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平成22年度地球環境適応型・本邦技術活用型産業物流インフラ整備事業,一般案件に係る円借款案件形成等調査及び民活インフラ案件形成等調査,一般案件に係る円借款案件形成等調査,インドネシア・フルライス地域地熱発電開発調査

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(1)

平成 22 年度 一般案件に係る円借款案件形成等調査

インドネシア・フルライス地域地熱発電開発調査報告書

平成23年3月

委託先 : 新日本有限責任監査法人

独立行政法人日本貿易振興機構

西日本技術開発株式会社

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ま え が き 本報告書は、新日本有限責任監査法人から西日本技術開発株式会社が平成 22 年度の事業 として受託した「一般案件に係る円借款案件形成等調査」の成果をとりまとめたものです。 本調査「インドネシア・フルライス地域地熱発電開発調査」は、インドネシア・スマト ラ島单部フルライス地域において、110MW 規模の地熱発電開発事業を実施するために、 39,255 百万円かけて地熱資源開発、地熱流体輸送設備建設、地熱発電所建設および送電線 建設を実施するプロジェクトの実現可能性を調査したものです。 本報告書が上記プロジェクト実現の一助となり、加えて我が国関係者の方々のご参考に なることを希望します。 平成 23 年3月 西日本技術開発株式会社

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(出典:SNC 調査団作成)

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略語一覧

ADB : Asian Development Bank アジア開発銀行 AfD : Agence Française de Développement フランス開発庁 AMDAL : Analisis Mengenai Dampak Lingkungan 環境影響評価 ANDAL : Analisis Dampak Lingkungan 環境影響評価書 ASEAN : Association of South‐East Asian Nations 東单アジア諸国連合 BAPEDAL : Badan Pengendalian Dampak Lingkungan インドネシア環境管理庁 BAPPENAS : Badan Perencanaan Pembangunan Nasional

インドネシア国家開発企画庁

BI : Bank Indonesia インドネシア銀行

BPS : Badan Pusat Statistik (Stastics Indonesia) インドネシア統計局 CDM : Clean Development Mechanism クリーン開発メカニズム CFC : Chlorofluorocarbon クロロフルオロカーボン

CO2 : Carbon dioxide 二酸化炭素(炭酸ガス)

CSAMT : Controlled Source Audio-frequency Magneto Telluric method

人工信号源可聴周波数域地磁気地電流法 EBRD : European Bank for Reconstruction and Development

欧州復興開発銀行 EIA : Environmental Impact Assessment 環境影響評価 EIRR : Economic Internal Rate of Return 経済的内部収益率 EPC : Engineering Procurement and Construction

エンジニアリング・資機材調達・建設工事 ES : Engineering Service

エンジニアリングサービス FCRS : Fluid Collection and Reinjection System 地熱流体輸送設備 FIRR : Financial Internal Rate of Return 財務的内部収益率

FS : Feasibility Study 実施可能性調査

GDP : Gross Domestic Product 国内総生産 GSF : Great Sumatra Fault 大スマトラ断層

HFC : Hydrofluorocarbon ハイドロフルオロカーボン

IADB : Inter-American Development Bank 米州開発銀行

IDR : Indonesian Rupiah インドネシアルピア

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JBIC : Japan Bank International Cooperation 独立行政法人国際協力銀行 JICA : Japan International Cooperation Agency 独立行政法人国際協力機構 KfW : Kreditanstalt für Wiederaufbau ドイツ復興金融公庫 KLH : Kementerian Negara Lingkungan Hidup インドネシア人口環境省 LH : Kantor Menteri Negara Lingkungan Hidup インドネシア環境省 LNG : Liquefied Natural Gas 液化天然ガス LPG : Liquefied Petroleum Gas 液化石油ガス

MEMR : Ministry of Energy and Material Resources エネルギー鉱物資源省 MHI : Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. 三菱重工業(株) MOF : Ministry Of Finance 財務省

MT : Magneto-Telluric method MT 法電磁探査 MWe : Megawatt electric 電気出力メガワット NCG : Non Condensable Gas 非凝縮性(不凝結)ガス NEDO : New Energy and Industrial Technology Development Organization

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 NEP : National Energy Policy 国家エネルギー政策 NPV : Net Present Value 正味現在価値 O&M : Operation & Maintenance 運転・保守 ODA : Official Development Assistance 政府開発援助 OJT : On-the-Job Training 職場内訓練 OPEC : Organization of the Petroleum Exporting Countries

石油輸出国機構 PPLH : Pusat Pendidikan Lingkungan Hidup 開発環境省 PQ : Pre Qualification 事前資格審査 PT. PGE : PT. Pertamina Geothermal Energy

プルタミナ地熱エネルギー社 PT. PLN : PT. Perusahaan Umum Listrik Negara (Persero) インドネシア電力会社 RKL : Rencana Pengelolaan Lingkungan Hidup 環境管理計画

RPL : Rencana Pemantauan Lingkungan Hidup 環境モニタリング計画 RUPTL : Rencana Usaha Penyediaan Tenaga Listrik PLN 電力長期計画 SNC : Ernst & Young ShinNihon LLC 新日本有限責任監査法人 STEP : Special Term for Economic Partnership 本邦技術活用条件 TDEM : Time Domain Electro Magnetic 時間領域電磁探査 TOE : Ton of Oil Equivalent 石油換算トン

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US : United States of America アメリカ合衆国 WACC : Weighted Average Cost of Capital 加重平均資本コスト

WB : World Bank 世界銀行

WKP : Geothermal Working Area 地熱ワーキングエリア

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地名表記対照表 州 Propinsi (Provinsi) 県 Kabpaten 市 Kota 郡 Kecamatan 村 Desa 山 Gunung (G.), Bukit (Bt.)

川 Sungai (S.), Air (A.)

湖 Danau (D.) ブンクル Bengkulu フルライス Hululais ルボン Lebong クタフン Ketahun ルムット Lumut ブリティブサール Beritibesar コレン Koleng パブアル Pabuar パブス Pabus ティガ Tiga レカット Lekat レサム Resam ムバイ Mubai チュグ Cuguk チョゴン Cogong タンバンサワ Tambang Sawah スバングレゴ Suban Gregok スバンアグン Suban Agung スマラコ Semalako ムアラアマン Muaraaman テス Tes トゥランテララン Turanlalang プンドゥバダロ Punduk Badaro

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目 次 要約 第1章 相手国、セクター等の概要 ... 1 (1) 相手国の経済・財政事情 ... 1 1. インドネシア国概要 ... 1 2. 政治・経済事情 ... 2 3. エネルギー事情 ... 4 (2) プロジェクトの対象セクターの概要 ... 5 1. インドネシア国電力セクター ... 5 2. インドネシア国の電力需給の現状 ... 6 3. インドネシア国の地熱開発の現状と動向 ... 7 (3) 対象地域の状況 ... 14 1. インドネシア国ブンクル州の社会的状況 ... 14 2. スマトラ島の電力需給状況 ... 14 第2章 調査方法 ... 19 (1) 調査内容 ... 19 1. 調査内容 ... 19 2. 調査対象地点 ... 21 (2) 調査方法・体制 ... 22 1. 調査方法 ... 22 2. 調査体制 ... 22 (3) 調査スケジュール ... 23 1. 第1回現地調査 ... 23 2. 第2回現地調査 ... 24 3. 現地調査における面談者 ... 25 第3章 プロジェクトの内容および技術的側面の検討 ... 26 (1) プロジェクトの背景・必要性等 ... 26 (2) プロジェクトの内容等決定に必要な各種検討 ... 29 1. プロジェクトの政府開発計画との関係、事業化の優先度等 ... 29 2. プロジェクトの内容を決定する際に検討が必要な事項 ... 29 (3) プロジェクトの計画概要 ... 64 1. 技術的手法の検討 ... 64

