第 4 章 関数 49
4.13 関数のグラフを描く手順
に対してy=rとy=−rという2つの数が対応してし まう。そもそも関数とは,ひとつのxに対してひとつの yを対応付けるものだ(後に学ぶ「写像」という概念)。 従って, 陰関数は,厳密な意味では関数ではないのだ。
陰関数にも, グラフの対称性や平行移動, 拡大といっ た考え方が適用できる。
例4.20 ある陰関数 F(x, y) = 0のグラフを x軸の 正方向に a, y 軸の正方向に b だけ平行移動すると, F(x−a, y−b) = 0のグラフになる。なぜか?
陰関数F(x, y) = 0のグラフ上の任意の点Pを考え る。その座標を(x0, y0)とする。すなわち,F(x0, y0) = 0である。点Pをx軸の正方向にa,y軸の正方向にbだ け平行移動した先の点を点P1とし,その座標を(x1, y1) とする。当然, x1 =x0+a かつy1 =y0+bである。
従ってx0 =x1−a かつy0 =y1−bである。これを F(x0, y0) = 0に代入すると, F(x1−a, y1−b) = 0で ある。従って,点P1は陰関数F(x−a, y−b) = 0のグ ラフ上にある。(例おわり)
● 問98 (x,y)平面上で, 点(3,−1)を中心とする, 半 径2の円を表す陰関数を求めよ。
4.13 関数のグラフを描く手順
ここで, 関数のグラフを手で描く手順をまとめてお こう:
• xの全範囲で関数はつながっているかチェック。
1/xのように割り算が入った関数は, 「0での割り 算」のところで関数が途切れる。陰関数は, xのと りうる範囲がかなり限定されることもある(例えば x2+y2= 1は−1≤x≤1でしか定義されない)。
• x= 0でのyの値(y 軸との共有点)を調べる。無 いとき(虚数解になるとき)はグラフはy軸を通ら ない。
• y = 0でのxの値(x軸との共有点)を調べる。無 いとき(虚数解になるとき)はグラフはx軸を通ら ない。
• 関数の対称性を調べる(xを−xにしてみたりyを
−yにしてみたり)。
• よく知っている関数の平行移動や拡大, 縮小, 対称 移動,和などにならないか調べる。
• xやyが∞や−∞に行くときの様子を調べる。
• それでもよくわからないときは, xに適当な数(な
るべく計算しやすい値)をいくつか代入してyの値 を求め,グラフにプロットしてみる。
よくある質問60 高校で数IIIを習ったときは,関数を微分 して増減表を作って, それをもとに関数のグラフを描きまし た。それじゃダメですか? ... もちろんいいですよ。でも,微 分をまだ知らない人もいるしね。微分を知ってても,ここで学 んだやり方は有用です。なぜなら,複雑な関数,特に陰関数は, 微分したりそれが0になるxを求めたりが大変だったりしま す。それに,漸近線は増減表からは出ないよね。ここでやった ように,関数のおおまかな性質を検討するだけでも,いろんな 関数のグラフを,漸近線を含めてうまく描けます。そういう大 局的な見方は,いろんな関数をイメージするための強力な武器 なのです。実際,複雑な関数のグラフはパソコンで描けばいい のですが,それを正しく行い,結果を吟味するには,ここで学 んだ考え方が有用なのです。
演習問題
演習問題8 次式は, 酵素が介在する化学反応の速度を 説明する, ミカエリス・メンテンの式というものである:
v= Vmax[S]
Km+ [S] (4.43)
VmaxとKmは正の定数。vは化学反応の速度(単位時 間あたり, 単位体積あたりに生成される化学物質の量), [S]は基質(化学反応の材料となる物質)の濃度である。
この式は, vを[S]の関数として表している。
(1) [S] = 0のときv= 0であることを示せ。
(2) [S]→ ∞の極限で, vはVmaxに限りなく近づいて いくことを示せ。
(3) [S] =Kmのとき, v=Vmax/2となることを示せ。
(4) 以上を参考にして, 式(4.43)のグラフを描け。横軸 を[S], 縦軸をvとせよ。基質の濃度は0以上なの で, 0≤[S]としてよい。
演習問題9 K1(x), K2(x)を奇関数, G1(x), G2(x)を 偶関数とする。以下の関数を,奇関数か,偶関数か,どち らとも言えないか,示せ(根拠も述べよ)。
(1) K1(K2(x)) (2) G1(G2(x)) (3) K1(G1(x)) (4) G1(K1(x)) (5) K1(x)の逆関数 (6) G1(x)の逆関数
演習問題10 陰関数F(x, y) = 0のグラフに関して,以 下の定理が成り立つことを示せ:
(1) x軸方向にa倍, y 軸方向にb倍だけ拡大すると, F(x/a, y/b) = 0のグラフになる。
(2) x軸に関して対称移動すると,F(x,−y) = 0のグラ フになる。
(3) 恒等的にF(x,−y) = F(x, y)なら, x軸に関して 対称。
