第 6 章 指数・対数 85
6.9 ロジスティック曲線
a, b, cを正の定数として, f(x) = 1
a+be−cx (6.60)
*8式(6.57)から式(6.58)への式変形を詳しく書くとこうなる:
[A](t+dt)−[A](t) =−k[A]dt [A](t+dt)−[A](t)
dt =−k[A]
d[A]
dt =−k[A]
6.9 ロジスティック曲線 95 という形の関数を, ロジスティック関数と呼ぶ。この
関数は,生物学や統計学などでよく使う。どう使うかは 先々のお楽しみにしといて, ここではこの関数のグラフ を描いてみよう。
● 問152
(1) f(0) = 1/(a+b)であることを示せ。
(2) 分母,すなわちa+be−cxは,xが増えるにつれて減 少することを示せ。
(3) f(x)は,xが増えるにつれて増加することを示せ。
(4) x→ ∞のとき,f(x)はどうなるか? (5) x→ −∞のとき,f(x)はどうなるか? (6) f′(0)を求めよ。
(7) 以上を元に,y=f(x)のグラフを手で描け。結果は 図6.10のようになる。このグラフをロジスティッ ク曲線と呼ぶ。
x y
1/a
1/(a+b) O
図6.10 式 (6.60)(ロジスティック曲線)のグラフ。
x= 0での接線の傾きはbc/(a+b)2
特に, a=b= 1のときは, 式(6.60)はシグモイド関 数と呼ばれる。これは,生物の神経細胞の性質を表すの に使われ, 「ニューラルネット」と呼ばれる技術(いわ ゆる「ディープ・ラーニング」とか「人工知能」の一部) の基礎である。
よくある質問78 微分→指数・対数→三角関数→積分の順番 で勉強するのはなぜですか? ... 指数・対数・三角関数の理解 に微分が役立つので,微分を先にやります。指数・対数・三角 関数は他の科目(物理・化学・各種実験等)で早く必要になる ので,早めにやります。というわけで,積分が後になりました。
よくある質問79 自分は今まで何もわかっていなかったとい うことを痛感しました。... 「無知の知」(ソクラテス)ってや つですね。知性の出発点です。
よくある質問80 やっぱり,分かってるつもりでも実際に問 題を解いてみると全然分かってなかったことに気づいた。...
だから「読んで理解する」だけではダメです。
よくある質問81 みんなより出来なさ過ぎて焦ります。...
人は人,自分は自分。急がず焦らずこつこつやり続ければ,必 ず追いつけます。
よくある質問82 質問に行ったらすごくよくわかり,すっき りしました。... 聞くは一時の恥,聞かぬは一生の損。いつで もおいで。
演習問題
演習問題17 福島第一原子力発電所の事故では, 2011 年3月15日前後に, 大量の放射性物質が放出されてし まい, 各地に降下した。そのとき放出された放射性物質 は, 徐々に崩壊して減っている。以下の放射性物質は, 事故後1800日(約5年)たった現在,当初の何倍になっ たか? (有効数字2桁で)
(1) ヨウ素131 (131I;半減期8.02日) (2) セシウム134 (134Cs;半減期2.07年) (3) セシウム137 (137Cs;半減期30.1年)
ヒント: 式(6.53)を用いてC(t)/C(0)を求めればよい。
演習問題18 君は「ベクレル」(Bq)という単位を聞い たことがあるだろうか? これは,放射性物質が1秒間に 崩壊する個数*9を表し, その放射性物質がどのくらいあ るかを間接的に表す指標になる。ある食品に含まれる
137Csは, 200 Bqであった(1秒間あたり200回の崩壊 を起こした)。この食品には, 何個の137Csが含まれて いるか? (有効数字2桁で)ヒント: 式(6.49)を使う。左辺 は変化した個数を表しているから,ここでは−200個。右辺の C(t)が未知数。dt=1秒。αは前問で示された半減期から求 める。
演習問題19 対数微分を使わないで,関数axと関数xx をそれぞれ微分せよ(1< a)。ヒント: a=elnaを使っ て, ax = (elna)xと変形。同様に, xx = (elnx)x。そし て指数法則,そして合成関数の微分。
演習問題20 森林や草原,農地では, 植物の葉が地表を 覆うことで土壌浸食を抑制する。この効果を調べるため に,葉の量と地表面被覆率の関係を調べよう。
