第 8 章 積分 115
8.10 微分と積分の関係
の式が成り立つことを示せ:
(1)
∫ a
−a
f(x)dx= 0 (8.118)
(2)
∫ a
−a
g(x)dx= 2
∫ a 0
g(x)dx (8.119)
● 問202 以下の積分を,計算せずに求めよ。
(1)
∫ ∞
−∞
xe−x2dx (2)
∫ 500
−500
(x5+ 3x3−x)dx
8.10 微分と積分の関係
本章の最初の方で, 微分と積分は逆の関係と述べた。
ここでは少し違った見方を考えてみる。
「積分の公式17」である式(8.112)は, 変形すると次 式になる:
F(b) =F(a) +
∫ b a
f(x)dx (8.120)
ここで, Fはf の原始関数なのだから,f(x)をF′(x) で置き換えてよい。また,a=x0,b=x+ ∆xと置き換 えよう:
F(x0+ ∆x) =F(x0) +
∫ x0+∆x x0
F′(x)dx (8.121) ここで形式的にF(x)をf(x)と置き換えると,
f(x0+ ∆x) =f(x0) +
∫ x0+∆x x0
f′(x)dx (8.122) となる。さて,式(8.122)をP.66の式(5.5)や式(5.6):
f(x0+dx) =f(x0) +f′(x0)dx (8.123) f(x0+ ∆x)≒f(x0) +f′(x0)∆x (8.124) と比べてみよう。特に左辺と等号に注目。式(8.122)と 式(8.123)は, ∆xとdxが違うが, 等号”=”は同じだ。
式(8.122)と式(8.124)は, 左辺は同じだが, 前者は等 号”=”,後者は近似等号”≒”を使っている点が違う。式 (8.122)は,式(8.124)を積分を使って拡張し,式(8.123) と同じくらいの厳密さにした式なのだ。そのポイント は, 式(8.123)や式(8.124)の右辺で「f′(x0)と微小量 の積」だったところが,式(8.122)では「f′ を積分した もの」に置き換わったことだ。微分(掛ける微小量)で は近くまでしか行けないが, 積分(微小量を掛けて足す
こと)では遠くまで行けるのだ。
これらの3つの式は, x0から離れたところの関数の 値を,微分係数を使って求めるという点では同じであり, いわば「親戚」である。その中で,最も一般性が高い(遠 くまで行ける)のは式(8.122)である。実際の応用でも, 式(8.122)はよく出てくる。
演習問題
演習問題25 ガウス関数f(x) = exp(−x2)を考える。
(1) 表計算ソフトで,y=f(x)のグラフを,−4≤x≤4 の範囲で描け。ヒント: セルに数式を記述するとき,
−x2を「-x^2」のように表現するとうまくいかな い。表計算ソフトは,この記述を(−x)2と解釈して しまうのだ。かわりに,「-x*x」とか, 「-(x^2)」 と表現するとよい。
(2) f(x)をx=−4から定積分してできる関数: F(X) =
∫ X
−4
exp(−x2)dx (8.125) を,−4≤X ≤4の範囲で, 表計算ソフトを使って 数値積分によって求め, その結果をグラフに描け。
刻み幅は0.1程度でよい。
(3) F(4)の値を述べよ。その値を√
πの値と比較せよ。
なおこの関数は,解析的に不定積分するのは困難である。
ただし,−∞から∞までの定積分は,以下のようになる ことがわかっている:
∫ ∞
−∞
exp(−x2)dx=√
π (8.126)
これを ガウス積分 という。
式(8.126)は,統計学で使う重要な式である。
よくある質問100 読めばわかるけど, 自力では思いつきま せん... それでいいのです。我々は数学類でもないのだから, 偉い数学者が思いついたことを頂戴して,理解・再現できるよ うになればよいのです。
でもそれじゃあテストが解けません... 「解ける」よりもま ず「理解する」が大事。テストに出るのは,テキストに載って いることをきちんと理解していれば解ける問題がほとんどで す。「定義を述べよ」とかね。「理解しないで解き方だけ覚え る」みたいな勉強は,虚しいからやめましょう。そんなことの ために大学に来たんじゃないでしょうし,我々もそんなことを させるために教員をやっているんじゃありませんから。
