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微分の公式

ドキュメント内 数学リメディアル教材 (ページ 79-84)

第 5 章 微分 65

5.3 微分の公式

f(x+dx) = x−dx (x+dx)(x−dx)

= x−dx

x2−dx2 (5.26)

ここで, 分母のdx2を無視すると, f(x+dx) =x−dx

x2

= 1 x− 1

x2dx

=f(x) 1

x2dx (5.27)

式(5.5)と較べると,dxの係数は1/x2だから, f(x) =1

x2 (5.28)

ところでこれは,式(5.24)でn=1とおいた場合に一 致する。もともと式(5.24)では, 定数nを1以上の整 数としたが, n=1のときも成り立つことがわかった。

(例おわり)

5.2 数値微分

これから具体的に関数を微分する方法を学ぶのだ が, まず, 計算機で微分するやり方を学ぼう。それを

「数値微分」 という。数値微分は原理が単純で, 微分の アイデアを理解するのに良い題材だ。また, 実際に世の 中で数値微分は様々な場で使われている。というわけ で,微分の勉強はまず計算機から入るのだ。

式(5.9)で学んだように,微分は次式で定義される:

f(x) := lim

x0

f(x+ ∆x)−f(x)

x (5.29)

実際は, ∆xが「限りなく0に近く」なくても,ある程 度まで0に近づければ,このリミットを無視しても, そ こそこ正確に計算できるだろう:

f(x)≒ f(x+ ∆x)−f(x)

x (5.30)

これが, 計算機に微分をやらせるときの考え方である。

すなわち,f(x)について隣り合うセルどうしの引き算を して(f(x+ ∆x)−f(x)), それをxについて隣り合う セルどうしの引き算(つまり∆x,つまり刻み幅)で割れ ばよい。

例えばf(x) =x2を微分してみよう。スプレッドシー

トで,xの値を1から1まで0.05刻みでA列に与え,

f(x)の値をB列に与える:

A B C

1 x f(x)=x^2 f’(x)

2 -1 1

3 -0.95 0.9025

4 -0.9 0.81

5 -0.85 0.7225

· · · · · · · · ·

ここで右端の列(C列)で微分f(x)を計算するには, セルC2に, 「=(B3B2)/(A3A2)」という式を書き 込む。ここでB3B2というのはf(x+ ∆x)−f(x)に 相当し, A3A2というのが∆xに相当する。厳密には, このような計算式で与えられる微分の値(つまり微分係 数)は,x=1のときではなく, x=1とx=0.95 の中間付近だが,どうせxの刻み(∆x= 0.05)は小さい から, あまり気にしない。気になるなら, 刻みをもっと 小さくとればよい。

そして, C2セルの内容を, C3以降のC列全体にコ ピーペーストすれば, C列に, 近似的ではあるが, f(x) ができあがる。こうして計算機で関数の微分を近似的に 行うことを,数値微分 と呼ぶ。

● 問102 表計算ソフトで, 関数f(x) =x2を, 1 x 1 の範囲で数値微分し, その結果を, f(x)と, 解 析的*6な微分結果f(x) = 2xとともに, グラフに描け。

xは各自で適当に定めよ。結果は図5.2のようになる。

5.3 微分の公式

実際に関数を微分するときは, 微分係数(導関数)の

定義式(5.5)に遡ってやることは少ない。複雑な関数の

場合は前節でやったように数値微分を使うし, そうでな ければ, 以下に示すような, いくつかの便利な定理(公 式)を活用してちゃっちゃとやってしまうのだ。以下, f(x), g(x)を,任意の(微分可能な)関数とする。

*6理論的に厳密な計算(式変形)で答えを導くことを 解析的 とい う。「数値的」の対義語である。

図5.2 y=x2とその数値微分(dy/dx),そしてy= 2xxの刻みは0.05。数値微分とy= 2xは,刻みを 小さくすればもっと近くなる。例5.2の結論を数値微 分でも確認できた!