(1) 1 m2の地表の上に, 0.01 m2(100 cm2)の水平な葉
*9崩壊するときに放射線が発せられるので,それを検知すること によって,崩壊する個数は比較的容易に計測できる。
が1枚あれば,地表面の1%が被覆される(被覆率 0.01)。では1 m2の地表の上に, 1枚あたりp m2 の水平な葉がn枚, ランダムに分布するとき, 葉に よる地表面の被覆率Fは,
F= 1−(1−p)n (6.61)
となることを示せ(葉の重なりがあることに注意 せよ)。
(2) 1 m2の地表の上に存在する葉の総面積が一定値L m2であるとする。すなわち,
np=L (6.62)
である。F をnとLであらわせ(pを消去せよ)。 (3) 式(6.62)のLが一定, という条件のもとで, n →
∞,p→0のとき,
F= 1−e−L (6.63)
となることを示せ。これは, 1枚1枚の葉の大きさ が十分小さいとみなせるときに, 葉が全体として地 表面を覆う割合を与える理論である。
(4) 1 m2の地表の上にある葉の総面積が1 m2のとき に地表面を覆う割合は,どのくらいか?
演習問題21 地震のエネルギーは,マグニチュードとい う指標であらわされることが多い。地震のエネルギーを Eとすると,マグニチュードM は, 次式で定義される:
log10 E
1 J = 4.8 + 1.5M (6.64)
(1) 1995年の兵庫県南部地震(いわゆる阪神大震災)で
は,M = 7.2であったとされる。このときの地震の
エネルギーはどのくらいか?
(2) マグニチュードが1増えると,地震のエネルギーは 何倍になるか?
(3) 2011年の東北地方太平洋沖地震(いわゆる東日本 大震災)では,M = 9.0であったとされる。このと きの地震のエネルギーはどのくらいか? それは, 兵 庫県南部地震の何倍か?
(4) 日本人は, 平均的に, 1人あたり1 kWの電力を消 費する。東北地方太平洋沖地震で放出されたエネル ギーは,日本人全員(約1億人)が使う電力量の何年 分に相当するか?
(5) 地震の「震度」と「マグニチュード」は,どう違うか?
問題の解答
答123下図参照。
-2 -1 1 2 3 4
-3 -2 -1 O 1 2 3
x
y
exe-x 2x
2-x
(1) (2) (3) (4)
図6.11 問123の答え。
答124略(n= 100のとき2.70· · · となる)。 答125略(がんばれ!)
答126 略(n= 10000のとき7.3875· · · となる。それ に対して,e2= 7.3890· · ·。)
答127略。どちらも最初の2桁は2.7になるはず。
答128 (1 + 0.02)100 = (1 + 2/100)100の値を求めれば よい。式(6.5)より, これはe2 = 7.38· · · に近いはず。
ちなみに, 厳密に計算すれば, (1 + 0.02)100 = 7.24· · · 倍となる。
答129 (1)n年に1回起きるのだから,今からの1年間 がたまたまその1回にあたる確率は1/n。従って,あた らない(豪雨が起きない)確率は1−1/n。(2) 「1年 間で1回も起きない」が2回続くと考えて, (1−1/n)2。 (3)以降は略。
答130略。ヒント: x= 0でのyの値をまず考えてみよ う。その次に, xが∞と−∞に行く時のそれぞれにつ いて,yの値がどうなっていくか考えてみよう。
答131
(1) ex (2) 2e2x
(3) −2xexp(−x2) (4) (1−2x2) exp(−x2) 答132 (略解)
(1) 対数の定義より自明。
6.9 ロジスティック曲線 97 (2) a1=aより自明。
(3) a0= 1より自明。
(4)
alogab+logac=alogabalogac=bc=alogabc 従って, logab+ logac= logabc ■ (5) 0 = loga1 = loga{b×(1/b)}= logab+ loga(1/b)
従って, loga(1/b) =−logab ■
(6) (4)(5)より明らか。
(7) 左辺を指数としてaの肩にのせると, (1)より, alogabc =bc
一方,右辺を指数としてaの肩にのせると, aclogab=a(logab)c=
( alogab
)c
=bc
これらは等しいから,左辺=右辺。 ■ (8) 左辺を指数としてaの肩にのせると,
