第3章 ニッケル
第二部 消費編
2.4 主なステンレス企業の技術と設備状況
太原鋼鉄(集団)有限公司(「太鋼」と略称)
は板材の製造を主とする超大型鉄鋼連合企業で、
中国最大のステンレスメーカーである。1999年 以降、太原鋼鉄(集団)有限公司はステンレス を主要製品とする構造調整を強力に推し進め、
50億元弱を投資してステンレスシステムの改造 及びステンレス薄板冷間圧延拡張プロジェクト という二つの国債プロジェクトを完工させてい る。2005年の鉄鋼生産量は539.10万t、実現売上 高は360.81億元、同年のステンレスの生産量は 92.55万tに達し、ステンレス八大企業としての 地位を維持している。
2004年末の時点で、ステンレスの生産能力はすでに製鋼100万t/年、冷間圧延薄板40万t/
年、熱間圧延ロール75万t/年、中厚板10万t/年、棒線材6万t/年、電気鋼冷間圧延ライン15 万t/年に達し、国際的にも成熟した技術である転炉によるステンレス精錬ライン及び世界 レベルの薄板冷間圧延ラインを国内で初めてを装備している。
また、2005年には40万tのステンレス冷間圧延ライン1本を新設し、それが稼動してから の太鋼のステンレス冷間圧延生産能力は90万t/年規模に達している。
2006年8月10日、太鋼の新設ステンレス鋼プロジェクト(150万t)は16か月と10日の建設 期間を経て、全工程の熱負荷生産が無事終了した。230mm×1,320mmの規格に合った連鋳 ビレットの生産に成功し、同プロジェクトは建設段階から生産段階に入りつつある。なお、
同プロジェクトでは、160t電気炉2基、AOD炉2基とシングルストランド連鋳機2ラインが新 設されている。また拡張計画では400万tの熱間帯鋼工場1か所が建設され、普通炭素鋼とス テンレスの両方の圧延ができるようになっている。
太鋼は
こうしたプロジェクトによって世界で最も競争力のあるステンレスメーカーになるという戦略的目標のための地歩
を 固めている。太鋼のステンレスの年産能力が300万tに達してからの年間売上高は500億元超 が見込まれている。図11 太原鋼鉄公司の新転炉による製錬現場
図12 太原鋼鉄公司の新ダブルストランド連鋳機によるビレット製造
また、2005年末には珪素鋼冷間圧延の拡張改造工事によって年産30万tの生産能力が形成 され、発電所1か所の建設計画もある。
2.4.2 宝山鋼鉄公司
● 宝山鋼鉄一廠
宝山鋼鉄股份有限公司ステンレス分公司は上海市宝山区に位置し、敷地面積は3.53km2で ある。主な設備は以下の通り。即ち、2,500m3と750m3の高炉が各1基、100tの電気炉、120t のステンレス転炉、120tの取鍋精錬炉、150tの脱燐脱炭素転炉各2基、シングルストの連鋳 機4台、1,780mmの帯鋼熱間圧延ユニット1セットである。設計生産能力は溶鋼340.6万t/年(そ のうちステンレス溶鋼150万t)、板ビレット連鋳328.9万t/年(そのうちステンレス板ビレッ ト144万t)、熱間圧延板ロール309.7万t/年(そのうちステンレス板ロール128.5万t)である。
詳細は以下の通り。
宝鋼一廠の精密ステンレス製品生産拠点は総投資117.8億元、2001年6月着工、2004年5月 9日に操業を開始、現時点での世界的先進プロセス設備を採用し、先進的な基準と操作技術 に基づく生産を行っている。同プロジェクトはステンレス鋼と炭素鋼の製鋼、連鋳ライン、
1,780mmの熱間圧延ラインで構成され、その主な設備には100t交流アーク炉1基、120tステン レス転炉1基、120t(VOD)精錬炉1基、150t脱燐脱炭素転炉2基、150t(LF)製錬炉1基、7台 精密圧延ユニット1セット、電気伝達や計装の自動制御システムと管理のためのコンピュータ システムがある。
一鋼の精密ステンレス製品生産拠点第一期工事の設計生産能力は以下の通り。即ち、
溶鋼265.6万t/年(そのうちステンレス溶鋼75万t/年、炭素鋼溶鋼の190.6万t/年)、連鋳板 ビレット256.9万t/年(そのうちステンレス板ビレット72万t/年、炭素鋼板ビレット184.9 万t/年)、熱間圧延板ロール239.9万t/年(そのうちステンレス板ロール58.7万t/年、炭素 鋼板ロール181.2万t/年)。これ以外にも年産40万t超の能力を有する冷間圧延ライン1本の 建設計画もあり、それが竣工した暁には中国第二のステンレス板材生産工場となる。
2005年6月28日、宝山鋼鉄ステンレス分公司の第二期拡張工事が竣工し、本格的な生産が 開始された。同工事は土木施工から熱負荷試運転が成功するまでに16か月近くを要したが、
契約工期より2か月前倒しで竣工している。同プロジェクトには100t電気炉、120t転炉、120t 精錬炉及び板ビレット連鋳機といった国内外の先進的な技術と設備が採用されている。同 プロジェクトの生産が開始されたことで、宝鋼ステンレス分公司の生産能力は年産150万t と倍増し、オーステナイト系・マルテンサイト系・フェライト系の各種ステンレス製品の 製造が可能になった。
● 上海五鋼有限公司
