第 6 章 解の局所存在と一意性 69
6.3 解の局所一意性
が成立するのでv= ˆGop(h1)fとして命題6.1.1が証明された.
初期値問題(6.1.4)でϕ0=ϕ1= 0のときの解作用素
Gˆ∗:L1((−δ0, τ) :Hs+n)3f(t)7→u(t)∈ ∩1j=0Cj([−δ0, τ];Hs+1−j) についてもGˆに対する議論を繰り返すことによってGˆ∗が有限伝播であるこ とがわかる.したがってPに対する局所解の存在定理の証明と同様にして次 が得られる.
定理 6.2.1. p(0,0, τ, ξ) = 0 の危点はすべて実効的双曲型であるとする.こ のとき δ >0, n > 0 およびx= 0の近傍 Ω が存在し, 任意の|τ| < δと 任意の f ∈ L1((−δ, τ);Hs+n)に対して(−δ, τ)×ΩでP∗u = f を満たす u∈ ∩1j=0Cj([−δ, τ];Hs+1−j)で
X1 j=0
kDjtu(t)ks+1−j≤Cs
Z τ t
kf(t′)kn+sdt′, −δ≤t≤τ を満たすものが存在する.
である.ここでC= (cij)はd+1次の正方行列でκ(x) = (κ0(x), κ1(x), . . . , κd(x)) とすると
cij = X
0≤k,ℓ≤d
∂2κℓ(0)
∂xk∂xi
∂λk(0)
∂yj
η¯ℓ
で与えられる.したがってQをpのHesse行列から定まる2次形式とする とき
˜
p(ϵy,η¯+ϵη) =p(ϵλ′(0)y+O(ϵ2),ξ¯+ϵ(Cy+tκ′(0)η) +O(ϵ2))
=ϵ2Q(λ′(0)y, Cy+tκ′(0)η) +O(ϵ3) (ϵ→0) が成り立つ.ゆえに(0,η)¯ でのp˜のHesse 行列をQ˜とすると
Q˜ =tKQK, K= λ′(0) O C tκ′(0)
!
となる.つぎにKσtK =σ, すなわちtKはシンプレクティック行列である ことに注意する.これを確かめるにはλ′(0)κ′(0) = Iに注意すればCκ′(0) が対称行列であることをいえばよいがこれは容易である.したがってσQ˜ = σtKQK =K−1(σQ)KとなってσQ˜とσQは相似となりその固有値は一致す る.
次にHolmgren変換と呼ばれるつぎの局所座標系の変換を考えよう.
y0=x0+ϵ Xd j=1
x2j, yj=xj, j= 1,2, . . . , d. (6.3.25)
ここでϵ >0は正の小さな定数である.
˜
p(y, η) =p(y0−ϵ|y′|2, y′, η0, η′+ 2ϵη0y′) (6.3.26) は容易に確かめられる.このとき
補題 6.3.2. ΩをR1+dの原点の近傍とし,特性方程式p(x, ξ0, ξ′) = 0のξ0
に関する根は任意のx∈Ω,任意のξ′ ∈Rdに対して実であるとする.このと きr >0とϵ0>0が存在して,任意の|ϵ| ≤ϵ0についてp(y, η˜ 0, η′) = 0のη0
に関する根は任意の|y| ≤r,任意のη′ ∈Rdに対して実である.
証明. r >0を{|y| ≤r}が変換(6.3.25)によるΩの像に含まれるように1つ 選ぶ.q(s, τ, η′, y, ϵ) =p(y0−ϵ|y′|2, y′, τ+s, η′+ 2ϵsy′)とおく.qはsの高々2 次の多項式でs2の係数をa(y, ϵ)とするとa(y,0) =−1であるからϵ0>0が存 在して|ϵ| ≤ϵ0,|y| ≤rなら1/2≤ |a(y, ϵ)| ≤3/2としてよい.故にこのとき q(s, τ, η′, y, ϵ) = 0のsに関する根は(τ, η′, y, ϵ)∈C×Rd× {|y| ≤r} × {|ϵ| ≤ ϵ0}=U に関して連続である.次にImτ≤0,Ims <0, (τ, η′, y, ϵ)∈ U のとき q6= 0を示そう.そうでないとするとImˆτ ≤0,Imˆs <0でq(ˆs,ˆτ ,ηˆ′,y,ˆ ˆϵ) = 0
となる(ˆτ ,ηˆ′,y,ˆ ϵ)ˆ ∈ Uが存在する.sに関する根は(τ, η′, y, ϵ)に関して連続 であったから必要ならτˆを少し動かしてImˆτ <0と仮定できる.