alogablogbc = (
alogab )logbc
=blogbc=c 一方,右辺を指数としてaの肩にのせると,
alogac=c
これらは等しいから,左辺=右辺。 ■ (9) 式(6.21)で,cをaとおくと,
(logab)(logba) = logaa= 1
この両辺をlogbaで割ると,与式を得る。 ■ (10) 式(6.21)で,aをc,bをa, cをbにおきかえると,
(logca)(logab) = logcb
この両辺をlogcaで割ると,与式を得る。 ■ 答133
(1) log27 = (ln 7)/(ln 2)≒2.807 (2) log0.35 = (ln 5)/(ln 0.3)≒−1.337 答134略。式(6.21)を使う。
答135 略。(3)は式(6.21)を使う。
答136図6.12参照。
答137 (1)
d
dxln(x+ 1) = 1
x+ 1×(x+ 1)′= 1 x+ 1
(2) d
dxln(2x) = 1
2x×(2x)′ = 1 x (3)
d
dxlnx−1 x+ 1 = d
dx{ln(x−1)−ln(x+ 1)}
= 1
x−1×(x−1)′− 1
x+ 1 ×(x+ 1)′
= 1
x−1− 1
x+ 1 = 2 x2−1
-3 -2 -1 1 2
-1 O 1 2 3
x y
(1) log2 x (2) ln x (3) ln (1+x)
図6.12 問136の答え。
答138 略。
答139f(x) =xxの両辺の対数をとると,
lnf(x) = xlnx。この両辺を微分する。左辺の微分は f′(x)/f(x)。右辺の微分はlnx+ 1である。
従って,f′(x)/f(x) = lnx+ 1。
従って,f′(x) = (lnx+ 1)f(x) = (1 + lnx)xx ■ 答140f(x) = exp(−ax2)として(aは実数の定数),
(1) f(−x) = exp{−a(−x)2} = exp(−ax2) = f(x)。 従って偶関数。
(2) e= 2.718· · · は0より大きいから,それを何乗して も0以下にはならない。
(3) f′(x) =−2axexp(−ax2)。これにx= 0を代入す ると0。
(4)
xlim→∞exp(−ax2) = lim
x→∞
1
eax2 (6.65) である。0 < aだから,x→ ∞のとき, ax2 → ∞
である。従って, eax2 → ∞である。すなわち, 式
(6.65) の右辺の分母は∞に発散する。従って, 式
(6.65)は0に収束する。
(5) 0 ≤ xでは, e−ax2 は, 減少関数である。従って, x = 0のとき最大値をとる。e−ax2 は偶関数なの で,x≤0でもx= 0のとき最大値をとる。従って, e−ax2 はx= 0のとき, 最大。
答141
(1) 本文の図のとおり。
(2) exp(−ax2) = exp{−(√
a x)2}だから, aが大きく なると, グラフはx軸方向に1/√
a倍になる。つま り,山型の幅が狭くなる。
答142 (1,0.5)
答143 略(a = 0.69, A = 0.25程度になるはず (多少 違っても構わない)。それを用いてS, T, Uのyの値を 計算してみること)。
答144点Q: (2,7), 点R: (0.2,3)
答145 略(a = 0.375, A = 5.5程度になるはず (多少 違っても構わない)。それを用いてP, Q, Rのyの値を 計算してみること。Aを求めるときの「切片」は, この グラフの左端ではなく, x= 1のところの縦線に交わる ときの値であることに注意)。
答146 (1)f(x) = 2xとして,式(6.43)の左辺と右辺に それぞれ代入すると, 左辺=(2x)′ = 2, 右辺= 3(2x) = 6xとなり, 左辺と右辺は恒等的には一致しない。従っ て, この関数は式(6.43)を満たさない(解ではない)。
(2)以下は略。(解であるのは(2), (4), (6)だけ)
答147略。
答148略。
答149
(1) 図6.13のとおり。
(2) 略。
(3) 略解: C=C0exp[−(ln 2)t/th] (導出過程も書 くこと)
(4) α= (ln 2)/th
(5) α= (ln 2)/(5730年)≒1.21×10−4/年 ... 必ず単 位を!
