第2章 鉛・亜鉛
3.4 中国の鉛消費に関する調査
国家統計局・有色金属工業協会・税関総署のデータから中国の鉛名目消費量が算出でき る。下表にあるように、中国の鉛名目消費量は2000年にはわずか63万tであったものが、2005 年には197万tにまで上昇している。これは134万tの純増加であり、2000年の3.13倍に相当 する。中国の鉛消費の驚異的な増加は急速な工業化と自動車・電力・通信などの業界が急 成長したことで起動電源とUPS電源の需要が倍に膨れ上がたことと、中国の鉛酸バッテリー の技術と価格が世界に評価され、輸出量が大幅に増加したことによる。
表3-11 1990~2005年中国の鉛名目消費量
単位:千t
輸入量 輸出量
生産量 精製鉛 鉛合金 鉛材料 酸化物 合計 精製鉛 鉛合金 鉛材料 酸化物 合計 鉛名目消費 1990 296.5 1.7 0.8 2.5 28.4 9.6 3.1 41.1 257.9
1991 319.7 0.1 1.2 1.3 8.5 7.4 1.1 17.0 304
1992 366 1.2 0.6 2.7 4.5 73.5 16.4 0.6 90.5 280.0 1993 411.9 1.7 0.5 1.9 4.1 83.9 6.8 2.8 93.5 322.5 1994 467.9 3.4 2.2 2.3 7.9 169.6 21.5 2.7 193.8 282.0 1995 607.9 3.0 1.4 3.6 8.0 160.8 24.5 3.1 188.4 427.5 1996 706.2 4.1 2.8 5.5 12.4 238.9 21.6 2.1 266.5 452.1 1997 707.5 7.0 7.0 4.4 18.4 178.2 19.7 1.7 199.6 526.3 1998 756.9 8.3 7.1 4.7 1.1 21.1 232.7 18.3 4.6 12.4 266.8 511.2 1999 918.4 6.9 8.9 5.8 0.3 21.9 441.8 26.6 1.6 14.9 483.4 456.9 2000 1,099.9 7.7 8.5 10.7 0.3 27.2 441.9 25.9 4.3 32.5 501.4 625.7 2001 1,171.6 12.1 16.7 6.4 0.4 35.6 438.1 31.5 3.7 29.1 499.5 707.7 2002 1,324.7 30.7 27.1 7 0.3 65.1 393.7 24.6 13 28.0 456.5 933.3 2003 1,562 25.0 33.2 8.6 0.9 67.6 435.7 17.66 3.6 35.6 489 1,140.6 2004 1,934 42.83 44.8 7.4 0.6 95.6 446.7 18.09 4.2 36.6 501.9 1,527.7 2005 2,391 35.8 22.9 5.9 0.4 65 455 10 4.9 19.6 487.5 1,968.5 *酸化物に含まれる鉛は90%で計算
3.4.2 鉛の一次消費
鉛は主に鉛バッテリーの製造に使われ、2005年はこの用途の鉛が鉛消費の約74%を占めて いる。応用範囲が最も広く、また使用量も最も多い化学電源としての主な消費分野は以下 の通り。①自動車と二輪車業界のスターターの電源、②交通・金融・通信業界などで使用 されるUPS電源と電動自転車の駆動電源、③照明や電動玩具などの業界で使用されるバッテ リー電源。また、鉛材料は電気デミスター・鉛間接冷却器・各種タンクのライニングなど、
化学工業の腐食防止用として広く使われている。④原子炉やX線写真など、放射線防護用で も鉛材料が広く使われている。⑤エレクトロニクス業界のブラウン管やガラスチューブの 製造でも酸化鉛を原料としている。なお、各種のバランスウエイト・漁業・ガラス・陶磁 器・ケーブル・プラスチックなどの業界でも鉛が広く使われている。我々の調査による2005 年の中国の鉛消費構造は表3-12の通り。
表3-12 中国の鉛消費構造
(%)
1985 1995 2005
バッテリー 43.8 53 74
ケーブル 18.7 11 0
鉛材料、合金 10 11 8.6
酸化物 14.7 16 11.8
鉛塩 4.3
その他 12.8 9 1.3
鉛バッテリー
この10年で自動車・通信・金融・交通・電力・電動自転車などの業界の急成長に支えら れ、鉛バッテリー業界が急成長を遂げている。1992年当時、約1,000万kVAhしかなかった全 国の鉛バッテリー生産量が、2005年には初歩的な統計でも8,000万kVAhを超えている。現在、
