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ループヒートパイプの適用アプリケーション(宇宙用途)

第七章 . ループヒートパイプの今後の研究課題と宇宙排熱システムの将来展望

7.1 ループヒートパイプの適用アプリケーション(宇宙用途)

7.1.1

衛星搭載機器の高密度実装による衛星構体の小型化

現在,衛星熱設計の主流になっているラジエータパネルにヒートパイプ埋め込みハニ カムパネルを使用した熱制御方式は,高発熱機器をヒートパイプパネルに集中して搭載 することにより放熱面温度を高め,ヒートパイプによりフィン効率を高めることにより 高効率な排熱を実現したシステムである.しかし,前述の通り,ヒートパイプは熱輸送 特性が重力の影響を受けるため,衛星への適用にあたっては地上試験時の動作を考慮し て配置しなければならず複雑なレイアウトは困難である.また,ヒートパイプはリジッ ドな金属容器で構成されるため,インテグレーション時の作業性を考慮すると,衛星内 部パネルとラジエータパネル間の熱輸送に使用するのは簡単ではない.よって,排熱の 観点から高発熱機器を内部パネルに搭載することは難しく,ラジエータパネルに搭載せ ざるを得ず,衛星構体の大型化を招いている.このような状況を踏まえ,LHP の適用 による衛星構体の小型化を提案する.イメージ図を図

7.1.1

に示す.

LHP

の蒸発器を衛 星内部パネルに,凝縮器をラジエータパネルに配置し,蒸発器・凝縮器間はスムース管 もしくはフレキシブル管で接続する.内部パネルに搭載された高発熱機器の発熱は

LHP

蒸発器で吸熱され,

LHP

凝縮器まで輸送される.ラジエータにおいて,

LHP

凝縮 器と連結されたヒートパイプによりラジエータ面内に拡散され放熱面表面から宇宙空 間に輻射にて放熱される.これにより,ヒートパイプのみを使用した熱制御システムで は実現できなかった高発熱機器の内部パネルへの搭載が可能となり,ラジエータパネル を小型化することができ,放熱面積が不足する場合には展開型ラジエータを軌道上で展 開することにより放熱面積を確保する.これにより,衛星構体の小型化が実現できる.

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Figure 7.1.1 High-density packaging of satellite utilizing LHP

7.1.2 展開型ラジエータによる衛星の大電力化対応

近年,衛星の技術動向としては①コンステレーションを想定した衛星の小型化と②衛 星の大型・大電力化の

2

つの流れがある.①に関しては小型の衛星構体に必要な機器を 搭載する必要があるため放熱面パネル以外の内部パネルにも機器を搭載するなど機器 を高密度実装せざるを得ず排熱が課題となるが

7.1.1

節で提案したような方策により対 応が可能と考えられる.一方,衛星の大電力化については簡単に対応することは難しい.

衛星の大電力化に伴い搭載される機器の数は増加するとともに,機器の発熱量も大きく なってくる.現行の大型通信衛星では発生電力は約

10kW

であり,そのうち約半分の

5kW

を排熱しているが,発生電力が約

25kW~30kW

の衛星の開発が始められようと しており,その衛星では

10kW

を超える熱量を排熱しないといけないと想定される.衛 星の温度を所定の温度に収めるためには不必要な熱を宇宙空間に排熱する必要がある が,宇宙機の排熱は衛星の外表面に設けられた放熱面から輻射により排熱するしかなく,

排熱可能量は

1.1

節で述べた通り,放熱面の温度および面積により決定される.排熱能 力を高めるためには放熱面温度を高くすることと広い放熱面積を確保することの

2

つ しか取りうる方法がないが,放熱面の温度は放熱面パネル上に搭載される機器の許容温 度にマージンを考慮した温度以上に上げることはできない.また放熱面積についても打 ち上げ時にロケットのフェアリング内に収納できるように設計される衛星の大きさを 徒に大きくすることはできず制約があり,衛星の放熱能力には限界がある.しかし放熱 能力の限界を取り除く方法として

LHP

を使用した展開型ラジエータが考えられる.展 開型ラジエータは

4.1

節で述べた通り,打ち上げ時には収納しておき,打ち上げ後に軌 道上で放熱面パネルを展開することにより放熱能力の拡大を行うものである.展開型ラ

119

ジエータの排熱能力を高めるためには衛星構体から展開型ラジエータまで熱を輸送す る際の温度降下を小さくして展開型ラジエータの放熱面温度を高くする必要があるが,

それを実現できるのは作動流体の潜熱を利用した熱輸送デバイスしかない.また,展開 するためには当該熱輸送デバイスは展開挙動に対応できるよう可撓性を有している必 要があるが,LHP は熱輸送管にフレキシブル管を採用できるため対応が可能である.

7.1.2

LHP

を用いた展開型ラジエータを軌道上で展開した状態のイメージ図を示

す.LHP の蒸発器は衛星構体の放熱面に取り付けられる.衛星構体の放熱面は面内の 等温化を目的として従来型ヒートパイプが縦横に配置されているが,LHP 蒸発器は衛 星の機軸方向に配置されているヘッダヒートパイプと接触熱抵抗を低減するよう工夫 した形で熱的に結合する.LHP 凝縮器は展開型ラジエータパネルに埋め込む,もしく は外付けで配置する.必要に応じてラジエータパネルのフィン効率向上のために従来型 ヒートパイプを併用する.LHP 蒸発器と展開型ラジエータパネル内の

LHP

凝縮器は 熱輸送管(蒸気管および液管)で結合されるが,上述の通り,展開動作に対応するため にフレキシブル管を採用する,もしくは配管をコイリングさせてコイルばねのような形 態にして可撓性を持たせる.展開型ラジエータの収納場所,展開方向,サイズ等は衛星 のインテグレーション,地上での設計検証試験,軌道上における他の構造体の干渉や電 波のビームラインとの干渉などを考慮して慎重に設計を行う必要があるが,LHP を用 いた展開型ラジエータの実現により衛星の排熱能力を飛躍的に向上することができ,衛 星の大電力化に対応することができる.

Figure 7.1.2 LHP-based deployable radiator for satellite

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