答150 C=C0/4なので,t= 2th= 11460年くらい前
C0/8 C0/4 C0/2 C0
th 2th 3th
t
C
O
図6.13 放射性炭素14の量の変化。
(11500年でも可)。 答151略。
答152略。
99
第 7 章
三角関数
過去の受講生の言葉: 「友人に教えてたら,自分もわかって いなかったことに気づきました」
7.1 三平方の定理
まず,中学校で習った 三平方の定理 (ピタゴラスの定 理)を復習しておこう。
● 問153 三 平 方 の 定 理 を 証 明 し よ う 。直 角 三 角 形 ABCを考える。角 C が直角であるとする。点C か ら辺ABに下ろした垂線の足を点Dとする。(図7.1) (1) 三角形ABCと三角形ACDは相似であることを
示せ。
(2) そのことから, AB:AC=AC:AD,すなわち AB×AD = AC2であることを示せ。
(3) 三角形ABCと三角形CBDは相似であることを 示せ。
(4) そのことから, AB:BC=BC:BD,すなわち AB×BD = BC2であることを示せ。
(5) 以上とAB = AD + BDより次式を示せ:
AB2= AC2+ BC2 (7.1)
A
D B
C
図7.1 三平方の定理の証明に使う図
7.2 弧度法
高校初年級までの数学や, 一般社会では, 角の大きさ を「度」で表現することが多い。「度」は,一周を360度 とする表現である。360という数字と円の本質的な性質
の間には, 数学的な必然性はない。たぶん, 子だくさん の家族で, 丸いケーキを分ける時に, いろんな数で割り 切れる360という数が好まれたのだろう!
角を「度」で表すときは,細かい数字を小数で表す場 合と,「分」「秒」という補助単位を使って表す場合(度 分秒表記)がある。60分=1度, 60秒=1分である。度, 分,秒は,それぞれ°’ ”という記号で表してもよい。例 えば,「36度6分42.5秒」は,「36°6’ 42.5”」と表す。
例7.1 「36度6分42.5秒」という角を,度だけで(分 や秒を使わずに)表してみよう。60秒=1分なので, 1秒
=(1/60)分である。
従って, 42.5秒= 42.5×(1/60)分≒0.7083分 従って, 6分42.5秒≒6 + 0.7083分= 6.7083分 また, 60分=1度なので, 1分=(1/60)度である。
従って, 6.7083分= 6.7083×(1/60)度≒0.11181度 従って, 36度6分42.5秒≒36 + 0.11181度
= 36.11181度。
例7.2 「140.10217度」という角を,度分秒表記してみ よう。小数点以下の0.10217度は分や秒の単位で表され るはずだ。1度=60分なので,
0.10217度= 0.10217×60分= 6.1302分
となる。従って, 分の単位の値は6であり, 小数点以下
の0.1302分は秒単位で表されるはずだ。従って,
0.1302分= 0.1302×60秒= 7.812秒
従って, 140.10217度≒140度6分7.81秒。(例おわり) 一方,高校の上級(数II・数B以降)や大学の数学・物 理学では, 以下で定義される ラジアン (radian)という 単位で角を表すことが多い:
半径1の円を切り取ってできる扇形において, その頂 角を,扇形の弧の長さで表す(図7.2)。これを 弧度法 と 呼ぶ。弧度法での角度の単位を ラジアン という。
例7.3 円を4 つの扇型で等分すると, 1 つの扇形の