F(θ) = min
q(s,ˆτ ,θˆη′,θy,θˆˆ ϵ)=0Ims, 0≤θ≤1
とおこう.(ˆτ ,ηˆ′,y,ˆ ˆϵ)の選び方からF(1) <0である.一方q(s,τ ,ˆ 0,0,0) =
−(s+ ˆτ)2= 0よりIms=−Imˆτ >0なのでF(0)>0である.F(θ)はθに関し て連続であるから0<θ <ˆ 1があってF(ˆθ) = 0となりq(s,τ ,ˆ θˆηˆ′,θˆˆy,θˆˆϵ) = 0 となる実のsが存在する.一方Imˆτ <0であったからpの特性根が実である ことに反する.同じ議論を繰り返すとImτ ≥0,Ims >0, (τ, η′, y, ϵ)∈ U の ときq6= 0が従う.以上のことからτ= 0と選ぶと|y| ≤r,|ϵ| ≤ϵ0のとき
˜
p(y, s, η′) =q(s,0, η′, y′, ϵ) = 0 =⇒Ims= 0 となり主張が示された.
補題 6.3.3. R1+d の原点の近傍Ωと正数 ¯ϵ > 0, ϵ > 0を適当に選ぶと suppf ⊂ {x;x0≤¯ϵ−ϵ|x′|2}を満たす任意のf(x)∈C0∞(Ω)に対してsuppv⊂ {x;x0≤¯ϵ−ϵ|x′|2}でΩ でP∗v=fを満たすv(x)∈C2(Ω)が存在する.
証明. 局所座標系の変換(6.3.25)を行いg(y) =f(x)と表すとΩ =˜ {y; (y0− ϵ|y′|2, y′) ∈ Ω}とおくときg(y) ∈ C0∞( ˜Ω)でy0 ≥ ¯ϵではg(y) = 0であ る.P∗ = op(p+ ¯P1+ ¯P0)であるからP∗を局所座標系y で表すとP∗ = op(˜p+P1′+P0′′)となる.補題6.3.1よりp(0, η) = 0˜ の危点はすべて実効的 双曲型であり,補題6.3.2よりϵを小さく選べばp˜= 0の特性根はすべて実で ある.したがってΩを十分小さく選べばΩ˜も十分小さくしたがって定理6.2.1 を適用できる.¯ϵ >0を{x;−¯ϵ≤x0≤¯ϵ−ϵ|x′|2}⋐Ωとなるように選んで おく.定理 6.2.1よりP∗w=gを満たすw(y)∈C2( ˜Ω)でy0≥¯ϵではw= 0 となるものが存在するがv(x) =w(y)と局所座標系xで表すとP∗v=f でv の supportが{x;x0≤¯ϵ−ϵ|x′|2}に含まれるのは明らかである.
最後に初期値問題の解の局所一意性を示そう.今u(x)は原点の近傍Ωで C2級でP u= 0を満たしx0< τ (|τ| ≤¯ϵ)でu= 0とする.ここでsuppf ⊂ {x;τ ≤x0≤ϵ¯−ϵ|x′|2}をみたすf ∈C0∞(Ω)に対して補題6.3.3のv(x)を とってくると
0 = Z ¯ϵ
τ
Z
Rd
P u·vdx0dx′= Z ¯ϵ
τ
Z
Rd
u·P∗vdx0dx′ = Z ¯ϵ
τ
Z
Rd
u·f dx0dx′ が成立する.このf は任意に選べるので{x;τ≤x0≤¯ϵ−ϵ|x′|2}でu= 0が 従う.
τ≤x0≤ϵ¯−ϵ|x′|2 x′ x0
¯ ϵ
−ϵ¯ τ suppf
記号をx0=t, (x0, x′) = (t, x)に戻して定理として述べておくと
定理 6.3.1. p(0,0, τ, ξ) = 0の危点はすべて実効的双曲型であるとする.この とき原点の近傍Ωと正数ϵ >0が存在し,|τ| ≤ϵであるτに対しu∈C2(Ω)
が
P u= 0, Ω∩ {t > τ},
Djtu(τ, x) = 0, j= 0,1, x∈Ω∩ {t=τ} を満たすなら Ω∩ {t > τ}でu= 0である.