第 2 章 物理量と単位 19
2.11 例外 !
1013.25 hPaにあるときの体積を計算し, Lで表せ。電
卓使用可。
● 問44 気体定数R= 8.3145 J mol−1 K−1 の値を, atm L mol−1 K−1という単位で書き換えよ。電卓使用 可。途中経過も書け。ヒント: J=Pa m3。
ところでエネルギーの単位にカロリー(cal)というの もある。定義は, 1 cal := 4.184 Jである(記憶せよ)。 もともと, 1 calは「質量1 gの水の温度を1◦C上げる のに必要な熱量」と定義されていたのだが, それは条件 次第で微妙に異なるので, 今は上のようにJとの関係で 定義されている。
● 問45 常温・液体の水の比熱を, J kg−1K−1という 単位で表わせ。
● 問46 以下の問に答えよ:
(1) 成人ひとりが1日に食物から摂取するエネルギーは 約2500 kcalである。この量をJで書き換えよ。
(2) 上記のエネルギーを全部熱にすると, 体積0.5 m3 の水(風呂桶1杯くらい!)の温度を何Kだけ上げ ることができるか?
(3) 上記のエネルギーを全部仕事にすると,質量10 kg の物体を地上からどのくらいの高さまで持ち上げる ことができるか?
2.10 dimension check
ここで,ひとつ,便利な道具を紹介しよう。
例2.14 高校の物理基礎で学んだように, 質量mの物 体が速さvで移動しているとき,その物体の持つ運動エ ネルギーKを次式で定義する:
K:=1
2m v2 (2.35)
この両辺の単位をSI単位で考えよう。まず1/2は無次 元量なので単位なし。mの単位はkg, v2の単位は(m s−1)2=m2 s−2。従って, 右辺の単位はkg m2 s−2。こ れはJである(問40参照)。一方,左辺のKは「エネル ギー」と呼ばれる以上, SI単位ではJで表現できるはず である。従って, この両辺は, 同じ単位で揃えることが できる(次元が同じ!)。(例おわり)
このように, ある式について, 両辺が同じ単位を持て るかを調べること(すなわち両辺で次元が一致している
か調べること)を, dimension checkという。等式の両 辺は, 互いに同じ物理量を表すのだから, 同じ単位で表 すことができる(次元が一致している)はず。ところが, 何かミスをすると(例えば式(2.35)のv2の2乗を忘れ たり),左辺と右辺で単位は一致しなくなることが多いの で, これは, その式が正しくできているかどうかの検算 に使える。
実は,これに似た考え方を,既に例2.8や例2.9で紹介 した。つまり, 単位を式に埋め込んで計算すれば, 結果 的にdimension checkにもなるのだ。
● 問47 高校の物理基礎で学んだように, 地表付近で, 質量mの物体が高さhにあるとき, その物体の持つ位 置エネルギーUは次式で表される*10。
U =mgh (2.36)
gは重力加速度と呼ばれる定数で,g ≒9.8 m s−2であ る。この式をdimension checkせよ。
● 問48 半径rの球の表面積Sと体積V はそれぞれ
S= 4πr2 (2.37)
V =4
3πr3 (2.38)
である。ところが, 君の友人A君は, この公式を逆に 覚えている(V = 4πr2, S = 4πr3/3と覚えている)。 dimension checkを使って, A君に間違いを教えてあげ るには,どう言えばよいか? *11
2.11 例外 !
ここで, 少しやっかいな話。「物理量は数値と単位の 積」と述べたが,そうではない場合が存在するのだ。
もし物理量が「数値と単位の積」なら,その「数値」が 0のときにはその物理量は0である。例えば, 0 mは長 さが0 (無い)ということである。
すると, 「数値が0でも物理量が0にならない場合」
は,「数値と単位の積」ではない,ということになる(こ れは上で述べたことの対偶である。対偶がわからない人 は,索引で調べよ)。そして, 実際にそのような場合があ
*10これは位置エネルギーの定義ではない。位置エネルギーは,こ れとは別の式で定義され,そこからこの式が演繹される。また, 大学では位置エネルギーを「ポテンシャルエネルギー」と呼ぶ。
*11Sはsurfaceの頭文字,V はvolumeの頭文字,そしてrは
radiusの頭文字に由来する。このように,量を表す記号(アル
ファベット)は,その英単語に由来することが多い。それも公 式を覚えたり思い出したりするときの手がかりになる。
るのだ!