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(4) 提案技術・システムを採用するに当たっての課題およびその解決策 ... 87 1. 地熱発電開発の手順と地熱資源開発のリスク低減 ... 87 2. フルライス地点における課題とその解決策 ... 89 第4章 環境社会的側面の検討 ... 94 (1) 環境社会面における現状分析 ... 94 1. 既存条件の分析 ... 94 2. 現状分析 ... 101 3. 将来予測 (プロジェクトを実施しない場合) ... 103 (2) プロジェクトの実施に伴う環境改善効果 ... 103 1. プロジェクトの環境改善効果 ... 103 2. CDM プロジェクトとしての可能性 ... 106 (3) プロジェクト実施に伴う環境社会面への影響 ... 107 1. 環境社会配慮項目 ... 107 2. 提案したプロジェクトとそれ以外の環境社会影響のより小さい選択肢との 比較検討 ... 110 3. 実施機関との協議結果 ... 111 (4) 相手国の環境社会配慮関連法規の概要 ... 112 1. プロジェクト実施に関係する環境社会配慮関連法規の概要 ... 112 2. プロジェクトの実施に必要となる相手国の EIA 等の内容 ... 117 (5) プロジェクトの実現のために当該国(実施機関その他関係機関)が成すべき 事項 ... 119 第5章 財務的・経済的実行可能性 ... 120 (1) 事業費の積算 ... 120 1. 事業費の構成 ... 120 2. 通貨および為替レート ... 121 3. 事業費 ... 122 4. 資金調達計画 ... 123 (2) 予備的な財務・経済分析の結果概要 ... 124 1. 財務分析結果 ... 124 2. 経済分析結果 ... 135 3. 総合評価 ... 139 第6章 プロジェクトの実施スケジュール ... 140 第7章 相手国実施機関の実施能力 ... 144 (1) 相手国実施機関の概要 ... 144

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(2) 相手国におけるプロジェクト実施のための組織体制 ... 149 1. PT. PGE ... 149 2. PT. PLN ... 150 (3) 相手国実施機関の能力評価と(不十分な場合は)対応策... 151 1. PT. PGE ... 151 2. PT. PLN ... 152 第8章 我が国企業の技術面等での優位性 ... 153 (1) 対象プロジェクト(設備・商品・サービス別)における日本企業の国際競争 力と受注の可能性 ... 153 (2) 日本から調達が見込まれる主な資機材の内容および金額... 154 (3) 我が国企業の受注を促進するために必要な施策 ... 154 第9章 プロジェクトの資金調達の見通し ... 157 (1) 相手国政府・機関の資金調達に関する考え方 ... 157 (2) 資金調達に伴う関連機関の動向 ... 157 (3) 提案プロジェクトに関する資金調達の見通しおよび円借款要請の現状・可能 性 ... 158 第 10 章 円借款要請に向けたアクションプランと課題 ... 159 (1) 円借款要請に向けた取り組み状況 ... 159 (2) 今後の円借款要請・供与に向けて必要となる措置 ... 159 (3) 円借款要請に向けた具体的なアクションプランと課題 ... 160

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図 目 次 図 1-1 インドネシア全図 ... 2 図 1-2 インドネシアの GDP 推移 ... 3 図 1-3 近年の交換レート推移 ... 4 図 1-4 インドネシアにおける火山と主要地熱地帯の分布 ... 10 図 1-5 スマトラ島の大構造と主要地熱地点 ... 11 図 1-6 ジャワ島の大構造と主要地熱地点 ... 12 図 1-7 スマトラ島の送電線網 ... 16 図 1-8 スマトラ系統の電力需給バランス(2010~2019 年) ... 17 図 2-1 フルライス地域地熱発電開発の全体工程 ... 20 図 2-2 調査対象位置図 ... 21 図 2-3 調査スケジュール ... 23 図 3-1 地熱開発ロードマップと Crash Program II ... 27 図 3-2 フルライス地域位置図 ... 33 図 3-3 フルライス地域地質図 ... 35 図 3-4 フルライス地域の温泉・噴気分布図 ... 37 図 3-5 温泉水の主要陰イオン三成分図 ... 37 図 3-6 温泉水の水の水素同位体比-酸素同位体比関係図 ... 38 図 3-7 フルライス地域ブーゲー異常図 ... 41 図 3-8 フルライス地域 シュランベルジャー法見掛比抵抗分布図 ... 43 図 3-9 フルライス地域 MT 法電磁探査 測点配置図 ... 46 図 3-10 MT 法解析結果 実測データとモデル応答の比較図 ... 47 図 3-11 MT 法解析結果 比抵抗分布図(深度 325m) ... 48 図 3-12 MT 法解析結果 比抵抗分布図(深度 675m) ... 49 図 3-13 MT 法解析結果 比抵抗分布図(深度 1,375m) ... 50 図 3-14 断層分布と深度 325m における比抵抗分布 ... 53 図 3-15 地熱有望範囲推定図 ... 54 図 3-16 地熱概念モデル ... 56 図 3-17 フルライス地域 地熱資源量モンテカルロ解析結果 ... 59 図 3-18 生産井の噴出特性推定結果 ... 61 図 3-19 追加坑井数試算結果 ... 63 図 3-20 発電所敷地および掘削基地配置図 ... 66 図 3-21 掘削リグの標準配置図 ... 67

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図 3-24 スマトラ单部送電系統卖線結線図 ... 73 図 3-25 既設ぺカロンガン 150/70/20kV 変電所卖線結線図 ... 74 図 3-26 資機材輸送ルート ... 77 図 3-27 生産井および還元井の坑井仕様(ケーシングプログラム) ... 79 図 3-28 地熱流体輸送設備レイアウト ... 81 図 3-29 地熱流体輸送概略系統 ... 83 図 3-30 発電所レイアウト ... 84 図 3-31 シングルフラッシュ発電系統図 ... 85 図 3-32 地熱発電開発の一般的な手順 ... 88 図 3-33 発電所位置想定範囲図 ... 90 図 4-1 PT. Pertamina の地熱ワーキングエリア ... 94 図 4-2 フルライス地熱地域の開発計画 ... 95 図 4-3 フルライス地熱発電開発計画図 ... 96 図 4-4 フルライス地熱発電送電線計画図 ... 97 図 5-1 割引率別平均エネルギーコスト ... 128 図 5-2 蒸気卖価に対するに対する PT. PGE 蒸気供給事業 FIRR 感度 ... 130 図 5-3 売電卖価に対する PT. PLN 発電事業 FIRR 感度 ... 130 図 5-4 代替プロジェクト建設卖価感度分析 ... 137 図 5-5 石炭価格感度分析 ... 137 図 6-1 プロジェクトの実施スケジュール ... 141 図 6-2 発電部門のプロジェクトスケジュール(2014 年末までに蒸気供給され た場合) ... 143 図 7-1 PT. PGE 組織図 ... 145 図 7-2 PT. PLN 組織図 ... 147 図 7-3 PT. PGE のプロジェクト実施体制 ... 150 図 7-4 PT. PLN のプロジェクト実施体制 ... 151 図 8-1 地熱発電プラントの世界における日本製品シェア ... 154

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表 目 次 表 1-1 インドネシアにおける地熱資源量の見積もり ... 12 表 1-2 インドネシアの地熱発電所 ... 13 表 1-3 スマトラ系統の発電設備容量(2009 年) ... 15 表 1-4 スマトラ系統の電力需給バランス(2010~2019 年) ... 18 表 2-1 調査実施体制 ... 22 表 2-2 第1回現地調査行程表 ... 24 表 2-3 第2回現地調査行程表 ... 24 表 2-4 面談者リスト ... 25 表 3-1 インドネシアにおける主要な地熱開発プロジェクトの事業者 ... 28 表 3-2 事業化可能性調査地点選定基準 ... 31 表 3-3 温泉水・噴気の化学成分分析結果 ... 38 表 3-4 噴気の化学組成と地化学温度計算結果 ... 39 表 3-5 坑井シミュレータ 入力パラメータ ... 61 表 3-6 追加坑井数試算結果 ... 62 表 3-7 地熱発電方式の比較 ... 71 表 3-8 発電所、坑井基地およびアクセス道路の規模 ... 76 表 3-9 補充井掘削計画 ... 80 表 4-1 調査地域における平均的気象条件 ... 98 表 4-2 調査地域の野生動物 ... 99 表 4-3 各村の人口、地域面積、人口密度、男女比(2007 年) ... 100 表 4-4 算出条件 ... 104 表 4-5 CO2原油変換による排出量削減効果 ... 105 表 4-6 CDM プロジェクトとしての CO2排出量削減効果 ... 106 表 4-7 本プロジェクトにおける現時点で想定される調査項目 ... 107 表 4-8 現時点で予想される環境影響項目の選定理由 ... 108 表 4-9 環境の現状と地熱発電、火力発電の比較 ... 110 表 4-10 硫化水素の環境基準 ... 112 表 4-11 硫化水素ガスに係わる排出規制値 (固定発生源) ... 113 表 4-12 水質環境基準 (Ⅰ類型、飲料水として飲用できる) ... 113 表 4-13 排水基準 ... 114 表 4-14 騒音に関する環境基準 ... 114 表 4-15 振動に関する環境基準 ... 115

