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テーマとなる課題活動とドラマの関係については,以下のような例があげられる。例え ば,「他者の気持ちの理解」というテーマでは,まず状況絵カードをみて,その絵の中の人 がどんな気持ちなのかを考える。その際,その人のどこをみて判断すればよいかを話し合 う。その後,メンバーがそれぞれに「私の楽しいひととき」を演じて(PDRP)紹介する
(YAグループ)。また他者に喜ばれる「あったかことば」と,嫌な気持ちにさせる「とげ とげことば」をとりあげたゲームの後では,「あったかことばを貯めて,旅行に行こう!」
というテーマのPDRPを行った(YA・YB共通)。「話し合いのルールを身につけよう」で は,「無人島に行くとしたら何をもっていく?」というテーマで,話し合いのルールにそっ て意見を出し合い,持って行くものを決定する。そして話し合いで決まったものだけをも って「無人島に行こう!」というPDRPを行った(YB)。さらに「こんなときどうする?」
というテーマでは「目上の人に頼みごとをするとき」と「小さな子に注意するとき」のあ り方をロール・プレイングで試した後,お兄さんや小さな子が登場するPDRPを体験した。
6.実施上の配慮点
これらの課題活動では,ねらいをわかりやすくするために視覚的な教材を多く活用し,
ロール・プレイングでスタッフがモデルを示したり,メンバーが演じるなど,実際の行為 の中で状況判断や気持ちの確認を促すことを積極的に取り入れた。それにより課題となる テーマがメンバーに明確に意識されたことは,グループ活動におけるドラマの中で,メン バーが場に応じた役割を演じる姿により確認された。それらの実際の様子を次節で述べる。
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(3)保護者からの近況報告 「あらあらエピソード」及び口頭による報告 E男の母親より
「(飲食店にて)1歳前後のよちよち歩きの子が,私達のテーブルの上にあった注文 表を取り上げてしまったとき,E男が思わず大声で『だめよ』と叱ってしまった。
私(母親)は,『こんなときは,優しく言ってあげるように』と注意したが,(その 場にいた乳児の両親が気分を害したようで)すぐに店を出られたので辛かった。」
K男の母親より
「スポーツクラブのインストラクターに暴言を吐くことがある。また普段から場に 合わせた声の大きさの調整ができないことが気になっている。」
J男の母親より
「グループに参加しているときでも,E男君を怖がらせる言葉や,ちょっかいが めだつので心配」
(4)プログラムの概略
① はじめの会:当番によるかけ声とともに,全員ではじめのあいさつ 新しいスタッフ(学生ボランティア)の自己紹介 ② 導入活動: ゲーム「あったかことば」でビンゴ
③ 課題活動: 「こんなとき,どうする? 」
テーマ 「小さな子どもや,年上の人への素敵な言葉かけを身につけよう」
④ ドラマ(PDRP):「休日にみんなで遊びに行こう!」
⑤ おわりの会:その日のセッションで行ったことの確認と感想 他のメンバーについて,よかったと思うところを発表 2.セッションの実際
(1)はじめの会
スタッフとなる学生ボランティアが,年度の変わり目で入れ替わり,新年度のスタッフ と初めて顔を合わせる日であったため,自己紹介を行った。メンバーの希望で,自分の好 きなスポーツを紹介することになった。K男は,それぞれのスタッフが好きなスポーツを 話すたびに,強い口調で否定的な発言を繰り返した。例えば,「テニスが好きです」とある スタッフが言えば,「そんなの(ボールがちゃんと)打てるわけないでしょう!」,サッカ ーならば「蹴れるわけないでしょう!」といった具合である。進行役の筆者に小声で「K 君,あったかことばは?」と言われると,「打てるわけないでしょう」の同じことばを語尾 を弱めたり,抑揚を下げたりしながら,どう言えば,「あったかことば」になるのかを何度 か言い換えて試していた。しかし,どれもしっくりせず,違和感があるようで戸惑った顔 になる。筆者は,自己紹介の場で「ないでしょう」という否定語以外の言葉を使うことに 気づいてほしかったのであるが,それは通じなかったようで,あくまで発話の抑揚の問題 としてとらえたK男は,そのうちイライラしたように,「やっぱり,『でしょう(強くきっ ぱりした声の調子に戻して)』というのが,はっきりしてていいの!」と言い切った。
そのようなK男と進行役のやりとりを含めながら,全員の自己紹介が進んでいる間,自
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分の番を待っていたJ男は,近況報告で母親が心配していたように,やはりE男に対して わざと不快な言葉を度々発している様子であった。(そのときの正確な言葉は,VTR 記録 で拾えなかったが,E 男がそれを嫌がっている様子が見受けられた。また,J 男のそばに いたスタッフからも後でそのことが報告された)