全国に鉛バッテリーメーカーが数千社あり、しかも大部分のメーカーが多機能電池を製造 しているので生産量の統計が難しくなっている。「天津化学物理電源協会」が2000年から規 模の比較的大きな企業を選んで統計をとっているが、同会の推定では、これら数社の生産 量が全国生産量の約1/4を占めるとしている。具体的な統計データは表3-13を参照。業界関 係者が定めた鉛の単位当たり消費の経験的データを使って鉛バッテリー業界の年間鉛消費 量が推定できるが、2005年は鉛バッテリー業界で約136万tの鉛が消費されたものと思われ る。
表3-13 2001~2005年鉛バッテリーの推定生産量
単位:万kVAh
企業 2001 2002 2003 2004 2005
保定金風帆蓄電池有限公司 266.65 306.55 351.8 468 582
天津統一企業有限公司 112 137.59 156.3 165 172
上海徳爾福国際蓄電池有限公司 110.8 147.2 184.2 232 270
湖北駱駝蓄電池公司 81.57 102.91 127.6 154 177
ハルビン光宇集団股份有限公司 75 95.14 76.5 104 124
泉州市華僑蓄電池廠 70 88.14
美美蓄電池有限公司 83.31 85 92 97
深圳市雄韜電源有限公司 74.31 80 97 106
安徽迅啓蓄電池有限公司 62.7 70.6
重慶万里蓄電池有限公司 62 69.40
楊州華揚蓄電池有限公司 50.931 88.13 108
瀋陽松下蓄電池有限公司(旧瀋陽東北蓄電池廠) 50.19 60.33
浙江天能電池有限公司 134 186
浙江超威電源有限公司 130 183
江蘇双登集団有限公司 124 178
小計 940.8 1,164.9 1,328.14 1,700 2,075
全国生産量予測 3,675 4,436 5,736 6,800 8,300
鉛消費量予測(万t) 59.9 72.3 93.5 110.9 136.3
*バッテリーの単位当たり鉛消費:16.3kg/kVAh
酸化鉛
酸化鉛(黄丹・光明丹)は鉛化合物の中でも応用範囲が最も広く、ガラスチューブ・ブ ラウン管・水晶ガラス・陶磁器・防腐塗料・塗料などの業界で広く使われている。国内産 酸化鉛は小規模メーカーで生産されているものがほとんどで、大手は数が少なく、現在、
江蘇天鵬化工集団公司の張家港酸化鉛廠の生産量(12万t)が最大である。2001~2005年の 推定生産量は表3-14(バッテリー工場用酸化鉛は含まれていない)に示す通りで、2005年 の酸化鉛業界の鉛金属消費量は約21万tであった。
表3-14 2001~2005年主要メーカー及び生産量の推計
単位:t
メーカー 2001 2002 2003 2004 2005
江蘇天鵬化工集団有限公司
(張家港酸化鉛廠) 80,000 80,000 100,000 110,000 120,000 南京丹陽暁星酸化鉛廠 5,000 6,000 10,000 10,000 11,000 豫光金鉛股份有限公司 4,000 5,000 6,000 8,000 10,000 安陽岷山有色金属公司 5,000 12,000 15,000 20,000 24,000 河北地区酸化鉛廠 30,000 40,000 40,000 45,000 50,000
その他 45,000 47,222 51,000 87,778 100,000
合計 169,000 190,222 222,000 280,778 310,000 含鉛量(平均90%で計算、単位:万t) 15.2 17.1 20 25.3 28
鉛合金と鉛材料
鉛合金には鉛アンチモン合金・鉛カルシウム合金・錫鉛合金など多くの種類があり、鉛 材料もまた鉛板・鉛管・鉛箔・鉛粉などと多品種である。鉛合金と鉛材料は腐食防止・放 射線防護・バランスウエイト・溶接材料などの分野で広く応用されている。例えば①化学
車・計器・ファン・漁業用のバランスウエイトなど、④電解亜鉛用陽極板・印刷用活字・
銃弾用鉛芯など、⑤溶接材料・ベアリング材料・バビットメタル・ヒューズ等に使われて いる。
関係のある業界が多岐にわたり、鉛合金と鉛材料だけを製造しているというメーカーも 少ないので、同業界については消費状況しか推計できない状況にある。
表3-15 2001~2005年主要メーカー及び生産量の推計
単位:t
メーカー 2001 2002 2003 2004 2005
湖北明洋有色公司 2,100 2,000 2,000 2,000 2,000
白銀西銅鉛材廠 20,000 22,000 22,000 23,000 23,000 瀋陽鑫冶合金製造有限公司 2,000 4,800 5,000 6,000 6,500 昆明大沢鉱冶設備有限公司 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000
瀋陽市新利興鋳造廠 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000