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表 5-1 為替レート・エスカレーション ... 121 表 5-2 事業費積算総括表 ... 122 表 5-3 事業費調達条件 ... 123 表 5-4 蒸気供給事業(PT. PGE)資金調達計画および機会費用 ... 125 表 5-5 地熱発電事業(PT. PLN)資金調達計画および機会費用 ... 126 表 5-6 割引率別平均エネルギーコスト ... 128 表 5-7 FIRR 計算結果 ... 129 表 5-8 PT. PGE: FIRR 計算書 ... 131 表 5-9 PT. PGE: 返済計画表 ... 132 表 5-10 PT. PGE: キャッシュフロー ... 133 表 5-11 PT. PLN: FIRR 計算書 ... 133 表 5-12 PT. PLN: 返済計画表 ... 134 表 5-13 PT. PLN: キャッシュフロー ... 135 表 5-14 プロジェクト EIRR(送電線を含む) ... 138 表 5-15 プロジェクト EIRR(送電線を含まず) ... 138 表 5-16 経済・財務評価総括表 ... 139 表 7-1 PT. PLN 事業概要 ... 148

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要 約

(1) プロジェクトの背景・必要性

インドネシア政府 は、急増する電力需要に対応するために電力開発を急いでいるが、 電源の多様化や再生可能エネルギーの開発にも重点を置いている。再生可能エネルギー の開発のために、インドネシア政府は 10,000 MW 開発計画 Crash Program II を進めて いる。この計画では、全体の開発量の約 35%にあたる 3,583 MW が地熱発電で賄われる 予定である。フルライス地熱発電事業は、この Crash Program II の主要な事業の一つ である。インドネシア政府は本事業を ODA による支援で実現したいとしている。本地域 での地熱発電開発の実現を目指し、PT.PGE は本調査の実施を要望した。当該地域の地熱 発電開発の円借款事業化を円滑に進めるために、本調査で情報を収集し、地熱資源の評 価、開発状況や事業概要の把握を行うこととなった。早期に支援を実現するためは、ES 借款による支援からスタートするのも一つの方法と考えられることから、これも考慮し、 円借款で支援するのに適切な事業かどうか検討した。

(2) プロジェクトの内容決定に関する基本方針

PT. PGE はフルライス地域での地熱発電開発を計画している。このプロジェクトでは、 蒸気開発部門を PT. PGE が担当し、発電・送電部門を PT. PLN が担当する計画となって いる。当該地域における地熱資源探査は PT. PGE により既に実施されている。しかし、 坑井掘削の実績はなく、2010 年の 12 月に1本目の調査井掘削が開始された段階である。 現在得られている地熱資源に関するデータには、直接的に地下貯留層の状況を示すもの がないため、今回はモンテカルロ解析手法を適用した容積法により当該地点の地熱資源 ポテンシャルを見積もった。その結果、確率 98%のレベルで見ると 125MWe 以上のポテ ンシャルを有すると判断された。ただし、プロジェクトを進めるに当たっては、複数の 調査井掘削ならびに掘削結果に基づく地熱資源量評価を行うとともに当該地域における 地熱資源の性状を確認し、その結果に基づく事業化可能性調査(FS)調査が必要と判断 される。発電設備の設計に不可欠な地熱資源の性状が不明確なため、調査井掘削の結果 によっては、発電所計画案は見直されることも考慮される。

(3) プロジェクトの概要

フルライス地点に賦存されている地熱資源は 250℃以上の高温熱水が期待されること

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定されるプロジェクトの概要は以下のとおりである。 <地熱資源開発>  生産井基地および還元井基地の敷地造成  アクセス道路の建設  生産井および還元井の掘削 <地熱流体輸送設備建設> <蒸気発電方式 110MW 地熱発電所建設> <送電線建設> なお、本プロジェクトは、蒸気供給部門(地熱資源開発、地熱流体輸送設備)を PT. PGE が、発電部門(地熱発電所、送電線)を PT. PLN が行なうことで検討した。

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環境社会的側面

本プロジェクトの主な環境改善効果としては、再生可能自然エネルギー利用による発 電としての二酸化炭素発生抑制効果である。本プロジェクトによって、年間 60 万トン程 度の CO2 排出量削減効果が見込まれる。 原油換算 CDM ACM0002 年間発電量 (GWh/年) 819.5 819.5 排出係数 (t-CO2/MWh) 0.818 0.743 年間排出削減量 (t-CO2/年) 670,351 608,889 現地調査結果、プロジェクトの特徴等を踏まえてプロジェクトが事業化される際に、 環境社会配慮が適切に行われるために現時点で想定される調査項目を選定した。 現時点で考えられる本調査の後の開発調査で必要な環境社会配慮項目を以下に示す。 項目 地熱資源 発電所 送電線 大気汚染 -B -A N 騒音・振動 -B -A N 水質汚染 -A -A -A 土壌汚染 -B N N 廃棄物 -A -A N 地盤沈下 -A N N 悪臭 -B -A N 地形・地質 -A -A N 生物・生態系 -A -A -A 水利用 -B -A N 住民の移転 N N N 尐数民族・先住民 C C C

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雇用や生計手段等の地域経済 +A +A +A 土地利用や地域資源利用 +A +A +A 社会関係資本や地域の意思決定機関等の社会組織 C C C 既存の社会インフラや社会サービス +A +A +A 先住民の貧困 C C C 被害と便益の偏在 C C C 地域内の利害対立 C C C ジェンダー N N N 子どもの権利 N N N HIV/AIDS 等の感染症 N N N 温室効果ガス N +A N + :正の影響 -:負の影響 A :深刻な影響が予想される B :軽微な影響が予想される C :影響の有無が不明 N :影響が予想されない 本プロジェクトについて、実施機関である PT. PGE、PT. PLN の実施責任者、自治体関 係者および住民への聞き取り調査を行った。PT. PGE は既に環境影響評価(AMDAL)を実 施しており、環境影響評価書(ANDAL)、環境管理計画(RKL)、環境モニタリング計画(RPL) はレボン県から 2009 年 12 月 19 日付で承認されている。また、地域社会への説明は 2008 年 10 月 19 日に実施されている。本プロジェクトにおける計画規模は以下に示す通りで あり、環境省大臣令 No. 11(2006)に指定された規模より発電所は大きく、AMDAL 対象 事業に該当するが、送電線は該当しない。 地点名 計画規模 AMDAL 対象規模 フルライス 発電所 2 × 55MW 送電線 150kV ≧55MW >150kV 環境配慮に関して実施機関が今後なすべき事項は PT. PLN が下流開発(発電所建設) に必要な環境影響評価 を実施し、利害関係者への周知と情報公開を行うことである。ま た、風向や風速などの気象データは、発電所の概念設計だけでなく、硫化水素の拡散予 測にも必要なので、建設予定地点で最低1年間は観測する必要がある。

(5) 実施スケジュール

下図に JICA との ES 借款契約調印後からプロジェクト完了までの実施スケジュールを 示す。コンサルタントが選定され、生産井および還元井の掘削、地熱流体輸送設備の建 設(PT. PGE 担当)、地熱発電所建設、送電線建設(PT. PLN 担当)などのサブ・プロジ ェクトの調達が同時に開始され、コントラクターが決定される。各サブ・プロジェクト のコントラクターとの契約発効後、直ちに設計・製作、輸送、建設工事、試運転が実行 され、プロジェクトが完成、営業運転が開始される。

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1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

Loan Application

Pre-Construction Work (Incl. FS)

PT. PGE 14

PT. PLN 23

Procurement

Engineering Consultant for PT. PLN 9

Engineering Consultant for PT. PGE 9

Contractor for PT. PGE 9

Contractor for PT. PLN 9 Consulting Service PT. PGE 40 PT. PLN 66 Construction PT. PGE PT. PGE

Drilling & Testing 23

FCRS 24 PT. PLN Power Plant 38 Transmission Line 22 Warranty Period 26 2016 No.of Months ACTIVITY 2010 2011 2012 2013 2014 2015 Project L/A ES L/A Unit 1 Unit 2

(6) 円借款要請・実施に関するフィージビリティ

本プロジェクトは大統領発令の Crash Program II にも含まれた国家プロジェクト であり、電力需要が逼迫しているスマトラにおける重要な電力開発プロジェクトであ るとともに、インドネシア固有のエネルギーである貴重な地熱資源を有効に利用し、 輸出に回される化石燃料を節約し、環境的にも優れたプロジェクトである。また、下 記経済・財務総括表の通り、円借款を使うことによる財務的・経済的な実行可能性が 高く示されており、インドネシア国として実施すべき優良プロジェクトであると判断 される(ただし、本経済財務評価に用いた各種パラメータ;55 MW×2の地熱発電を 維持する生産井、還元井本数、所内比などは現在 PT. PGE にて掘削中の調査井の噴出 試験結果により変化する可能性があり、その結果に基づいた詳細な再検討が必要であ る)。 事業名 フルライス 55MW×2地熱発電事業 区分 蒸気供給事業 地熱発電事業 事業者 PT. PGE PT. PLN 事業費 百万円(MUS$) 17,693 百万円(194.64 M$) 21,562 百万円(237.21 M$) 総事業費百万円(MUS$) 39,255 百万円 (431.85 M$) 発電量 819.5 GWh/年 石炭燃料節約量 424 百万 kg, 29.71 M$

