結果がありません。

今後の水資源管理事業における環境への配慮

ドキュメント内 <8CBB8FEA8ECA905E8F57284A5029> (ページ 108-113)

第 4 章 自然および社会環境と水資源開発・管理

4.8 今後の水資源管理事業における環境への配慮

タイ東北地方では未だに水不足に悩む地域が多く、現在も様々な水資源管理に関する事業が計 画されている。今後はこれまでのケースを通じて得られた学びや教訓をもとに、環境への配慮を 十分に検討した事業の策定および実施が求められる。以下に、大規模、中規模、小規模の水資源 管理事業を実施する場合の環境への配慮について述べる。

19 今回の調査で得られた、開発事業に批判的な東北タイ関係者(NGO、住民等)の意見は以下の通りである。

1)過去の東北タイの大規模水資源開発は、政治家主導で住民のニーズが反映されず、開発に対する住民の意見 も尊重されてこなかった。政権交代によって開発内容がしばしば変更され住民は振り回された。

2)過去の大規模な水資源開発は、伝統的な文化や生活(地下水中の塩を利用した食生活、洪水との共生、電気 代が不要な水車の利用)を損なう、または塩害発生や漁業資源の減少につながることもあった。

3)今後は、計画当初から住民が参加して、住民のニーズに合った開発を望んでいる。また、住民が維持管理で きる規模にして欲しい。住民は地元の天然資源に関し豊富な経験・知識を持っており、これらを開発に活か すべきである。水は必要だが、大規模開発は不要である。

4)経済発展だけでなく、住民の真の幸せにつながる開発を望んでいる。

20対象地域の住民への聞き取り(JICA調査団、20106月)。本事業のEIAレポートは承認されたものの、MoNRE から事業による塩害の発生が指摘されており、事業は進んでいない。また、これは村の代表者・有力者の意見で あり、住民の総意であるかどうかは十分な確認が必要である。

タイ国タイ東北地方の水資源管理に係る基礎情報収集・確認調査 ファイナルレポート

(1)導水・流域変更を伴う大規模水資源管理事業

タイで大量輸送、統合水管理、キッチンオブザワールド計画などの政策・計画・プログラムに 影響を及ぼすような開発や、複数県にまたがる大規模事業(メガプロジェクト)を実施する際に は、SEAの実施が義務付けられている。したがって、事業の実施地点や規模、対象面積は最初か ら決定されておらず、いくつもの代替案を示し、技術、コストの面からだけでなく、それぞれの 環境への影響を比較検討する必要がある。たとえば、施設の建設のみならず植林やモンキーチー クを組み合わせた水資源管理の検討も視野に入れる。図4.8.1にそのプロセス(案)を示す。また、

タイ国内では、Tachein 川流域にて代替案の検討が現在行われており、ONEPP からも優良事例と して紹介さているため、この事例も参考にできる。

タイ国タイ東北地方の水資源管理に係る基礎情報収集・確認調査 ファイナルレポート

具体的方策の検討

文献、資料の収集

• 水理・水文、自然環境

• 社会情勢(人口動態、農業、

漁業、林業、文化、地域開発 計画など)

• 地域のニーズ、環境への意識

• 現地踏査、聞き取り

流域・河川の理解

• 流域・河川の現状把握

• 流域・河川の歴史的変遷 の把握

• 類似の流域・河川、希望 の流域、河川との比較

流域・河川の望ましい姿 の抽出・設定

複数案の検討分析

治水面

• 流域・河川の望ましい姿

• 治水面の整備の方向性の 抽出・設定

利水面

• 流域・河川の望ましい姿に 沿った利水面の整備の方 向性の抽出・設定

環境面

• 流域・河川の望ましい姿に 沿った環境面の整備の方 向性の抽出・設定

方向性の抽出

流域・河川の保全

• 治水

住民の生命、財産の保全

• 利水

農業の促進、生活の保全

• 環境

動植物の生息地の保全 景観保全

水質保全

治水整備の具 体的方策

• 堤防嵩上

• ダム

• 堰

• 遊水地

利水整備の具 体的方策

• ダム

• 堰

複数案の抽出・設定

治水面、利水面、環境面からの事業内容の検討

事業計画案の作成

案の作成

実現可能性の検討

複数案の抽出・設定

4.8.1 SEAにおける複数案の検討までのプロセス(案)

タイ国タイ東北地方の水資源管理に係る基礎情報収集・確認調査 ファイナルレポート 大規模事業は県の開発計画とも関連することから、この過程では、事業実施機関のみならず、

