• 検索結果がありません。

第 3 章 研究方法

3.4 データ分析

49

完了時間を計測すると共に、参加者の様子を細かく観察し、記録した。8秒以上の沈黙には

「今、何を考えていますか。」と問うた。3 秒以上のポーズについては、ライティング直後 に、録画映像を使用し、インタビューして何を考えていたのかを確認した。インタビュー では、ライティング背景についても調査した。インタビュー方法について、次の項で述べ る。

3.3.2 インタビュー

ライティング直後にインタビューし、録画映像の助けも借りて、思考発話プロトコル・

データを補足した。インタビューでは、発話されなかったライティング方略の使用や、特 定のライティング方略を使用した理由について確認した。また、ライティングの背景を知 るため、ライティング経験についても質問した。Hirose (2005, p.243) やBeare (2000, p.102) の アンケートも参考にし、一部インタビューに取り入れた。本研究が発話データの補足にア ンケートではなくインタビューを採用したのは、直前に行ったライティングについて、観 察記録やビデオ映像で確認しながら、ライティング中の実際のふるまいについて詳しく調 査することができるからである。インタビューの主な質問事項については、付録 8 を参照 のこと。

50

・書きながら書く言葉を発話しているときの、書く速度が発話に追いつかないための繰 り返しは独立したセグメントと見なさない。

・次の言葉を書きつなぐための、直前の一語程度の読み返しは独立したセグメントと見 なさない。

書く速度に追いつかないための沈黙や繰り返しは、頻繁に生じる可能性がある。これを セグメントとみなすことには意味がなく、逆に分析の妨げになるだろう。同様に、単に次 の文に書きつなぐための直前の一語程度の読み返しも、何らかの意図があっての書かれた テクストの読み返しや、句レベル以上の読み返しとは区別した方がよい。

セグメント化基準に従って、セグメントに分けてセグメントごとに改行し、全てのセグ メントに通し番号を打った。また、0-1、1-2 のように、1 分毎の内容が分かるように印 を入れた。最後に、コード化してライティング方略を示す範疇の記号(SQ=自問、P=ポー

ズ、G=アイディア創出、RA=課題の確認、F=文章化、など)を通し番号の横に付した。分

析のための準備ができたプロトコルの一部を以下に示す。L2 能力の高い学生グループに属 する参加者の、ライティング開始6分から8分までの、2分間のプロトコルである。より長 い時間のプロトコルについては付録9を参照のこと。

6-7

家族と一緒に過ごす時間が少ない、家族の影響は、受けてない(言いながらメモに「家」

と書く)、

36.(SQ)けど、親のしつけがしっかりしてる?

37.(P)んー、

38.(G)親のしつけが、親が塾に通わせてる、そうだな、塾通いをきっちりするってことは、

親に言われて小学校の頃から行ってる、

39.(SQ)親の言うことを素直に聞いて行ってるってことは、親のしつけの仕方がうまいって こと?(言いながらメモに「子」と書く)

40.(RA)(プロンプト読む。書き出しで聞かれたことに答えるため。)“あなたは、この考え に”

7-8

(7’00”書き出し)

41.(F)私は、この考えに賛成、賛成です。なぜなら、以下の2つの要因、

プロトコル・データをコード化するための範疇は、Hayes & Flower (1980) に基づきVan Weijen (2009) が設定した範疇を基盤とした(本研究のコード化範疇と定義については付録 10 を参照)。ただし、「計画」と「評価」の下位範疇については、それらの範疇に包括的で

51

あるか局所的であるかの区別を設けるSasaki (2000) に準じた。先行研究の結果から、L2能 力の異なるグループの比較において、「包括的 / 局所的」の区別を設けた「計画」や「評価」

の方略使用を見ることが重要と判断したためである。また、「メタ認知方略」(「計画」、「評 価」、「モニター」)に焦点を当てるため、「リハーサル」と「自問」の範疇を付け加えた。

