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タイ東北地方の開発の方向性 .1 東北地方の果たす役割

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第 6 章 タイ東北地方の開発シナリオ

6.2 タイ東北地方の開発の方向性 .1 東北地方の果たす役割

第10次NESDPに基づく東北地方の開発戦略(2007-2011)として4つの目標が掲げられている。

1) 国の食料・燃料作物の生産基地となる

2) 食品加工業とバイオ・エタノールの生産基地となる 3) インドシナとの貿易と観光のゲートウェイとなる 4) 主要な観光地となる

1 1970年代にRoyal Dutch/ Shell社が石油危機に際して導入した経営・政策戦略策定にかかるアダプテ ーション・アプローチ。不確実な将来の外部環境の変化について戦略適応を可能にする。「戦略思考の フレームワーク」(西村行功、2010)

水 短期 中期 長期 シナリオA 資 源

開 シナリオB 発

の シナリオC 度

合2011 2016 2026 2040 時 間

6.1.1 開発シナリオの概念図

タイ国タイ東北地方の水資源管理に係る基礎情報収集・確認調査 ファイナルレポート 特に農業・水資源の方向性に関連の深い前者 2点を柱とする開発の方向性を検討する。現在、

第11次NESDPの策定中であるが、方向性に大幅な変更はなく基本的に第10次計画の方向性が継

続されることを確認した。特に、開発の中心思想である「足るを知る経済」をより強固に推進す ることが確認されている。

6.2.2 農業開発の方向性

東北地方の開発戦略に示された農業・燃料作物の生産と各主要作物につき、長期的なシナリオ の農業開発の方向性に及ぼす重要な視点について以下に示す。

(1)米

第2章で述べたように、東北地方の農地面積は全国農地の40%を占めており米の約半分は東北 地方で生産されているが、生産性が低いことが問題として指摘される。国の食料供給基地となり 世界一の米輸出国として長期的な食料需要増加(特にアジアの主食である米)に対応していくた めには、25年間で2007年比で25~35%の増加が必要であろう。東北地方の生産性(現況331kg/rai)

11次国家経済社会開発計画の指針 現状のリスク

(1) 政治対立による議会制民主主義、政府メカニズムの弱体化

(2) 労働力不足

(3) 農村の高齢化と社会構造の均衡の崩れ

(4) タイ文化の活力の低下

(5) 環境破壊による多様な生態系の衰退 原則

(1) 国王陛下を元首とする民主主義制度の堅持

(2) 食品工業の基盤であり農民の所得の源泉である農業を、経済構造の基盤に据える。

(3) 経済構造を効率よく駆動させるために最新技術を導入

(4) コミュニティを基本とする統治メカニズム、コミュニティの開発

(5) 国際的リーダーシップ

以上の原則を貫徹するため、第11次NESDP案には以下の6項目が盛り込まれた。

(1) 社会的な公正の実現

社会的格差のある現状の是正、対立の解消、経済サービスへのアクセス拡大

(2) 国民の知識へのアクセス拡大、社会における生涯教育の実現

(3) 食料作物とエネルギー作物のバランスの維持 世界的視野からの取り組み

(4) 知識ベース、創造経済の開発

小規模企業、コミュニティ企業にイノベーションを生み出す機会を伸ばす

(5) CLMV諸国の開発とASEANでのリーダーシップ

(6) 多様な生態系、天然資源の長期的な保護

出典:タイ経済(2010913日号)「第11次開発計画期の国家の指針」201086NESDBセミナー

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が灌漑の完備された中部の生産性(現況 589kg/rai)に匹敵するまで向上すれば、他の地域が現状 維持だとしてもタイ全国の米生産量を30%増加させることが可能である。

(2)キャッサバ・サトウキビ

東北地方では全国の約半分のキャッサバ生産が行われており、全国の 1/3 のサトウキビが生産 されている。キャッサバ製品はAFTAの影響は小さいが、輸出先のトップである中国の需要は伸 びると考えられる。またサトウキビについてはAFTAの関税撤廃によって需要増が見込まれる。