例2.15 温度はそもそも, 分子の平均運動エネルギーに 比例するような物理量であり, その単位としてK (ケル ビン) が使われる。当然, 分子の平均運動エネルギーが 0 のときの温度は0 Kである。ところが,温度を摂氏で 表すと, 0◦Cのときは273 Kであり, 0 Kではない。
例2.16 pHは, 水溶液の中の水素イオンの濃度[H+] の指標であり,次式で定義される:
pH :=−log10 [H+]
mol L−1 (2.39)
● 問49 次式を示せ:
[H+] = 10−pH mol L−1 (2.40)
● 問50 pHが0の水溶液(そんなものが現実としてあ るかどうかはここでは考えない)の水素イオン濃度は?
● 問51
(1) 水素イオン濃度が0.005 mol L−1のときpHは? (2) pH=5.6のとき, 水素イオン濃度は中性(pH=7)の
ときの何倍か?
(3) pH=5.0の塩酸と, pH=3.0の塩酸を, 等量, 混ぜ合 わせたら, pHはどのくらいになるか? ただし塩酸 はすべて解離するものとする。
ここで示した2つの例は, 「数値と単位の積」では ない。つまり, ◦CやpHという単位は, 普通じゃない, 変な単位である。こういう単位は, 単位同士の掛け算, 割り算, 約分はできないし, それを利用した単位換算 法も使えないし, 式(2.14)のような表現もできないし, dimension checkも使えない。なので, こういう単位の からむ計算や変換は, ケースバイケースで慎重に対応し なければならない。
よくある質問34 「ケースバイケースで慎重に対応」って, 具体的にはどういうことですか?... いちばん簡単なのは,単位 換算や他の量と一緒に計算する時にはそういう量を「数値と 単位の積」に書き換えてしまうことです。◦CはKに, pHは
mol L−1に書き換えてしまうのです。
演習問題
演習問題4 0◦Cは273 Kである。つまり,
0◦C = 273 K (2.41)
である。ところが,この両辺を2倍すると,
0◦C = 546 K (2.42)
になってしまう。この2つの式に式(1.4)を使うと,
273 K = 546 K (2.43)
となってしまう。どこでどのように間違ったのか? 演習問題 5 生物資源学類で農業を学ぶとき, 古い単位 が出てくることがよくある。以下のそれぞれの単位につ いて, その由来と, 相互の関係, そしてSI基本単位でど のくらいかを調べよ:
長さの単位: 寸,尺,丈,間,町,里 面積の単位: 畳,坪,畝,反,町 体積の単位: 合,升,斗,石 質量の単位: 貫
演習問題 6 伝統的に, 生物資源学類生の多くには, 教 員がテキスト・プリント・口頭で繰り返し注意しても, 必要な単位を付け忘れるという性質がある。「単位の付 け忘れ」に関する君の体験を述べ, このミスを解消でき る, 人道的で手間と費用の少ない教育法を提案せよ。ち なみに「テストで減点」とか「呼び出して説教」という のはあまり効果が無いことがわかっている。
よくある質問35 教育とは手間のかかるものだと思います...
