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ロジスティック方程式

ドキュメント内 数学リメディアル教材 (ページ 148-153)

第 9 章 積分の応用 133

9.5 ロジスティック方程式

ある空間に, ある種の生き物が生きているとしよう (孤島に棲むヤギとか)。その生き物の個体数N(t)を考

9.5 ロジスティック方程式 139 える。生き物は普通, 一定割合の個体が子を作るので,

個体数の増加は個体数Nと時間dtに比例する。すなわ ち,適当な定数αを使って,

αN dt (9.63)

と書ける。

ところが, 個体数N があまりにも多くなると, 資源 (餌や住処)をめぐって争いが起きはじめる。争いは, 2 つの個体が出会ったときに発生し, 争いに負けた個体は 死亡する*5。ある個体にとって,時間dtの間に, 自分以 外の個体(N−1匹の個体)に出会う確率は,dtN−1 に比例する。同様のことが, N匹の全ての個体に言える ので, dtの間にどれか2つの個体が出会う確率(頻度)

は, N(N−1)dtに比例する。N が十分に大きければ, N(N−1)dtは,N2dtと近似できる。従って,dtの間に, 争いによって死亡する個体数は, N2dtに比例する。こ の比例係数(定数)をβと書く(β 0)。すなわち, 時 間dtの間に競争によって減少する個体数は次式になる:

βN2dt (9.64)

生き物の個体数の変化dNは,増えた分減った分な ので,式(9.63), 式(9.64)より,

dN=αN dt−βN2dt (9.65)

となる。両辺をdtで割ると, dN

dt =αN−βN2 (9.66)

となる。式(9.66)を ロジスティック方程式 という。こ れは, 生物学の「個体群動態」という分野(生態学の一 部)の最も基本的な方程式である。

● 問212 以上の議論を再現し,ロジスティック方程式 を導け。

● 問213 ロジスティック方程式(9.66)を解いてみよ う。ただし初期条件をN(0) =N0とする。

(1) この方程式を変数分離し, 左辺にN, 右辺にtをま とめよ。

(2) それを部分分数展開すると,以下のようになること

*5出会ったけど争わないとか,引き分けでどちらも死亡しないと か,相打ちで両者死亡とか,そういうことはとりあえず考えな い。

を示せ:

β α

( 1

βN + 1 α−βN

)

dN =dt (9.67)

(3) これを積分すると,以下のようになることを示せ(C は積分定数):

ln N α−βN

=αt+C (9.68)

(4) これを変形して次式を示せ: N

α−βN =±exp(αt+C) (9.69) (5) 初期条件を用いて,次式を示せ:

±eC= N0

α−βN0 (9.70)

(6) 以上より,以下を示せ:

N(t) = N0eαt

1 +N0β(eαt1) (9.71) (7) 式(9.71)より,以下を示せ:

N(t) = 1

β α+

( 1 N0 βα)

eαt

(9.72)

(8) 式(9.72)は, P.94の式(6.60)と同じ形の関数であ る。式(6.60)のa, b, cをどのように置けば式(9.72) に一致するか?

(9) 図6.10を参考にして, 式(9.71)をグラフに描け。

結果は図9.3のようになるはず。

t N

α/β

N

0

O

図9.3 式(9.72)のグラフ

これが, 高校の生物学で習った「個体群の成長曲線」

である。グラフを描いてわかったように, 十分長く時間 がたてば, N(t)は一定値に収束する。このようにほと んど一定値に至った状態を「定常状態」という。定常状 態では, N はほとんど増えないから, dN/dt= 0とし

てよい。すると式(9.66)が0になるということだから, αN−βN2 = 0 となり, すなわち, N =α/βとなる。

つまり,定常状態では個体数Nα/βとなる。これが, その空間に生物が末永く生息できる個体数の最大値であ る。生物学ではこの値を「環境収容力」と呼び,Kと表 す。また, 生物学では, αを「内的自然増加率」と呼び, rと表す。

● 問214 Krを使うと,式(9.66)は, dN

dt =r (

1−N K

)

N (9.73)

となることを示せ。

よくある質問106 dN/dt=αN−βN2 について,αN <

βN2 となり,個体数が減るようなことはないのですか? ... そ れは個体数が定常状態を上回った時(個体数が環境収容力を上 回った時)ですね。実際の自然では,何かの拍子にNがたまた ま大きくなったり,環境変動のせいで環境収容力が小さくなっ てしまったときでしょう。その場合は,dN/dtが負になるの でN は減少し, やがて,βN2 =αN となって,dN/dt= 0, つまり定常状態に復帰します。

● 問215 β = 0のときは,ロジスティック方程式の解 はどうなるか? それを生物学的に説明せよ。

よくある質問107 生物学で出てきたグラフが微分方程式か ら出てきてびっくりしました。微分や積分って生物学にも使 われるんですね。...まだ序の口。数学は,生物学を含めて,あ らゆる科学で活躍します。

よくある質問108 高校ではそういう話を教えてくれません でしたが,なぜでしょう? ... 数学の先生の多くが「数学の専 門家」であり,数学の応用例にはあまり興味が無いからじゃな いかな?数学はそれ自体が美しくて面白いから,応用例なんか 無くても構わない,みたいに思われているのかもね。でも我々 は生物資源学類だから,応用例を意識した数学をやっていきま しょう。

