第2章 鉛・亜鉛
3.5 中国の鉛市場のバランス
以上の分析から、2001~2005年の中国鉛市場のバランスシートを作成してみた。輸入要 素の影響を受けて業界セグメントごとの鉛消費量はおそらく多めになっているので、鉛消 費量については一次消費データを採用したことは前述しているが、表3-51からは、中国の 精製鉛消費の力強い成長を受けて、2004年までの鉛市場は不足状態で、特に2003年の不足
量は20万t超に達していたことが分かる。この2年間は鉛価格の高騰に刺激され、精製鉛生 産量が大幅に増加し、鉛市場が徐々に不足状態から過剰状態に転換し、2005年の中国鉛市 場は6万tの過剰であった。
表3-51 2001~2005年鉛市場バランスシート
単位:万t 項目/年度 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
精製鉛生産量 120 133 156 193 239
消費量 96 111 136 161 191
生産と消費のバランス 24 22 20 32 48
純輸出量 43 36 41 40 42
市場バランス -19 -14 -21 -8 6
生産材料市場平均取引価格(元/t) 4,780 4,770 5,405 8,982 9,367
今後数年間の鉛生産量と消費量の予測に基づき、2006~2010年の中国鉛市場バランス シートも作成してみた。旺盛な消費を受けて今後数年間は精製鉛供給に大量の過剰が生じ ることはないだろう。2010年までの精製鉛の過剰量はわずか9万tにとどまり、しかもここ 指摘しておかなければならないことは、この予測が今後数年間は中国の精製鉛輸出量に大 きな変化が生じないということを前提にしている点で、もし輸出が大幅に増加または減少 した場合は、鉛市場のバランスはまた違った状態になるだろう。
表3-52 今後数年間の鉛市場バランス予測
単位:万t
項目/年度 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
精製鉛生産量 258 278 294 307 319
消費量 218 232 244 253 260
生産と消費のバランス 40 46 50 54 59
純輸出量 44 45 45 46 50
市場バランス -4 1 5 8 9
生産材料市場平均取引価格(元/t) 12,000
4.中国亜鉛の供給と需要
4.1 中国の亜鉛生産の現状と発展動向
中国有色金属工業協会の統計によれば、2000年から2005年までの中国の亜鉛製錬能力(精 留+電解+亜鉛製品)は年平均13.8%増加し、2005年には397.5万tになった。具体的な状況は 以下の通り。①2005年に河南豫光金鉛集団が新設した10万tの電解亜鉛生産施設が2005年 5月末に生産を開始、②雲南馳宏亜鉛・ゲルマニウム社と雲南金鼎亜鉛業公司の各10万tの 電解亜鉛生産施設がそれぞれ2005年6月と8月に生産を開始、③陝西八一亜鉛業と山西襄汾 有色金属公司が拡張によって亜鉛電解能力をそれぞれ5万tと2万t増やす、④広西河池南方 製錬総廠が8万tの電解亜鉛生産施設を新設し2005年末に生産を開始、⑤甘粛成州鉱業集 団の4万t電解亜鉛生産施設拡張工事が2005年度の第1四半期に竣工して生産を開始。上述メ ーカーの新規増加分の亜鉛生産能力は合計49万tになった。貴州省と雲南省で環境保全のた めに約21万tの乾式法の生産能力が閉鎖された。2006年の亜鉛製錬能力の純増加分は推計約 30万tで、年末には総製錬能力が420万t超になるものと見られる。中でも最も主要な新設プ ロジェクトは東嶺亜鉛業と葫廬島亜鉛廠の鉛亜鉛年産10万tのISF製錬所で、それぞれ2006 年の中ごろに操業を開始している。東嶺亜鉛業は技術的な問題で2006年の年末になっても 正常な生産ができないでいるが、葫廬島ISFも10月末にようやく精留亜鉛の生産を開始して いる。一方、内蒙古紫金鉱業の年産10万tの亜鉛電解工場は2006年7月に操業を開始してい るが、9月から生産目標を達成しつつある。雲南の羅平亜鉛電公司も電解亜鉛生産能力2万t を拡充し、2006年第1四半期に生産を開始した。また原料供給が好転したことで、広西の閉 鎖されていた製錬工場も一部生産を再開している。
