第3章 ニッケル
第二部 消費編
4.2 今後5年間の業種別中国のニッケル需用予測
ステンレス製造業はこれまでもニッケル市場の大口ユーザーであり、グローバルに見れ ば、そのニッケル消費量はニッケルの総消費量の65%前後を占めている。ニッケル消費の形 式は電解ニッケル・ニッケル鉄・焼結酸化ニッケル・一般ニッケルなどがあり、一般的に これら数種の原料使用比率はそれぞれ55%、30%、6%、9%となっている。この2年来、中国の 一部企業は輸入紅土ニッケル鉱を使ってニッケル含有量の低いニッケル含有銑鉄を生産し、
主にステンレスの生産に用いている。
これまでの20数年間の経験を踏まえて言えば、世界のステンレス生産の年平均増加率は
5%で、2007年のステンレス総生産量は3,000万t弱、2006年比4.9%増で、2011年には4,095万 tに達する見込みである。2007年から2011年までのステンレスの生産量は年平均伸び率は 7-5%の間で推移するものと思われるが、全世界のステンレスの発展動向から見れば、400系 ステンレスの生産が主流になることが予想される。従って、ニッケルの消費速度はステン レス生産の伸び率よりやや低く、2007年-2011年にかけてのニッケルの年平均増加率は6-7%
になることが予測されている。
表33 2007-2011年中国のステンレス精錬能力と生産量の予測
企 業 2007
(Kt/a)
2008 (Kt/a)
2009 (Kt/a)
2010 (Kt/a)
2011 (Kt/a) 国有企業
太原鋼鉄公司 3,000 3,000 3,000 3,000 3,000
宝鋼第一工場 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500
宝鋼第五工場 200 300 300 300 300
東北特殊鋼 300 500 500 500 500
酒泉鋼鉄公司 600 600 1,200 1,200 1,200
唐山鋼鉄公司 - 600 600 600 600
生産能力小計 5,600 6,500 7,100 7,100 7,100
合弁企業
張家港浦項ステンレス公司 800 800 800 800 800
広州聯衆ステンレス公司 800 800 800 800 800
生産能力小計 1,600 1,600 1,600 1,600 1,600
民営企業
青山集団 1,000 1,000 1,500 1,500 1,500
福建呉航 900 1,000 1,000 1,000 1,000
包頭華業 300 600 600 1,000 1,000
四川西南 200 300 300 300 300
山東泉信 200 200 200 200 200
山西環海 200 200 200 200 200
浙江友誼特殊鋼 300 300 300 300 300
寧波華光 300 300 300 300 300
湖州久立 200 200 200 200 200
泰山鋼鉄 - 600 600 600 600
その他 1,200 1,300 1,500 1,500 1,500
生産能力小計 4,800 6,000 6,700 7,100 7,500
生産能力合計 12,000 14,100 15,400 15,800 16,200
ステンレス粗鋼
総生産量 7,600 8,500 9,500 10,600 11,000
オーステナイト比(%) 71% 70% 70% 68% 68%
オーステナイトステンレス総生産量 5,396 5,950 6,650 7,208 7,480 そのうち:300系ステンレス生産量 3,426 3,867 4,322 4,685 4,862 200系ステンレス生産量 1,969 2,083 2,328 2,523 2,618 ニッケルの実質消費量 222.1 243.9 272.6 295.5 306.7 出典:安泰科
関係方面の統計データによれば、2007年の中国のステンレス精錬能力は1,200万tに達し、
今後数年間もステンレス粗鋼の生産能力は引続き増加し、既存製鉄所の新設生産能力と増 産計画によれば、2010年には1,580万tの生産能力が予測される。生産能力が強化されるに つれて、ステンレス生産量も増加するが、今後数年間の生産量は2007年以前の増加速度と 比べ明らかに減少し、年増加率はおよそ15-18%の間で推移し、2010年には1,000万tの大台 を突破することが予測されている。これに呼応する形で、ニッケルの消費量も2007年の22 万tから2010年には31万t近くまで増えるものと思われる。