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蒸気・売電卖価*1 4.3 cent/kWh 8.9 cent/kWh 機会費用:FIRR (WACC) 10.71% (2.61%) 8.09% (2.34%) 社会的割引率:EIRR*2 14.67% キャッシュフローNPV 68.96 M$ 50.44 M$ 財務 BC レシオ (12%) 1.48 1.33 経済 BC レシオ (12%) 1.14 *1:投資額および 30 年間の年間運転維持経費より初年度の平均 kWh 卖価と算定 *2:代替火力を 70 MW×2石炭火力として算定

(7) 我が国企業の技術面での優位性

本プロジェクトでは、地熱資源の調査・開発から発電所建設までの支援をインドネシ ア側は要望している。本邦企業の地熱発電開発分野での競争力は高く、事業計画が円滑 に進めば、地熱資源調査・資源(蒸気)開発・発電所建設・発電機器納入等の受注に繋 がる可能性は高い。本プロジェクトの最初の段階である資源調査・資源開発では、本邦 企業はコンサルタント業務を受注できる可能性がある。発電機器の納入・発電所建設は EPC として発注されることから、機器メーカー・商社が受注する可能性がある。地熱発 電プラントの分野では、日本のメーカー(三菱重工、富士電機システムズ、東芝)は、 発電機器の開発から建設・運転・保守点検の分野において多くの実績を有しており、世 界をリードしている。日本製地熱発電プラントは世界規模で 70%を越える高いシェアを 有している。 インドネシア国内の既存地熱発電プラントは、合計 18 ユニットあるが、そのうち6割 以上に当たる 11 ユニット、また、総設備容量の7割以上に当たる 690 MW の地熱発電設 備を日本の重電メーカーが受注している。最近のもの(1995 年以降)だけに限れば、本 邦製はユニット数比でほぼ9割、設備容量比では9割5分以上に達し、本邦製機器の独 占に近い状態にある。本邦企業は、地熱発電事業では他の先進諸国に比して優位にある。

(8) 案件実現までの具体的スケジュール及び実現を阻

むリスク

円借款による発電所建設のための支援を実現するには、FS の実施が不可欠である。こ のための地熱資源に関する情報は PT.PGE の調査井掘削により収集される予定である、FS

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ある。ES 借款を利用して FS を考慮した、今後のアクションとしては ① ES 借款の締結もしくはインドネシア側調査資金の準備 ② FS のためのコンサルタント選定 ③ FS の実施 ④ 調査結果を用いた円借款審査準備 ⑤ 円借款審査(JICA) ⑥ 円借款締結 となる。この一連のアクションは、2011 年末までに実施される円借款審査以前に行う 必要がある。 現在掘削作業中の PT. PGE による3本の調査井によって地熱資源の確認や特性(蒸気 条件)データ取得ができなかった場合には、円借款の実現が発電所建設工事等の全体の スケジュールが遅れることとなる。また、FS が資金的や技術的な理由により実施出来な かった場合にも、事業化できなかったり、スケジュールが遅れたりすることになる。

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第1章 相手国、セクター等の概要

第1章 相手国、セクター等の概要

(1) 相手国の経済・財政事情

1. インドネシア国概要 インドネシアの国土は日本の約5倍の面積を有し、東西約 5,110km、单北約 1,880km に及び、18,110 の島々からなる世界最大の島嶼国家である。人口は、中国、インド、 米国に次いで世界第4位であり、総人口の6割が全国土面積の約7%に過ぎないジャ ワ島に集中している。以下にインドネシアの基本データをまとめた。  大統領: スシロ・バンバン・ユドヨノ(2004 年 10 月から、任期5年、二期目)  独立: 1949 年 12 月 27 日(オランダから)  人口: 約 2.31 億人(2009 年政府推計)  位置・面積: 单東アジア・約 189 万 km2  主要都市: ジャカルタ(首都)、スラバヤ、バンドン、メダン、スマラン、パレンバ ン  言語: インドネシア語(公用語)、英語、オランダ語、ジャワ語などの方言  民族: ジャワ系(45%)、スンダ系(14%)、マドラ系(7.5%)、マレー系(7.5%)、 その他(26%)  宗教:イスラム教(88%)、キリスト教(9%)、ヒンズー教(2%)、仏教(1%)、 その他(0%)(世界最大のイスラム人口を有するが、イスラム教は国教ではない)。

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図 1-1 インドネシア全図

(出典:The World Factbook, Central Intelligence Agency, US government)

2. 政治・経済事情 インドネシアは、共和制の下、33 州から構成され、国家元首は大統領(大統領は、 国家元首であると共に行政府の長でもある)。現大統領は、第6代目にあたり、スシ ロ・バンバン・ユドヨノ(2014 年 10 月 20 日まで)である。 議会は、国民協議会(憲法の制定及び改正、国民協議会決定の策定等)、国会(立 法機能、国家予算作成機能、政府に対する監視機能)、及び地方代表議会(地方自治 等に関する法案の提言、審議への参加)がある。国民議会は、国会議員(560 人)と 地方代表議会議員(132 人)で構成される。 1997 年7月に起こったアジア通貨危機において、ASEAN 地域の中で最大の経済的影 響を受け、1998 年の GDP 成長率はマイナス 13.13%と大幅に落ち込んだ。その後、各 種改革の実施により、経済は回復傾向にある。GDP 成長率は、2003 年 4.5%、2004 年 には 5.13%を達成した。2005 年以降、好調な個人消費と輸出に支えられ、5%後半~ 6%台の経済成長を達成。2007 年は、経済危機以降最高の 6.3%を記録。2008 年も欧 米の経済危機による輸出の伸び悩み、国際金融危機の影響等から、同年第 4 四半期に は 5.2%に減速したが、通年では 6.1%となり、前年同様 6%台を維持。2009 年は政 府の金融安定化政策、景気刺激策、堅調な国内消費により、世界的にも比較的高い成 長率を維持しており、4.5%の成長を達成した。

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第1章 相手国、セクター等の概要  通貨卖位: ルピア(IDR)  為替レート(2009 年): 1US ドル=約 10,399 IDR  国内総生産: 5,394 億ドル(2009 年)  実質 GDP 成長率: 4.5%(2009 年)  インフレ上昇率: 4.8%(2009 年)  輸出: 1,195 億ドル(2009 年)  輸入: 843 億ドル(2009 年)  主要輸出製品: 石油・ガス、電子機器、合板、織物、ゴム  主要輸出相手国・地域:日本、シンガポール、アメリカ、中国、韓国、インド、台湾、 マレーシア  主要輸入製品: 機械・設備類、化学品、燃料、食料品  主要輸入相手国: シンガポール、中国、日本、マレーシア、韓国、アメリカ、タイ

(出典:The World Factbook, Central Intelligence Agency, US Government )

図 1-2 インドネシアの GDP 推移 (出典:BPS ホームページ) 2008年、2009年は暫定値 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 名目GDP 実質GDP(2000年物価換算) 兆ルピア

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図 1-3 近年の交換レート推移 (出典:BI ホームページ) 3. エネルギー事情 インドネシアは東单アジアの国で最も人口の多い国で、世界でも、中国、インド、 アメリカに次ぐ第4位の人口を有する。インドネシアは 1962 年に石油輸出国機構 (OPEC)に加盟したが、2004 年に石油の輸入国に転じた。 2004 年におけるエネルギー消費量は 4.7×1,015Btus で、その内訳は、石油が 53%、 ガスが 30%、石炭が 12%、地熱、太陽、風力、バイオマス、廃棄物発電などの再生 可能エネルギーが3%、水力が2%となっている。 a. 石油 インドネシアは、2007 年1月現在、確認埋蔵量 43 億バレルの石油を保有している。 産油量はここ十年、徐々に減尐している。 2008 年の1日当たりの平均石油生産量(bbl/d)は 110 万 bbl/d であり、このうち の 81%にあたる 85.6 万 bbl/d が原油である。石油生産量は 1998 年当時に比べ 35% 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 2001/1/1 2002/5/16 2003/9/28 2005/2/9 2006/6/24 2007/11/6 2009/3/20 2010/8/2 2011/12/15 イ ン ド ネ シ ア ルピ ア 100円 1米ドル 1ユーロ 年