微分の公式1: 足し算はバラせる

{f(x) +g(x)}=f(x) +g(x) (5.31) 証明: F(x) =f(x) +g(x)とおくと,

F(x+dx) =f(x+dx) +g(x+dx)

=f(x) +f(x)dx+g(x) +g(x)dx

=f(x) +g(x) +{f(x) +g(x)}dx

=F(x) +{f(x) +g(x)}dx (5.32) ここで, dxの係数に着目すると, 微分係数の定義から,

F(x) =f(x) +g(x)。 ■

例5.5 f(x) =x2+2xを微分しよう。公式1を使うと,

f(x) = (x2+ 2x) = (x2)+ (2x) (5.33) となる。例5.2から, (x2) = 2xであり,式(5.20)から, (2x)= 2である。従って,

f(x) = 2x+ 2 (5.34)

となる。(例おわり)

微分の公式2: 定数倍は前に出せる aを定数として,

{af(x)}=af(x) (5.35)

証明: F(x) =af(x)とおくと,

F(x+dx) =af(x+dx) =a{f(x) +f(x)dx}

=af(x) +af(x)dx

=F(x) +af(x)dx (5.36) ここで, dxの係数に着目すると, 微分係数の定義から,

F(x) =af(x)。 ■

微分の公式1と2のような性質は, 数列の和Σにも あったこと(P.42)を覚えているだろうか? (線型性)

例5.6 f(x) = 3x2を微分しよう。公式2を使うと, f(x) = (3x2)= 3(x2) (5.37) となる。例5.2から, (x2)= 2xである。従って,

f(x) = 3(2x) = 6x (5.38)

となる。(例おわり)

例5.7 関数f(x) =x3+ 2x2+ 3x+ 1を微分しよう。

公式1,公式2より,

f(x) = (x3)+ 2(x2)+ 3(x)+ (1) (5.39) ここで, 右辺の(1) とは定数関数1(すべてのxに対し て定数1を対応させる関数)の微分であり,式(5.21)よ り, もちろん0である。(x3) や(x2), (x)に式(5.24) を使うと,

= 3x2+ 4x+ 3 (5.40)

(例おわり)

● 問103 以下の関数を微分せよ: (1) f(x) =x2+x+ 1

(2) f(x) = 4x2+ 5x+ 6 (3) f(x) = 3x2+ 3x+ 4

(4) f(x) = 5/x(ヒント: 例5.4を使う) (5) f(x) =x−1/x

5.3 微分の公式 71 微分の公式3: 積の微分

{f(x)g(x)} =f(x)g(x) +f(x)g(x) (5.41) 証明: F(x) =f(x)g(x)とおくと,

F(x+dx) =f(x+dx)g(x+dx)

={f(x) +f(x)dx}{g(x) +g(x)dx}

=f(x)g(x) +f(x)g(x)dx +f(x)g(x)dx+f(x)g(x)dx2 ここで, dx2を無視し, さらに, dxの項を整理し, また, f(x)g(x)をF(x)で置き換えると,

F(x+dx) =F(x) +{f(x)g(x) +f(x)g(x)}dx dxの係数に着目すると, 微分係数の定義から,

F(x) =f(x)g(x) +f(x)g(x) (5.42)

例5.8 関数F(x) = (x2+ 2)(x2+x+ 3)を微分しよ う。f(x) =x2+ 2, g(x) =x2+x+ 3として, 公式3 を使うと,

F(x) = (x2+ 2)(x2+x+ 3) + (x2+ 2)(x2+x+ 3)

= 2x(x2+x+ 3) + (x2+ 2)(2x+ 1)

= 4x3+ 3x2+ 10x+ 2 (5.43) となる。一方,先に因数を展開してしまって,

F(x) = (x4+x3+ 5x2+ 2x+ 6)

= (x4)+ (x3)+ 5(x2)+ 2(x)+ (6)

= 4x3+ 3x2+ 10x+ 2 (5.44) とすることもできる。どちらのやりかたでやっても, 答 えは一致する。このように,数学は色んなやり方で正解 に到達できるものなのだ。(例おわり)

● 問104 以下の関数:

f(x) = (x2+x+ 1)(x2−x−2) (5.45) について,

(1) 2つの関数: x2+x+ 1とx2−x−2の積とみなし て, 積の微分の公式を使って微分せよ。

(2) 因数を展開して(つまり掛け算を実行してカッコを 外して)から微分し, 前小問の結果と一致すること を確認せよ。

「関数f(x)」などの(x)を省略して書くことがよくあ る。式が単純になって見やすいし覚えやすい。公式1, 2, 3は,それぞれ以下のようになる:

(f+g) =f+g (5.46)

(af) =af (5.47)