よくある質問101 定義を覚えることに違和感があります。
数学は暗記科目じゃないと思う。... 私も昔はそう思っていま した。そして膨大な時間を無駄にしました。高校までの数学 は,定義にこだわらなくても,素朴な直感でなんとかなるので, パズル脳のある人は「考えるだけ」でやっていけます。でも, 大学になると, 素朴な直感では太刀打ちできない数学が出て きます。直感よりも先に,定義と論理が最大の武器になるので す。まず定義を覚え,定義に沿って例を考え,定義に基づいて 問題を解き,わからなくなったら定義に戻る。そうやって定義 を頭に馴染ませるうちに,定義がよく出来ていることを理解す る。その地道な繰り返しが,君の直感を磨くのです。
よくある質問102 すべてはすべての定義であるだけな気が してなりません。... そんなことないですよ。例えば,三角関 数の加法定理は何かの定義ではなく,三角関数の定義と三平方 の定理から論理的に導出できる定理です。
問題の解答
以下,特に断らない限り, Cを積分定数とする。
答187略(がんばれ!) 答188略(がんばれ!) 答189略(がんばれ!) 答190略(がんばれ!) 答191
(1) x3/3 +C (2) −1/x+C (3) x+C 注: ∫
dxとは,∫
1dx,つまり1の原始関数(微分したら 定数1になる関数)のこと。
答192 x+x2/2 +x3/3 +C 答193
(1) (2x+ 1)4/8 +C (2) ln|x+ 1|+C (3) −ln|1−x|+C (4) −exp(−x) +C (5) exp(x+ 1) +C
答194
(1) まず部分分数展開をしよう。
1
x2−x= 1
x(x−1) = a x+ b
x−1
とおく。すると, a(x−1) +bx
x(x−1) = (a+b)x−a
x(x−1) = 1 x(x−1) これを満たすa, bを求める。分子のxの項から, a+b = 0。分子の定数項から, −a = 1。従って, a=−1, b= 1。よって,
1
x(x−1) = 1 x−1 −1
x
これで部分分数展開できた。従って,
∫ 1
x(x−1)dx=
∫ ( 1 x−1 −1
x )
dx
= ln|x−1| −ln|x|+C= lnx−1 x
+C
以下,部分分数展開の過程は省略する。
(2)
∫ dx x2−1 =
∫ dx
(x−1)(x+ 1)
=
∫ 1 2
( 1
x−1− 1 x+ 1
) dx
= 1 2
{ln|x−1| −ln|x+ 1|}
+C=1
2lnx−1 x+ 1
+C
(3)
∫ x dx x2−1 =
∫ x dx (x−1)(x+ 1)
=
∫ 1 2
( 1
x−1 + 1 x+ 1
) dx
=1 2
{ln|x−1|+ ln|x+ 1|} +C
=1
2ln|(x−1)(x+ 1)|+C= 1
2ln|x2−1|+C 答195
左辺=
∫ 1 b−a
( 1
a−x− 1 b−x
) dx
= 1
b−a{−ln|a−x|+ ln|b−x|}+C=右辺
8.10 微分と積分の関係 131 答196
(1)
∫
xexdx=
∫
x(ex)′dx=xex−
∫
(x)′exdx
=xex−
∫
exdx=xex−ex+C= (x−1)ex+C (2)
∫
xsinx dx=
∫
x(−cosx)′dx
=x(−cosx)−
∫
(x)′(−cosx)dx
=−xcosx+
∫
cosx dx=−xcosx+ sinx+C (3)
∫
lnx dx=
∫
(x)′lnx dx
=xlnx−
∫
x(lnx)′dx=xlnx−
∫ x
(1 x )
dx
=xlnx−
∫
dx=xlnx−x+C 答197
(1) 1 +x2=tとおくと, 2x dx=dtより,
∫ 2x 1 +x2dx=
∫ dt
t = ln|t|+C= ln(1 +x2) +C ここで, 1 +x2は常に正なので,絶対値記号は不要。
(2) x2=tとおくと, 2x dx=dtより,
∫
xe−x2dx=
∫ e−t
2 dt=−e−t
