第 7 章 三角関数 99
7.15 積和公式と和積公式
7.15 積和公式と和積公式
加法定理,すなわちP.104の式(7.29),式(7.31)より, cos(α+β) = cosαcosβ−sinαsinβ
cos(α−β) = cosαcosβ+ sinαsinβ これらの両辺を加えたり引いたりすると,
cos(α+β) + cos(α−β) = 2 cosαcosβ (7.73) cos(α+β)−cos(α−β) =−2 sinαsinβ (7.74) となる。すなわち,
cosαcosβ= cos(α+β) + cos(α−β)
2 (7.75)
sinαsinβ= cos(α−β)−cos(α+β)
2 (7.76)
となる。一方, P.104の式(7.30),式(7.32)より, sin(α+β) = sinαcosβ+ cosαsinβ sin(α−β) = sinαcosβ−cosαsinβ これらの両辺を加えると,
sin(α+β) + sin(α−β) = 2 sinαcosβ (7.77) となる。すなわち,次式が成り立つ:
sinαcosβ= sin(α+β) + sin(α−β)
2 (7.78)
式(7.75),式(7.76),式(7.78)は, 2つの三角関数の積 を, 2つの三角関数の和に変換する公式であり,「積和公 式」と呼ばれる。
また, 式(7.73)において,
α+β =A (7.79)
α−β=B (7.80)
とすれば,
cosA+ cosB= 2 cosαcosβ (7.81) となる。ところが, 式(7.79)+ 式(7.80) より, 2α = A+B。式(7.79)−式(7.80)より, 2β=A−B。従って,
α= A+B
2 , β =A−B 2 なので, 式(7.81)は,
cosA+ cosB= 2 cosA+B
2 cosA−B
2 (7.82)
となる。同様に,式(7.74),式(7.77)より, cosA−cosB=−2 sinA+B
2 sinA−B
2 (7.83) sinA+ sinB= 2 sinA+B
2 cosA−B
2 (7.84)
となる。式(7.82),式(7.83),式(7.84)は, 2つの三角関 数の和(や差)を, 2つの三角関数の積に変換する公式で あり,「和積公式」と呼ばれる。
和積公式は, 物理学で出てくる「うなり」という現象 などで, わずかだけ波長が違う正弦波の重ねあわせをす るときに使う。
演習問題
演習問題22 「微分」の章で,奇関数の導関数は偶関数, 偶関数の導関数は奇関数であることを学んだ。三角関数 の導関数についてそれらが成り立っていることを確かめ よ。と言っても,「確かめた」だけでは解答にならない よ! どのように確かめたかを,ちゃんと書くこと。
演習問題23 y= arccosx, y= arcsinx, y= arctanx のそれぞれのグラフを描け。
演習問題24 θが0に近い時,次式を示せ:
sinθ≒θ (7.85)
また, 実際, θ = 1度 について上の両辺を電卓で計算 して, 上の式がどのくらいの精度で成り立つか(有効数 字何桁まで合っているか) を調べよ(ヒント: 前半は式
(5.78)。後半は度をラジアンに換算することを忘れない
ように!)。
問題の解答
答153
(1) 角Aは共通で等しく,かつ, A以外の1つの角が直 角で等しい。2つの角が等しいので相似。
(2) △ABCと△ACDは相似なので,
AB:AC=AC:AD。従って, AC2=AB×AD。 (3) 角Bは共通で等しく,かつ, B以外の1つの角が直
角で等しい。2つの角が等しいので相似。
(4) △ABCと△CBDは相似なので,
AB:BC=BC:BD。従って, BC2=AB×BD。
(5) (2)よりAD=AC2/AB。(4)よりBD=BC2/AB。
これをAB=AD+BDに代入して,
AB=AC2/AB+BC2/AB。
両辺にABを掛けて,式(7.1)を得る。
答154 「ラジアン」とは, 角の大きさを, その角が半径 1の円を切り取る扇型の弧の長さで表したもの。
ラジアン=度×π/180
答155 (1)π/2 (2)π/4 (3)π (4)π/6 (5) π/180 答156 (1) 180◦ (2) 60◦ (3) 360◦ (4) 45◦ (5) 180◦/π 答157 (1)π (2)π (3) 0
答158
(1) 君の目を中心として,腕の長さ(l)を半径とする円に おいて, 親指の幅aが切り取る弧の角度は,θ≒a/l となる。
(2) 君の目を中心として,半径Rの円において, 胸高直 径dの木の幹が切り取る弧の角度は,d/Rである。
幹が親指にちょうどぴったり隠れるとき, この角度 と前問の角度が等しくなるから, θ=d/R。よって, d=Rθ
(3) 前問より,親指に隠れない木は, すべて半径Rの円 内にあり,かつ, 半径Rの円内にある木はどれも親 指からはみだして見える。従って,N は君の立ち位 置を中心とする半径R=d/θの円内の木の本数で ある。
