第2章 鉛・亜鉛
4.5 中国の亜鉛貿易
経済の高度成長、特に建築や自動車等の基幹産業及びインフラ工業の急速な発展に伴い、
中国では亜鉛の需要が急増している。しかも長い間地質関連業務を軽視して来たために、
鉱産物原料の供給が需要に全く追いつかない状況にある。その結果、中国の亜鉛市場は以 前の大量過剰から供給不足に転じ、輸入が急増している。一方、輸出は著しく減少し、2003 年から中国の亜鉛製品(亜鉛精鉱・酸化物・亜鉛スクラップ・純亜鉛・合金・亜鉛加工材)
貿易は輸入超過に転じているが、こうした局面が今後数年間は続くものと思われる。
4.5.1 輸入超過が増大傾向にある
ここ2年、中国の亜鉛製品の純輸入量が増加したことを受けて輸入額がだいぶ増大してい る。2003年には6,802万US$の輸入超過となり、2004年にはそれが4.4億US$まで拡大し、2005 年にはさらに増えて8.49億US$になった。
中国税関の統計によると、2005年の中国亜鉛製品の貿易輸出入総額は、2004年に比べて 3.1億US$増の15.35億US$に達し(25.63%増)、全有色金属輸出入総額(469億US$)の3.27%
を占めた。同年の亜鉛製品輸入額は11.9億US$で、2004年比43.2%増であった。一方、輸出 額は3.43億US$で、2004年比で11.9%減少した。輸入超過額は8.47億US$で2004年に比べ4.04 億US$増加した。
2006年1~10月の輸入総額は17億US$で前年同期比70.4%増であった。同期の輸出額は8.3 億US$で昨年同期比189.6%増、輸入超過額は8.7億US$であった。
表4-22 2000~2006年中国の亜鉛貿易額
単位:万$
2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年1~10月 輸出入額 96,709.1 86,471 73,662.1 108,830.5 122,214.2 153,532.4 253,580.6 輸入額 23,200.1 37,878.2 49,191.2 57,816.6 83,252.0 119,222.5 170,418.2 輸出額 73,439.3 61,575.6 49,276.2 51,013.9 38,962.2 34,309.9 83,162.4 輸出超過 50,239.2 23,697.4 85 -6,802.7 -44,289.8 -84,912.6 -87,255.8 出典:中国税関、安泰科
亜鉛製品のうち酸化亜鉛以外は全て純輸入になっている。税関の統計データが示すよう
の純輸入量は20.5万t、輸入超過額は2.42億US$、亜鉛材の純輸入量は4.58万t、輸入超過額 は5.65億US$であった。
図4-2 2005年中国の亜鉛製品の輸入額構成
図4-3 2005年中国の亜鉛製品輸出額の構成表4-23 中国の亜鉛製品の輸出入量
単位:万t金属量 輸入量 輸出量 純輸出量
亜鉛及び 合金
酸化
亜鉛 亜鉛材 亜鉛屑 合計 亜鉛及び
合金
酸化
亜鉛 亜鉛材 亜鉛屑 合計
2000 13.0 1.1 5.1 4.8 24.0 59.4 1.9 1.8 0.2 63.3 39.3 2001 14.1 1.1 4.7 3.5 23.4 56.2 2.0 1.3 0.2 59.7 36.3 2002 21.2 1.3 5.6 5.1 33.2 49.6 2.3 1.5 0.3 53.7 20.5 2003 31.1 1.4 6.3 6.8 45.6 48.4 3.3 1.5 0.2 53.4 7.8 2004 47.0 1.6 7.6 7.4 63.6 26.3 5.4 2.1 0 33.8 -29.8 2005 62.1 1.7 7.1 7.6 78.5 14.7 5.0 2.5 22.2 -56.3
4.5.2 亜鉛地金及び亜鉛合金の輸入における特別な地位
亜鉛地金は2004年、15年来で初めて純輸入に転じたのに引き続き、2005年も輸入量は増 え続け、純輸入量が拡大し続けた。中国税関の統計データが示すように、2005年の亜鉛地 金輸入量は39.2万tで同期比64%増であった。輸出量は12.3万tで同期比45.1%減であった。