2 +C=−e−x2 2 +C (3) sinx=tとおくと, cosx dx=dtより,
∫
sinxcosx dx=
∫
t dt= t2
2 +C= sin2x
2 +C
(8.127) (別解) cosx=tとおくと,−sinx dx=dtより,
∫
sinxcosx dx=−
∫ t dt
=−t2
2 +C=−cos2x
2 +C (8.128)
注: 式(8.127)と式(8.128)は, 見かけは違うが, とも に原始関数である。実際,式(8.128)について, cos2x+ sin2x= 1を使ってcos2xを消去すると,定数部分を除
けば式(8.127)と同じになる。原始関数は積分定数のぶ
んだけ任意性があるので,定数部分の違いは許容される。
また,この問題は例8.7とも同じであり,結果は一見する と違うが,その違いも積分定数で吸収される(倍角公式を 使って確かめてみよ)。
(4) 1−x2=tとおくと,−2x dx=dt
∫ x√
1−x2dx=
∫
−1 2
√t dt
=−1 2·2
3t3/2+C=−1
3(1−x2)3/2+C 答198
(1) x= tanθと置くと, dx/dθ = 1/cos2θ。したがっ て,dx =dθ/cos2θ。式(8.104)のxにtanθを代 入し, dxに上の式を代入すると,与式を得る。
(2) (cos2θ)(1+tan2θ) = (cos2θ)(1+sin2θ/cos2θ) = cos2θ+ sin2θ= 1
(3) 略。
(4) 略(θ= arctanxより明らか)。
答199 (1) ∫1
0 a dx= [
ax ]1
0=a (2) ∫1
0 ax dx= [
ax2/2 ]1
0
=a/2 (3) ∫π
−πsinx dx=
[−cosx ]π
−π = 0
(sinxは奇関数だから当然とも言える。) (4)
∫ π
−π
sin2x dx=
∫ π
−π
1−cos 2x
2 dx
= [1
2x−1 4sin 2x
]π
−π
=π (5) (部分積分を使う)与式=
∫ π
−π
x(−cosx)′dx= [−xcosx]π−π+
∫ π
−π
(x)′cosx dx
= 2π+
∫ π
−π
cosx dx= 2π (6) (部分積分を2回使う。式(7.24), 式(7.25)を使う)
与式= 1 n
∫ π
−π
x2(sinnx)′dx
= 1 n
[x2sinnx]π
−π− 1 n
∫ π
−π
(x2)′sinnx dx
=−2 n
∫ π
−π
xsinnx dx= 2 n2
∫ π
−π
x(cosnx)′dx
= 2 n2
[xcosnx]π
−π− 2 n2
∫ π
−π
cosnx dx
=4πcosnπ
n2 = (−1)n4π n2
答200x=Rsinθと置こう(置換積分)。 dx=Rcosθ dθである。
与式=
∫ R 0
√
R2−x2dx
=
∫ π/2 0
√R2−(Rsinθ)2Rcosθ dθ
=
∫ π/2 0
R2√
1−sin2θcosθ dθ
=
∫ π/2 0
R2√
cos2θcosθ dθ
=
∫ π/2 0
R2cos2θ dθ=
∫ π/2 0
R21 + cos 2θ
2 dθ
= [
R2θ+ (sin 2θ)/2 2
]π/2 0 =πR2
4
ここで, 1行目では積分の範囲が「x= 0からx=Rまで」
だったのが2行目では「θ= 0からθ=π/2まで」に変わった ことに注意せよ。これは置換積分で変数変換したことによる。
答201
(1) まず積分区間を分割すると, P.119式(8.15)より
∫ a
−a
f(x)dx=
∫ 0
−a
f(x)dx+
∫ a 0
f(x)dx (8.129) となる。次に,右辺の第一項でx=−tと置換する。
dx=−dtとなり,積分区間は「t=aからt= 0」 となるので,
∫ 0
−a
f(x)dx=
∫ 0 a
f(−t)(−dt) =
∫ a 0
f(−t)dt と な る (最 後 の 変 形 で 積 分 の 公 式 5 を 使 っ た)。 f(x)が奇関数ならf(−t) = −f(t)だからこの式 は, −∫a