演習問題11 陰関数x2−y2= 1のグラフを描け。
演習問題12 陰関数(x2/4) + (y2/9) = 1のグラフを 描け。
問題の解答
答76略(実際に各点をxy平面にプロットしてみよ)。 答77 y =f(x)のグラフ上の任意の点Pを考える。そ の座標を(x0, y0)とする。y0=f(x0)が成り立つ。
定理2の証明: 点Pをx軸方向にa倍して移動した 先の点,すなわち(ax0, y0)を,あらためて点P2とし,そ の座標を(x2, y2)と置く。すなわち,x2=ax0, y2=y0
である。すなわち,x0=x2/a, y0=y2 である。これを y0=f(x0)に代入すると,y2=f(x2/a)となる。従っ て,点P2はy=f(x/a)のグラフの上にある。 ■ 定理4の証明: 点Pをx軸に関して対称移動した先の 点, すなわち(x0,−y0)を, あらためて点P4とし, その 座標を(x4, y4)と置く。すなわち, x4 =x0, y4 =−y0 である。すなわち, x0 = x4, y0 = −y4 である。これ をy0 =f(x0)に代入すると, −y4 =f(x4), すなわち y4=−f(x4)となる。従って,点P4はy=−f(x)のグ
ラフの上にある。 ■
答78
(1) y= (x−1)2+ 2 (2) y= 3(x/2)2= 3x2/4
(3) y=x2を(図4.13左上), まずx軸方向に2倍する ことで,
y= (x
2 )2
(4.44)
になる(図4.13中上)。さらにx軸方向に1移動す
ることで, y=
(x−1 2
)2
(4.45) になる(図4.13右上)。
(4) y=x2を(図4.13左下),まずx軸方向に1移動す ることで,
y= (x−1)2 (4.46)
になる(図4.13中下)。さらにx軸方向に2倍する ことで,
y= (x
2 −1 )2
(4.47) になる(図4.13右下)。
1 2 3
-2 -1 1 2 3
y= x2
O x
1 2 3
-2 -1 1 2 3
y=(x/2)2
O x
1 2 3
-2 -1 1 2 3
y=((x-1)/2)2
O x
1 2 3
-2 -1 1 2 3
y= x2
O x
1 2 3
-2 -1 1 2 3
y=(x-1)2
O x
1 2 3
-2 -1 1 2 3
y=((x/2)-1)2
O x
図4.13 y=x2の2段階の変形。順序が違えば結果 も違う。点線はy=x2。
答79図4.14参照。
(1) y= 2xのグラフを上に(y軸方向に)1移動。
(2) y = (x+ 1)2+ 2だから, y =x2のグラフを左(x 軸の負の方向)に1,上に2移動。
(3) y= 1/xのグラフを上(y軸の正の方向)に2移動。
(4) y= 2−2/(x+ 1)だから,y= 1/xのグラフを縦に 2倍し,上下反転し,左(x軸の負の方向)に1,上に 2移動。x= 0のときにy = 0となるので, 原点を 通る。
答80
(1) y= 3x−2
(2) 式(4.22)より,y= 2(x+ 1) + 1, すなわちy= 2x+ 3。
(3) 式(4.23)より, y=−3−1
4−2 (x−2) + 1 (4.48)
4.13 関数のグラフを描く手順 63
-2 -1 1 2 3 4
-2 -1 1 2 3
y=2x+1
O x
y
-2 -1 1 2 3 4
-2 -1 1 2 3
y=x2+2x+3
O x
y
-2 -1 1 2 3 4
-2 -1 1 2 3
y=2+1/x
O x
y
-2 -1 1 2 3 4
-2 -1 1 2 3
y=2x/(1+x)
O x
y
図4.14 問79のこたえ。点線は漸近線。
すなわちy=−2x+ 5。 答81
(1) (32,0)と(212,100)を通る一次関数(直線の式)を 求めればよい。
y−0 = 100−0
212−32(x−32) すなわち, y= 5
9(x−32) =5
9x−160 9 (2)
x= 9 5y+ 32 (3) 以下略
答82略。
答83略。
答84略。
答85略。
答86
(1) 左辺=0の解はx=−3,2。∴ −3< x <2 (2) 左辺=0の解はx=−3,−2。∴ x≤ −3,−2≤x (3) 左辺=0の解はx= −3±2√5。よって,
x≤ −3−√ 5
2 , −3 +√ 5
2 ≤x
答87
(1) 左辺=(x+ 1/2)2+ 3/4。これはxがどんな実数値 でも正の値をとる。従って, この不等式は, すべて
の実数値xについて成り立つ。
(2) 前問と同様に考えれば,この不等式はどんな実数値 にも成り立たない(解を持たない)。
(3) (略解)x <−1,1< x (4) (略解)解なし。
(5) (略解)x= 2 (6) (略解)全ての実数。
(7) (略解) 2以外の全ての実数。
答88略。「グラフがなんとかに関して対称」とか書いて しまった人は,もっと真剣に本文を読もう!