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第1章 相手国、セクター等の概要 2006 年におけるインドネシアの石油消費量は 120 万 bbl/d であり、インドネシアは わずかながら石油の輸入国となっている。 b. 天然ガス インドネシアには、2007 年 1 月現在、97 兆 8000 億 ft3(Tcf)の埋蔵量が確認さ れており、インドネシアの天然ガス埋蔵量は、世界第 10 位、アジア-太平洋地域で は第1位である。埋蔵地域の 70%程度は海域であり、ナトゥア島、東カリマンタン、 单スマトラ及び西パプアの沖合に主要な埋蔵地域がある。 2004 年、インドネシアでは 2 兆 6000 億 ft3(Tcf)が生産され、そのうち 1 兆 3000 億 ft3(Tcf)が消費された。また、1 兆 2,000 億 ft3(Tcf)の液化天然ガス(LNG) が日本、韓国及び台湾へ輸出された。インドネシアでは従来、天然ガスの用途の主 目的を輸出用としてきたが、近年は石油生産量が減尐してきたため、石油代替とし て天然ガスを国内消費とする傾向が強くなった。しかし、国内消費を増加させるに は天然ガス流通インフラは不十分な状況にある。 c. 石炭 採掘可能な石炭埋蔵量は、55 億トン弱と想定されており、その 85%が褐炭及び亜 瀝青炭である。スマトラにはインドネシアの約3分の2の埋蔵量が見込まれており、 残り3分の1がカリマンタン、 ジャワ西部及びスラウェシに分布する。2004 年には インドネシアで 1 億 4,200 万トン弱(MMst)が生産された(2000 年比で 68%増)。 2004 年のインドネシアでの石炭消費量は 2400 万トン弱(MMst)とほぼ横ばいである。 インドネシアは世界第2位の石炭輸出国で、2004 年の輸出量は 1 億 1,800 万トン弱 (MMst)である。 インドネシアは 2004 年 1 月に新たな石炭開発・利用計画を策定した。これは、国 内需要に対応するため、また、石炭輸出量を長期的に増加させることを目的に石炭 資源の開発を促進させることをねらいとしている。

(2) プロジェクトの対象セクターの概要

1. インドネシア国電力セクター インドネシアは 1997 年のアジア経済危機の際に ASEAN 諸国の中でも最も大きな影 響を受けた。しかしながら、インドネシアの経済状況は、経済危機後の様々な政策改 革や国内外の投資に支えられて大きく改善した。今日では同国の経済は着実に拡大し

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は 133.11TWh を記録し、前年度に比べて 4.3%増加している。2010 年の「国家電力開 発計画」( RUPTL 2010 - 2019)では、同国の電力需要のピークは年間平均 9.5%の割 合で増加し、2019 年には 59,863 MW に達すると予測されている。電力量については電 力需要のピークよりも高い割合で増加し、2019 年には 334.4TWh に達するものと予測 されている。インドネシアの電力セクターでは、エネルギーの安定供給のために需要 に見合うように発電所を建設することが緊急課題のひとつである。ジャワ-バリ系統 における電力需要は国全体の 78.2%を占めるため、この系統内での発電所建設が最重 要である。このため、インドネシア政府は、ジャワ-バリ系統に対して 10,000MW の 開発を行なう目的で大統領令として「Crash Program」を 2006 年に公布している。現 在、このプログラムを履行する作業が進められている。さらに、地方電化や地方経済 の拡大に伴って電力需要は急速に増加するため、ジャワ-バリ系統以外の系統の電力 開発も重要である。このため、インドネシア政府によって 2010 年に「Crash Program」 の第二弾が公布された。このプログラムは、ジャワ-バリ系統以外の系統に対して 10,000MW の開発を行なうものである。ジャワ-バリ系統以外の系統の発電設備は IPP による地熱発電設備を主とする再生可能エネルギーで開発を進めることとしている。 インドネシア国の電力セクターが直面している別の緊急課題は、エネルギー源の多 様化である。原油の高騰を考慮すれば、発電コストの抑制と安定したエネルギー供給 のためにはエネルギー源としての石油依存率を低下させる必要がある。このため、イ ンドネシア政府は「国家エネルギー政策(National Energy Policy: NEP)」を 2002 年に策定し、2020 年までに一次エネルギーの5%以上を再生可能エネルギーでまかな う目標を立てている。この目標達成のために、政府は同国内に豊富に賦存する地熱エ ネルギーに重要な役割を与えている。 2. インドネシア国の電力需給の現状 2009 年の電力需要(販売電力量)は 133.11TWh であった。この 133.11TWh の電力需 要に対し 30,320MW の発電設備で対処した。発電設備の内訳は、汽力 11,700MW(38.6%)、 ガスコンバインドサイクル発電 7,521MW(24.8%)、水力 3,648MW(12.0%)、ディー ゼル 2,619MW(8.6%)、ガスタービン 3,116MW(10.3)、地熱 1,105MW(3.6%)となっ ている。2009 年には、契約口数が 4,100 万口で 2005 年に比較して 16%の増加となっ ている。電力に対する潜在的需要家がいるのでそれに見合う電力供給ができるならば 契約口数は今まで以上に伸びると見込まれる。 インドネシアの国内の電力系統は、連携された電力系統と孤立した電力系統との二 つに分類することが可能である。ジャワーマドゥラーバリ(Java-Madura-Bali)系統

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第1章 相手国、セクター等の概要 いる。しかしながら、送電線の長さに対し系統電圧が 150kV と比較的低いので、スマ トラ島の電力系統は北と单でそれぞれ独立して運用されている。この2系統以外の電 力系統は相対的に開発が遅れており、各系統の連携は不十分である。これらの電力系 統は小規模な系統と系統から孤立したさらに小さな系統から構成となっており、独 立・孤立した地域が依然として多く存在している。発電設備の系統別分布をみるとジ ャワーマドゥラーバリ系統に 22,906MW(75.7%)の設備が集中し、ついでスマトラ系 統に 4,598MW(15.2%)の設備が存在し、両系統で全体の 90.7%を占めている。 3. インドネシア国の地熱開発の現状と動向 インドネシアは世界でも有数の地熱資源保有国である。火山国である日本と同様に、 インドネシアはプレート境界近くに位置している。すなわち、インドネシアのスマト ラ島からジャワ島を経てヌサテンガラ諸島へいたる島々の单側には、スンダ海溝から ジャワ海溝を経てティモールトラフへ至る海溝・トラフがあり、総延長 7,000km にも 達するユーラシアプレートとインド-オーストラリアプレートとのプレート境界と なっている(図1-4)。このプレート境界に随伴した数多くの活火山がスマトラ島 からヌサテンガラ諸島にかけて海溝とほぼ平行に分布している。これらの火山列に伴 って、スマトラ島やジャワ島、ヌサテンガラ諸島などに数多くの高温地熱系が形成さ れている(図1-4及び表1-1)。また、フィリピン海プレートとユーラシアプレー トとのプレート境界となっているフィリピン海溝に近いスラウェシ島やモルッカ諸 島にも火山列が認められ、これらの火山列に沿っても数多くの高温地熱系が形成され ている。なお、この火山列はフィリピン海溝に沿って北側に位置するフィリピンのミ ンダナオ島、レイテ島、ルソン島へと連なっており、トンゴナンやバクマンなど多く の高温地熱地帯が形成されている。 スマトラ島では、北西-单東方向に延びるスンダ海溝とほぼ平行に大スマトラ断層 (Great Sumatra Fault, GSF)と呼ばれる大構造線が北西から单東に島を縦断してい る(図1-5)。この断層は右横ずれ断層(断層の東側が西側に対して单東方向にず れている)である。スマトラ島内の火山は、大局的に見ると、この断層にほぼ沿って 北西から单東に連なるように分布している(詳細に見れば、北東-单西方向の火山列 が北西-单東方向に配列しており、全体としては、北西から单東に火山が配列してい るように見える。このような火山の配列は、プレート境界に位置している弧状列島に 特徴的な配列である)。また、サルーラやルムットバライ、ウルブルなどの地熱地帯 もこの断層沿いの火山群に伴われるように分布している。なお、大スマトラ断層沿い の地熱地帯の大部分では、地熱貯留層が主として断層に関連した割れ目に形成されて