県の関係者を含めることが望ましい。RIDやDWRのみならず、RFD、DOFなど天然資源の管理 に関与し、地元の事情を熟知している県事務所の職員に参加を促すことも一案である。また、SEA ガイドラインによると、全てのプロセスで住民の参加が求められており、住民の意見の抽出・計 画策定での反映が重要である。図4.8.221にSEAにおける環境影響分析のプロセス(案)を示す。

214.8.1及び図4.8.2のイメージ図はそれぞれ、「戦略的環境アセスメント」浅野直人(2010年)の図2-2-3およ

び図2-2-4を一部抜粋し、水資源管理・開発事業に適用できるよう改訂したものである。

計画段階において考えられる環境影響分析手法の選定

• 事業内容の影響要因と影響項目の検討

• 分析対象となる影響項目とマトリックス表の作成

分析対象となる環境項目の設定(スコーピング)

環境影響評価

複数案の検討

分析項目ごとの分析手法の選定 A案(ゼ

ロオプ ション)

B案

(ダムと 掘削案)

C案

(導水案)

D案

(ダムと 堤防案)

E案

(…)

項目a ✓ ✓

項目b ✓ ✓ ✓

項目c ✓

分析対象 となる環 境要素

研 究 機 関 な ど に相談

分析計画書の作成および

(1) 分析に当たっての調査内容のチェック (2) 公表

(3) 分析計画書の修正を踏まえ分析手法の確定

重大な環境影響の有無の確認、分析結果の不確実性の検討 環境影響評価

第三者機関の 意見の収集

複数案の比較

(1) 流域・河川全体での分析結果のとりまとめ

(2) 環境保全の方向性と達成度、重大な影響の有無、分析結果の不 確実性、既存開発計画との整合性確認、地域の環境認識などを 明記

複数案の比較

分析報告書の作成および公表 公表および意見に基づく修正

研究機関意見聴取

4.8.2 SEAにおける環境影響評価のプロセス(案)

タイ国タイ東北地方の水資源管理に係る基礎情報収集・確認調査 ファイナルレポート

(2)大・中規模水資源管理事業

この規模の事業では導水・流域変更は必要としないが、通常の事業を対象としたEIAあるいは IEE が必要である。これまで問題が発生した事業から得た学びを生かし、EIA のスコーピング段 階から住民の参加を求め、研究者、調査機関、住民との連携を高めることが重要である。また、

住民移転が必要とされる場合には、工法の検討により、水没地域を最小限に留めるよう工夫する。

特に、公有林が水没地帯となる場合には、移転が必要となる住民は農業のみならず林産物に生計 を依存している場合が多いため、移転先でも林産物へのアクセスが可能な場所を選定するなどの 配慮が求められる。また、タイ東北地方における灌漑・水資源開発には塩害発生の可能性が付随 するため、地下水の状況、地形、降雨量などのデータに基づき、これまでの類似事例を参照しつ つ、塩害の可能性について十分に検討する。さらに、漁業に関しても、金額は小さくても自家消 費用の蛋白質取得源として重要な役割を果たしていると考えられるため、構造物の建設により魚 の移動を妨げないような工夫が必要となる。

(3)小規模水資源管理事業

これは、EIAあるいは IEEを必要としない小規模の事業である。ただし、住民による小規模な 天然資源管理はコストも低く技術的にも容易であることから、村落単位での天然資源管理が推奨 される。Huai Sam Moの事例や共有林設立のプロセスなども参照しながら、住民にとって容易に 実施できる規模・予算での水資源管理の方法を住民に検討・提案してもらう。管理上のルールも住 民が策定し、行政機関、研究機関はこれを技術的・資金的側面を支援することが望ましい。

タイ国タイ東北地方の水資源管理に係る基礎情報収集・確認調査 ファイナルレポート

ドキュメント内 <8CBB8FEA8ECA905E8F57284A5029> (ページ 108-113)