宝鋼グループ上海五鋼有限公司(「五鋼公司」と略称)は特殊鋼材の開発・製造・販売を 専門に行う精密特殊鋼材製品の生産拠点で、先進的なステンレス長尺材などのラインを有 する。現在、国際的にも先進的な技術設備とプロセスを採用し、主な製品には自動車用鋼・
ベアリング鋼・スプリング鋼、冷間成型鋼・合金鋼・快削鋼・ステンレス・金型鋼・高温 合金・チタン合金などの特殊鋼と特殊合金材料があり、宇宙・航空・海洋エンジニアリン グ・船舶・原子力発電・鉄道・自動車・機械・電子機器・石油化学工業などの分野で幅広 く応用され、一部の製品は東南アジア・南アジア・中東・米国・オーストラリア・ヨー ロッパなどの国際市場に輸出されている。
五鋼公司のステンレス長型材プロジェクトは2003年末から生産が開始され、総投資額は 16.9億元、炉外精錬や高鋼度圧延機などの一流の設備で構成されており、世界的にも最先 端をいくステンレス圧延ラインである。同ラインの年間生産量は鋼30万t、鋼材35万tで、
製品にはステンレス棒材、高速圧延機で製造した線材、ケーブルリール用鋼、ベアリング 鋼、スプリング鋼などの数十種類の高付加価値かつ品薄気味の特殊鋼製品がある。既存の ステンレス長尺材生産能力は年産15万tで、主なステンレス製品には棒材・ワイヤー材・帯 材・シームレスステンレス管があり、航空・宇宙・艦船・「三化(石油化学・化学肥料・化 学繊維)」用シームレスステンレス管の主なサプライヤーになっている。
● 寧波宝新股份公司
宝新公司は上海の宝山鋼鉄グループ公司と浙甬鋼鉄投資有限公司、日本の日新製鋼株式 会社、三井物産株式会社、阪和興業株式会社が1996年3月に合弁で設立し、中国側が66%(宝 山鋼鉄が54%、寧波市が12%)、日本側が34%(日新製鋼が20%、三井物産が7%、阪和興業が7%)
の株式をそれぞれ保有する、近代的な設備とプロセスを有する冷間圧延ステンレス薄板 メーカーである。2002年には1.4億元(日本円換算で20億円)の税引き前利益を実現してい る。
宝新公司の第一期工事は1998年12月に竣工し、生産を開始しているが、当時の冷間圧延 ステンレス薄板の生産能力は年間8万tであった。第二期工事は総投資額12.5億元で、2003 年3月に生産を開始し、生産能力は16万t/年に拡張された。また2004年には第三期工事が完 工し、現有生産能力は年産24万tに達している。なお、第三期工事では冷間圧延ライン1本、
研磨ライン1本、矯正ライン1本などの主要設備が新設されている。
さらに2005年9月には第四期工事が完工し、生産能力は年産60万tまで拡大され、世界最 大の冷間圧延ステンレス薄板の生産拠点になっている。第四期工事の総投資額は38億元(日 本円換算約545億円)とされているが、そのうち日新製鋼が3.1億元(日本円換算約45億円)
を投資することになっており、それにより日新製鋼の宝新公司における持分は従来の20%か ら22%に増えることになる。第四期工事で新設された主な設備には冷間圧延ライン4本、焼 戻し酸洗ライン2本、研磨ライン1本がある。
宝新公司の第四期工事竣工後の累計投資総額は1,060億円になったが、そのうち日新製鋼 が累計投資総額91億円を負担している。全ての工事完工後の敷地総面積は73.2万m2に達し、
従業員総数は1,000人になる。
宝新公司の主な製品は以下の通り。
・鋼種:SUS304、SUS430、SUS321、316L、SUH409Lなど
・表面:NO.1、2D、2B、HL、NO.3、NO.4、BA
・厚さ:0.3-3.0mm(BAは0.25~2.0mm)
・幅 :40-1,320mm
● 上海クルップステンレス有限公司
上海クルップステンレス有限公司(SKS)は、ティッセン・クルップ・ステンレス社と上 海浦東鋼鉄有限公司が1998年に上海浦東に合弁により設立したステンレスメーカーである。
持分比率はティッセン・クルップ・ステンレス社が60%、上海浦東鋼鉄グループが40%と なっている。
図13 SKSの製造工程図
①プロジェクトの紹介
上海クルップステンレス有限公司の建設計画は調整を経て、プロジェクト全体を三期に 分け、総投資額は118億元。詳細は以下の通り。
・第一期工事は冷間圧延の初期段階という位置づけで、冷間圧延磨き薄板ロール7.2万t/
年、2001年11月に生産開始。
・第二期は冷間圧延の拡大段階で、第一段階は2002年12月に着工。2号冷間圧延ユニット が2003年7月18日に、3号冷間圧延ユニットが2003年末にそれぞれ試験生産を開始。2004 年の春季に冷間圧延板ロール16.6万t/年の生産能力を完成。第二段階は2005年末に生 産開始。最終的な生産能力は冷間圧延板ロール26.8万t/年まで拡張。
・第三期は製鋼と熱間圧延の段階という位置づけで、年間、粗鋼50万t、熱間圧延板ロー ル44万tを生産。新製鋼所は元の工場所在地から約15kmの場所にあり、計画では 2007-2008年に生産開始となっている。熱間圧延工場はオーストリアのAndritz社が熱 間圧延焼鈍酸洗ラインを1本導入することになっている。