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スンダ海溝はジャワ島の单側で西北西-東单東方向のジャワ海溝に連なっている。 ジャワ島では、スマトラ島とは異なり、大スマトラ断層のような大構造線は認められ ていない。火山の配列を見ると、全体としてジャワ海溝とほぼ平行に西北西-東单東 方向に連なっており、地熱地帯もこの火山列に沿って分布している(図1-6)。イ ンドネシアにおける主要な地熱発電所が建設されている西ジャワ州の地熱地帯(カモ ジャンやワヤンウィンドゥなど)では、熱水貯留層の上に蒸気卓越型貯留層が比較的 大規模に発達している。主要な生産井はこの蒸気卓越型貯留層から蒸気を生産してい る。このため、蒸気生産に伴って生産される熱水の量は比較的尐なく、必要となる還 元井の数が尐ないという特徴を持っている。 インドネシアでは、地熱開発有望地域として 265 地域が抽出されている。この有望 地域の中で高温が確認されているのは 70 地域である。2000 年には高温が確認されて いる有望地域のうち 24 地域で坑井掘削が行われ、20,000MW のポテンシャルが見積も られた。現在 15 地点で開発が進められており、確認されたポテンシャルは 2,250MW である。インドネシアにおける既設地熱発電所は、表1-2に示すようにスマトラ島 の北スマトラ州にあるシバヤク地熱発電所(設備容量 12MW)、ジャワ島の西ジャワ州 にあるカモジャン地熱発電所(設備容量 200MW)、サラク地熱発電所(設備容量 376.8MW)、 ダラジャット地熱発電所(設備容量 257.8MW)、ワヤンウィンドゥ地熱発電所(設備容 量 227MW)、中部ジャワ州にあるディエン地熱発電所(設備容量 60MW)及びスラウェ シ島の北スラウェシ州にあるラヘンドン(設備容量 60MW、バイナリー発電プラントを 除く)である。この発電設備容量は全ポテンシャルの4%程度にすぎない。なお、ス マトラ島のサルーラやルムットバライ、ウルブル、ジャワ島のパトゥーハ(西ジャワ 州)では地熱発電所建設を目指した地熱開発が進められており、ジャワ島のカモジャ ン、ワヤンウィンドゥ、ディエン、スラウェシ島のラヘンドンでは増設計画が進めら れている。 インドネシアの国内経済はアジア通貨危機から脱却し、順調な回復・発展を遂げて いる。このため、国内エネルギー需要も増大しているが、他方で、既存油田の生産力 低下、設備の老朽化などから、石油供給力は低下している。 このような事態に危機感を抱いたインドネシア政府は、石油依存体質からの脱却を 図るため、エネルギーの多様化、国産エネルギーの開発促進を図ることとした。この ため、2002 年には「国家エネルギー計画(National Energy Policy: NEP)」を策定し、 2020 年までにエネルギー利用の5%以上を再生可能エネルギーにより供給すること を目標とした。さらに、2006 年には「国家エネルギー政策に関する大統領令(2006 年第5号)」の発布し、国家エネルギー政策を大統領令という形でより高レベルの国 家政策に位置づけた。一方、これと並行して、インドネシア政府は内外の民間企業の

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第1章 相手国、セクター等の概要

体化するため、2004 年、「地熱開発ロードマップ(Road Map Development Planning of Geothermal Energy)」(以下、「ロードマップ」という)を策定し、2020 年に 6,000MW、 2025 年には 9,500MW の地熱発電を行うという高い開発目標を設定した。このように、 同国の地熱開発は新たな開発推進の枠組みが整備され、積極的な開発に向けてそのス タートが切られたところである。

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図 1-4 インドネシアにおける火山と主要地熱地帯の分布

(a)火山分布

(出典: T. Simkin and L. Siebert (1994))

(b)地熱地帯分布 (出典: MEMR (2009)) ジャワ スン バワ ジ ャ ワ 海 フ ロ ー レ ス 海 モ ル ッ カ 海 バ ン ダ 海 カ リマン タン スラ ウェ シ フロ ーレス ティモール モルッカ 諸島 パプ ア ユーラシアプレート インド-オーストラリアプレート イ ン ド 洋 スマトラ バリ ニ ュ ー ギ ニ ア海 溝 フ ィ リ ピ ン 海 溝 ジ ャ ワ 海 溝 0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0 1 0 0 0 k m フ テ ィ モ ー ル ト ラ ス ン 海 ダ 溝 太 平 洋 フィリピン海プレート N E S W 海溝(トラフ) 凡 例 第四紀火山 0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0 1 0 0 0 k m N スン バワ ジ ャ ワ 海 フ ロ ー レ ス 海 バ ン ダ 海 ジャワ カ リマン タン フロ ーレス ティモール スマトラ バリ 太 平 洋 スラ ウェ シ パプ ア フィリ ピン海プレート ユーラシ ア プレート インド-オーストラリ ア プレート イ ン ド 洋 モ ル ッ カ 海 モルッカ 諸島 ニ ュ ー ギ ニ ア海 溝 フ ィ リ ピ ン 海 溝 ジ ャ ワ 海 テ ィ モ ー ル ト ラ ス ン 海 ダ 溝 海溝(トラフ) 凡 例 主要地熱地帯

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第1章 相手国、セクター等の概要

図 1-5 スマトラ島の大構造と主要地熱地点

1 Iboih 15 Kafi 29 Namora Ilangit 43 Sumani 57 Graho Nyabu 71 Wai Selabung

2 Lhok Pria Laot 16 Gunung Kembar 30 Sibubuhan 44 Priangan 58 Sungai Tenang 72 Wai Umpu

3 Jabol 17 Dolok Perkirapan 31 Sorik Marapi 45 Bukit Kili 59 Tambang Sawah 73 Danau Ranau

4 Ie Seum-Krueng Raya 18 Beras Tepu 32 Sampuranga 46 Surian 60 Bukit Gedong-Hulu Lais 74 Purunan

5 Seulawah Agam 19 Lau Debuk-Debuk-Sibayak 33 Roburan 47 Gunung Talang 61 Lebong Simpang 75 G. Sekincau

6 Alur Canang 20 Marike 34 Simisioh 48 Muaralabuh 62 Suban Gergok 76 Bacingot

7 Alue Long-Bangga 21 Dolok Marawa 35 Cubadak 49 Liki-Pinangawan 63 Sungai Liat 77 Suoh-Antatai

8 Tangse 22 PusukBuhit-Danau Toba 36 Talu 50 Pasir Pangarayan 64 Pangkal Pinang 78 Fajar Bulan

9 Rimba Raya 23 Simbolon-Samosir 37 Panti 51 Gunung Kapur 65 Air Tembaga 79 Natar

10 G. Geureudong 24 Pagaran 38 Lubuk Sikaping 52 Gunung Kaca 66 Tanjungsakti 80 Ulubelu

11 Simpang Balik 25 Helatoba 39 Situjuh 53 Sungai Betung 67 Rantau Dedap-Segamit 81 Lempasing

12 Silih Nara 26 Sipaholon Ria-Ria 40 Bonjol 54 Semurup 68 Lumut Balai 82 Wai Ratai

13 Meranti 27 Sarula 41 Kota Baru-Marapi 55 Lempur 69 Ulu Danau 83 Lalianda

N 0 100km 溝 ス ン ダ 海 J a m bi Pa ng k a l pi na ng Kua l a l um pur MALAYSIA THAILAND B a nda A ceh Meda n Pek a nba ru Pa l em ba ng B a nda r La m pung J a k a rta Ta nj ung pi na ng Sera ng D . To ba E QA TOR インド洋 インド-オーストラリアプレート ユーラシアプレート Pa da ng GREAT SUMATRA断層 SINGAPORE B eng k ul u 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 68 69 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 70

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図 1-6 ジャワ島の大構造と主要地熱地点

(出典: MEMR (2009))

表 1-1 インドネシアにおける地熱資源量の見積もり

資源量(MWe)

設備容量

Speculative Hypotetic Possible Probable Proven

スマトラ 4,925 2,076 5,983 15 380 12 ジャワ 1,935 1,946 3,415 885 1,815 1,117 バリ 70 - 226 - 15 ヌサテンガラ 340 359 747 - 15 カリマンタン 45 - - - - スラウェシ 1,000 127 992 150 78 60 マルク 545 43 341 - - パプア 75 - - - - 合 計 265 地域 8,935 4,551 11,369 1,050 2,288 合計 1,189 13,486 15,042 総計:28,528 (出典: MEMR (2009)) N JAKARTA Bandung Serang Sem arang Surabaya Yogyakarta 0 100km 86 85 87 88 89 90 91 92 93 94 95 97 99 96 98 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 116 113 112 111 114 115 117 118 122 119 120 121 123 124 125 126 127 128 129 130 131 133 132 134 135 136 137 138 144 139 140 141 142 143 145 146 147 148 149 150 151 152 154 153 155 イ ン ド 洋 ジ ャ ワ 海

85 Rawa Dano 96 Selabintana 107 Tangkuban Parahu 118 Gunung Galunggung 129 Cibingbin 140 Candi Umbul-Telomoyo 151 Songgoriti