答89グラフは図4.15参照。
(1) 偶関数。y= (x+ 1)(2x+ 1)(2x−1)(x−1)なので, x軸との交点はx = −1,−1/2,1/2,1。x → ±∞
で,y→ ∞。
(2) どちらでもない。y = (1 +x)xなので, x軸との 交点はx=−1,0。y = (x+ 1/2)2−1/4なので, y=x2のグラフを左に1/2,下に1/4移動。
(3) 奇関数。y=−(x+1)x(x−1)なので,x軸との交点 はx=−1,0,1。x→ ∞で, y→ −∞。x→ −∞
で,y→ ∞。(本文の例4.9の,y=x3−xのグラフ, つまり図4.7を, 上下反転したものとも言える。) (4) 偶関数。x→ ±∞で,y→0。つまりx軸に漸近す
る。x= 0のときy= 1。ピークを尖らせたらダメ!
-2 -1 1 2
-2 -1 1 2
y=4x4-5x2+1
O x
y
-2 -1 1 2
-2 -1 1 2
y=x+x2
O x
y
-2 -1 1 2
-2 -1 1 2
y=x-x3
O x
y
-2 -1 1 2
-2 -1 1 2
y= 1/(1+x2)
O x
y
図4.15 問89のこたえ。
答90f1(x), f2(x)を任意の偶関数,g1(x), g2(x)を任意 の奇関数とする。定義より,
f1(−x) =f1(x), f2(−x) =f2(x) g1(−x) =−g1(x), g2(−x) =−g2(x) である。さて,
(1) F(x) =f1(x)f2(x)とすると,
F(−x) =f1(−x)f2(−x) =f1(x)f2(x) =F(x) 従って,F(x)は偶関数。 ■ (2) F(x) =g1(x)g2(x)とすると,
F(−x) =g1(−x)g2(−x) ={−g1(x)}{−g2(x)}
=g1(x)g2(x) =F(x)
従って,F(x)は偶関数。 ■ (3) F(x) =f1(x)g1(x)とすると,
F(−x) =f1(−x)g1(−x) =f1(x){−g1(x)}
=−f1(x)g1(x) =−F(x)
従って,F(x)は奇関数。 ■ (4) F(x) =f1(x) +f2(x)とすると,
F(−x) =f1(−x) +f2(−x) =f1(x) +f2(x) =F(x) 従って,F(x)は偶関数。 ■ (5) F(x) =g1(x) +g2(x)とすると,
F(−x) =g1(−x) +g2(−x) =−g1(x)−g2(x)
=−{g1(x) +g2(x)}=−F(x)
従って,F(x)は奇関数。 ■ (6) 例えば偶関数y= 1と奇関数y=xの和: y= 1 +x は,偶関数でも奇関数でもない。 ■ 答91 略解: f(−x) =f(x)となることは暗算でも確認 できる。答は偶関数。注: f(−x) =f(x)を満たせば偶 関数なのだから(それが定義),それを確認すれば十分で ある。グラフなど描く必要はない。
答 92 g(f(x)) = 1 +x (ただしx ≥ 0), f(g(x)) =
√1 +x2 答93
(1) xとy を入れ替えるとx = 2y+ 1。変形すると, y= (x−1)/2。
(2) xとyを入れ替えるとx= 1/(y−1)。変形すると, y= 1 + 1/x。
(3) xとyを入れ替えるとx=a/y。変形すると, y =
a/x。
(4) xとy を入れ替えるとx =−y+b。変形すると, y=−x+b。
注: (3), (4)では逆関数が自分自身になっていることに
注意せよ。
答 94 g(f(x)) = √
f(x) = √
x2 = |x|。xは0 以上 だから, これはxに恒等的に等しい。また, f(g(x)) = (g(x))2= (√
x)2=x。 答95図4.16参照。
答96図4.17参照。
1
O 1 x
y y=x2
y=sqrt(x) y=x
図4.16 問95の答。図中, ”sqrt(x)”とあるのは√ x のこと。直線y=xに関して対称であることに注意。
どの線も点(1,1)を通る。
0.5 1
0.5 1
O x
y y=x