表4-1 中国の亜鉛製錬能力
単位:千t/年
精留亜鉛 電解亜鉛 亜鉛製品 合計
2000 560.2 1,167.8 358.1 2,086.1 2001 489.5 1,324.4 351.3 2,165.2 2002 587.2 1,661.6 353.8 2,602.6 2003 601.2 1,899.8 368.8 2,869.8 2004 838.1 2,296.7 483.0 3,657.8 2005 775.4 2,636 504 3,936 2006推計 915.0 2,736 524 4,225 出典:2000~2004年は中国有色金属工業協会による。
2006年は安泰科の推計
表4-2 2005~2006年中国の新設亜鉛生産能力
単位:千t/年
地域 新増設生産能力ウ 技術 生産開始時期
豫光金鉛 河南 100 電解 2005.5.28
馳宏亜鉛・ゲルマニウム鋅鍺 雲南 100 電解 2005.8
金鼎亜鉛業 雲南 100 電解 2005.6.28
河池南方 広西 80 電解 2005.12.28
八一亜鉛業 陝西 50 電解 2005年初
山西襄汾 山西 20 電解 2005年初
成州鉱業 甘粛 40 電解 2005年第一四半期
東嶺亜鉛業 陝西 60 ISF 2006年5月28日
葫廬島亜鉛廠 遼寧 60 ISF 2006年7月12日
紫金鉱業 内蒙古 100 電解 2006年7月
羅平亜鉛電 雲南 20 電解 2006年第一四半期
合計 730
出典:安泰科
中国の亜鉛製錬能力は主に湖南・雲南・広西・遼寧・甘粛・陝西・四川に集中しており、
これらの地域の生産能力はいずれも年産20万t以上である。但し、最近5年間の伸び率が最 も大きいのは雲南・湖南・陝西・河南になっている。
表4-3 中国各地区の亜鉛生産能力
単位:千t/年
生産能力 生産量
2004年 2005年 2006年 2004年 2005年 2006年 全国合計 3,658 3,936 4,225 2,695 2,776 3,120
湖南 853 858 858 619 657 690
雲南 559 670 690 385 415 640
広西 529 441 461 253 197 240
遼寧 388 388 448 282 258 250
甘粛 200 297 297 215 226 220
陝西 200 220 280 181 193 245
四川 294 281 281 240 216 210
貴州 250 234 220 149 166 130
広東 157 157 157 180 185 135
河南 58 155 155 28 85 150
内蒙古 43 45 145 45 52 80
山西 20 50 50 17 56 22
青海 10 40 40 32 33 35
浙江 24 24 24 25 24 25
その他 73 76 119 44 13 48
出典:安泰科
現在建設中の製錬プロジェクトには次のようなものがある。①雲南蒙自鉱冶公司の5万t 電解亜鉛プロジェクト:計画では2007年上半期に竣工、生産開始。②雲南華聯亜鉛・インジ ウム公司の10万t電解亜鉛プロジェクト:計画では2007~2008年に竣工、生産開始。③河池 南方有色製錬公司の8万tの電解亜鉛設備:2007年末までに生産開始予定。④庫博赤峰紅燁と 中色建設の共同出資による三期電解亜鉛プロジェクト:生産能力5万t増、生産開始は2007年
の予定。なお、関連報道によれば、内蒙古の白音罕山と錫林郭勒盟東烏旗阿爾哈達鉱冶有 限責任公司がそれぞれ10万tの電解亜鉛工場を建設中とのことだが、直接連絡が取れておら ず、まだ正確な情報が入手できていない。