4.2.2 電気メッキ業
1980年代以降、中国の電気メッキ企業は急増しているが、同時に、電気メッキ製品市場 が次第にプラスチック製品やペイント製品に取って代わられ、生産能力が増強されている
メッキ製品市場の総需要は相対的に安定してくることが予測されるので、業界内の過剰な 生産力を削減し、構造調整を行っていく必要がある。
中国電気メッキ工業の今後の発展動向は基本的に以下の4点に集約される。
1.装飾性と高耐腐食性のある製造技術がさらに発展していく。自動車・電子・家電・航 空・宇宙工業・建築およびインテリアの発展と人々の美しい生活への意識の高まりに伴 い、電気メッキ製品の装飾性や耐腐食性に対するニーズが増えていくことが予想される。
2.一部の伝統的電気メッキはおそらくペイントスプレーや物理蒸着に取って代わられる ことになるが、機能性電気メッキ製品の需要は増える傾向にある。
3.一部の汚染の深刻な電気メッキ法はクリーンな電気メッキ工業によって淘汰される可 能性がある。例えば、ノーシアン電気メッキ・三価クロム鈍化技術・三価クロムメッキ・
カドミウム代替材・クロム代替メッキ層は増える傾向にある。
4 . 一 部 の 高 性 能 で 汚 染 の な い 表 面 加 工 の 高 度 な 新 技 術 、 例 え ば ダ ク ロ タ イ ズ ド
(Dacrotized)処理・コロシル(Corrosil)処理などが中国市場に参入してくることが 予想される。
現在の電気メッキ市場は、自動車部品やオートバイ部品などの器物の電気メッキが大半 を占めており、2004年に国家発展改革委員会が公布した「自動車産業発展政策」の中で、政 府は中国の自動車に対し「エコノミークラスのセダンを発展させ、自動車及び重要部品の 製造レベルを引き上げ、高効率・省エネ・低排出の自動車用エンジンとハイブリッド型動 力システムを積極的に発展させる。WTO加盟という情勢を踏まえ、中国の自動車工業は開放 的な競争と自主的発展を結合させた路線を堅持し、産業構造の調整に力を入れ、良質で実 力のある企業をさらに発展させ、業界全体の資質を高め、国際競争力を強化し、2010年ま でに自動車産業を国民経済の基幹産業になるように努める」と明確に要求しているほか、
優秀な部品メーカー群を育成して量産化を実現し、国際的な自動車部品調達システムに参 画し、積極的に国際競争に参加するようにと提起している。
自動車部品メーカーは国際的な産業発展動向に適応し、完成車メーカーの製品開発に積 極的に参画することが求められている。コア自動車部品の分野では、徐々にシステム開発 能力をつけ、一般の自動車部品分野では、先進的な製品開発と製造能力を形成し、国内外 の市場のニーズに応え、国際的な自動車部品調達システムに参画できるように努めなけれ ばならない。
同「政策」第31条はさらに部品の特定項目発展計画を制定し、自動車部品製品に対して分 類別に指導と支援を行い、一般の遊休資金が自動車部品生産分野に向かうように導き、比 較的優位性のある部品メーカーの専業化・大量生産・モジュール化商品供給能力の形成を 促すように指摘している。独立して複数の完成車メーカーに対応し、国際的な自動車部品 調達システムに参画できる部品メーカーについては、国は技術導入・技術改造・融資・合 併再編等の面で優先的に支援を行う。
2006年末現在の中国家庭100世帯当たりの自動車保有台数は4.3台で、これは2003年末の 2倍、二輪車は25.3台で2004年とほぼ同じ、電動自転車は100世帯当たり12.6台で、2004年 末の2倍であった。2007年1-9月の中国の自家用車生産台数は361万台で、前年同期比24.7%
増であった。今後5年間に自家用車がさらに増えていくにつれて、中国の乗用車産業は安定 的に発展していくものと思われるが、ガソリン価格の上昇と都市の交通渋滞の深刻化によ り、今後の伸び率はこれまでの24%台から15%以内に鈍化し、二輪車の伸び率も8%前後で推 移することになるものと思われる。また、これに連動する形で、この二業界の関連部品市 場も同じように発展していくことになるだろうが、ニッケルの電気メッキ業における消費 量の増加はそれほど楽観視できない。11月24日に上海で終了した「表面塗装メッキ博覧会」
によれば、電気メッキは電子・自動車部品メーカーの一部の部品には不可欠のものだが、
高汚染・高残留というデメリットがあり、しかもヨーロッパ向けの輸出される製品は含有 ニッケルに非常に敏感で、現在、電気メッキ製品で輸出をする場合は、どれも「ノーニッ ケル・ノークロム・ノーシアン化物」という環境新基準の方向で調整が進められている。
