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第七章の結論

第七章 . ループヒートパイプの今後の研究課題と宇宙排熱システムの将来展望

7.4 第七章の結論

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第八章

.

結論

本研究は,作動流体の蒸発潜熱を利用して無動力で大容量かつ長距離の熱輸送が可 能なループヒートパイプの宇宙機への適用に向けて,重力がループヒートパイプの熱輸 送特性に及ぼす影響を明らかにするとともに,ループヒートパイプの起動時における信 頼性を向上させることを目的として実施した.本論文で得られた結論は各章にまとめて あるが本章において総括を行う.

第一章においては宇宙機の熱制御の現状と今後のトレンドに基づき

LHP

の必要性に ついて述べ,LHP に関する従来の研究を概観し,本研究の目的および各章の概要を述 べた.

第二章では

LHP

の構成と動作原理について述べ,

LHP

の動作を

P-T

線図,

T-s

線図 により説明し,熱力学的な考察を行った.また,LHP を設計するにあたり重要となる 作動流体の選定方法および作動流体の封入量とリザーバ容積の設計の考え方について 述べた.次に

LHP

の特徴と宇宙機への適用の利点について述べた.

LHP

は従来型ヒー トパイプに比べて大容量・長距離熱輸送が可能であるとともに,従来型ヒートパイプに 比べてその熱輸送特性が重力の影響を受けにくいため,蒸発器と凝縮器の位置関係に制 約がないとともに配管の自在なレイアウトが可能である.また,動作温度の高精度な温 度コントロールや熱輸送機能を任意に

ON/OFF

できるといった従来型ヒートパイプが 有していない優れた機能を有しており,熱設計の自在性を大幅に向上することができる ことを示した.

第三章では本章では

LHP

の解析モデルについて述べ,最大熱輸送量や動作温度を算 出する過程を示す中で

LHP

の設計手順を示した.

第四章ではリザーバ内蔵型

LHP

を用いた展開型ラジエータ実験装置を技術試験衛 星Ⅷ型(ETS-Ⅷ)に搭載して軌道上実験を行い,微小重力環境下における熱特性を調 べた.さらに地上の重力下で得られた結果と比較することで,重力が

LHP

の熱輸送 特性に及ぼす影響を確認した.その結果,軌道上環境では凝縮器内の過冷領域の長さ が短くなり,地上環境と比較して低熱入力下で温度の振動が生じやすいことが明らか となった.軌道上環境で過冷領域が短くなる理由は地上環境に比べて蒸発器からリザ ーバへの熱リーク量

Q

EVA-CCが低減するためであり,その原因は,系の圧力損失の低下 およびウィックとリザーバ内蒸気間の伝熱量の低下であると考えられる.しかしなが ら過冷領域の長さが短くなると放熱面を有効に利用できるため,地上環境より動作温 度を低くできることを示した.

第五章では中性子ラジオグラフィー技術を利用して

LHP

内部の作動流体の可視化を 行い,作動流体の挙動と熱輸送特性の相関を調べた.その結果,セカンダリウィックを 有さない

LHP

のボトムヒート姿勢におけるドライアウト発生時のプライマリウィック および蒸発器中心部の気液分布の変化を視覚的に捉えることができ,本来であれば重力 によりリザーバから蒸発器に液が供給される姿勢においても,蒸発器中心部が高圧にな

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る条件では液がリザーバから蒸発器に供給されないことがあることが明らかにするこ とができ,解決するためにはセカンダリウィックのようなリザーバから蒸発器に液供給 を行う方策が必要となることを示した.次に,セカンダリウィックを実装した

LHP

の 可視化実験を行い,蒸発器がリザーバの上方に位置する

LHP

の安定起動・動作にとっ て一番過酷な姿勢においても安定して作動流体がリザーバから蒸発器に供給されてい ることを確認でき,セカンダリウィックを採用することにより,LHP の起動時の信頼 性を向上させるとともに,姿勢によらず安定して動作させることができることを明らか にした.