それは一般論として正しい。しかし,「単位を付け忘れる」と いう悪癖は,本来は小中学校で矯正されるべきことだし,たと えそれに失敗したとしても,高校での勉強の中で「単位つけ ないのはまずくね?」と気づくべきことです。大学がわざわざ
「手間をかけて教育」するようなことではありません。
よくある質問36 大学で高校数学の復習なんて,ゆるくない
ですか? ... ゆるくないです。高校数学は,大学入試の問題演
習が中心ですので,「問題は解けるけど,基礎を理解していな い」という人が,驚くほど多いのです。そんな状態のままで大 学数学を詰め込まれ, 消化不良を起こして脱落する大学生が たくさんいます。高校数学の復習は,全ての大学生に必要なの です。
よくある質問37 テストとかで後から見ると信じられないよ うなミスをします。ミスを減らす方法ってありますか? ... 人 間だからミスはなかなか無くせないですよね。むしろミスし てミスから学ぶのです。ただし,ミスを指摘されているのに気 付かずに同じミスを繰り返したり,最初からテキストで注意喚 起されているところをミスするのはダメです。
2.11 例外! 31
問の解答
答24 「お互いに単位を揃えることができるかどうか」
という観点で共通する性質。
答25
(1) 500リットル
5 時間 ×2時間= 200リットル
(2) 5 時間
500リットル ×4 m3
= 5時間
500 リットル×4×103 リットル= 40時間 (3) 21000 t
4900 ha= 21000×103kg
4900×104 m2 = 2.1×107 kg 4.9×107 m2
≒0.43 kg/m2
(4) (3)の逆数。 1/(0.43 kg/m2)≒2.3 m2kg−1 (5) 0.43 kg
m2 ×260×104m2≒110×104kg = 1100 t (6) 60kg
人 ×130人×2.3 m2
kg ≒18000 m2= 1.8 ha 答26略(本文に書いてある)。
答27 (略解)いずれも, kg, m, sの3つの単位のどれかで 表すことができる。(1) 60 s。(2) 3600 s。(3) 100 m2。 以下,略。
答28略(本文に書いてある)。 答29 (略解)
(1) 1 m=10−3 km。1 m=0.001 kmと書いてもOK。 (4) 1 m2=1×(10−3 km)2=10−6 km2。
(8) 1 km3=1×(103 m)3=109 m3。
(11) 1 dL=10−1L=10−1×10−3m3=10−4m3。他略。
答30 (略解) (1) 9×103 m2。(2) 3×104 m3。 答31 (略解)
(1) mL=10−3 L = 10−3 × 10−3 m3=10−6 m3。 cm3=(10−2m)3=10−6 m3。よって, mL = cm3。 (2), (3) は 略 。(4) Gt=109 × 103 kg=1012 kg。 Pg=1015 g=1012 kg。よって, Gt=Pg。
答32
2.0 g/s = 2.0 g
s = 2.0 g s
kg 1000 g
3600 s h
= 2.0 g s
kg 1000 g
3600 s
h =2.0×3600 1000
kg
h = 7.2 kg/h 答33 (略解)
(1) 1220 km/h。(有 効 数 字 3 桁 と み な し た 。4 桁 で 1224 km/hでもOK)。
(2) 1.08×109 km/h。(3) 1.0 kg/L。(4) 1.0 t/m3。(5) 1.3 kg/m3。(6) 1.4×10−2g/s。
答34与えられた量に対して0.5倍から数倍の違いがあ る事物でOK(ざっくり!)。以下は例。レポートではこ こに挙げた例を答えてはならない。
(1) 1 mL ... インフルエンザワクチンの容量(0.5 mL)。 (2) 1 m3... 銭湯の小さめの浴槽の容量。
(3) 1 mg ... キイロショウジョウバエ1匹の質量。
(4) 1 g ... 1円玉1個の質量。
(5) 1 kg ... サッカーボールの質量(0.5 kg)。 (6) 1 t ... 軽自動車1台の質量。
(7) 1µm ... 大腸菌1匹の大きさ。
(8) 10000 km ... 地球の直径(13000 km)。 (9) 100000 km2 ... 北海道の面積(83500 km2)。 答35略。
答36 60×9.8 N≒590 N 答37 略(本文に書いてある)。 答38
(1) 2 kg×3 m s−2=6 kg m s−2 = 6 N (2) 2 N×4 m = 8 N m = 8 J
(3) (略解) 5 Pa (4) (略解) 200 J 答39(略解)
(1) J = N mの両辺をmで割る。(2) Pa=N/m2の右 辺に,前小問で示したN=J/mを代入。(3)以下は略。
答40式(2.32)の右辺のNに式(2.30)を代入すると, J=kg m s−2 m=kg m2s−2 (2.44) 式(2.33)の右辺のNに式(2.30)を代入すると,
Pa=kg m s−2/m2=kg m−1s−2 (2.45) 式(2.34)の右辺のJに式(2.44)を代入すると,
W=kg m2s−2/s=kg m2 s−3 (2.46)
答41 (1) 1 kW h = (103W)×(3600 s) = 3.6×106W s
= 3.6×106 J。(2) 1 hPa = 102 Pa = 100 Pa。 答42
(1) 1 atm := 1013.25 hPa = 1.01325×103×102Pa
= 1.01325×105 Pa。