第七章 . ループヒートパイプの今後の研究課題と宇宙排熱システムの将来展望
7.3 ループヒートパイプの今後の研究課題と宇宙用排熱システムの将来展望
の多くのアプリレーションで熱輸送デバイスとして適用可能であると考えられるが
[69-73],この LHP
技術をさらに発展させていくためには多くの研究課題がある.まずは分散配置された熱源の排熱対応である.現状の
LHP
は基本的には1
つの蒸発 器に対して1つの凝縮器を持つタイプが主流である.よって,分散した熱源から発生す る熱を輸送する場合,複数のLHP
が必要となってしまい,システムの複雑化,重量増122
を招いてしまう.また,従来型ヒートパイプを用いたヒートパイプパネル等と
LHP
を 併用することも考えられるが,熱制御デバイスの連結箇所が増加することでその接触界 面における接触熱抵抗により温度降下が発生するため,放熱部での効率が落ちてしまう ことが想定される.それに対応する技術として,1つのLHP
ループ内で複数の蒸発器 や複数の凝縮器を並列に配置させたLHP
の研究開発が行われている.蒸発器や凝縮器 を並列化することで,LHP 内部の作動流体の合流部や分岐点において想定した挙動を 示すかどうかが問題となると考えられる.また並列配置された蒸発器に均等に熱負荷が 入る状況はほとんどないと考えられ,最悪の場合,熱が入らない蒸発器があるようなケ ースも考えられ,そのような状態においても安定して熱輸送を行うことができるかは課 題となりうる.地上実験やパラボリックフライトを利用した短時間の微小重力実験によ り様々な取り組みが始まっているが,実用化にあたっては特に信頼性の観点でさらなる 検証,研究が必要であると考えられる.次に起動特性に関する更なる信頼性向上が必要である.前述の通り,適切な設計を行 い,適切な条件で蒸発器に熱負荷を与えることで安定して起動させることができること ができるが,LHP は従来型ヒートパイプと同様に受動型熱制御デバイスであるため,
万が一すぐに起動できない場合にアクティブに
LHP
を起動させる機能は有していない.よって,実機に適用するにあたっては,起動に関する信頼性をさらに向上させることが
LHP
の適用先の拡大に繋がると考える.一案として,6.6.7
節に示したような蒸発器に 熱入力がない状態でペルチェ素子を冷却することでLHP
を起動させることや,熱入力 を受ける蒸発器に安定して作動流体を能動的に送り込むために機械式ポンプでアシス トするようなことが案として考えられるが,不必要な電力投入や能動デバイスの併用は 排熱システム全体としてみたときの効率や信頼性を落とすことにもなりかねないので,LHP
単体だけではなく排熱システム全体を俯瞰的にみた対策・方策が必要であると考 えられる.次に排熱能力の大容量化,向上が挙げられる.LHP蒸発器の径を大きくするととも に長尺化することで大容量化すること自体は可能であるが,LHP蒸発器はその構造 上,熱コンダクタンスの観点では最適化されているとは言い難く,以下に蒸発器にお ける蒸発に伴う温度降下を押えつつ,大容量化に対応するかという観点での研究が必 要であると考えられる.ただ,将来の宇宙用排熱システムを考えた場合,LHPが除熱 可能な熱量,熱流束には限界がある,また現状技術では最大
10m
程度である熱輸送距 離に関してもプライマリウィックの製造技術の観点から飛躍的に長くすることは難し いと考えられる.そこで必要となってくるのは機械式ポンプを用いて作動流体を循環 させ,作動流体の相変化を利用して大容量熱輸送を行う沸騰二相流ポンプループであ る.現状の宇宙機のトレンドを鑑みると,今後10
年くらいまではLHP
を代表とする 受動熱制御デバイスのみで対応が可能かもしれないが,宇宙機に対する要求は年々急 速に高まっており,近い将来,受動熱制御デイバスのみでは排熱要求に対応すること123
ができなくなることは容易に想像できる.そのような事態を先取りし,沸騰二相流ポ ンプループを代表とする将来必須となる熱制御技術の研究開発を行っていく必要があ る.研究を進めるにあたっては将来展望を的確に予測・明確化して研究計画を立てた 上で進めることが必須であるが,目まぐるしく変化する世界の情勢に影響を受けて変 化する技術動向を常に意識しながら臨機応変に研究計画を見直す勇気も必要である.
一番重要なことは研究のための研究で終わらせず,優れた技術をまずは実用化させる ことに主眼を置いて研究開発を進めることである.良い性能を求めることも重要であ るが,その活動により実用化に時間を要するようでは本末転倒であるため,まずは早 期に実用化できるよう根幹となる基本的な機能・性能を押さえつつ,実用化時に求め られる信頼性を確保することが重要である.更なる性能向上については実用化後に明 らかになる課題をフィードバックして研究を進めていけばよい.それを実現するため にはやはり実用化にあたって必ず解決すべき課題の明確化と優先順位付けが必要であ り,優先順位を付けて重要な課題から解決していくことで早期の実用化が実現できる と考える.