(4) A=πR2は自明。この円内にある木の胸高断面積 の合計は,それぞれの木の胸高断面積π(d/2)2とN の積だから,B=N πd2/4
(5) 前問より, B
A = N πd2/4 πR2
ここで, (2)よりd=Rθとすれば, この上の式の右 辺は,
=N θ2 4 となる。
(6) a= 2 cm, l = 60 cmのとき, θ≒a/l= 1/30。こ れとN = 10を上の式に代入して,B/A= 0.0028。
(地表面の0.28パーセントが木の幹で占められて いる。)
(7) 式(7.8)は, 木の太さ(胸高直径)dに依存しない。
従って, この方法は, どんな太さの木からなる林に
ついても有効である。
(8) 太さd1, d2, ..., dn の木が混在しているとし, 親指 に隠れない本数は, 太さdk の木についてNk 本 だったとする(1≤k≤n)。式(7.8)より, 太さdk の木に関する単位面積当たりの胸高断面積Ck は, Ck =Nkθ2/4となる。全ての木に関する, 単位面 積当たりの胸高断面積Cは,C1+C2+...+Cn= (N1+N2+...+Nn)θ2/4 =N θ2/4となり, 結局, N =N1+N2+...+Nn,すなわち,さまざまな太 さの木をぜんぶひとまとめにして親指に隠れない本 数を数えたときの値だけで決まる。従って, さまざ まな太さの木が混在する状況でも, この方法は有効 である。
答159半径1の円。
答160略(本文に書いてある)。
答161 定義より(cosθ,sinθ)で表される点Pはxy平 面上の原点を中心とする単位円の上の, いかなる点もと りうる。よって, cosθすなわちPのx座標と, sinθす なわちPのy座標は, −1から1の範囲のどんな値もと りうる。しかし,点Pはこの単位円上以外の点はとらな い。従ってcosθもsinθも,−1より小さくなったり1 より大きくなったりはしない。
答162
角 sin cos tan
0◦ 0 1 0
30◦ 1/2 √
3/2 1/√
3 45◦ 1/√
2 1/√
2 1
60◦ √
3/2 1/2 √
3
90◦ 1 0 解なし
120◦ √
3/2 −1/2 −√
3
180◦ 0 −1 0
270◦ −1 0 解なし
−30◦ −1/2 √
3/2 −1/√ 3
π/6 1/2 √
3/2 1/√
3 π/4 1/√
2 1/√
2 1
π/3 √
3/2 1/2 √
3 1◦ 0.017· · · 0.999· · · 0.017· · · 1 0.841· · · 0.540· · · 1.557· · · 0.1 0.099· · · 0.995· · · 0.100· · · 0.01 0.010· · · 0.999· · · 0.010· · ·
答163略。
7.15 積和公式と和積公式 113 答164 nπラジアンの角は, nが偶数のときは0ラジア
ンの角と同じであり, nが奇数のときはπラジアンの角 と同じである。従って,単位円上で,x軸からnπラジア ンの角にある点Pの座標は,nが偶数のときは(1,0)で あり, nが奇数のときは(−1,0)である。いずれのとき も,そのy座標は0である。従ってsinnπ = 0。同様の 考察で点Pのx座標を考えると,nが偶数のときは1,n が奇数のときは−1。これは(−1)nと統一的に表現でき る。従って, cosnπ= (−1)n。
答165 tan2θ= sin2θ/cos2θだから, 1 + tan2θ= 1 + sin2θ
cos2θ = cos2θ+ sin2θ cos2θ = 1
cos2θ また, cos(−θ) = cosθ, sin(−θ) =−sinθより,
tan(−θ) = sin(−θ)
cos(−θ) = −sinθ
cosθ =−tanθ また,
tan(θ+π) = sin(θ+π)
cos(θ+π) = −sinθ
−cosθ = sinθ
cosθ = tanθ
答166
式(7.14)から, cosθは偶関数。
式(7.15)から, sinθは奇関数。
式(7.27)から, tanθは奇関数。
答167略(誘導に従う)。 答168
(1) 略。前問でβをあらたに−βと置き直せばよい(実 際に計算してみよ)。
(2) 略。前問でβをあらたに−βと置き直せばよい(実 際に計算してみよ)。
(3) cos(α+β) = cosαcosβ −sinαsinβ において, β =αとおけば, cos 2α = cos2α−sin2α。また, cos2α+ sin2α= 1より, sin2α= 1−cos2α。これ を使って上の結果のsin2αを消去すれば, cos 2α= 2 cos2α−1。同様に, cos2α = 1−sin2αを使っ て上の結果のcos2αを消去すれば, cos 2α = 1− 2 sin2α。