即ち、「リハーサル」は「計画」と区別するために設定した。また、内田 (1986) の言うよ うに、ライティング・プロセスが伝えたいことと生みだされた表現とのズレを調整しよう とする自己内対話であるとすれば(p.166)、「自問」はライティング・プロセスをモニター している可能性があるため、範疇に加えた。コード化は、ランダムに 3 名分のプロトコル を選択し、全体の35.9%に当たる1,297のセグメントについて、実験者(第1コーダー)と 大学非常勤英語講師(第 2 コーダー)との 2名で行った。分析結果における内的妥当性を 確保するため、コード化において意見の相違が見られた全てのセグメントについて、第 1 コーダーと第 2 コーダーとの間で、判断の基準についての話し合いを重ね、コード化の詳 細な基準を確立していった。更に、コード化の信頼性を検討するために、SPSS Statistics 17 を用いてカッパ係数を求めた結果、k=0.948という実質的に一致しているとみなされる高い カッパ係数が確認されたため、残り 7名分のプロトコルのコード化については、第 1 コー ダーが一人で行った。

本研究では、上述の精確なセグメント化基準による分析に加えて、ライティング・プロ セスを意味内容のまとまりである「エピソード」に分け、グループ毎のライティング方略 の使用を確認している。「エピソード」の定義と判断基準はVan Weijen (2009, p.121) に従い、

エピソードを「ライティング・プロセス内の比較的独立した単位」とし、①パラグラフな どのひとまとまりが終わったことを表す発話(「次のパラグラフ」、「これが導入」など)、

②活動から活動への移行(文章化や修正から課題の確認への移行など)、③7 秒以上の長い ポーズ、あるいはポーズとためらいの組み合わせ、の 3 基準によりプロトコルを「エピソ ード」に分けた。エピソードの判断は、実験者が2週間の期間を空けて2回行い、91.1%の 一致を確認した(全エピソード数338中308一致)。プロトコルを「エピソード」に分ける ことにより、「エピソード」のはじまりにはどのようなライティング方略が使用されている のか、即ち、ライティング・プロセスのまとまりを導くのはどのような方略であるかを見た。

本研究では、L1、L2のライティング・プロセスを比較するため、ライティング方略のバ リエーションが同じ書き手であれば言語間で一致しているのか、グループ間では異なるの かを確認した。また、ライティング方略の使用回数とライティング・プロセス全体に占め る割合を算出し、グループと個人のライティング方略使用の特徴を調査した。更に、メタ 認知方略である「包括的計画 / 評価」、「局所的計画 / 評価」、「自問」の使用がグルー プ間や言語間で異なるかに焦点を当てて分析した。

書かれたプロダクトの評価については、L1、L2プロダクトに対してそれぞれ2人の評価 者の合計点を用いた。L1プロダクトは、教職経験30年以上の高校国語教諭と、実験者が、

52

総合的評価を1カ月程度の時間を空けてそれぞれ 2回行い、評価の平均点を合計した。L2 プロダクトは、大学の非常勤英語講師と英会話学校の教師である 2 人の英語母語話者が、

Jacobs.et al. (1981) のESL Composition Profileを用いて、内容、構成、語彙、言語使用、句読 点や綴りなどの機械的技能の 5 項目について、分析的評価を行った。評定者間信頼性は、

L1プロダクトにおいてはピアソンの相関係数r=0.70、L2プロダクトにおいてはr=0.92で あった。L1ライティングとL2ライティングに、総合的評価と分析的評価という異なる評価 形式を用いているのは、英語のプロダクト評価のために作成された評価基準を日本語ライ ティングに適用することは適切でないというL1評価者の判断による。また、総合的評価と 分析的評価は高い相関関係にあり、それらの結果にはほとんど差がないという研究結果が 報告されている(水本, 2008; Van Weijen, 2009)。プロダクトの評価結果により、L2能力との 関係や、計画や評価における包括的 / 局所的方略の使用が、プロダクトの質に反映されて いるかを確認した。

他には、ライティングの流暢さとしてのL1、L2プロダクトの総字数・総語数、1分あた りの産出字数・語数を確認した。また、ライティング総時間、ライティング計画時間を調 査した。