よくある質問109 垂れ下がった電線の形がexを含む関数 で表せると聞いたのですが,なぜですか? ... 電線の重さを電 線自身が張力で支えること(力の釣り合い)から得られる微分 方程式を解くと,y=ex+exのような関数が出てきます。

演習問題

演習問題 26 理 想 気 体 の 断 熱 変 化 に お い て, P Vγ が 変 化 の 前 後 で 不 変 で あ る こ と を 導 け 。た だ し, P, V, n, R, T, Cv, U をそれぞれ, 圧力, 体積, モル数, 気 体定数, 絶対温度, 定積モル比熱, 内部エネルギーとす る。また,γ= (R+Cv)/Cvとする。定積モル比熱は温 度によらない定数とする(厳密には違うのだが)。ヒン ト: 理想気体の内部エネルギーはU =nCvTと書ける。

体積の微小変化をdV とすると, 気体が外界に対してな す仕事はP dV である。これらを熱力学第一法則で組み 合わせ, 理想気体の状態方程式P V =nRT を使ってP を消去すると,VTに関する微分方程式ができる。そ れを解き,最後にTPV で書き換えればよい。

演習問題 27 植物の成長の速さについて考えよう。あ る微小時間dtの間に植物個体の乾燥重量wdwだけ 増加したとする。一概には言えないものの, 大きな植物 (つまりwが大きい植物)は,光合成のための生産器官も 多く持つので, たくさん光合成ができる。そのぶん, dw は大きくなるのが自然だろう。そう考えると, 植物の成 長量は, ざっくり言って, 植物の大きさに比例すると考 えてよかろう。つまり,

dw=α w dt (9.74)

となる。αは適当な定数である。右辺にdtがあるのは, 成長量が時間に比例する, という, 至極当然のことを表 す。この式を変形すると,

α= 1 w

dw

dt (9.75)

となる。このαを「相対成長率」(relative growing rate)

と呼び, RGRと書き表す。すなわち,

RGR := 1 w

dw

dt (9.76)

である。もしt =t1t =t2の間のRGRが一定であ ると仮定できるならば,

RGR = lnw2lnw1

t2−t1

(9.77) と表すことができることを,式(9.76)から示せ。注: 本

来は式(9.76)がRGRの定義だが,植物学や生態学の教

科書では,式(9.77)をRGRの定義としているものも多 い。それはおそらく, 微分積分がわからない人のために 書かれているのだろう。

9.5 ロジスティック方程式 141

問題の解答

答203

(1) 略(式(9.3)に問200の結果を適用)。 (2) Xは円の1/4だから,S= 4X =πR2 答204略。

答205略。

答206略。

答207式(9.20)でt0t,t1t+dtと置き換えれば, x(t+dt) =x(t) +

t+dt t

v(t)dt (9.78)

となる。dtが微小量ならば, tからt+dtまでの間で v(t)はほとんど変化しないと考えられ,

t+dt t

v(t)dt=v(t){(t+dt)−t}=v(t)dt となる。従って,x(t+dt) =x(t) +v(t)dt ■ 答208式(9.21)でt0t,t1t+dtと置き換えれば,

v(t+dt) =v(t) +

t+dt t

a(t)dt (9.79)

となる。dtが微小量ならば, tからt+dtまでの間で a(t)はほとんど変化しないと考えられ,

t+dt t

a(t)dt=a(t){(t+dt)−t}=a(t)dt となる。従って,v(t+dt) =v(t) +a(t)dt ■ 答209

df

dx = 3f を変数分離して, df f = 3dx この両辺を不定積分して(積分定数をCとする),

df f =

3dx よって, ln|f|= 3x+C

よって,f =±e3x+C=±eCe3x (9.80) これにx= 0を代入すると,

f(0) =±eC=2 (9.81)

となる。従って,f(x) =2e3x。 ■ よくある間違い45 式 (9.80)や式(9.81) の±をつけない で,式(9.81)のかわりに「eC=2」と書いてしまう... これ

は間違いです。Cがどのような数であっても,eC が負になる ことはありません。この場合は,±であり,eC= 2であ ることによって,初期条件が矛盾なく満たされるのです。この ようなことが起こるから,±は省略できないのです。

答210式(9.61)を変形すると, df

dx = 3f2 (9.82)

df

f2 = 3dx (9.83)

df f2 =

3dx (9.84)

1

f = 3x+C (9.85)

f = 1

3x+C (9.86)

初期条件より, f(0) = 1/C = 1。よってC = 1。 よって,

f(x) = 1

3x−1 (9.87)

答211式(9.62)を変形すると, df

dx =2xf (9.88)

df

f =2x dx (9.89)

df f =

(2x)dx (9.90)

ln|f|=−x2+C (9.91)

f =±(expC) exp(−x2) (9.92) 初期条件より,f(0) =±expC= 3だから,

f(x) = 3 exp(−x2) (9.93)

答212略 答213略 答214略 答215略

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第 10 章

微分積分の発展

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