(4) sin(α+β) = sinαcosβ + cosαsinβ において, β=αとおけば, sin 2α= 2 sinαcosα。
答169
(1) 式(7.34)より, cos 2α= 2 cos2α−1。これを変形
して与式を得る。
(2) 式(7.35)より, cos 2α= 1−2 sin2α。これを変形 して与式を得る。
答170 (1)(2)(3)は, 図7.6,図7.7,図7.8参照。(4)は, 図7.6を横方向に半分に縮めたもの(グラフの縮小)。 答171
(1) sinxは常に実数なので, その二乗であるsin2xは 常に0以上。
(2) 常に−1≤sinx≤1なので, sin2x≤1。
(3) x= 0のときy= sin2x= 0。従って原点を通る。
(4) f(x) = sin2xと す る と, f(−x) = sin2(−x) = (−sinx)2= sin2x=f(x)。従って偶関数。
(5) 式 (7.38) よ り, こ の 関 数 の グ ラ フ は, 関 数 y = cos 2xのグラフをy 軸方向に−1/2 倍してy 軸 方向に1/2移動したものだ。そのグラフは, 図7.9 参照
答172 単位円上に, x軸から角θの位置に点Pをとる。
点Pからx軸におろした垂線の足を点Qとする。三角 形OPQは,直角三角形OABと相似である。OP= 1な ので,三角形OPQのOA倍が三角形OABになる。
(1) PQ= sinθなので, AB=PQ×OA=OA sinθ。よっ てsinθ=AB/OA。
(2) OQ= cosθ なので, OB=OQ×OA=OA cosθ。よ ってcosθ=OB/OA。
(3) これらより, tanθ= sinθ
cosθ = AB/OA OB/OA = AB
OB
答173 式(7.44)で, ABを高度, OAを斜距離と考えれ ばよい。高度=100 m×sin(30度)=50 m。
答174 高度=100 m×sin(3度)。関数電卓で計算する と, sin(3度)= 0.05233595· · · なので,
高度=100 m×0.05233595· · ·= 5.233· · ·m。
一方, 3度=π/60ラジアンは, 0に近いので, 関数電 卓を使わないでも,
sin(3度) = sin(π/60)≒π/60 = 0.05235986· · · と な る 。従 っ て, 高 度 ≒100 m×0.05235986· · · = 5.235· · ·m。この よ うに, 近似 によ る 誤差 は, わ ずか 2〜3 mm程度である。
答175
(1) 直角三角形CBPで, BP=CB sinC=asinC。 (2) 三角形ABCについて, 底辺をCA=b, 高さをBP
とすれば,前問より, S=CA×BP
2 = absinC 2
(3) 前小問によって,「三角形の面積は, 2辺の長さ×そ れらが挟む角の正弦/2」ということがわかった。こ れを,辺CAと辺ABに適用すると式(7.49)を得る し,辺ABと辺BCに適用すると式(7.50)を得る。
(4) 式(7.48)〜式(7.50)より, S=absinC
2 =bcsinA
2 =casinB 2
これらに2/(abc)をかければ(いちばん左のSの項 は落として),
sinC
c =sinA
a = sinB b
これらの逆数をとれば与式を得る。
答176
(1) 直 角 三 角 形 CBP を 考 え れ ば CP=BCcosC = acosC。ま た, AP=|AC−CP|=b −acosC|。注: 絶対値は, Pが線分CAの外側にあるときに必要。
(2) 直角三角形PABを考える。斜辺ABの長さはc。 直角をはさむ2辺はAPとPBであり,前小問より AP=|b−acosC|。また, PB=asinC。これらに三 平方の定理を適用して与式を得る。
(3) 前小問の与式を展開すると,
c2=a2sin2C+b2+a2cos2C−2abcosC
=a2(sin2C+ cos2C) +b2−2abcosC
=a2+b2−2abcosC
答177 略。
答178
(1) cosθ= a2+b2−c2
2ab = 21
24= 7 8 (2) sinθ=√
1−cos2θ=
√ 1−(7
8 )2
=
√15 8 (3) S =absinθ
2 =3√ 15 4 cm2 注:(3)については,必ず単位をつけること! 答179
(1) arctan 1 =π/4 (2) arctan 0 = 0
(3) arccos 0.5 =π/3 (4) arcsin(−0.5) =−π/6 (5) arctan 5 = 1.373· · · (6) arcsin 2は存在しない。
答180有効数字2桁で計算すればよい。関数電卓を使っ て, arctan{(880−30)/12000}≒0.071ラジアン= 4.1 度
