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二国間援助機関

ドキュメント内 424_カンボジア本文.PDF (ページ 84-87)

第 3 章 貧困削減に向けた国際協力

3.2. 貧困削減に向けた取り組み

3.2.2 二国間援助機関

国連グループの中では、特に

UNDP

が中核的な役割を果たしており、貧困削減に関わる活 動も多い。UNDP のこれまでの貧困削減に関わる主な事業には、(i)Banteay Meanchey、

Battambang

、Pursat、

Siem Reap、 Ratanakiri

における農村開発(

CARERE: Cambodian Resettlement and Regeneration Project

)、(ii)

CMAC

に対する運営指導および財政支援、(iii) 国勢調査やカンボジア人間開発報告書(2000)の作成、(iv)

ADB、WB

などとの貧困プロ ファイルの作成、(v)SIDA との共同実施による貧困モニタリング・分析能力の強化など の支援があげられる。政府のガバナンス能力向上にも、大きな貢献をしている。

前述した

CARERE、は帰還難民や国内避難民を対象とした定住支援を行うプログラムで

あった。しかし、カンボジアの政情が落ち着くにしたがい緊急援助の意味合いが薄れてき たことから、

1996

年以降、貧困削減と能力開発を目標とした地方農村のガバナンス強化プ ログラムとして実施され、カンボジア政府の

Seila

プログラムの支援も行っている83。 また、UNDP に対して日本政府が拠出している人づくり基金(JHRDF: Japanese Human

Resources Development Fund)を用いて、ASEAN

諸国(インドネシア、マレーシア、フィ リピン、タイ)および

JICA

が、カンボジア難民再定住・農村開発プロジェクトを実施し ている84。同プロジェクトは、帰還難民を中心とする社会的な弱者の貧困削減を目的とし て

1992

年から開始されたプロジェクトで、プノンペン近郊の

Kampong Speu、Takeo

の農 村を対象に

JICA

の専門家および青年海外協力隊員と

ASEAN

諸国から専門家の派遣85をと おした農業、所得向上、教育、公衆衛生の分野を組み合わせた支援を行っている。

この他に、UNDPは

ILO(International Labour Organization

)と共同で、カンボジア最大の マイクロファイナンス機関である

ACLEDA(Association of Cambodian Local Economic Development Agencies)の創設と運営を支援している。

国連グループは保健分野も重視しており、UNICEF、WHO、WFP、

UNAIDS

、UNFPA など 国連諸機関が連携して

EPI、ポリオ撲滅、母子保健、結核対策、HIV/AIDS

などに対する支 援を行っている。

・ グッド・ガバナンス

・ 経済振興のための環境整備

・ 経済・社会インフラの整備

・ 保健医療の充実

・ 教育の充実

・ 農業・農村開発

・ 地雷除去・障害者支援

・ 環境資源管理

貧困削減の観点からは、「農業・農村開発」が重要な分野である。また、第

1

章でも述べた とおり、地雷が四肢切断の被害や可耕地を制限する要因となっていることから、カンボジ ア特有の問題として「地雷除去・障害者支援」も特定貧困グループを支援する効果が高い と考えられる。

JICA

では、無償資金協力と技術協力のスキームを組み合わせ、これらの分 野に対する支援を実施している。

農業・農村開発分野のプロジェクトには、プノンペン市周辺農村地域総合開発計画、メコ ン河環境適応型農業開発計画、スラコウ川流域農業生産基盤復興開発計画などがあげられ る。また、

UNDP

の項で述べたカンボジア難民再定住・農村開発プロジェクトにおいても、

ASEAN

諸国の専門家と共同で技術協力を実施している。

過去の

JICA

の活動は、治安上の問題からプノンペンとその近郊に限定されてきた。しか し、同国の貧困が地方農村部に集中していることを考慮すると、貧困削減を目的とするプ ロジェクトを実施していくためには、地方における活動の展開がこれからの課題となると 考えられる。

(2)

米国国際開発庁(USAID)

