第四章 . リザーバ内蔵型ループヒートパイプの軌道上実験
4.2 軌道上実験の実験装置
軌道上実験に供したリザーバ内蔵型ループヒートパイプを利用した展開型ラジエー タ(DPR, Deployable Radiator)実験装置の概念図を図
4.2.1
に示す.実験装置は主に衛 星内に設けられたベースパネルと軌道上で展開するラジエータパネルの2
枚のハニカ ムパネルおよびベースパネルからラジエータパネルに熱を輸送するためのリザーバ内 蔵型ループヒートパイプから構成される.DPR に用いたリザーバ内蔵型ループヒート パイプの主要緒元を表4.2.1
に示す.アルミ製蒸発器は円筒形状を有するステンレス製 多孔質金属からなるウィック(空孔径:約1um)を内包し,蒸気管,液管で凝縮器配管
と連結されている.蒸発器はベースパネルに断熱支持材を介して設置され,凝縮器配管 はラジエータパネル内に埋め込まれている.熱輸送管(蒸気管および液管)の途中には 可撓性を持たせるためにフレキシブル配管が採用されている.ラジエータパネル表面に は,太陽光による入熱を阻止しつつ宇宙空間への輻射排熱を促進するために太陽光吸収 率が小さく全半球放射率が大きい熱制御材であるOSR(Optical Solar Reflector)が貼
られている.一方,裏面は断熱のため,多層断熱材(MLI:Multi-Layer Insulation)で覆われている.蒸発器内の円筒型ウィックの中央部は液溜め機能を担うリザーバとな っており,液管から流入した作動流体の液がベイオネット管を通った後に溜め込まれ,
再びウィックに浸透する構造となっている.展開型ラジエータにおける熱輸送,放熱動 作は次のように行われる.衛星内に配置された蒸発器に搭載機器による熱(軌道上実験 では蒸発器表面に貼り付けたヒータにより機器発熱を模擬したジュール発熱)が加えら れると,ウィック外表面から作動流体のアンモニアの蒸気が発生し,蒸気管を通って凝 縮器に輸送される.輸送された蒸気は,ラジエータパネルに埋め込まれた凝縮器内で放 熱により凝縮し,過冷却液として蒸発器へ戻る.このような作動流体の相変化を伴う流 動により衛星内の熱が宇宙空間へ放熱される.展開型ラジエータ実験装置単体の写真を
図
4.2.2,技術試験衛星Ⅷ型に搭載された状態の写真を図 4.2.3
に示す.46
Figure 4.2.1 Schematic of LHP-based deployable radiator
Table 4.2.1 Major specifications of LHP for DPR
HEAT
Reservoir
Bayonet tube
Wick Vapor line
Condenser Evaporator
Flexible line
Flexible line
Radiator panel
Liquid line
RADIATION Satellite inside
Evaporator material: Aluminum O.D.:39.5mm, L=1m
Wick material:SUS
pore radius:1.1um,Porosity: 40%
Vapor Line material: SUS I.D.: 4mm,L=3m Condenser material: Aluminum
I.D.: 4.5mm,L=5.5m Liquid Line material: SUS
I.D.: 2mm,L=3m
Working Fluid Pure Ammonia
47
Figure 4.2.2 Deployable Radiator Experimental Apparatus (DPR)
Figure 4.2.3 DPR onboard ETS-Ⅷ
48
蒸発器,蒸気管,液管は衛星構体内にて断熱スペーサ,
MLI
等を用いて断熱配置されて いる.また,ラジエータパネルの裏面は多層断熱材で断熱されているため,展開型ラジ エータへの外部環境からの熱入力は主としてラジエータパネル表面の放熱面に入射す る太陽光による熱入力である.展開型ラジエータが曝される静止軌道上の外部熱環境に ついて述べる.ラジエータパネルへの太陽からの熱入力Q
SOLは,衛星が24
時間かけて 静止軌道上軌道を1
周回する際に時間に対して変化する.また,年間を通じて季節によ り変化する.各季節における展開型ラジエータと太陽方向の相対位置の変化を図4.2.4
に,衛星が1
日24
時間かけて地球周回する際の展開型ラジエータと太陽の位置関係を図
4.2.5
に示す.まず季節変動については,春秋分において太陽光はラジエータパネルにほぼ平行な方向から入射するため放熱面表面への太陽光の直接入射はほとんど無い.
これに対し夏至においては太陽光が入射する角度が一番大きくなり,年間で最大の熱入 力がある.図
4.2.6
に年間を通しての放熱面表面への熱入力Q
SOL[W]の計算値を示す.
ここでは,ラジエータパネルの放熱面積
A (=0.62m
2),太陽光吸収率 α [-],太陽放射エ
ネルギIs [W/m
2],放熱面への太陽光入射角 θ [deg]を用い,
= sin (4.2.1)
から求めた.
Is
は季節変動も考慮し,θ は季節によって-23.4°~+23.4°の範囲で変 化し,夏至において23.4°,冬至において-23.4°の値をとる.なお,放熱面の表面に
はOSR
が貼られているが,OSR
の熱光学特性は軌道上で遭遇する放射線等の影響によ り劣化してその値が大きくなる傾向にあることが知られており,ここでは打ち上げ直後 の を0.11,3
年後を0.18,10
年後を0.23
とした場合について示した.打ち上げ直後 は夏至において放熱面へ37W
の熱入力がある.なお,OSR
の赤外輻射率εの値は0.8
程度であるため,放熱面表面にOSR
を貼ることで太陽光による入熱を可能な限り阻止 しつつ輻射による放熱を促進することができる.次に軌道上熱入力の1
日の時間変化は,図
4.2.5
のように衛星の地球周回に伴い,24
時間単位で生じる.なお,春秋分では24
時(JST:Japan standard time)には地球の影となるため,太陽光の直接入力は無 い.49
Figure 4.2.4 Seasonal variation of solar heat input on orbit
Figure 4.2.5 Diel variation of solar heat input on orbit
Figure 4.2.6 Change in solar heat input to radiator for seasons
50
ドキュメント内
ループヒートパイプの熱輸送特性に関する研究
(ページ 51-56)