その年の純輸入量は26.9万tに達し、2004年に比べ25.4万t増加した。2006年1~10月の亜鉛 地金の輸入量は267,950tで昨年同期比10.6%減であった。同期の亜鉛地金輸出量は198,486t で同期比83.4%増であった。2006年の年間純輸入量はわずか数万tで、2005年に比べ著しく 減少することが予測される。
図4-4 2000~2005年中国の亜鉛地金輸出総額
2005年に亜鉛地金の輸入量が突然増加した根本的要因は、国内の資源不足により供給が 逼迫し、国内市場のプレミアムが比較的高かったことによる。2006年、中国の亜鉛生産量 の増加スピードが加速したが、それは価格が高騰したことで需要がいくぶん減速し、8月か
-110000 -90000 -70000 -50000 -30000 -10000 10000 30000 50000 70000
2000 2001 2002 2003 2004 2005
万US$
-110 -100 -90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 70
万t
亜鉛地金の純輸出量 亜鉛製品の出超
亜鉛屑 及びその他 9%
亜鉛材 14%
酸化物 20%
亜鉛合金 9% 精製亜鉛 48%
亜鉛屑 及びその他5%
亜鉛精鉱 15%
亜 鉛 酸化物2% 9%
亜 鉛 合 23%
精製亜鉛 46%
ら国内市場の供給に比較的余裕ができ、国内価格が輸出価格を下回ったために、輸出の増 加を招き、輸入が減少したことによる。また、政府が輸出税の還付率を下げ続けたことも 亜鉛製品の輸出を抑制する結果になった。
中国は主にカザフスタン・オーストラリア・韓国から亜鉛地金を輸入しており、2005年 の輸入量はそれぞれ21.8万t、9.2万t、2.2万tに達し、2004年に比べそれぞれ52.1%、370.4%、
571.5%増であった。中国がカザフスタンから亜鉛地金を輸入するのはかなり以前から行わ れており、初期の頃に国境貿易によって有色金属を輸入していたので、政府は輸入関税や 増値税を半減するという優遇政策をとっていたが、2003年に国境貿易の優遇政策が廃止さ れてからも、カザフスタンからの輸入亜鉛地金の価格は他に比べ安くなっている。オース トラリアや韓国から亜鉛地金を大量に輸入しているのは、主にZinifexとKorea Zincが中国 での市場開拓を進めていることと関係がある。
表4-24 2000~2005年亜鉛地金及び合金の輸出入量
単位:t 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 輸入 19,499 18,513 68,443 114,767 239,451 392,221 亜鉛地金
輸出 574,570 541,913 472,769 431,949 224,165 123,253 輸入 110,475 122,646 143,275 174,500 219,876 228,595 亜鉛合金
輸出 18,766 20,108 23,218 33,203 38,984 23,592 出典:中国税関
中国の亜鉛合金の輸入はこれまで安定的に増えていたが、輸入亜鉛合金の90%以上は広東 地域の玩具や五金製品メーカーが海外に対して行っている「来料加工」で消費され、輸入 したダイカスト用亜鉛合金で玩具や工芸品、日用金属製品等を生産し、再度それを輸出す るということが行われている。2005年も中国の亜鉛合金の純輸入量は増加傾向を示し、2004 年の18.1万tから20.5万tに増加している。亜鉛合金は主にオーストラリアから輸入してお り、2005年には輸入量は12.2万tに達し、同期比17.46%増であった。台湾省から中国本土に 流入した亜鉛合金の数量も相当な数に上り、2005年には3.7万tで同期比5%増となっている。
表4-25 2005年の亜鉛地金及び合金の主要輸入先
単位:t
純亜鉛 亜鉛合金
国名 輸入量 同期比(%) 国名 輸入量 同期比(%)
カザフスタン 218,222 52.16 オーストラリア 121,904 17.46
オーストラリア 91,700 370.38 台湾省 37,353 5.02