前述したが、USAID はアメリカ政府がカンボジアを民主的な国とみなしていないため、

NGO

などをとおした援助を実施している。USAIDの

Results Review and Resource Request

によると、

USAID

のカンボジア支援方針は下記のように

2

つの戦略目標と

3

つの特別目標 にまとめることができる87

表 3-7  USAIDのカンボジア支援方針

(戦略目標) (特別目標)

(i)民主的手続の強化と人権尊重

(ii)妊婦および児童の健康改善

(i) 地雷および戦争被害者への支援強化

(ii) STI/HIV感染リスクの高い層の感染率低下

(iii) 持続性の高い金融サービスの提供

87 USAID/Cambodia. (2000). Results and Resource Request Review

USAID

は、表

3-7

に挙げたそれぞれの目標実現に向けて、各種のプログラムを実施してい る。まず、特別目標の「地雷および戦争被害者の支援強化」では、四肢切断者に対して、

義足やリハビリおよびその後の職業訓練の機会を提供するプログラムを実施している。こ のプログラムは、戦争・地雷による障害者のうち貧困層のみを対象としたものにはなって いないが、第

1

章でも触れた通り、カンボジアにおいて戦争・地雷による障害者を世帯主 とする世帯の貧困者比率が高いことを踏まえると、貧困削減との関連性が高いものである と考えられる。

また、「持続性の高い金融サービスの提供」に関しては、UNDP などと連携で前述した

ACLEDA

の組織能力強化による零細企業振興を支援している88

この他、「STI/HIV感染リスクの高い層の感染率低下」に関しては、風俗産業やビールの販 促に従事する

STI/HIV感染リスクが高い層を対象とした予防プログラムを実施している

89。 カンボジアにおける

USAID

HIV/AIDS

対策は、大きな貢献をしている90

(3)

オーストラリア国際開発庁(AusAID)

AusAID(Australia Agency for International Development)の主な協力分野は農業、保健、教

育、グッドガバナンス、地雷撤去、人道・緊急援助などである。貧困削減と密接に関係す る分野は、農業、保健、地雷除去などがあげられる。

農業分野では、米の生産性向上を目指す

Cambodia IRRI (International Rice Research Institute) Australia Project

が、1987年以降

10

年以上継続して実施された。本プロジェクトは、カン ボジアの農民により生産性の高い技術と病害虫対策のノウハウを普及させることにより貧 困削減を図るものである。

保健分野では、地方レベルの医療サービスへのアクセスを向上させるためにコンポンチャ ム(Kompong Cham)におけるプライマリー・ヘルスケア分野の人材育成などのプロジェ クトに取り組んでいる。

また、オーストラリアは

CMAC(Cambodian Mine Action Centre)の最大のドナーとして、

地雷除去および関連技術の提供を行っている。

(4)

ドイツ技術協力公社(GTZ)

1997

7

月の武力衝突を契機に対カンボジア協力を中断したが、

1999

年に入り援助を再開 した。ドイツの重点協力分野は、(a)民間セクターの強化を含めた改革支援、(b)自然資源の 保護と持続的利用および農村インフラの改善を含む地方開発、

(c)教育・保健を中心とする

人的資源開発の

3

分野である。また、他のドナーに先駆け、CVAP (Cambodia Veterans

Assistance Program)の除隊兵士受入に係るパイロット・プロジェクトを開始している。

(5)

スウェーデン国際開発庁(

SIDA

SIDA

の援助は、CARERE、CMAC支援、貧困モニタリング、

ACLEIDA

支援といった分野 で実施されており、その内容から

UNDP

と密接に連携した活動が展開されている。

88 2001年以降は、特別目標「地雷および戦争被害者への支援強化」に統合される予定である。

89 USAIDのパートナーには、Family Health InternationalKhmer HIV/AIDS NGO Allianceなどが挙げられる。

90 USAIDによると、USAIDの配布するコンドーム「Number One」は、カンボジア国内で最も認知されている

ブランドである。1999年においては、約1200万個配布された。

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