答181略。
答182略。
答183 (1) −sinx (2) 1/cos2x (3) 2 cos 2x (4) cosx−xsinx
(5) −2 cosxsinx。または, sin の倍角公式(7.36) を 使って, −sin 2xとしてもよい。
(6) −2xsinx2
答184単位円上に,x軸から角θの位置に点P0をとる。
点P0は線分OP上にあり,かつ, OP=r, OP0 = 1な ので,点Pの座標(x, y)は点P0の座標(cosθ,sinθ)の r倍。従って,x=rcosθ, y=rsinθ。
答185 (1) r=√
12+ 12=√
2, θ=π/4 (2) r= 2, θ= 5π/6
(3) r = √
22+ 32 = √
13, θ = arctan(3/2) = 0.982· · ·
(4) x=rcosθ= 2×cos(π/3) = 1 y=rsinθ= 2×sin(π/3) =√ 3
∴(1, √ 3)
(5) 同様にして(2.95· · ·,0.520· · ·) 答186
(1) cosは2πを周期とする関数なので, x0cosωt は, ωt= 2πになるときにもとに戻る。従って, 運動の 周期をT とすると, ωT = 2π。従って, T = 2π/ω である。
(2) (x0cosωt)′=−x0ωsinωt (3) (x0cosωt)′′=−x0ω2cosωt
(4) 速度の最大値はx0ω,加速度の最大値はx0ω2なの で,ωが2倍になると,速度の最大値は2倍,加速度 の最大値は4倍になる。
115
第 8 章
積分
8.1 積分の発想
「ローマは一日にして成らず」という。何事も,小さな 変化の積み重ねが大きな変化につながるのだ。その考え 方を数学にしたのが「積分」というものである。
いま, 何かの量(ローマの都市の人口とか面積でもい い)zが時刻tとともにどう変わっていくかを知りたい とする。最初t =t0 のときはz =z(t0)という値であ り, t がt1, t2,· · ·, tn と経つにつれ(現在をt =tn と する), zはz(t1), z(t2),· · ·, z(tn)という風に変化して いったとしよう。すると現在の値z(tn)は,それまでの 成長の積み重ねで決まる。つまり, 年々, もしくは日々 の成長を,
∆z1:=z(t1)−z(t0) ... t0からt1までの成長
∆z2:=z(t2)−z(t1) ... t1からt2までの成長
∆z3:=z(t3)−z(t2) ... t2からt3までの成長
· · ·
∆zk:=z(tk)−z(tk−1) ... tk−1からtkまでの成長 (8.1)
· · ·
∆zn:=z(tn)−z(tn−1) ... tn−1からtnまでの成長 とすれば,
z(tn) =z(t0) + ∆z1+ ∆z2+ ∆z3+· · ·+ ∆zn
=z(t0) +
∑n k=1
∆zk (8.2)
である。
さてここで, 年々や日々の成長を, もっともっと細か いステップ(分ごととか,秒ごととか)で考えれば, それ ぞれの∆zkは0に近づいて無限小dzになり,そのかわ りステップの個数nは無限に大きくなっていく(ただし tn はnがどんなに大きくなっても「現在の時刻」に固 定する)。そういう状況で,式(8.2)を以下のように書き
あらわす:
z(T) =z(t0) +
∫ z(T) z(t0)
dz (8.3)
ここでtnを改めてTと置いた。この∫
という記号はイ ンテグラルと呼ぶ。これは, 総和記号Σの「極限」, つ まり「各ステップの幅を無限小にして, ステップの数を 無限大にしたときのΣ」であると考えればよい。また, 末尾のdzは,ステップの幅∆zk を0に近づける極限の 無限小である。つまり,形式的には,
ステップの幅を無限小に,数を∞にする極限では Σは∫
に変わる! ∆zkはdzに変わる! (∆はdに変わり,kは消える)
のだ*1。
さて, 式(8.2)や式(8.3)は, 何かの量を,その微小な 変化の積み重ねで表しただけである。ところが多くの 場合, 個々の微小な変化は, その変化に要した(微小な) 時間
∆tk:=tk−tk−1 (8.4)
に比例すると考えてよかろう。例えばzがローマの大き さなら, 2日間の変化は1日の間の変化の約2倍だろう。
ただしこれが1万日くらいの長い時間になるとそんな に単純ではない。そんなに長い時間では, その間にロー マの発展の勢いが大きく変わるかもしれないから, 単純 に1万日間の変化=1日の変化×1万とは言えまい。そ こで,その比例係数は,その時々で変わると考え,それを f(t)とし, ∆tk は, f(t)がほとんど変化しないくらい短 い時間を考えれば,
∆zk ≒f(tk)∆tk (8.5)
と書けるだろう。ここで気づいた人もいるだろうが, こ
*1計算機で積分を考えるときは,逆に∫
をΣに,dzを∆zk に 置き換えて考える。