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検討中とされている。

(3) 提案プロジェクトに関する資金調達の見通しおよ び円借款要請の現状・可能性

本事業に対するインドネシア政府からの日本政府への円借款による支援に関する働きか けは、2010 年上期から実施されているようである。ただし、現状では、地熱資源開発リス クが残った状況、すなわち、調査井掘削データに基づく地熱資源の賦存確認、発電事業に 必要な資源量の把握が出来ていないことから、2010 年度の円借款事業とすることは難しい と、2010 年 12 月のインドネシア側との協議では判断されたようである。

ただし、PT. PGE や JICA(マスタープラン調査)等による予備的調査では、本地域は極 めて有望な地熱資源を有する地域と判断されている。現状では、調査井掘削の遅れにより 地熱資源の賦存確認や資源量把握が遅れているだけと理解され、調査井掘削完了後、坑井 データを用いて円借款事業の妥当性を示すための FS を行えば、必ずや円借款事業は実現す るはずである。

2010 年 12 月の JICA とインドネシア側との協議では、本報告書における提案と同様に、

この FS 実施支援のための ES 借款が検討されているようである。地熱発電所建設のための 円借款実現のための ES 借款が、今回、実現するかどうか分からないが、ES 借款が適用さ れない場合には、FS を自己資金やほかの支援等を用いて行うことが必要になると思われる。

当面の目標の 2014 年地熱発電所運開は難しくとも、出来るだけ早い時に発電を開始するこ とが PT.PGE 及び PT.PLN にとっては極めて重要であることから、2011 年の早い時期にそれ ぞれの FS を行う方法が協議では決定されたものと思われる。複雑な手続き等があるものの、

工期を短縮し、スムーズな事業展開をするためには、ES 借款事業により FS を行い、発電 所建設のための円借款事業に繋げるのが最良の選択と思われる。

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円借款要請に向けたアクションプランと課題

第10章 円借款要請に向けたアクションプラン と課題

(1) 円借款要請に向けた取り組み状況

インドネシア側からの希望に応じて、2010 年 12 月に JICA はインドネシア側との協議が 実施された。しかしながら、円借款事業とするための条件が揃っていないことから、円借 款事業化の決定には至っていない模様である。本調査結果は、円借款事業化の条件確認及 び手順把握のための基礎資料となる予定である。

(2) 今後の円借款要請・供与に向けて必要となる措置

2011 年度に本事業に対する円借款が実現するためには、現在 PT. PGE が実施している調 査井掘削を完了させ、調査井データを用いた FS を実施する必要がある。現在、この実施支 援のために ES 借款の実施が予定される模様であることから、この ES 借款等を用いた FS が早い時期に実施されうように働きかけを行う必要がある。

FS の内容は、ES 借款事業内容提案において述べたが、さらに要約すれば以下のようにな る。これらは、現在、地熱発電事業の円借款による支援が検討される場合の一般的な条件 となっていると思われる。

PT. PGE による資源開発(蒸気供給・熱水処理のための坑井掘削・配管)について ・地熱資源賦存確認

・地熱流体の特性把握(蒸気条件)

・資源量評価(坑井データを用いた貯留層シミュレーション解析)

・蒸気生産・熱水処理計画(坑井データを用いた貯留層シミュレーション解析による蒸 気生産井・熱水還元井掘削計画)

・技術的に妥当な蒸気熱水配管計画

・坑井掘削及び配管工事に伴う適切な環境保全策 ・妥当な事業費積算結果

・ODA 事業としての妥当な経済・財務評価結果

PT. PLN による発電所建設(送電線工事も含む)について

・蒸気条件や供給条件に適合した技術的に妥当な地熱発電所概念設計と建設計画 ・技術的に妥当な送電計画(送電線建設計画)

・ODA 事業としての妥当な経済・財務評価結果

最近の地熱発電開発の FS では、地熱資源開発のリスクをできるだけ低減するために、地 熱資源量(最適発電出力)評価や資源開発(坑井掘削)計画立案に調査井データを用いた 地熱貯留層シミュレーション技術を用いるのが一般的である。この技術の適用により、建 設予定の地熱発電所に将来的に安定した蒸気が供給できるどうかを予想でき、そのための 適切な生産井、還元井の掘削計画も立案できる。

この地熱貯留層シミュレーション解析を適切に行うには、豊富な経験と高度な技術が必 要である。現在までの実績等から見れば、適切な解析が出来るのは、我が国や米国、ニュ ージーランド等の地熱開発コンサルタントや大学等の研究機関等に限られる。インドネシ ア国内の場合、バンドン工科大学で研究的に実施されている程度である。本事業では、こ の技術が必要なのは PT. PGE が担当する部分になるが、円借款事業の実現のために、FS で はこの技術を用いて適切な資源量評価及び開発計画が立案されることが望まれる。地熱資 源に関する適切な解析結果が円借款審査時に準備できなければ、ES 借款等により FS を実 施しても、発電所建設のための円借款の実現が難しくなる可能性もあり、本調査の結果と 共に円借款事業化の条件をインドネシア側にアドバイスすることとしたい。

なお、ES 借款による支援の積極的な受入を表明しているのは PT. PLN だけで、PT. PGE は ES 借款による支援を受けない可能性もあるとのことであり、円借款審査準備が順調に進 まない場合には、我が国からの準備支援が必要となるケースも考えられる。

(3) 円借款要請に向けた具体的なアクションプランと 課題

先に述べたように、円借款実現に向けてインドネシア側との協議が進められている。し たがって、要請のための特別なアクションは必要がない。ただし、円借款による発電所建 設のための円借款による支援を実現するためには、FS の実施が不可欠である。ES 借款等に より、PT. PLN と PT. PGE が、それぞれ早期に FS を実施する必要がある。今後のアクショ ンとしては

① ES 借款の締結もしくはインドネシア側調査資金の準備

② FS のためのコンサルタント選定

③ FS の実施

④ 調査結果を用いた円借款審査準備

⑤ 円借款審査(JICA)

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円借款要請に向けたアクションプランと課題

がある。

今後、本調査を通じ、また本調査後も現地状況を把握して、PT. PLN 及び PT. PGE の実 施機関に対しては FS の実施について、さらにインドネシア国や我が国の関係機関に対して は FS 実施のための援助の実施について、必要な働きかけを行う予定である。