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第五章  ケニア国学習指導要領の動詞 による分析

第四節  ケニアと日本の学習指導要領の比較分析

ある程度メタレベルに属している(Bishop,1991)しかしその言及は限られており、活動

「遊ぶ」の数学教育における役割を明確にすることはこれからの課題である。一方「説明 する」に関してであるが,その活動の重要性は再三繰り返されている。個人間的活動「説 明する」は、個人内の内面的活動「理解する」と密接に関連している。自己内で自律的に 展開する「理解する」に対して、 「説明する」はその展開の契機を与えるo例えば活動「数え る」を巡って, 「理解する」と「説明する」が括抗するとき「数える」が反省されるのだろ

う..

表5‑11ケニアの学習指導要領に表れる動詞の領域と活動別の動詞

A R oun ding off , ren am in g, cancelin g, sorti ng, classifyin g, m atch in g, orderin g, grouping, putting together, regroup ing, tak ing aw ay, form in g, sh aring,expressin g,evalu atin g

B E stim atin g, prep arin g, tellin g, 払oppm g, establishing, buyin g, sellin g, ch an gin g,givin g

C C on stru ctin g,com paring,bisectin g,applyin g,to calculate,determ in in g D C ollectin g,recordin g,represen t,血oosm g , ,

A B C ou nting,to get (getti n g),borrow ing,carryin g A C W riting,iden tifyin g,recogn izin g

B C M easu ring (to m easure),convertin g,m akin g, C D D raw in g,interpretin g,

B C D F in din g

A B C D In troducing,u sin g,solvin g,readin g

④ 全領域にまたがる動詞は4個あり、そのうち2個は日本語の場合と共通な、 Using(用 いる)、 reading(読む)である。また日本の場合ではさらに,知る,理解する、あらわ す、深めるの4個の動詞,ケニアの場合では, introducing, solvingの2個の動詞が ある。最後に挙げた2つの動詞は、ケニアの動詞型カリキュラムでの展開を示す鍵と なっている。

⑤ 動詞「深める」に対応する動詞が無い。 ④でも述べたように、ケニアの動詞型カリキ ュラムを考察する上で、展開を示す鍵となっている。

⑥ 領域A,Dに共通の動詞は、全領域に共通の動詞以外は無い。日本の場合と異なり、領 域Dは、領域Aを基盤にして学習が展開しているとは言えない。

さらに、ここで挙げた53個と日本で対象とした51個の動詞で考察すると,全く同一の 意味ではなく一対一対応でもないが,相応の対応がつくものは半数余りに該当し,日本で 35個、ケニアで33個あるoこれはBishopのいう活動レベルでの普遍性を表していると 言える。

表5‑12 ケニア・日本の動詞の対応表

用いる 関係付ける よむ、 よみ とる か く U Sin g R elation ship Interpreting,

R eadin g.T ellin g

D raw ing

数 える 比べる 選ぶ 求める、 測 る、 測定す

C ou nting C om paring C h oosin g る

M easu ring, F in din g, G ettin g

計算する 等分す る 見積 もる 類別す る、 分類す る、

O peration s、 Sb▲aring E stim ating 整理す る、 分類整理す

C alculating る

E valuatin g classifyin g, Sorti ng.

M atch !皿g 集める(G a也er) まとめる ■言い表す、 表現する、 認める C ollecting groupin g, 表す R ecognizin g,

regr仙p in g,P utting togeth er

W rit血g, R epresen ting, expressin g

Identifying

構成する 作る 決める 立式(F orm u lating) C on stru ctin g M ak in g D eterm in e form ing

かける、 乗除する 割る 直す 分解する

M 山tiplication D ivision C onvertin g, C h angin g

S egm en ted into ケニアのみ

R en am in g cancelin g R oun din g off sellin g B uying B isectin g In troducin g S im plifyin g taking aw ay sh oppin g B orrow in g C arryin g establish in g ′P rep arin g Solvin g D evelopin g G iving O rderin g A pplyin g R ecordin g

日本のみ

適用する 移す 分ける 観察する

工夫する 当てはめる 検討する 考える

みる(見る) とらえる 考察する 通す

着 目する 調べる 知る 深める

理解する

また他方それ以外で対応がつかないところは、数学教育レベルでの文化的独自性と捉え ることができる。日本の特徴は内面的活動と密接に結びついているものが多い。それは数 理思想、数学的な考え方以来、内面的活動を重視して子どもの活動を捉えてきた日本の数 学教育の伝統を示している。他方ケニアの特徴は、手続き的活動、経済的活動を重視して いる。前者は伝統教育のWork Orientedな志向性もしくは行動主義の影響と取れるが、経 済的活動に関しては貨幣経済の浸透に伴った必要性からきたと考えられる。例外的な存在

として, establishing the need for the fixed unitが存在する。ケニアにおける活動は,全 般的に表層的には単に目に見えるものを志向していると言えるが,また日本の活動の展開 過程における内面的活動との関係は非常に重要である。そこでは一方を否定して他方を採 用するような態度ではなく,二つの文化の間で考える態度が重要である。

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*1地域住民が主導して、活動資金を持ち寄ること

*2 Eshiwani(1993)によれば,カリキュラムに関して独立後を三つの時期に分けること ができる。採用期、適応期、現地化期である。採用期は他国のカリキュラムをそのまま採 用した時期で、ほぼ1960年代が対応する。その例はSMPやSSPが挙げられる。第二の 適応期は前期と後期に分けられる。前期は場所や題材を現地のものと取り替え,後期はカ リキュラムの内容や教科書の形式を基礎から問い直すものであった。この時期の例として はSMEAが挙げられる。そのような手直しでは限界が見えており、基本的に農業国であ るケニアで、工業社会におけるカリキュラムを基礎とすることの疑問点や、 250000人の うち50000人のみが都市で就業できる現状に対して,その妥当性に疑問が投げかけられた。

最後は現地化の時期である。前二者の限界を超えて、教育を地域と結びつけ問題解決を強 調している。これは現在も進行している。その例としてはKenya(1976)を受けて始められ

たPEPU978)が挙げられ、 8‑4・4制もその中に位置づけられる。

* 3 Carley Francisは最初に設立されたAlliance高等学校の数学教師をしていた

* 4 イギリスのナショナル・カリキュラムでは、達成目標仏ttainmenttargets)として, 数学の使用と応用、数、代数、形と空間、データ処理の5つがある。

* 5 擬似動詞はするをつければ動詞となる名詞で、元の漢字の中で動詞的要素を含んで いる。

* 6 Otani(1998)が指摘するように日本の教室において、 「問題を解いた」より「問題が解 けた」のように自動詞表現が普通の場合がある。しかし書き言葉という制約のためか、指導 要領中にはこのような特徴は見られなかった。

第六章 ケニア国学習指導要領の動詞