第六章では第四章に示したリザーバ内蔵型

LHP

の軌道上実験および第五章に示した 中性子ラジオグラフィー技術を利用したリザーバ外付け型

LHP

内部の作動流体の可視 化実験で得られた知見を反映してリザーバ外付け型

LHP

の地上実験モデルの設計,製 作を行った.評価実験の結果,1Wという非常に小さな熱量で安定して起動することを 確認するとともに,蒸発器への熱負荷や凝縮器のシンク温度を急激に大きく変化させた 場合でも安定して動作することが確認でき,セカンダリウィックの採用によりループヒ ートパイプの起動特性および動作安定性を向上できることを示した.また,

PID

制御に よりリザーバの加熱・冷却量を制御することにより蒸発器への熱負荷や凝縮器のシンク 温度が急激に大きく変化した場合でも動作温度を目標温度に高い精度で制御すること ができることを示した.次に

LHP

動作時にリザーバを加熱して蒸発器よりも高温にす ることで,たとえ蒸発器に熱入力があり作動流体の蒸発が起こっている状態においても

LHP

の熱輸送機能を任意に停止できることを確認した.最後にリザーバをペルチェ素 子により冷却することにより,蒸発器に熱入力がない状態においても

LHP

を起動でき ることを確認した.これらの結果は

LHP

を宇宙機に適用することで熱設計や軌道上運 用における自在性を向上できることを示しており,大変有意義な結果である.

第七章では宇宙用途,地上用途のそれぞれについて

LHP

を用いた排熱システムを提 案した.まず宇宙用途として,従来型ヒートパイプに比べて熱輸送特性が重力の影響を 受けにくいという特性および配管レイアウトが自在であるという特徴を活かすことに より,これまで高発熱機器を搭載できなかった衛星の内部パネル等の非放熱面への高発 熱機器の搭載により衛星への機器の高密度実装を実現し,衛星構体の小型化を図ること を提案した.また,LHP 配管の可撓性を有する特徴を活かして,打ち上げ時には畳ん で収納した状態にしておき,軌道上で展開することにより放熱面積を拡張する展開型ラ ジエータを用いた熱制御システムの提案を行った.次に地上用途として,テレビ,プロ ジェクタ等の家電における排熱および自動車における排熱システムの提案を行った.最 後に,今後

LHP

技術をさらに発展していくための研究課題として,分散した高発熱源 への対応,起動時の信頼性向上および排熱能力の大容量化・向上の

3

点を挙げた.また,

LHP

を含む宇宙機用熱制御技術の将来展望を述べ,要求される排熱能力の大容量化に ついては

LHP

では限界があるため,大容量化に対応する技術として沸騰二相流ポンプ

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ループの必要性およびその実用化に向けた取り組みについて提案を行った.

LHP

は本論文で示したように,無動力で大容量・長距離の熱輸送が可能であり,ま たその熱輸送特性は従来型ヒートパイプに比べて重力の影響を受けにくいという優れ た特徴を有しているとともに,高い動作温度制御性やシャットダウン機能といった特徴 的な機能を有しており,宇宙機の熱制御のみならず多くの分野に適用できるものと考え られる.しかし,その適用に際し

LHP

を有効に利用するためには第二章,第三章,第 六章に示した

LHP

の特性を用いた

LHP

そのものの設計はもちろん,第七章に示した

LHP

を適用するシステム全体の検討・解析を行うことが重要である.本論文で述べた 内容が,今後の

LHP

の応用の拡大と改良に対して有益なものとなれば幸いである.

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謝辞

終わりに,本論文をまとめるに際して,長期にわたってご指導とご助言を頂いた九州大学 大学院工学府航空宇宙工学部門 大田治彦教授に心からお礼を申し上げます.副査として 本論文をご精読いただき貴重で有用なコメントを頂きました九州大学大学院工学府 航空 宇宙工学部門 麻生茂教授,機械工学部門 北川敏明教授に深謝致します.本研究を進める にあたり有益なご助言を賜った大串哲朗先生,宇宙航空研究開発機構 杉田寛之氏,名古屋 大学 長野方星教授,東北大学 永井大樹教授に深く感謝申し上げます.また,LHPの研 究を実施するにあたって,以下の共同研究者の方々に多くの有益なご助言,ご協力を頂いた.

ここに心からの感謝の意を表します.

第四章 リザーバ内蔵型ループヒートパイプの軌道上実験 三菱電機(株)鎌倉製作所 野村武秀氏

三菱電機(株)先端総合研究所 石川博章氏 三菱電機エンジニアリング(株) 斉藤康之氏

宇宙航空研究開発機構 野田浩幸氏,川崎春男氏,矢部高宏氏 第五章 リザーバ外付け型ループヒートパイプの作動流体の地上可視化実験 筑波大学 村上正秀名誉教授

宇宙航空研究開発機構 畠中龍太氏 三菱電機(株)鎌倉製作所 間瀬勇樹氏

第六章 リザーバ外付け型ループヒートパイプの地上実験 三菱電機(株)鎌倉製作所 野村武秀氏

三菱電機(株)先端総合研究所 石川博章氏

宇宙航空研究開発機構 畠中龍太氏,宮北健氏

最後に,論文をまとめるにあたり,見守り支えてくれた家族に感謝いたします.