第六章 . リザーバ外付け型ループヒートパイプの地上実験
6.2 地上実験モデルの設計検討
6.2.3 セカンダリウィックの検討
セカンダリウィックの役割は,蒸発器に印加した熱量のうち,プライマリウィックを 通過して蒸発器中心部まで侵入した熱(熱リーク)により蒸発する液をリザーバから補 給することである.一般的に蒸発器への印加熱量に対する熱リーク量の割合はそれほど 大きくないが,本検討では最大の値として,蒸発器に印加した熱量(要求仕様は
100W)
が全て蒸発器中心部に熱リークとして侵入した場合を前提として, 蒸発器が水平状態 の条件下において,リザーバからプライマリウィックへ
100W
分の液輸送が可能とな るように設計を実施する.セカンダリウィック液浸透モデルを図
6.2.5
に示す.リザーバから浸透した液は軸方 向に浸透し,さらに径方向へ浸透することでプライマリウィックへ液を供給する.Figure 6.2.5 Simplified model of secondary wick
セカンダリウィックへの液浸透モデルにおいてウィックの透過率は次式で計算され る.
SW SW
w
PA
K mL
(6.2.7)ここで,
m
は流体質量流量[kg/s],L
SW はセカンダリウィック軸方向長さ[m],ν
は 作動流体の動粘度[cm2/s], ΔP
は圧力損失[Pa],A
SW はセカンダリウィック透過面積[m
2]である.
式(6.2.7)より,液がウィックを浸透するときの圧力損失は次式で求めることができる.
w SW
SW
K A
P mL
(6.2.8)89
セカンダリウィックに繊維状ウィックを用いる場合,
Blake–Kozeny
の式(式(6.2.9)),および
Tien
の式(式(6.2.10)),2 2
1 122
s w
K d
(6.2.9)w s
d K
d 32
(6.2.10)
を使用することで,ウィック素線直径
ds [m],気孔直径 d [m],空隙率 ε [‐]
から圧 力損失を求めることができる.セカンダリウィックが動作するためには液浸透の駆動力となる毛細管力が,液が浸透 する際の圧力損失よりも大きいことを示す次式を満たす必要がある.
) 2 (
2
P
capd
(6.2.11)前述の通り,セカンダリウィックが
100W
分の熱輸送が可能となるよう設計の前提 とするため,蒸発器に印加した100W
の熱量が全てプライマリウィック経由で蒸発器 中心部まで侵入するという条件で検討を行った.まず,セカンダリウィックを浸透する液の質量流量
M
を蒸発器への熱負荷と作動流 体(アンモニア)の蒸発潜熱(アンモニアの物性値は温度依存性を考慮)から求め,それを式(6.2.8)に代入して液がセカンダリウィックを浸透するときの圧力損失を求め る.次に式(6.2.11)の右辺に示す式より発生毛細管力を算出して,両者の比較した.セ カンダリウィックの材料としてはステンレス製のフェルト,繊維シート,金網等を候 補として検討を行ったが,ここでは表
6.2.3
に示す3
種類の金網について検討した結 果を示す.Table 6.2.3 Property of stainless steel mesh for secondary wick
素線直径 ds [μm] 空隙率 気孔直径 d [μm] 透過率 Kw [m2]
金網 80MESH(平織) 0.120 0.676 0.248 3.473E-16
金網 150MESH(平織) 0.060 0.699 0.131 1.112E-16
金網 200MESH(平織) 0.050 0.660 0.100 5.096E-17
90
各金網を使用した場合の毛細管力と圧力損失の関係の温度依存性を図
6.2.6,図 6.2.7,
図
6.2.8
に示す.ここで,セカンダリウィックの長さをL
SW=0.1m,セカンダリウィッ
ク外径を
D
SWo=4.7mm,セカンダリウィック内径を D
SWi=1.6mm
と仮定した.また,蒸発器およびリザーバを水平に設置した場合を想定しており,作動流体がセカンダリウ ィック内を軸方向に浸透する際の重力の影響は考慮していない.なお,表
6.2.3
に示す 特性のうち空隙率および気孔直径は製品のカタログ値であるが,素線直径および透過率 については式(6.2.9)および式(6.2.10)により求めた値である.Figure 6.2.6 Comparison between capillary pressure and pressure drop (SUS #80MESH)
Figure 6.2.7 Comparison between capillary pressure and pressure drop
(SUS #150MESH)
91
Figure 6.2.8 Comparison between capillary pressure and pressure drop (SUS #200MESH)
図
6.2.6
に示す通り,80MESHを使用した場合,想定される温度範囲内において圧力損失が毛細管力よりも大きくなっており,式(6.2.11)に示す動作条件を満たすことがで きない.一方,図
6.2.7
および図6.2.8
に示す通り,150MESH,200MESHを使用し た場合は,全ての温度において動作条件を満たしている.以上の検討より,150MESH,200MESH のいずれの
SUS
金網もセカンダリウィッ クとして使用可能であることが確認できたが,選定にあたってはLHP
全体の圧力損失 に及ぼす影響やプライマリウィックやリザーバ内への実装性を考慮する必要がある.ま ず,LHP 全体の圧力損失に及ぼす影響については,200MESH 使用時の圧力損失は150MESH
使用時に比べて2
倍以上大きな値となっており(図6.2.7
や図6.2.8
では確 認できないが,一例として275K
における圧力損失は1.22×10
9Pa(150MESH
使用 時),2.67×109Pa(200MESH
使用時)と2.18
倍となっている),LHP全体の圧力損 失に及ぼす影響が大きいため,実装性等の他の条件を満たすのであれば150MESH
を 採用するのが良い.次に実装性については,検討の結果,SUS
金網を何層にも巻きつけ て挿入する方法を採用した.多層金網の採用にあたり,表6.2.3
に示す単層のSUS
金 網の特性値を多層にした場合にもそのまま適用できるか疑問があったため先行研究を 参考にした.論文[64-68]から以下に示す知見が得られた.‐多層金網ウィックの気孔半径は単相金網の値とほぼ等しい
‐巻きつける力が弱いほど浸透率は大きくなる
‐金網を
4
層以上重ねても浸透率向上の効果はほとんど見られない92
以上の知見から,金網を何層にも重ねて使用する場合には浸透率を一定値として問題な いと考えた.実際のプライマリウィックへの実装性評価を行った結果,