y=x2, y=x1/2 y=x3, y=x1/3 y=x4, y=x1/4
図 4.17 問 96 の 答 。y = x の 上 側 に あ る の が, x1/2, x1/3, x1/4。どの線も点(1,1)を通る。
答97三平方の定理よりx2+y2は, 原点から点(x, y) までの距離の二乗。与式より, これがr2 に常に等しい ので, 原点から各点までの距離は常にrである。原点か ら一定距離rにある点の集合は, 原点を中心とする半径
rの円である。 ■
答98 原点中心,半径2の円を表す陰関数は,式(4.41) でr= 2として,x2+y2−4 = 0。これをx方向に3,y 方向に−1だけ移動すると(例4.20より),
(x−3)2+ (y+ 1)2−4 = 0。
65
第 5 章
微分
過去の受講生の言葉: 「わかろうとしすぎないと,いつのま にかわかり出す。」
5.1 微分の定義
これからいよいよ「微分」というのを学ぶ。まず微 分の発想を説明しよう。何か関数y =f(x)を考える。
そのグラフの形はどんなでもいいけど, 図5.1のよう になめらかに連続的につながっているとしよう。今, 実 数x0を固定して考え, 点(x0, f(x0))を点Pと名付け る。また,x0に近い(けどx0ではない)実数xを考え, (x, f(x))を点Qと名付ける。
f(x0) f(x0+∆x)
x0 x
x
y
∆x
∆f
y=f(x)
P
Q Q’
R
=x0+∆x 図5.1 関数y=f(x)のグラフ(太い実線)と,点P における接線のグラフ(太い点線), そしてy=f(x) 上の2点P, Qを通る直線(細い実線)のグラフ。
ここで, 点Pにおける接線(点Pでこの関数に接する 直線; 図5.1の太い点線)を考えよう。その傾きをaと すると,この接線は点P(x0, f(x0))を通る, 傾きaの直 線なので,その関数はy=f(x0) +a(x−x0)となる。
さて,もしx0とxとの間隔が十分に狭ければ,そのあ たりでは,この関数のグラフ(図5.1の太い実線)は, 点 Pにおける接線(図5.1の太い点線)でざっくりと近似
できるだろう。すなわち,次式が成り立つだろう: f(x)≒f(x0) +a(x−x0) (5.1) ここで”≒”は,「ほぼ等しい」「近似的に等しい」という 意味の記号だ。式(5.1)の左辺は点Qのy座標で,右辺 は点Q’のy座標だ。点Qと点Q’は微妙にズレている ので, =でなく≒と書くのだ。
先回りしてざっくり言えば, 微分というのは, この定 数a(接線の傾き)のことだ。でも,そこには深くて微妙 な話があるので,しばらく辛抱して続きを読んで欲しい。
慣習的に, x−x0を∆xと書く。∆xは図5.1のPR の長さである*1(∆はP.16で学んだ「デルタ」の大文字 で, ∆とxは別々の数ではなく, ”∆x”でひとつの数を 表す)。そうすると,
x=x0+ ∆x (5.2)
となる。式(5.2)を使うと,式(5.1)は,次のようになる:
f(x0+ ∆x)≒f(x0) +a∆x (5.3) さて,xをx0に限りなく近づければ(それは図5.1で RをPに近づけることに相当し, それに伴って点Qや 点Q’も点Pに近づいていく), ∆xは限りなく0に近づ くだろう。究極的には∆xは0になってしまいそうな のだが, その寸前で踏みとどまって, 「0ではないけれ ど, 限りなく0に近い」という状態(極限)を想定する。
そのときの∆xを,慣習的にdxと書く*2。この場合,式 (5.3)は,以下のようになる:
f(x0+dx) =f(x0) +a dx (5.4) ここで, もともと”≒”だったところが”=”に変わってし まったことに注意しよう。というのも, ∆xが0に近づ くとき, 図5.1 では, 点Qと点Q’が, 点Pでガチャン とぶつかりそうになるのでなく, 互いに寄り沿いながら 点Pに向かって行く。だから,式(5.3)の左辺と右辺の
*1ただしRがPの左側にあるときはマイナスになる。
*2dとxは別々の数ではなく, ”dx”でひとつの数を表している。