自動車用のアルミホイール・エンブレム・反射鏡のフレームなどの部品にはすでにニッケ ルが使われなくなってきている。
ニッケルは特に白人の肌にアレルギー反応を起こすとされている。ヨーロッパでは「表 面にニッケルを含んだ製品をヨーロッパでは販売してはならない」という電気メッキ製品 に関する新基準が公布され、現在では国内外の多くの企業でノーニッケル電気メッキ、錫 コバルト合金メッキなどの代替技術を開発している。伝統的な電気メッキ、例えば三価ク ロムをメッキするには、ニッケルで下地を作って(半光沢ニッケルと全光沢ニッケルでメ ッキする)、その付着効果を高めた上で三価クロムをメッキすることになる。この方法は国 内では非常に広く応用されているが、欧米等の先進国では環境に対する要求が厳しいため、
国外に輸出する電気メッキ製品にはすべてニッケルフリーの電気メッキが要求されている。
安美特(ATOTECK)社のある顧客マネージャーによれば、およそ人体の皮膚に直接接触す るもの、例えばメガネフレーム・アクセサリー・ドアノブなどの装飾メッキ製品は基本的 にすべて環境保護の観点からニッケルフリー電気メッキの新基準に移行し、機能性電気 メッキについてもニッケル価格の高騰により電気メッキメーカーはニッケルの代わりに他 の金属合金を採用しているという。この言により電気メッキ業におけるニッケル使用量が 全体的に減少している原因が分かるが、工業用電気メッキ製品のニッケル需要は基本的に 減らないとも言う。各級政府は電気メッキによる汚染の解決に取り組んでいるので、ニッ ケルメッキ業の伸び率は自動車のそれよりも小さくなるものと思われる。上記の各種要因 を総合すれば、今後3-5年の電気メッキ業におけるニッケル使用は、同じような水準で推移 することが予測される。
4.2.3 電池
電池業界のニッケル使用量は主に最終製品である電動自動車・電動自転車・小型手動工 具等の動力電池市場の拡大に依拠している。動力用電池のうち、一般的に良いとされるリ チウム電池は安全性が不安定であり、エネルギー効率の高い燃料電池は価格が高いなどの 理由で、その普及は客観的な制約を受けている。市場で大量に使用されている鉛酸電池も 容量が小さく、寿命も短く、しかも廃棄後の酸性液と重金属が環境を汚染するなどの問題 を抱えているため、近年、新たに開発された燐酸鉄リチウム電池が比較的安全で、価格も 安いということで、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池と並んで将来的な動力用電池 の三大柱になっている。
ニッケル水素動力用電池は電動自動車や電動自転車、電動二輪車などに応用されている ほか、一部の大規模かつハイレベルな物流企業や研究機関で使われている工業用ロボット もその重要な応用分野になっており、乗用車のハイブリッド動力用電源としてのニッケル 水素動力用電池市場の将来性が期待できる。しかしながら、目下の市場を見ると、エネル ギー密度と効率密度が高く、寿命も長い、エコ対応、メンテナンスフリーなどの長所を持 つニッケル水素動力用電池だが、どうも「掛け声ばかりで売れ行きが悪い」ようである。
その原因はどこにあるのか。
総合的な技術力が弱いという点が、中国のニッケル水素動力用電池の普及を遅らせてい るの要因になっている。春蘭の紹介によれば、春蘭ニッケル水素動力用電池の目下の供給 先はすべてハイエンド大口ユーザーで、最も主要なユーザーには一汽や東風のハイブリッ ドバスがある。一汽や東風のバスの生産規模は最大ではないが、総合的な研究開発能力を 有している。これら大口ユーザーの需要は、現在のところまだそれほど大きくはないが、
これはハイブリッドバスがまだ推進段階にあり、完成車の量産が始められておらず、ごく 小範囲のモデル都市に投入されているだけということと関係がある。
一方、関係資料によれば、現在、中国国内には電動自転車やハイブリッドカーの発展動 向についてなおいくつかの異なる意見が聞かれる。電動自転車は簡便で安全・省力・快適 かつ環境にもやさしいという長所があり、近年、各地の都市や農村でますます受け入れら れるようになっている。しかしながら、国にはそれに関連する産業政策がなく、大部分の 省・市では電動自転車の路上走行の合法性について明確な規定をしていない。上海や蘇州 など少数の都市を除いた地方の消費者は購入した電動自転車にはナンバープレートを付け ることができないでいるが、この問題は長い間、メーカーや販売店、消費者を悩ませてき