(2)導入活動 ゲーム「あったかことば」でビンゴ
このセッションの前の回でテーマとなった「あったかことば」と「とげとげことば」の 復習を兼ねて,ビンゴゲーム用のシートに書き込む「あったかことば」と「とげとげこと ば」のリストを作成した。「あったかことば」とは,聞いた人がほっとするような温かいこ とばである。逆に「とげとげことば」は人の気持ちを傷つける嫌なことばである。それぞ れについて,メンバーからは表1のようなことばがあげられた。
「あったかことば」については,E 男は一番に「ありがとう」を挙げたが,その後は沈 黙してしまった。K 男は,進行役が「あったかことば」につながる様々なヒントを出し,
時間をかけて促してみても,「終わり、もうない。」と言うのみであった。J 男はヒントに 応じながら,一人でがんばり,表1のようなことばを 11 個挙げている。それでもビンゴ 用シート 25 マスの内,「あったかことば」で埋めることになっていた 17 マス分には足り なかったので,スタッフからも「だいじょうぶ」「よかったね」等のことばが補われた。一 方,残りの8マスを埋めるための「とげとげことば」のリストを考えるときになると,そ れまでの沈黙から一転して,3人ともぽんぽん言葉が閃くようで,すぐに 8 マス分を埋め ることができた。その後のゲームで,E 男が一番,J 男が二番にビンゴであがると,K 男 が「また負けたぁ」と泣き出してしまう。K 男の横にいた J 男が,それを見て「(涙が)
うわぁー,こっちに来たー!」と言う。またそのときK男から少し離れて座っていた E男 は,一番にビンゴで上がった嬉しさに気をとられ,弾むように身体を上下に動かしていた。
そこで筆者が「K 君,(ビンゴで)最後になっちゃたね。がんばれって,言ってあげよう よ」と促す。そこで初めて,E男もK男のそばに寄り,うつぶせている K男の背中をさす ったり,顔を覗き込んで,J男といっしょに「だいじょうぶ」と声をかけていた。
Ⅱ-7-表 3 「あったかことば」と「とげとげことば」のリスト
E 男 K 男 J 男 スタッフ
あったか ことば
ありがとう 嬉しい ドンマイ 楽しい 面白そう がんばれ いいでしょう すごい かっこいい ごめんなさい 貸してください 仲良くしよう
だいじょうぶ よかったね 遊ぼう 大好き がんばったね
とげとげ ことば
きもい ばか うざい
あんたのせいよ だめねぇ
だまれ あっちいけ うるさい 早くしろ 人の所為(せい)にする
67 (3)ロール・プレイングによる課題活動
テーマ 「年下や年上の人への素敵なことばかけを身につけよう」
ロール・プレイングの技法を使って,あらかじめ設定していた「こんなとき,どうする?」
という後述の4つの状況について,スタッフが乱暴な言葉遣いで対応する関わり方を示し た。それぞれの状況ごとに,乱暴な関わり方が出た場面で,進行役(筆者)がストップを かけ,例えば「大事な本なのに,小さい子に乱暴に扱われて破れそうだったから,慌てて 注意したんだよね。でもこの言い方でどうだったかな? 小さな子はどんな顔してる?。
みなさんだったら,こんなとき,どうする?」などと,その状況をもう一度確認した上で,
相手の気持ちに注目した関わり方を考える時間を設ける。そこで自分ならこうするという アイディアを出したメンバーに,それをロール・プレイングで示すよう進行役が促す。メ ンバーが実演した対応の仕方について,相手(年下役,年上役のスタッフ)に感想を聞き,
さらにその場に相応しい関わり方を確認する。それによって修正を加えることもあったが,
最終的にこの一連の手続きを踏まえる中で,メンバー3 人はそれぞれが演じた役割を通し て,優しい注意の仕方や丁寧な言葉で頼むこと等,望ましい関わり方を示すことができて いた。
状況1 年下の子が決まり事を守れなかった場合 (J男)
状況2 小さな子が大事な本を乱暴に扱った場合 (K男)
状況3 雨が降り出して,父に駅までの迎えを頼む場合 (K男)
状況4 祖母が見ているテレビ番組のチャンネルを変えてもらう場合 (E男)
(4)PDRP「休日にみんなで遊びに行こう!」の実際 ねらい
その1 ロール・プレイングで学習した「年下の子,年上の人への場に応じた適切な
ことばかけ」が,日常生活に般化されるための橋渡しとして,ドラマの中で使え る機会を提供する。
その2 ファンタジーの世界をアクションで共有するというドラマの体験を通して
仲間と遊ぶ楽しさを実感する。
その3 心理劇の構造から,自発的,創造的な仲間関係の発展を期待する。
z 参加者
主役: E男・K男・J男 監督: 筆者(臨床心理士)
補助自我:学生ボランティア:男性4名(S1・S2・S3・S4), 女性 2名(S5・S6) 観客: その他の学生ボランティア 女性3名
PDRPの展開 (図1)
「日曜日なので,みんなでどこかに遊びに行きましょう。どこに行きましょうか。」とい う監督からの誘いかけに応じて,E男とJ男が活発に希望を出し合い,○○温泉にいくこ