饒平県黄岡鎮永煌魚需鉛製品廠 1,600 1,500 2,000 1,800 1,800 広州路平防護器材有限公司 3,500 3,000 3,500 3,800 4,000
日森防輻射設備有限公司 2,000 1,500 1,800 1,500 1,500
蘭溪市駿寧特種材料廠 3,000 4,000 4,000 4,000 4,000
江蘇呉江市震沢金属型材廠 5,000 5,500 4,000 3,500 3,500 その他 98,800 101,200 102,200 112,400 116,700 合計 142,000 149,500 150,500 162,000 167,000 含鉛量(平均95%で計算) 135,000 142,000 143,000 154,000 159,000
鉛塩
鉛塩業界の主な製品は三塩基性硫酸鉛・塩基性亜リン酸鉛・ステアリン酸鉛などで、プ ラスチック業界で熱安定剤として使われている。プラスチック業界の発展に伴い、ここ数 年急成長を遂げている。また、鉛塩製品には硫酸鉛があり、顔料・塗料の触媒などに使わ れている。硝酸鉛は鉛塩・医薬・石炭化学染料・写真・浮遊選鉱・マッチ・花火などの製 造に使われている。これらのメーカーは分散しており、規模はいずれも小さく、生産量の 統計をとるのが難しく、推計しかできない状況にある。
表3-16 2001~2005年主要メーカー及び生産量の推計
単位:t
メーカー 2001 2002 2003 2004 2005
湘潭中成科技有限公司 3,000 3,100 3,000 3,200 3,400
天津市春義化工原料有限公司 2,000 2,100 2,100 2,200 2,400
上海威呈化工有限公司 3,000 3,000 3,000 3,000 3,000
温州天盛塑料助剤有限公司 4,000 4,100 4,300 5,000 5,800
粤東化学工業公司 7,000 7,200 7,500 8,000 8,500
江蘇欣龍集団靖江天龍化工廠 2,000 3,000 3,200 4,000 5,000 湖南省水口山宏興化工有限責任公司 2,000 2,000 1,800 2,000 2,200
その他 45,700 45,500 53,400 60,500 64,700
合計 68,700 70,000 78,300 87,900 95,000
含鉛量(平均83%で計算) 57,000 58,000 65,000 73,000 79,000
その他の業界
その他の業界とはケーブル加工用カバー・ガソリン添加剤・水道管ジョイントなどの業 界の鉛消費を指すが、大部分の業界で鉛はその毒性のため消費が規制されており、約2万t 超の消費量が推計できる。
表3-17 2001~2005年その他の分野の鉛消費量の推計
単位:万t 項目 2001 2002 2003 2004 2005
鉛消費 2 2 2 2 2
上記内容を総合し、安泰科では2005年の中国の鉛消費量は約191万tほどと推定している。
表3-18を参照。
表3-18 2001~2005年中国の鉛消費量の推計
単位:万t 業種 2001 2002 2003 2004 2005
鉛バッテリー 59.9 72.3 93.5 110.9 136.3
鉛塩 5.7 5.8 6.5 7.3 8
鉛合金及び鉛材料 13.5 14.2 14.3 15.4 15.9
酸化鉛 15.2 17.1 20 25.3 28
その他の製品 2 2 2 2 2
総計 96.3 111.4 136.3 160.9 190.6
3.4.3 中国の鉛最終消費
バッテリー業界(セグメント化)
上述のバッテリー業界の消費量についてセグメント化を行った。結果は表3-19を参照。
中でも鉛消費が最大の業界はやはり自動車業界で、2005年は推計約37万tが使用されたとさ れている。
表3-19 2001~2005年バッテリー業界の鉛消費量の推計
単位:t
業界 2001 2002 2003 2004 2005
自動車 22 24 28.1 32 36.5
その他の車両(二輪車は含まず) 5 6 8 8 10
電動自転車 0.9 2.3 5.6 11.2 21.2
二輪車 7 7.4 8.1 9.1 9.7
UPS電源 11 12 14 17 20
その他の電源 4.7 6.6 8.6 10.4 11.5
輸出 11 16 24 27 32
合計 61.6 74.3 96.4 114.7 140.9
自動車業界
自動車協会の統計では、2005年の中国の自動車生産台数は571万台であった。車両の種類 ごとに使用される鉛バッテリーの鉛消費状況をもとに、新車と保有自動車のバッテリー消 費について推計を行ってみたところ、2005年に中国で新たに製造された自動車は571万台、