表4-4 中国で建設中の亜鉛プロジェクトとその生産能力
単位:千t/年
生産能力の新規増加 技術 生産開始時期
蒙自鉱冶有限公司 50 電解 2007年
雲南華聯亜鉛インジウム公司 100 電解 2007~2008年
河池南方有色製錬公司 80 電解 2007年
庫博赤峰紅燁有限公司 50 電解 2007年
錫林郭勒盟東烏旗阿爾哈達鉱冶有限責任公司 100 電解 2007~2008年
内蒙古白音罕山 100 電解 2007~2008年
雲南華聯亜鉛インジウム公司 100 電解 2007~2008年
出典:安泰科
地域別に見ると、貴州省は中国で亜鉛製錬所の最も多い地域の一つだが、製錬所の規模 はどれも小さい。年産5万t以上は皆無で、3万t以上の製錬所もわずか4か所あるだけである。
主に竪罐(竪型蒸留法)による亜鉛製錬が行われている。貴州省の亜鉛年産量は以前は30 万t以上とする統計もあったが、2005年の公的統計では16万tになっていた。石炭価格の高 騰と貴州の亜鉛資源の枯渇、さらに環境保全が厳しく叫ばれるようになったために、同地域 の生産コストがますます高まり、2004年から2005年には多くの製錬所が閉鎖されるに至った。
国家統計局による統計によると、2006年1月から10月にかけての貴州省の亜鉛生産量は昨年 同期比23%減で、今後この地域では既存企業の合併が進み、総生産量はさらに縮小すること が予想される。
雲南省は中国でも亜鉛資源の最も豊富な地域であり、今後数年間は亜鉛製錬量の伸びが 最も大きい地域になることが予想されているが、貴州と同様の理由に加えて、電力不足や 大部分の小規模製錬所の閉鎖、遅れた生産設備の廃棄などにより、大型企業への原料供給 が好転し、それにより生産量が増え、生産能力も拡張されていくことが見込まれる。例え ば雲南金鼎亜鉛業には目下、今後2~3年のうちに亜鉛電解能力を10~20万t再拡張する計画 があり、総生産能力が現在の12万tから22~32万tに増えることになっている。また馳宏亜 鉛・ゲルマニウム、雲冶亜鉛業、華聯亜鉛・インジウム公司、祥雲飛龍、羅平亜鉛電、蒙 自鉱冶も生産規模を拡張する可能性がある。
湖南省は現在中国第二の亜鉛生産地であるが、今後もこの地位を保持するものと思われ る。湖南の南部と西部には豊富な亜鉛資源があり、湖南には大型亜鉛工場(株洲製錬所や 水口山有色金属有限責任公司など)も多く、資源さえ十分にあれば、これらの製錬所には 生産量拡大の余地があり、特に湘西地区に製錬メーカーが出現する可能性がある。
広西壮族自治区はかつて中国の主要な亜鉛生産地だったが、2001年に南丹県で起きた鉱 山事故以降は、多くの鉱山が閉山し、製錬所は原料不足に見舞われ、2003~2004年には電 力供給が極端に逼迫し、製錬所の稼働率が30%以下に落ち込むなど、製錬業全体が深刻な打 撃を受けており、柳州亜鉛製品集団や柳州化学製錬公司などがわずかな稼動率で対応して いる。銀茘集団の龍城化工総廠はこれまで60%以上を輸入精鉱に頼って委託加工貿易を行っ てきたが、近年、加工工賃が下がったために経営が難しくなり、2005年にはほぼ生産停止 状態に陥ってしまった。その後2006年には4万tの生産能力を回復させたが、今でも原料確 保が問題になっている。河池南方製錬所は元は鉛アンチモン工場だったが、2005年末に8 万tの電解亜鉛工場を立ち上げたほか、さらに8万tの電解亜鉛工場の建設が進められており、
将来的には広西の主要亜鉛工場の一つになることが見込まれている。
東部沿海地区は乏しい鉱産資源、厳しい環境保護規制、高い電気価格などの影響で、原 生亜鉛鉱石からの製錬業は次第に市場から撤退しつつあるが、消費市場に近く、亜鉛メッ キ業からの廃棄物が年々増加しているため、再生亜鉛の生産量が今後も伸びていくように 思われる。現在、浙江省の温州・義烏・永康及び広東省の一部地域には原始的な方法で亜