第3章 プロジェクトの内容および技術的側面の検討
2. フルライス地点における課題とその解決策
フルライス地点に関しては、開発対象となる地熱貯留層が掘削によって確認され ていないために地熱資源そのものにも技術的に解明すべき課題が残っている。地熱 資源の評価を行うには、今回得られたフルライスのデータは十分ではない。したが って、資源開発に関わるリスクは比較的高いといえる。このリスクを低減するため には調査井による地熱構造モデルの確認、地熱流体の化学的性状、地熱貯留層温度、
透水性など地熱資源に関する情報を得ることが不可欠である。さらにリスクを低減 するには、貯留層シミュレーションを行うことが望まれる。
開発段階に進めていくためには、尐なくとも、現在 PT. PGE によって掘削されて いる3本程度の調査井掘削で、複数の噴出流体を得ることが望まれる。噴出流体を 確認することによって開発可能な地熱貯留層の存在とその性状を把握できる。これ は発電所設計に不可欠と考えられる蒸気熱水の性状を得ることを意味する。今後、
望まれる調査項目を以下に示す。
調査井掘削、噴出試験、地熱資源量評価および総合解析
・ 調査井追加掘削(3本の調査井の掘削結果で追加掘削を判断する)
・ 追加掘削井に対する調査井検層、噴出試験
・ 地熱資源量評価(3次元貯留層シミュレーション)
実施可能性検討
・ 開発計画策定
・ 地熱発電所概念設計(発電所蒸気条件の検討)
・ 経済、財務性評価
環境影響評価
この調査の主要目的は下記のとおり
・ 地熱資源開発リスクの低減
・ 地熱資源の存在の確認
・ 発電に利用する資源の能力と性状の明確化
第3章 プロジェクトの内容および技術的側面の検討
ていないためにこの報告書の中で最適位置を断定することは困難である。この報告 書の発電所計画地点は、A、B、C 各基地から同じ量の同じ性状の地熱流体が噴出する ことを前提に選定している。実際には、調査井の噴出結果を得た上で、発電設備と 地熱流体輸送管の基本設計を行うが、その基本設計の検討の中で最適な発電所建設 地点も検討することとなる。ここでは参考に、既設および計画されている掘削基地 の配置から想定される発電所設置範囲を図3-33 に示す。また、この範囲の中で図 3-28 に示した発電所計画地点以外の発電所候補地点を3カ所示す。
図 3-33 発電所位置想定範囲図
(出典: SNC 調査団作成)
b. JICA・ES借款事業を実施するための条件について
円借款による事業支援を実現するためには、ES 借款事業では調査井データを用いた FS を実施する必要がある。地熱発電事業の場合、通常、資源開発リスクがあるが、こ のリスクがあまりにも大きすぎる場合には、技術的にも経済的にも困難な状況となり、
0 1 2km
N E S W
0 1 2
k m
発電所位置想定範囲発電所代替候補地
業では、地表調査が終了した段階で地熱資源の質や量について一定の判断基準を設定 しているのが一般的である。円借款事業に対しても、費用のかかる調査井掘削を含む FS を実施する場合を想定して、前述のように地熱資源の質・量に関する判断条件の設 定が提案されている。この条件をフルライス地域の地熱資源に適用し、ES 借款で開発 準備を行う価値があるかどうか検討した。検討結果は以下の通りである。
地熱資源の賦存; 地表調査結果の温泉水の化学特性より熱水卓越型(中性 Cl 型)の 地熱地貯留層の分布が推定された(FS では、調査井掘削及び噴気試験による確認 が望まれる)。
貯留層温度;温泉水及び噴気の化学組成から、250℃以上が推定された(FS では調査 井掘削、検層及び噴気試験による確認が望まれる)。
熱源; 定量的データは不足
熱水変質年代; 変質帯の分布、変質年代のデータ無
地質構造(透水性構造存在の可能性); 高透水性層を伴う断層の分布(FS では調査井 掘削、検層及び噴気試験による確認が望まれる。)
地熱資源量; 地表調査結果から 110 MW 以上の地熱資源の賦存
以上のように、本地域には、地表調査結果はすべての条件を満たすわけではないが、
質量共に計画された発電開発に適した地熱資源が賦存している可能は高いと判断さ れた。ES 借款による支援は、技術的面から見れば妥当なものと思われる。
c. 望ましい
ES
借款事業地熱資源開発・地熱発電所建設のための円借款事業準備のために、ES 借款事業で 実施するのが望ましい内容を以下にまとめた。調査井掘削が順調に進み貯留層に関す るデータが収集できれば、以下の作業を円滑に行うことが可能である。
a. PT. PGE の地熱資源(蒸気)開発について 1. 地熱資源量評価
1-1 地熱資源調査データ及び地熱構造概念モデルのレビュー 1-2 貯留層シミュレーションによる資源量評価と資源開発シナリオ 2. 資源(蒸気)開発計画立案(生産井・還元井掘削計画、配管計画)
2-1 坑井掘削計画及び FCRS 配管工事計画 2-2. 経費積算
第3章 プロジェクトの内容および技術的側面の検討
4. 全体事業費積算と経済・財務評価 5. 地熱資源開発事業実施計画作成
6. 生産井・還元井及び FCRS 配管に関する基本設計
7. 掘削工事・配管工事の各業者の PQ 審査準備及び審査支援
b. PT. PLN の地熱発電所及び送電線建設について 1. 電力需給調査
2. 地熱発電所、付帯設備、送電線建設のための概念設計 2-1地熱発電所建設のための概念設計と建設計画
2-2 経費積算
3. 社会及び自然環境配慮のためのコンサルティングワーク 4. 全体事業費積算と経済・財務評価
5. 地熱発電所建設及び送電線建設事業実施計画作成 6. 地熱発電所建設及び送電線建設に関する基本設計
7. 建設工事のための EPC コントラクターPQ 審査準備及び審査支援 8. 地熱発電所建設・送電線建設のための環境影響評価(AMDAL)
現在掘削中の調査井により貯留層の確認が出来なかった場合には、PT.PGE の実施す る ES 借款事業に3本程度の調査井掘削を含めるのが望ましい。
<参考文献>
Bambang Budiardjo, Djoko Hantono, Heni Agus and Nugroho, (2001) Geochemical characterization of thermal waters in hululais geothermal prospect, Stanford Geothermal Workshop
Sasaki, Y. (2004) Three-dimensional inversion of static-shifted magnetotelluric data, Earth Planets Space, 56, 239-248.
Tokita H., Momita M., Matsuda K., Takagi H., Tosha T., and Koide K. (2002)