第五章 . リザーバ外付け型ループヒートパイプの作動流体の地上可視化実験
5.5 可視化実験の結果と考察
5.5.2 ドライアウト時の作動流体の挙動
前節で述べた通り,
LHP
はボトムヒート姿勢において,熱負荷を40W
から120W
ま で段階的に上げた場合には熱負荷120W
の条件においても安定して動作した.しかし,熱負荷を与えていない状態から
120W
の熱負荷を印加した実験では起動に失敗し,最 終的にはドライアウトが起こった.本事象が発生した際の蒸発器中心部内の気液分布の 時間変化を捉えることができた.図5.5.3
はボトムヒート姿勢において熱負荷120W
を 印加した際のLHP
各部の温度挙動を示したものである.図5.5.4
は蒸発器内部の気液 分布を中性子ラジオグラフィー技術により撮影した画像である.図5.5.4 (a)は蒸発器を
ヒータにて加熱する前の気液分布を示しており,蒸気管やプライマリウィック外周の蒸 気グルーブに作動流体が存在していることがわかる.蒸発器に120W
の熱負荷が印加 された直後に,プライマリウィック外周の蒸気グルーブに存在する作動流体が急速に蒸 発し蒸気管を流れているのがわかる(図5.5.4 (b)).その後,還流液がプライマリウィ
ックのリザーバ側端部を濡らしているが,蒸発器中心部に存在する作動流体の量が徐々 に減っていく様子が見て取れる(図5.5.4 (b),図 5.5.4 (c),図 5.5.4 (d)).図 5.5.3
を見 ると,加熱開始直後に上記は凝縮器入口に到達しており,凝縮器内から押し出された余 剰液はリザーバに溜められている.それにより,加熱開始直後は蒸発器中心部とリザー バ内の液面高さはほぼ同じであったが,加熱開始から23
秒後(図5.5.4 (c))にはリザ
ーバ内の液面の方が高くなっていることがわかる.このときプライマリウィック中心部 内の液は重力の影響により下部に存在しており,軸方向全長にわたって液が存在してい ることが確認できるが,その後,プライマリウィック中心部に存在する液量が減り始め,蒸発器の先端側(蒸気管側)のバイオネット管出口部にしか存在しなくなっている.こ のとき本来であれば液面高さが蒸発器内の液よりも高いリザーバ側の液が重力のアシ ストによりプライマリウィック中心部に流れ込むのが理想であるがそのようにはなっ ていない.その理由としては,蒸発器とリザーバを接続している配管内壁とベイオネッ ト管外周との間にメニスカスが形成され,プライマリウィック中心部の高圧の蒸気が蒸 発器よりも圧力が低いリザーバ側にメニスカスを押す力が作用することで,リザーバか らプライマリウィック中心部への液供給を阻害していると考えられる.リザーバ側から の液供給が阻害されたことにより,プライマリウィック中心部における作動流体の蒸発 量と液供給量が釣り合わず,蒸発量が大きいために時間変化とともにプライマリウィッ ク中心部の液量が減っていったと考えられる.その後,19:51頃に蒸発器温度(Eva1)が 上昇すると同時に凝縮器入口温度(Con1)が降下している.これは蒸発器に存在する液量 の不足により蒸気の発生が減ったためと考えられ,その後,蒸発器の温度が急激に上昇 しておりプライマリウィックでドライアウトが発生したと考えられ,その様子は図
5.5.4 (f)~(h)を見るとプライマリウィックの軸方向中央部から徐々に作動流体が乾き
始め,最終的には蒸発器先端部のみにしか液が存在していないことがわかる.軸方向中 央部から乾き始めた理由としては,蒸発器先端部はバイオネット管先端から液が供給さ76
れるために十分な液量が存在するが,中央部および根元部は上述の理由によりリザーバ からの液供給が十分でないためにヒータを設置している中央部から乾き始め,その後根 元側(リザーバ側)および先端側(蒸気管側)に広がっていったと考えられる.蒸発器 温度は上昇し続け,
19:52
頃に150 °C
に近付いたため安全のために加熱を停止した.加 熱を停止した後もプライマリウィックの中央部には高圧の蒸気が残っており,それがリ ザーバに存在する液の蒸発器側への流れ込みを阻害している様子が図5.5.4 (h)から確
認できる.撮影画像はないが,蒸発器温度が十分下がった後,リザーバ内の液が蒸発器 側に流れ込み,プライマリウィックを濡らしたことを確認している.本実験からLHP
の安定動作のためには蒸発器とリザーバとの間の水力結合を強くすることによりいか なる状況でもリザーバ側から安定して蒸発器側に液供給を行う必要があり,その方策と しては蒸発器とリザーバの圧力差に打ち勝って,毛細管力により液供給を行うセカンダ リウィックのような工夫が良いと思われる.本実験で得られた知見を反映し,セカンダ リウィックの設計検討を実施し,本節で結果を示した実験に供したLHP
にセカンダリ ウィックを実装して行った実験結果を次節に示す.Figure 5.5.3 Failed start-up in visualization test
77
(a) 0sec (before heating) (b) 12sec (just after heating)
(c) 23sec (d) 40sec
(e) 74sec (f) 130sec
(g) 192sec (h) 254sec (after the stop heating)
Figure 5.5.4 Neutron radiographic image of the LHP evaporator
(Bottom heat, Q=120W)
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ドキュメント内
ループヒートパイプの熱輸送特性に関する研究
(ページ 81-84)