86 Gunung Karang 97 Cisolok 108 Sagalaherang 119 Ciheuras 130 Banyugaram 141 Kuwuk 152 Tirtosari

87 Gunung Pulosari 98 Gunung Pancar 109 Ciarinem 120 Cigunung 131 Bumiayu 142 Gunung Lawu 153 Iyang-Argopuro

88 Gunung Endut 99 Jampang 110 G. Papandayan 121 Cibalong 132 Baturaden 143 Klepu 154 Tiris

89 Pamancalan 100 Tanggeung-Cibungur 111 G. Masigit-Guntur 122 Gunung Karaha 133 Guci 144 Parangtritis 155 Blawan-Ijen

90 Kawah Ratu 101 Saguling 112 Kamojang 123 Gunung Sawal 134 Mangunan-Wanayasa 145 Melati

91 Klaraberes 102 Cilayu 113 Darajat 124 Cipanas-Ciawi 135 Candradimuka 146 Rejosari

92 Awi Bengkok 103 Kawah Cibuni 114 Gunung Tampomas 125 Gunung Cakrabuana 136 Dieng 147 Telaga Ngebel

93 Ciseeng 104 Gunung Patuha 115 Cipacing 126 Gunung Kromong 137 Krakal 148 Gunung Pandan

94 Bujal-Jasinga 105 Kawah Ciwidey 116 Wayang-Windu 127 Sangkanhurip 138 Panurisan 149 Gunung Arjuno-Welirang

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第1章 相手国、セクター等の概要 表 1-2 インドネシアの地熱発電所 (出典: SNC 調査団作成) 発電所 地域 Unit MW タービンメ ーカー 運転開始 蒸気供給 発電 シバヤク 北スマト ラ #1 2 Unknown 1996 PT. Pertamina #2 5 Unknown 2007 PT. Pertamina PT. Dizamatra #3 5 Unknown 2007 サラク 西ジャワ #1 60 ANSALDO 1994 Chevron Geothermal Indonesia PT. PLN #2 60 ANSALDO 1994 #3 60 ANSALDO 1994 #4 65.6 Fuji 1997 Chevron Geothermal Indonesia #5 65.6 Fuji 1997 #6 65.6 Fuji 1997 ワ ヤ ン ウ ィンドゥ 西ジャワ #1 110 Fuji 2000 Mandala Nusantara Ltd #2 117 Fuji 2009 カ モ ジ ャ ン 西ジャワ #1 30 MHI 1983 PT. Pertamina PT. PLN #2 55 MHI 1988 #3 55 MHI 1988 #4 60 Fuji 2008 PT. Pertamina ダ ラ ジ ャ ット 西ジャワ #1 57.8 MHI 1994 Chevron Geothermal Indonesia PT. PLN

#2 90 MHI 2000 PT. Chevron Geothermal Indonesia

#3 110 MHI 2007 ディエン 中央ジャ

ワ #1 60 ANSALDO 1999 Geodipa Energi

ラヘンドン 北スラウ ェシ #1 20 ALSTOM 2001 PT. Pertamina PT. PLN #2 20 Fuji 2007 PT. Pertamina PT. PLN #3 20 Fuji 2009 PT. Pertamina PT. PLN 合計 1,193.6MW

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(3) 対象地域の状況

1. インドネシア国ブンクル州の社会的状況 本調査の対象範囲は、インドネシア・スマトラ島の单西地域にあるブンクル州に位 置している。ブンクル州は西スマトラ州、ジャンビ州、单スマトラ州、ランプン州に 接しており、フルライス地域は州都ブンクルの北方約 50km のところに位置し、山脈 を挟んで单スマトラ州がある。 ブンクル州の総面積は 19,789 km2であり全国の1%である。国による 2010 年の推 定では、ブンクル州の総人口は 1,713 千人であり、国全体の人口の 0.7%である (Population of Indonesia by Province 1971, 1980, 1990, 1995 , 2000 and 2010)。 ブンクル州における 2008 年の国内総生産(GDP)は推計 14 兆 4,470 億 IDR であり、 全国の 0.3%を占める。産業別の地域総生産は農業 5 兆 9,022 億 IDR(41%)、鉱業 4,541 億 IDR(3%)、製造業 5,694 億 IDR(4%)、電気・ガス・水道 681 億 IDR(0%)、 建設業 4,400 億 IDR(3%)、商業・観光業 2 兆 8,462 億 IDR(20%)、運輸・通信 1 兆 2,524 億 IDR(9%)、金融 6,326 億 IDR(4%)、公務員・サービス業 2 兆 2,820 億 IDR(16%)となっている。ブンクル州は農業が州の主な産業で、製造業もその多 くが農産品の加工である。ホテルやレストランなどの観光業も地域総生産の1%程度 と主要な産業になっていない。これらの数値が示すように、他の州と比較するとイン ドネシアの中でも発展が遅れている地域である。これは主にブンクル州が石油や天然 ガスなどの鉱物資源に恵まれず、消費地から離れているという地理的特性によるもの である。ブンクル州の人口に対する貧困層の割合はインドネシア全国平均の 14.15% よりも高く、18.59%となっている。(2009 年3月現在) 2. スマトラ島の電力需給状況 スマトラ系統の発電設備容量は、表1-3に示すように 2009 年に 4,070MW に達し た。しかしながら、設備容量の 378MW(9.3%)は 20 年以上前に建設され、403MW(9.9%) を占めるディーゼル発電設備は技術的及び経済的理由によって 2007 年から廃止を進 めており、885MW(21%)である水力発電設備は季節によって出力が左右されること が設備上の問題点である。

(37)

第1章 相手国、セクター等の概要

表 1-3 スマトラ系統の発電設備容量(2009 年)

(出典: PT. PLN)

Name of PP Fuel Install Capacity

[MW] Net Capacity [MW] Northern Sumatra HPP Hydro 132.0 132 GTPP HSD 190.7 158.9 STCFPP MFO 260.0 220 STCFPP Coal 115.0 115 CCPP Gas/HSD 817.8 710 Diesel HSD 85.0 59.1

Micro Hydro Hydro 7.5 6.7

Geo PP Geo 10.0 10

Rent Diesel HSD 117.7 107

Sun Total 1735.7 1518.7

Southrn - Central Sumatra

HPP Hydro 716.1 711.3 GTPP Gas 356.5 323.2 GTPP HSD 85.4 7.6 STCFPP Coal 660.0 599.7 STCFPP Gas 25.0 22.3 CCPP Gas 280.0 273.4

Micro Gas Gas 11.6 11.6

Diesel HSD 147.0 107.5

Diesel IDO 25.2 24.2

Diesel MFO 28.2 26.2

Sub Total 2335.0 2107.0

(38)

図1-7にスマトラ島の送電線網を示す。送電系統は最も北に位置する NDA 地方から ランプン地方まで 150kV 送電線で結ばれている。2.で述べたように北と单の送電系統 は独立して運営されている。 図 1-7 スマトラ島の送電線網 (出典: RUPTL 2010-2019) 図1-8、表1-4に RUPTL に基づく 2010 年から 2019 年にかけてのスマトラ系統の 電力バランスを示す。 スマトラ系統の供給電力量は 2010 年の 21,533GWh から 2019 年の 54,807GWh と 2010 年から 2019 年にかけて年平均 10.9%で増加すると予測されている。負荷率は 65.4%か ら 66.9%になると見込まれる。2010 年に 3,743MW である最大電力は、年平均 10.7%で 増加し 2019 年には 9,355MW に達するであろう。なお、2008 年のブンクル州の電力需要 実績は 341,711MWh となっている。 187

(39)

第1章 相手国、セクター等の概要 る。さらに、発電設備容量は発電機器の定期修繕、事故停止、水力発電所に流れ込む水 量低下など種々の要因で頻繁に低下することに留意が必要である。 図 1-8 スマトラ系統の電力需給バランス(2010~2019 年) (出展:RUPTL 2010-2019) 4,572 5,200 6,192 6,635 8,531 9,051 9,625 10,130 10,860 11,790 150 650 900 1,425 1,725 2,125 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 Year MW

(40)

表 1-4 スマトラ系統の電力需給バランス(2010~2019 年) (出展:RUPTL 2010-2019) Year 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 Demand Energy production GWh 21,533 23,470 25,707 28,345 31,829 35,805 40,266 44,886 49,626 54,807 Peak load MW 3,743 4,099 4,487 4,958 5,553 6,219 6,965 7,731 8,505 9,355 Load factor % 66 65 65 65 65 66 66 66 67 67 Supply

Existing Installed capacity MW 4,038 3,778 3,621 3,006 3,006 3,006 2,940 2,940 2,940 2,940