(f g) =fg+f g (5.48) さて,多くの学生がつまずくのが次の公式である。と いっても, しっかり説明を読めば難しくないはずだ。

微分の公式4: 合成関数の微分

{g(f(x))}=g(f(x))f(x) (5.49) 注: ここでg(f(x))は,g(x)の導関数g(x)のxの 部分にf(x)を代入したものであり, g(f(x))の導 関数ではない。

証明の前に例を示す:

例5.9 関 数 (x2 + 1)3 を 微 分 し よ う 。こ の 関 数 を,

g(x) =x3という関数のxの部分に,f(x) =x2+ 1と いう関数を入れたもの」とみなす。g(x) = 3x2だから, 公式4より,

{(x2+ 1)3} ={(f(x))3}= 3(f(x))2f(x)

= 3(x2+ 1)2{(x2+ 1)}= 3(x2+ 1)2(2x)

= 6x(x2+ 1)2 (5.50)

となる。これで完了としてよいのだが, ここではあえて 式(5.50)を展開すると,

6x5+ 12x3+ 6x (5.51)

となる。一方, (x2+1)3を先に展開してから微分すると, {(x2+ 1)3}= (x6+ 3x4+ 3x2+ 1)

= 6x5+ 12x3+ 6x (5.52) となる。式(5.51), 式(5.52)は一致している(つじつま 合っている)。(例おわり)

この例は別に公式4を使わなくても,式を展開してか ら普通に微分すれば解けた。しかし, 次の例のように, 公式4がどうしても必要になる場面もたくさんある: 例5.10 次の関数を微分しよう。

1

2x2+ 1 (5.53)

f(x) = 2x2+ 1, g(x) = 1/xとして, 公式4を使おう。

式(5.28)よりg(x) =1/x2である。従って, { 1

2x2+ 1 }

= 1

(f(x))2 ×f(x)

= 1

(2x2+ 1)2 ×(2x2+ 1)

= 4x

(2x2+ 1)2 (5.54)

となる。(例おわり)

実際には, こういうふうにg(x)やf(x)をわざわざ 作ったりしないで,頭の中でまず2x2+ 1をひとつの変 数とみなして全体を微分し,さらに2x2+ 1をxで微分 して掛け合わせ,いきなり式(5.54)の最後の行を暗算で 導出できるようになるのが望ましい。最初は難しいかも しれないが,慣れるまで練習しよう。

では公式4を証明しよう: F(x) =g(f(x))とおくと, F(x+dx) =g(f(x+dx))

=g(

f(x) +f(x)dx)

(5.55) ここで, dx は0に限りなく近い微小量なので, それに f(x)を掛けた数,すなわちf(x)dxも, 0に限りなく近 い微小量とみなすことができる。そこで, 微分係数の定 義式(5.5) において, f(x)をg(x)とし, x0f(x)と し,dxf(x)dxとすれば,

g(

f(x) +f(x)dx)

=g(f(x)) +g(f(x)){f(x)dx} (5.56) となる。右辺第一項のg(f(x))は, もちろんF(x)であ る。従って,式(5.55)式(5.56)より,

F(x+dx) =F(x) +g(f(x))f(x)dx (5.57) dxの係数に着目すると,微分係数の定義から,

F(x) =g(f(x))f(x)。 ■

この公式は, 一見, 複雑そうに見えるが, 式(5.13)の ような書き方を使うと,

dg dx =dg

df df

dx (5.58)

と表せる。右辺に現れる2つの微分の掛け算を, 形式的 に, 微小量dg, df, dxの分数の掛け算とみなせば, 右辺 を約分したものが左辺になるだけだ。

● 問105 以下の関数を,合成関数の微分の公式を使っ て微分せよ:

(1) F(x) = (3x2+ 2)3 (2) F(x) = (x2+x+ 1)3

(3) F(x) = (x5+x4+x3+x2+x+ 1)2 (4) F(x) = (1 + 1/x)2

● 問106 関 数 u(x) の 逆 数 で あ ら わ さ れ る 関 数 1/u(x)の導関数は,以下で与えられることを示せ*7

(1 u

)

=−u

u2 (5.59)

ヒント: g(x) = 1/x,f(x) =u(x)として公式4を使う。

● 問107 関 数 v(x) と u(x) の 比 で 作 ら れ る 関 数 v(x)/u(x)の導関数は,以下で与えられることを示せ:

(v u

)

= vu−vu

u2 (5.60)