韓国 22,381 571.51 ベルギー 11,521 24.85
北朝鮮 9,297 -73.29 韓国 10,888 66.52
ナミビア 8,922 - カナダ 10,112 -13.29
カナダ 7,721 119.82 タイ 4,884 -42.16
ペルー 6,692 - 日本 3,449 85.28
イラン 4,792 - 香港 3,380 -36.14
ベルギー 4,715 -16.19 ベトナム 3,171 370.71
スペイン 2,867 - イギリス 1,929 -13.36
全国総計 392,221 63.8 全国総計 228,595 3.97
出典:中国税関
4.5.3 高値により亜鉛精鉱の輸入が制限された
2001~2003年にかけて中国の亜鉛精鉱の輸入が年々増加したことで、世界的な精鉱の供 給不足を招き、価格が高騰したが、輸入価格が国内価格を大幅に上回ったために、国の亜 鉛精鉱の輸入量は2003年以降急速に減少した。
中国税関の統計データが示すように、2005年、中国は56.8万tの亜鉛精鉱(現物量)を輸 入したが、2004年比4.9万t減で、2004年は輸入が2003年比で12.95万t(現物量)減少した。
世界的に現物精鉱加工賃が上昇したことに伴い、2006年の輸入は若干回復基調になり、1~
10月の精鉱及び鉱石の累計輸入量は312,220t(現物量)で、2005年同期比34.5%増となって
表4-26 2000~2005年亜鉛原料の輸出入量
単位:t(現物量)
2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 輸入 77,942 652,856 784,673 745,580 616,074 567,752 亜鉛精鉱
輸出 138,891 13,366 3,515 0 0 0
輸入 47,784 35,395 51,041 67,521 73,780 76,484 亜鉛
スクラップ 輸出 2,098 1,865 2,588 1,615 350 390 出典:中国税関
輸入相手国別に見ると、中国の最も主要な精鉱輸入相手国はオーストラリアである。な お、周辺諸国からの輸入量は増加傾向を示しているが、欧米地域からの輸入量は明らかに 減少している。その理由としては海洋運輸コストが引き上げられたことと、中国が近隣の 周辺諸国、主にモンゴル・ベトナム・ミャンマーに合弁で鉱山プロジェクトを立ち上げた ことが挙げられる。また、中国と周辺諸国との国境貿易がますます盛んになっているが、
周辺諸国の製錬業は未発達であるが、資源は豊富にあるので、有色金属の価格上昇に伴い、
これらの国々と中国企業の間で国境貿易が行われていることも理由として考えられる。
表4-27 2005年亜鉛精鉱の主要輸入相手国
単位:t
名称 2005年 同期比 名称 2002年 同期比
総輸入価値 567,752 -7.84 総輸入価値 719,913 14.06 オーストラリア 197,089 -15.53 ペルー 153,768 24.63 ベトナム 86,457 37.78 オーストラリア 145,366 -6.13 ミャンマー 80,444 192.43 イラン 116,057 248.56
インド 61,566 -55.46 メキシコ 53,803 -9.03
イラン 34,859 -43.72 ベトナム 49,243 29.13
北朝鮮 30,426 89.08 ロシア連邦 40,374 133.75
モンゴル 19,740 - チリ 37,494 -
ペルー 18,256 -5.59 アメリカ 35,658 -40.91
カザフスタン 11,880 590.18 ボリビア 35,293 239.76
トルコ 8,455 -4.02 ミャンマー 33,134 33.79
出典:中国税関
4.5.4 亜鉛加工材の輸出入は安定している
表4-28 2000~2005年亜鉛加工材の輸出入量
単位:t 2000 2001 2002 2003年 2004年 2005年 輸入 51,329 46,705 56,057 63,236 75,789 70,827 輸出 17,551 13,181 14,677 15,168 21,083 24,994 出典:中国税関
