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2017年3⽉期に「グローバル化」「システム内製化」を軸とした中⻑期事業戦略「グローバル・ビジョン」のプロジェク トが完了し、2018年3⽉期からは「グローバル・ヴィジョンII - Bloom」と銘打って、「グローバル・ビジョン」で増加 した費⽤の低減を進めるとともに、「グローバル・ビジョン」で得た資産を活⽤して果実を獲得することを⽬指す。併せ て、同社が有する経営資源を活⽤した新事業の創造にも取り組む。中⻑期的には連結営業利益率30%を安定的に計上でき る事業構造をつくることを⽬指すとしている。

営業利益率=営業利益相当額÷⾦融費⽤及び売上原価控除後営業収益

営業利益相当額=営業収益−(⾦融費⽤+売上原価+販売費及び⼀般管理費)

⾦融費⽤及び売上原価控除後営業収益=営業収益−(⾦融費⽤+売上原価)

SR社では中⻑期業績において、⽇本セグメントにおけるアクティブトレーダーの獲得、コストの低減、⽶国セグメント におけるコストの低減、⼝座数増加が成⻑ドライバーになり得ると考えている。

(百万円) 12年3⽉期 17年3⽉期 増減額 年平均変化率

⾦融費⽤控除後営業収益 28,888 41,852 12,964 7.7%

受⼊⼿数料 17,030 26,349 9,319 9.1%

トレーディング損益 6,200 4,498 -1,702 -6.2%

⾦融収⽀ 5,130 10,334 5,204 15.0%

販売費及び⼀般管理費 26,060 40,578 14,518 9.3%

取引関係費 8,787 11,281 2,494 5.1%

⼈件費 6,163 10,393 4,230 11.0%

システム関係費 9,072 15,686 6,614 11.6%

営業利益相当額 2,827 1,274 -1,553 -14.7%

(百万円) 12年3⽉期 17年3⽉期 増減額 年平均変化率

純営業収益 81,751 164,231 82,481 15.0%

受⼊⼿数料 52,337 87,698 35,362 10.9%

トレーディング損益 7,513 18,731 11,218 20.0%

⾦融収⽀ 21,372 56,687 35,315 21.5%

販売費及び⼀般管理費 60,029 92,184 32,155 9.0%

営業利益 21,722 72,046 50,324 27.1%

(百万円) 12年3⽉期 17年3⽉期 増減額 年平均変化率

⾦融費⽤控除後営業収益 20,582 26,693 6,111 5.3%

販売費及び⼀般管理費 16,742 25,051 8,309 8.4%

取引関係費 4,747 5,323 576 2.3%

⼈件費 3,165 4,206 1,041 5.9%

システム関係費 7,640 13,895 6,255 12.7%

営業利益相当額 3,840 1,643 -2,197 -15.6%

(百万円) 12年3⽉期 17年3⽉期 増減額 年平均変化率

⾦融費⽤控除後営業収益 7,950 15,616 7,666 14.5%

販売費及び⼀般管理費 8,884 15,858 6,974 12.3%

取引関係費 3,930 5,869 1,939 8.4%

⼈件費 2,791 5,912 3,121 16.2%

システム関係費 1,336 2,388 1,052 12.3%

営業利益相当額 -934 -242 692

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その他、2017年10⽉には「MONEX第⼆の創業」と称して、仮想通貨交換業や独⾃のブロックチェーンの開発によって、

個⼈投資家、トレーダー、スタートアップ企業に対して新サービスを提供することを企図していることを発表した。その

⼀環として、2018年4⽉にコインチェック社を⼦会社化した。

⽇本セグメント

2012年3⽉期から2017年3⽉期の中⻑期事業戦略「グローバル・ビジョン」では、上述の通り⽶国株取引システムを導⼊

したほか、⽇本株取引ツール「トレードステーション」、新しい証券基幹システムのシステム開発を進めた。

2018年3⽉期以降では、⽇本株取引ツール「トレードステーション」による取引頻度の⾼いアクティブトレーダーの獲得 による収益成⻑が期待できるとSR社は考えている。

⽇本セグメントにおいて中核をなすマネックス証券は、中⻑期での資産形成を志向する顧客が多く、取引頻度の⾼いアク ティブトレーダーは少ないという。アクティブトレーダーを同業他社から奪うことで、株式等売買委託⼿数料の増加が可 能であると同社は考えている。また、マネックス証券では総⼝座数に対する信⽤取引の⼝座数の割合、⼝座当たり信⽤取 引残⾼が同業他社⽐で低い(「競合状況」の項参照)。アクティブトレーダーの獲得によって、信⽤取引残⾼が増加すれ ば⾦融収益の増加も期待できるとSR社は考えている。