PLN 3,683 3,387 3,230 2,680 2,680 2,380 2,680 2,680 2,680 2,680 IPP 260 260 260 260 260 260 260 260 260 260 Lease 95 131 131 66 66 66 PLN projects 354 815 1,734 2,304 2,614 2,614 3,089 3,764 4,064 4,464 Ongoing Projects 354 815 1,634 1,534 1,534 1,534 1,534 1,534 1,534 1,534 Planned Projects 0 0 100 770 1,080 1,080 1,555 2,230 2,530 2,930 IPP 180 607 837 1,324 3,060 4,080 4,495 4,850 5,580 6,510 Ongoing Projects 180 407 407 407 407 407 407 407 407 407 Simpang Belimbing PLTG 227 Asahan I PLTA 180 Planned Projects 0 200 430 917 2,653 3,673 4,088 4,443 5,173 6,103

Sewa PLTG Jambi Merang PLTG 200 200 -200 -200

Gunung Megang, ST Cycle PLTGU 30

Banjarsari PLTU 100 100

Jambi (Infrastruktur) PLTU 400 400

Sumsel - 2 (Keban Agung) PLTU 112 112

Sumsel - 6, Mulut Tambang PLTU 300 300

Riau Mulut Tambang (Cirenti) PLTU 300 300

Tarahan #1,2 PLTU 200 200 Sumbar - 1 PLTU 200 Sumsel - 5 PLTU 150 150 Sumsel - 7 PLTU 150 150 Sumut - 2 PLTU 225 Ulubelu #3,4 (FTP2) PLTP 55 55 Lumut Balai (FTP2) PLTP 220 Seulawah (FTP2) PLTP 55 Sarulla I (FTP2) PLTP 220 110 Rajabasa (FTP2) PLTP 220 Muara Laboh (FTP2) PLTP 220 Rantau Dedap (FTP2) PLTP 220 Sarulla II (FTP2) PLTP 110 Wai Ratai PLTP 55 Pusuk Bukit PLTP 55 55 Sorik Merapi (FTP2) PLTP 55 Sipaholon PLTP 55 G. Talang PLTP 20 Suoh Sekincau PLTP 55 55 Danau Ranau PLTP 110 Wampu PLTA 45

Lawe Mamas PLTA 60 30

Asahan #4,5 PLTA 60

Simpang Aur (FTP2) PLTA 29

Total Capacity MW 4,572 5,200 6,192 6,635 8,681 9,701 10,525 11,555 12,585 13,915

Dependable Capacity excluding

Unnamed projects MW 4,572 5,200 6,192 6,635 8,531 9,051 9,625 10,130 10,860 11,790

Unnamed projects MW 0 0 0 0 150 650 900 1,425 1,725 2,125

(41)

第2章 調査方法

第2章 調査方法

(1) 調査内容

1. 調査内容 スマトラ島ブンクル州フルライス地域での 110MW 地熱発電事業を円借款により支援 できるように、本調査で地熱資源開発、発電所建設に関わる調査を実施し、地熱発電 円借款事業に必要な条件を検討し、適切な開発計画の提案を行い、事業化のための準 備を行う。 地熱発電所を建設し安定的に運転するには、①十分な地熱資源量があること、②電 力のニーズがあること、③周辺環境保全上の問題がないこと、④事業の経済・財務状 況が良好なこと等が必要である。本調査では、地熱資源調査では、①にかかわる地熱 資源の特性や開発可能量を把握し、②に関する既設発電所の設置地点、送電線、電力 需要を調査する。また、地熱発電所・送電線建設に関するエンジニアリング調査(電 気、機械)及び③、④に関する環境調査・事業財務経済分析を実施し、110MW 地熱発 電所建設計画策定に、これらのデータを地熱資源調査データと組み合わせて用いた。 本調査における調査項目は以下のとおりである。 (1)事業対象地点調査 地質調査 地化学調査 物理探査 地熱構造モデリングと地熱資源量(開発可能出力)評価 電力需要と送変電に関する調査 (2)事業計画提案 地熱資源調査・開発計画提案 発電設備・送変電設備建設計画提案 (3)環境社会配慮 (4)事業経済・財務評価 (5)報告書作成および新日本有限責任監査法人および関連機関への報告等

(42)

図 2-1 フルライス地域地熱発電開発の全体工程 (出典:SNC 調査団作成)

発電設備

坑井掘削・地熱発電所詳細設計 発電所建設

地熱資源

PT. PGE  地熱フィールドのデータ/情報収集  収集データ/情報の地球科学的レビュー  地熱概念モデルの構築  地球科学と環境情報のコンパイル  地熱資源容量の評価  現地情報収集  発電設備、送変電設備の想定、資機材コストの推定、環境対策

調査報告書作成

経済・財務分析

環境社会配慮

発電事業の ES ローン借款

坑井掘削

坑井調査

地熱資源開発の ES ローン借款

(43)

第2章 調査方法

2. 調査対象地点

調査対象地点はスマトラ島单部のブンクル州フルライス地域である(図2-2)。

図 2-2 調査対象位置図

(44)

(2) 調査方法・体制

1. 調査方法 現地において既存データを収集するとともに、現地調査を行い、収集したデータ・ 情報を日本国内で解析・検討・評価した。なお、現地調査については、2 回に分けて 実施した。第一次現地調査(平成 22 年 12 月中旬)では、関係機関への調査計画説明・ 聞き取り、地熱資源調査(既存データ収集)、発電・送変電設備調査、環境社会的側 面調査、経済・財務分析・調査を実施した。第二次現地調査で調査結果に関する説明 を行った。 国内作業では、現地で収集した情報・資料の取りまとめ、地熱構造・地熱資源量の 解析、地熱発電設備の概念設計、プロジェクトの経済・財務評価、環境社会的側面検 討、プロジェクトの総合検討および報告書作成を行った。 2. 調査体制 西日本技術開発株式会社は表2-1 に示すとおり調査チームを構成し、調査を実施 した。 表 2-1 調査実施体制 (出典:SNC 調査団作成) 西日本技術開発(株) プロジェクトマネージャー 大石公平 外注業者   -環境・社会データ収集整理   調査チーム ◎大石公平   総括、開発計画 地熱部 ◎島田寛一  資源評価  地熱部 ◎赤迫秀雄  資源調査・評価(地質、坑井地質)、地熱部地域地熱グループ ◎内山明紀  資源調査・評価(地化学、坑井化学調査)  地熱部資源調査グループ ◎福岡晃一郎 資源調査・評価(物理探査) 、地熱部 資源解析グループ ◎長野洋士  環境・社会分析、プロジェクト計画  地熱部 ◎鬼木茂   送変電設備検討・送電計画・電力事情調査 海外営業部  藤井建次  経済・財務分析、プロジェクト計画、海外営業部 矢原哲也  資源量評価(貯留層)、資源開発計画 地熱部 和田隆行  資源調査・評価(坑井調査) 資源開発グループ  池田哲   坑井掘削調査・資源開発計画(坑井掘削計画) 地熱部掘削監理グループ  塩塚政夫   発電設備、地熱流体輸送設備  地熱部設備設計グループ 高藤剛     発電設備、地熱流体輸送設備  地熱部設備設計グループ 義山弘男   資源調査・評価(地質) 地熱部地域地熱グループ 松田鉱二   資源調査・評価(地化学,坑井化学調査) 地熱部 資源解析グループ 大山悦夫    発電設備 調査 ・発電所建設計画 火力管理部海外グループ 古賀正明    発電設備調査 発電所建設計画  火力管理部

(45)

第2章 調査方法

(3) 調査スケジュール

本調査は、平成 22 年 11 月 29 日から平成 23 年 2 月 21 日までの工期で実施された (図2-3)。 図 2-3 調査スケジュール 2010 年 12 月 2011 1 月 2011 年 2 月 (現地調査) ①プロジェクト情報、既存データ収集 ②調査結果説明・協議 (国内作業) ①現地調査準備 ②現地調査取りまとめ、地熱資源量評 価、電力・社会・環境分析、事業計画 策定等、ドラフト報告書取りまとめ ③事業経済・財務評価 ④総合検討・報告書取りまとめ (SNC 等関係機関への報告) ①中間報告 ②最終報告会 (出典:SNC 調査団作成) 1. 第1回現地調査 第1回現地調査では、平成 22 年 12 月 12 日から 12 月 18 日の間に、相手国機関等への 調査内容説明、プロジェクト情報・既存データ収集と、フィールド調査を実施した(表 2-2)。 ▼ ▼

図 1-2  インドネシアの GDP 推移  (出典:BPS ホームページ)2008年、2009年は暫定値01,0002,0003,0004,0005,0006,000199920002001200220032004200520062007200820092010名目GDP実質GDP(2000年物価換算)兆ルピア
図 1-4  インドネシアにおける火山と主要地熱地帯の分布
図 1-5  スマトラ島の大構造と主要地熱地点
図 1-6  ジャワ島の大構造と主要地熱地点
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参照

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