どちらもバイオエタノールの原料となるが、エネルギー局は現在の3.0 百万ℓ/日から2022年には 9.0百万ℓ/日と3倍の生産を目標としている。このために、キャッサバだけで増産を図る場合には 生産量を全国で 12.9 百万トン増加させる必要が生じ、現在の全国生産量30百万トンを43%上回 る生産量が必要になる。これ以上の作付面積の拡大は見込めず糖蜜からのエタノールも増加する ことを考慮すれば25~30%の収量の増加が必要である。

灌水による増収も可能であり、現在マイクロ灌漑による灌水試験も行われているが、水資源の 問題と生産コストの増加が競争力低下につながることから適用可能地区は限られてくる。より一 般的な対応としては土壌改良(有機物の投入、緑肥)が挙げられる。

(3)経済林(天然ゴム)

第2 章で述べたように、東北地方における天然ゴムの作付面積は急速に拡大をみせており、こ の傾向は中国での自動車用タイヤ向け需要増加を背景にしばらく続きそうである。米や畑作物の ように年 1回の収穫ではなく、年間を通じて現金収入を得ることができ、価格が下落しない限り 農家にとって非常によい収入源となる。ただし、作付け可能な地域は降雨量が多い地域に限られ る。

(4)高品質な作物生産(GAP・有機栽培)と畜産の高付加価値化

農産物及び加工品の品質向上はタイが”Kitchen of the World”になるための重要な方針であり、

GAPやHACCPといった国際的な安全性と品質基準の取得が重要となってくる。また、生産コス

トの削減と土壌の改善の点からも有機栽培は推奨される。そこで重要になるのがマーケットであ り、契約栽培・民間の参画によって市場の開発を行う必要がある。また作物だけでなく、畜産に ついても品質向上の余地は残されており、有機肥料の需要拡大に対しても積極的に畜産を拡大す る必要がある。

(5)「足るを知る農業」(新理論農業)と作物の多様化

5ヵ年農業開発計画においては、農民を強固にする戦略のもと、4分の1の農家が「足るを知る 農業」2を実施することを目標としている。しかし、2011年の目標年までの達成は困難であるため、

これを継続することが想定される。「足るを知る農業」とは、主に小規模農家の自立のために複合 農業を行うもので、ため池を掘削し雨季の水をためて乾季に自給用の野菜やハーブ、果樹、養魚、

家畜用水として用いる。

2足るを知る経済に基づいた自給的複合農業。ため池を水資源とし土地資源を効率的に活用する複合農 業を新理論農業とも言う。プミポン国王の考案

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6.2.3 水資源開発・管理の方向性

第3 章の水資源開発・管理の課題で示したように、東北地方の地形条件、水文条件、これまで の灌漑開発及び社会環境の制約によって大規模な水資源開発・灌漑開発は非常に限定的であり、

限られた水資源を効率的に利用するために管理を強化する、または流域変更によって導水を行い 灌漑開発を拡大する二つの方向性をタイ政府の政策と計画から読み取ることが出来る。

水資源管理に関して、東北地方に特定の方針や方向性は示されていないが、第10次NESDPの 開発方針では2011年までに全国25の流域は統合水管理手法により管理することとしている。東 北地方においてはコン、チー、ムン 3流域の流域管理委員会は設立されているが、実質的な水資 源管理を担っていく必要がある。水資源管理に重点を置いた上で灌漑面積の増加や灌漑システム の効率的利用、水資源管理のシステム化とコミュニティが参加しての干ばつ、洪水被害の解決が 5ヶ年農業開発計画に挙げられている。

東北地方での開発の可能性は限定的といっても、RID とDWR では水資源開発・灌漑開発にか かる計画を持ち投資計画を策定しているため(3.13参照)、これらを整理する形で開発シナリオの 一部とした。

6.2.4 自然環境への影響と社会環境配慮

多様な生態系や生物多様性の保全の観点からも開発シナリオを検討し、必要な環境アセスメン トプロセスや住民参加について考慮した。

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