マネックス証券にアクティブトレーダーが少なかった要因は、マネックス証券が⼿数料競争に消極的であったこと、個⼈

投資家向け信⽤取引に慎重で、同業他社で信⽤取引の開始が遅かったことによる。中期的には⾼機能取引ツールを競争⼒

のある⼿数料で提供することで、同業他社からアクティブトレーダーを奪う戦略である。また、2017年11⽉には信⽤取 引⼿数料の引き下げも実施した。

⽇本株取引ツール「トレードステーション」によるアクティブトレーダーの獲得

マネックス証券は2016年3⽉にアクティブトレーダー向けの⽇本株取引ツール「トレードステーション」の提供を開始し た。

「トレードステーション」はケタちがいの取引ツール

⽇本株取引ツール「トレードステーション」は⽶国⼦会社であるTradeStation Securities, Inc.およびTradeStation Technologies, Inc.とマネックス証券が共同で開発した⽇本株取引ツールである。⽶国のTradeStationはアクティブト レーダーからの評価が⾼く、「BARRON’S」のオンライン証券ランキング「アクティブトレーダー」部⾨で8年連続4つ星 半の最⾼評価獲得など、数々の賞を受賞している。

同社によれば、「トレードステーション」は発注速度がオンライン証券トップクラス(カブドットコム証券の板乗り時間 が中央値で33ミリ秒に対して、⽇本株取引ツール「トレードステーション」の板乗り時間は平均6.6ミリ秒)で、登録銘 柄のリアルタイムモニタリング機能(2,000銘柄の騰落率リアルタイムソートが可能)、スクリーニング機能(200種類 以上の指標が利⽤可能)、バックテスト(過去のデータによる売買戦略の検証)機能など、アクティブトレーダーが求め る⾼い性能を実現しているという。また、専⽤プログラム⾔語「EasyLanguage」によって、独⾃の分析指標、売買シグ ナル、プログラム売買も可能である。

「トレードステーション」の⼿数料率は業界最低⽔準

「トレードステーション」の⼿数料体系は1⽇の約定⾦額に対して、10万円ごとに50円(ミニプラン)、100万円ごとに400 円(ノーマルプラン)、1,000万円ごとに3,250円(ラージプラン)(ラージプランは信⽤取引⼝座開設済みの顧客のみ選 択可能)と、⼿数料率は0.03%〜0.05%程度であり、取引頻度の⾼い投資家にとっては業界最低⽔準の⼿数料率である。

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既存の顧客層とは異なる、取引頻度の⾼い顧客層を獲得し、売買シェアの回復を⽬指す

⽇本証券業協会がインターネット取引を⾏っている会員(証券会社)に対して⾏った「インターネット取引に関する調査 結果」によれば、2013年3⽉以降、⽉間約定数100回超の顧客が株式等売買代⾦に占める割合は60%前後で推移している。

オンライン証券会社においては、⼀部の取引頻度が⾼い顧客が売買代⾦の⼤半を占める状況にあることがわかる。

直近1ヵ⽉間の株式等売買代⾦に占める100回超約定のあった顧客の株式等売買代⾦の割合

出社:⽇本証券業協会「インターネット取引に関する調査」をもとにSR社作成

マネックス証券を除くオンライン証券⼤⼿の株式等売買代⾦の6割がアクティブトレーダーによる取引であるとすれば、

2018年3⽉期においてアクティブトレーダーの株式売買代⾦の規模は136兆円(227兆円×60%)であった。

トレードステーションの導⼊によって、アクティブトレーダーの市場の10%を獲得できれば、株式等売買代⾦を14兆円 増加させ得る(2018年3⽉期のマネックス証券の株式売買代⾦は16.8兆円)。トレードステーションは既存のマネックス 証券の株式取引と⽐較して委託⼿数料率が低く、0.04%程度であることから、委託⼿数料は5,000百万円程度の増加が可 能となる(2018年3⽉期の⽇本セグメントの委託⼿数料は13,732百万円)。

なお、同社は⽇本市場へのトレードステーションの導⼊によって、中期的には売買代⾦800,000百万円/⽉、収⽀2,400百 万円/年を⽬指すとしている。

アクティブトレーダーの獲得による⾦融収益の拡⼤余地

信⽤取引残⾼についても売買代⾦同様にアクティブトレーダーの⽐率が6割と仮定した場合、2018年3⽉期においてアク ティブトレーダーの信⽤取引残⾼は1.3兆円(2.1兆円×60%)であった。