中国の亜鉛製品貿易における亜鉛材の占める比重はそれほど大きくなく、輸入額の9%、
輸出額の14%を占めるにすぎない。2005年の亜鉛材輸入量は若干減少したが、輸出量は小幅 な増加を続け、輸入量は7.1万t、輸出量は2.5万t、純輸出量は4.6万tで、2004年比9,000t 減少した。2006年1~10月の亜鉛加工材の輸入量は62,429tで前年同期比9.9%増となってい る。また、輸出量は26,632tで前年同期比33.6%増であった。
中国政府は貿易政策として、徐々に高汚染、高エネルギー消費、エネルギー資源型製品 の輸出を制限しようとしているが、その狙いは資源の節約、省エネ、消費量の減少にある。
亜鉛は資源型製品と考えられており、亜鉛及び亜鉛合金の輸出税還付率はWTO加盟後徐々に 下がり始めている。2003年10月、亜鉛及び亜鉛合金の輸出税還付率は以前の15%から11%に 低減され、2005年5月1日からはさらに下がって8%になった。2006年1月1日には全ての亜鉛 地金の輸出税還付率が5%に低減された。また、2006年5月1日からは≧99.99%の亜鉛地金の 輸出税還付率は5%のままだが、その他の亜鉛地金や亜鉛合金の還付が廃止されている。
表4-29 2006年5月1日以降の輸出税還付率
徴税規則番号 製品名 還付税率%
7901119000 その他の亜鉛含有量≥99.99%の未鍛造・未圧延亜鉛(亜鉛含有量は<99.995%) 5 79011190 亜鉛含有量99.99%以上、且つ99.995%以下の未鍛造・未圧延亜鉛 0
79011200 亜鉛含有量<99.99%の未鍛造・未圧延亜鉛 0
79012000 未鍛造・未圧延亜鉛合金 0
79020000 亜鉛スクラップ 0
79031000 亜鉛粉末 0
79039000 亜鉛粉及び粒状粉末 0
79040000 亜鉛及び亜鉛合金棒/バー/型材/ワイヤー 8
79050000 亜鉛板/片/ベルト/箔 8
現在、亜鉛及び亜鉛合金についてはまだ3%の輸入関税を徴収しているが、将来的には廃 止されることになるだろう。
短期的には、中国の需要は引き続き急増を続け、国内原料の不足が続くものと思われる ので、亜鉛製品は輸入に頼らざるを得なくなる。どのくらい輸入するか、何を輸入するか については、市場価格と需要状況によって決められることになる。中国の亜鉛輸出は現在 減少傾向にあるが、こうした状況にも変化が生じる可能性がある。万一、国際市場で精鉱 が供給過剰となり、精鉱の輸入価格が引き合えば、「来料加工」或いは通常貿易による亜鉛 地金の輸出が可能になる。
4.6 中国の亜鉛市場の需給バランスの予測
主要製錬所の当面の発展計画をベースに計算すると、2010年の中国の亜鉛生産能力は490 万t(表4-6)超になると推測されている。これは2005年比で正味約100万tの増加となる。
上述の今後数年間の生産能力予測によると、中国の亜鉛生産能力は同期の国内消費需要を 満足させることができる計算になるが、実際の生産量については原料の供給状況如何にか かっている。国内鉱業への投資が増大しているので、今後数年間のうちに国内の亜鉛精鉱 の生産は徐々に好転していくものと思われる。
2007年~2008年にかけて西側の新設鉱山プロジェクトもかなり多く、精鉱の供給が好転 することが見込まれているので、中国が輸入を増やすための条件が整い、亜鉛の生産量は 今後も急成長を続けることが予想される。但し、消費と比較すると、国内生産量はまだ国 内消費を満足させるまでにはなっておらず、毎年ある程度の亜鉛精鉱・精製亜鉛・亜鉛合 金または亜鉛材を輸入する必要がある。
表4-30 中国亜鉛市場の需給予測
単位:万t 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 亜鉛生産量 277.6 312.0 357.0 399 424 460 亜鉛消費量 312.5 348.4 385.2 414.2 438.6 472.7 需給バランス -34.9 -36.4 -28.2 -25.2 -14.6 -12.7