0 f(t)dt と な る 。t を 改 め て xと 書 き 換 えればこの式は−∫a
0 f(x)dx となる。従って, 式 (8.129)は,
∫ a
−a
f(x)dx=−
∫ a 0
f(x)dx+
∫ a 0
f(x)dx= 0 (2) 前問と同様にまず積分区間を分割する:
∫ a
−a
g(x)dx=
∫ 0
−a
g(x)dx+
∫ a 0
g(x)dx (8.130) 前問と同様に, x =−tと置換すれば, 右辺の第一
項は,
∫ 0
−a
g(x)dx=
∫ 0 a
g(−t)(−dt) =
∫ a 0
g(−t)dt となる。g(x)が偶関数ならg(−t) =g(t)だから, この式は, ∫a
0 g(t)dt となる。tを改めてxと書き 換えれば,この式は,∫a
0 g(x)dxとなる。従って,式 (8.130)は
∫ a
−a
g(x)dx=
∫ a 0
g(x)dx+
∫ a 0
g(x)dx
= 2
∫ a 0
g(x)dx
答202計算するまでもなく,いずれも0。(被積分関数が 奇関数で, 積分区間が正負対称なので, 前問の(1)が適 用される)
133
第 9 章
積分の応用
積分は, 様々なことに応用される。2つの量の間の関 係を知りたいとき, 2つの量の微小量どうしの関係がわ かれば,あとは積分で何とかなる。本章ではその実例を 学び,積分がいかに便利で強力なツールかを君に納得し てもらう。
9.1 円の面積
ある図形の面積を知りたいとき,その図形を多くの小 さな単純な図形に分解して, それぞれの小図形の面積を 足し合わせる(積分する)ことで,もとの図形の面積がわ かる。例として,円の面積や球の体積の公式を導いてみ よう。
まず円の面積の公式を,オーソドックスなアプローチ で求めてみよう。P.116で学んだように, 関数のグラフ がx軸より上にあるときは, その関数の定積分は, その 関数とx軸で囲まれた図形の面積になる。それを使う のだ。
例9.1 2次元平面上に,原点を中心とする半径Rの円 を考え, その面積をS とする。この円が, 0 ≤ xかつ 0 ≤yの範囲, つまり第一象限の範囲で, x軸とy軸と で囲む領域(つまり円板の1/4)の面積を求めてみよう。
この円周の上の点(x, y)は,
x2+y2=R2 (9.1)
を満たすが,特にこの範囲では, y=√
R2−x2 (9.2)
を満たす。従って, この領域(円板の1/4)の面積Xは, 次式のようになる:
X=
∫ R 0
√
R2−x2dx (9.3)
● 問203 式(9.3)を使って,
(1) 次式を示せ:
X = πR2
4 (9.4)
(2) それを使って次式を示せ。
S =πR2 (9.5)
このアプローチは, 図8.1のように, 図形を縦長の短 冊に分割するという作戦だ。ところが, 円は四方八方に 丸いので, もっとエレガントに求まるのだ:
例9.2 半径Rの円板を,小さな幅の円環の集まりと考 える(図9.1)。すなわち, 円をn個の同心円で分割し, 小さい円から順に,それぞれ半径r1, r2,· · ·, rnとする。
r0= 0とし,rn=Rとする。kを1以上n以下の整数 とし,半径rk−1の円と半径rkの円で挟まれた円環を考 えよう。その幅を∆rkとする。つまり∆rk =rk−rk−1
である。∆rkが十分に小さいなら,この円環の面積∆Sk
は,
∆Sk ≒2πrk∆rk (9.6)
となる(円周の長さと幅の積*1)。すると, 円の面積S は, ∆Skを足しあわせたものにほぼ等しい:
S≒
∑n k=1
∆Sk=
∑n k=1
2πrk∆rk (9.7)
となる。この式を, P.116式(8.9)と見比べながら,nを 十分大きく, ∆rkを十分小さくとれば,次式になる:
S=
∫ R 0
2πr dr= [πr2]R0 =πR2 (9.8) この積分は,式(9.3)の積分よりもずっと簡単だ。なお, こういう考え方を, とある高校の先生は「バウムクーヘ
*1 厳密に言えば,円環の面積を求めるには円環の外縁と内縁の中 間に位置する円の半径を使わねばならないが,幅∆rkが十分 に小さければ,これは外縁の円の半径や内縁の円の半径にほぼ 一致する。