そのうち乗用車は296万台で鉛を13.6万t必要としていたことが分かった。2005年、中国の 自動車保有台数は3,000万台を突破して3,160万台を数え、交換可能な鉛バッテリーの鉛消 費量は22.9万tであった。2001~2005年の中国自動車業界の鉛消費状況については表3-20を 参照。
表3-20 2001~2005年中国の自動車製造台数と保有台数
単位:万台 項目 2001 2002 2003 2004 2005
自動車製造台数 247 320 444 520 571
内訳:乗用車 75 110 202 226 296
その他 172 210 242 294 275
保有台数 1,802 2,053 2,439 2,742 3,160
鉛消費量(万t) 22 24 28.1 32 36.5
出典:中国自動車工業協会
その他のエンジン付車両(二輪車は含まず)
自動車以外に農業用車両・ホイール式トラクター・トレーラー・改装車・軍用車両など も鉛バッテリーの消費分野だが、これらの製造台数は統計が難しいため、これらついては 簡単な推計を行うのみとした。表3-21を参照。
表3-21 2001~2005年中国のその他のエンジン付車両の鉛消費量
単位:万台 項目 2001 2002 2003 2004 2005
電動自転車業界
調査によると、現在、中国の電動自転車及び関連部品のメーカーは既に3,000社を超え、
そのうち電動自転車製造許可証が交付されている企業数は1,200社あまりで、製造能力は 1,000万台近くあり、主に天津市・浙江省・江蘇省・上海市・山東省に分布している。年間 製造台数が10万台を超える企業が3~4社ある。電動自転車協会の統計によれば、2005年、
電動自転車の製造台数は1,211万台で初めて1,000万台を突破し、535.3万台の増産、前年同 期比79%増、全国で保有されている電動自転車台数は約2,320万台ということであった。2004 年5月1日からに実施されている「道路交通安全法」で電動自転車が非エンジン付車両と規 定され、また電動自転車の管理権限を各省に付与してからというもの、電動自動車市場に 火がついた。
専門家によって電動自転車1台当たりの鉛消費を9.6kg/台で計算された2001~2005年の 電動自転車の鉛消費量は表3-22を参照。2005年の鉛消費は約21.2万tであった。
表3-22 2001~2005年中国の電動自転車製造台数と保有台数
単位:万台 項目 2001 2002 2003 2004 2005
製造台数 59 158 400 676 1,211
保有台数 102 253 616 1,230 2,320
鉛消費量(万t) 0.9 2.3 5.6 11.2 21.2
出典:電動自動車協会
二輪車業界
全国の二輪車メーカー(完成車メーカーと基幹部品メーカーを含む)は約800社で、二輪 車製造の届出制度により完成車独立コード企業が108社、基幹部品メーカーは約700社を数 える。中国は1993年から2005年の10数年間、世界最大の二輪車生産大国の地位を維持して いる。「第10次5ヵ年計画」期の二輪車生産台数の平均年成長率は9.2%、生産販売率は100%
で、2005年には全国で合計1,776.72万台の二輪車が製造された。2005年は5社の生産台数が 100万台を超え、5社の合計生産台数は80万台を超えた。生産台数上位10社の長江・隆鑫・
嘉陵・建設股份・力帆・北方集団・銭江・宗申・軽騎・金城の産業集積度は、2000年の48.2%
から62.4%に上昇している。2005年の中国の二輪車保有台数は7,400万台前後になる。
二輪車1台当たりのバッテリーの鉛消費量を2kgとして計算した場合の2001~2005年の二 輪車生産台数及び鉛消費量は表3-23を参照。2005年の二輪車の鉛消費量は2004年比6.6%増 の9.7万tであった。
表3-23 2001~2005年中国の二輪車生産台数と保有台数
単位:万台 項目 2001 2002 2003 2004 2005 生産台数 1,237 1,300 1,450 1,720 1,777 保有台数 5,000 5,500 5,950 6,500 7,400
鉛消費量(万t) 7 7.4 8.1 9.1 9.7
UPS電源(無停電電険装置)
IT・金融・電気通信・政府機関・郵便/電信などの業界の急速な発展と、整備の進む法律 法規及び政策環境が、中国のUPS市場の発展を後押ししている。CCID(中国電子情報産業発 展研究院)の報告書によれば、2000年のUPS生産量はある意味ピークに達し、約120万台の 生産量を記録したが、2001年には世界的規模でUPSの販売量が底を打ち(推計110万台)、そ の後2002年にはある程度回復し、2005年の中国のUPS生産量は約200万台と推定されている。
製品としては3~10kVAhのものが主流だが、近年、大容量(50kVAh以上)電池の生産量も増 え始めている。表3-24を見ると、2005年の精製鉛消費量は約20万tになっている。