トレードステーションの導⼊によって、アクティブトレーダーの信⽤取引残⾼の10%を獲得できれば、マネックス証券は 信⽤取引残⾼を130,000百万円増加させ得る(2018年3⽉期のマネックス証券の信⽤取引残⾼は205,300百万円)。信⽤取 引の収⽀率は3.0%であるため、⾦融収⽀を3,900百万円程度増加される要因となり得る(2018年3⽉期の⽇本セグメント の⾦融収⽀は10,235百万円)。

同業他社との⼝座当たり純営業収益を⽐較した場合、マネックス証券の⼝座当たり委託⼿数料は同業他社並みであるが、

⼝座当たり⾦融収⽀は同業他社を下回る(「競合状況」の項参照)。これはマネックス証券において、取引頻度が⾼く、

信⽤取引を活⽤するアクティブトレーダーが少ないことによる。トレードステーションの導⼊は、⼿数料率の低下につな がる可能性が⾼いが、他社からアクティブトレーダーを奪うことで、収益を拡⼤する余地が⼤きいとSR社は考えている。

⽶国セグメント

⽶国セグメントでは、新⼿数料体系の導⼊による稼働⼝座数の増加が増収要因となる。

新⼿数料体系の導⼊

同社によれば、TradeStation Securities, Inc.は取引プラットフォームが優れており、取引プラットフォームは、ポートフォ リオのリアルタイムのレポート機能、スクリーニング機能に優れ、「BARRON’S」のオンライン証券ランキングにおいて

「アクティブトレーダー」部⾨で8年連続4つ星半の最⾼評価獲得など、数々の賞を受賞している。

2013年3⽉ 2013年9⽉ 2014年3⽉ 2014年9⽉ 2015年3⽉ 2015年9⽉ 2016年3⽉ 2016年9⽉ 2017年3⽉ 2017年9⽉

100回以下約定顧客売買代⾦(10億円) 8,320 7,763 6,775 7,685 9,031 6,685 6,645 4,307 7,949 7,947

割合 38.2% 37.4% 36.7% 37.1% 34.9% 34.2% 32.1% 30.9% 40.8% 41.5%

100回超約定顧客売買代⾦(10億円) 13,460 13,013 11,669 13,021 16,836 12,882 14,085 9,639 11,556 11,181

割合 61.8% 62.6% 63.3% 62.9% 65.1% 65.8% 67.9% 69.1% 59.2% 58.5%

合計(10億円) 21,780 20,776 18,444 20,706 25,867 19,568 20,730 13,946 19,505 19,128

マネックスグループ|8698

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TradeStation Securities, Inc.では、競争⼒向上のために、2017年3⽉に株式取引1取引当たり5ドル、オプション取引1取 引当たり5ドル+ 1契約当たり0.5ドルという新⼿数料体系を導⼊した(従来は、株式取引1取引当たり1ドル+取引株数毎に 0.006ドルから0.01ドルの⼿数料体系、オプション取引は1契約当たり1ドルであった)。同社によれば、新⼿数料体系は 従来と⽐較してシンプルで、取引プラットフォームに対する課⾦も排除した。競合他社と⽐較しても競争⼒ある⽔準であ るという。

新⼿数料体系導⼊の効果により、2018年3⽉期の⼊⾦済⼝座開設数は過去最⾼を記録したという。2018年3⽉末の稼働⼝

座数は前期(2017年3⽉末)⽐で18.7%増であり、過去8年間の年平均成⻑率8%を上回る増加率であった。

さらに、2017年8⽉には先物取引についても1約定当たり(⽚側)1.5ドルという新しいシンプルな⼿数料体系を導⼊した

(従来から提供している、1ヵ⽉の契約数に応じて、1約定当たり(⽚側)の⼿数料が決まる⼿数料体系も継続する)。

アジア・パシフィックセグメント

マネックスBoom証券グループは⾹港に拠点を置く個⼈投資家向けオンライン証券会社である。1997年に創業、2010年 12⽉に同社⼦会社となり、同社の⾹港での事業展開と、中国本⼟での事業機会創出を⽬指す役割を担っている。

アジア・パシフィックセグメントでは、この他に、中国本⼟の証券会社とジョイントベンチャーを設⽴し、オンライン証 券業に必要とされる技術の導⼊⽀援にも 取り組んでいる。2018年3⽉期は、ジョイントベンチャーの持分法投資利益が 黒字化した。

また、2018年3⽉期下期にはオーストラリアにおいてMonex Securities Australia Pty Ltdがオンライン証券事業を開始し た。開業時の現地の⼈員は8名以下の少⼈数体制である⼀⽅、12ヵ国・地域にアクセス可能なオンライン証券サービスを 提供する。現地企業がマーケティングを担当し、同社が証券トレードシステムを提供する等の展開になるとSR社は考え ている。