● 問108 以下の関数を微分せよ: (1)

f(x) = 1 1 +x2

(2)

f(x) = x 1 +x2 ヒント: (1)ではu(x) = 1 +x2 として式(5.59)を使 う。(2)ではu(x) = 1 +x2, v(x) = xとして式(5.60) を使う。

例5.11 1/xnを微分してみよう(nは1以上の整数の 定数とする)。この関数は,

g(x) =xn と,f(x) = 1 x の合成関数とみなせる。実際

g(f(x)) = (1

x )n

= 1

xn (5.61)

となる。ところで,式(5.24)よりg(x) = nxn1 であ り, 例5.4よりf(x) =1/x2だから, 式(5.49)より, 次式が成り立つ:

( 1 xn

)

=n (1

x

)n1(1 x

)

=n (1

x )n1(

1 x2

)

= n

xn+1 (5.62)

*7(5.59),(5.60)では関数u(x)の「(x)」を省略して書い ていることの注意せよ。

5.3 微分の公式 73

式(5.62)は次のように書き換えられる。

(xn) = −n xn1 (5.63) これは, 式(5.24)でn−nと置き換えたものに一致 する。もともと式(5.24)では,nを1以上の整数とした が, これで,定数nが負の整数のときも成り立つことが わかった。

次に学ぶ公式は, 公式4の応用だ。これはP.9で学ん だ対数を微分したりするのに使う(その話は後の章に出 てくる)。

微分の公式5: 逆関数の微分 g(x)をf(x)の逆関数とすると

g(x) = 1

f(g(x)) (5.64)

注: ここでf(g(x))は,f(x)の導関数f(x)にg(x) を代入したものだ。f(g(x))の導関数ではない。

証明:

合成関数の微分より,

{f(g(x))}=f(g(x))g(x) (5.65) である。ところで, g(x)はf(x)の逆関数なので, P.59 の式(4.38)より,恒等的にf(g(x)) =xである。従って, {f(g(x))}= (x) = 1 (5.66) 式(5.65)と式(5.66)より,

f(g(x))g(x) = 1 (5.67)

この両辺をf(g(x))で割れば, g(x) = 1

f(g(x)) (5.68)

となり, 式(5.64)に一致する。 ■

例5.12 f(x) = x1/nを微分してみよう。ただしnは 1以上の整数とする。g(x) =xnとすると, g(f(x)) =x だから, g(x)とf(x)は互いに逆関数。一方, g(x) = nxn1である。式(5.64)(逆関数の微分)より,

f(x) = 1

g(f(x))= 1

n(f(x))n1 = 1 n(x1/n)n1

= 1

nx(n1)/n = 1

nx(n1)/n

= 1

nx(1n)/n= 1

nx(1/n)1 (5.69)

(例おわり)

式(5.69)は,式(5.24)でnを1/nと置き換えたもの に一致する。これで, 式(5.24)は, 定数nが正の整数の 逆数のときも成り立つことがわかった。

式(5.24), 式(5.63), 式(5.69)からわかったように, 定数αが正の整数または負の整数または正の整数の逆 数のとき,

(xα) =αxα1 (5.70)

が成り立つ。そのことと合成関数の微分の公式を使え ば,αが負の整数の逆数のときや, 0以外の有理数(整数 どうしの比であらわされる数)のときもこれが成り立つ ことが証明できる。実数は有理数の極限としてあらわ されるので*8, 有理数で成り立てば, 実数でも成り立つ。

従って,以下の公式が成り立つ:

微分の公式6: べき関数の微分 定数αが0以外の実数であれば,

(xα) =αxα1 (5.71)

例5.13 もういちど関数f(x) = 1/xを微分してみよ う。1/x=x1だから,式(5.71)でα=1とすれば,

f(x) = (x1)=1·x2=1

x2 (5.72)

これは式(5.28)と一致する。つじつまがあっている。

(例おわり) 例5.14

xを微分してみよう。

(

x) = (x1/2) =1

2x1/21=1

2x1/2= 1 2 x (5.73) (例おわり)

● 問109 公式6を使って,以下の関数を微分せよ。

(1) 1 x

(2)

1 x

(3) x2/3

(4) x5

● 問110 微分の公式1〜5を証明せよ。

*8このあたりは高度な数学になるので,詳細はわからなくてもよ い。

ドキュメント内 数学リメディアル教材 (ページ 79-84)