第 4 章 実効的双曲型特性点 33
4.3 実効的双曲型特性点の幾何的特徴付け
p= 0は単純根しかもたずp=−(τ−p
ℓ2+q)(τ+p
ℓ2+q)と分解される.
τ±p
ℓ2+qのHamiltonベクトル場と超曲面f = 0の交わり方をみるため hHτ
±√
ℓ2+q,∇fi= 1∓ {ℓ2+q, ψ}/(2p ℓ2+q)
= 1∓ {ℓ, ψ}ℓ/p
ℓ2+q∓ {q, ψ}/(2p ℓ2+q)
≥1− |{ℓ, ψ}| −{q, ψ}|/(2p ℓ2+q)
を考える.{ψ,{ψ, q}}はqのHψ方向の2階微分であるからq≥0よりGleaser の不等式によれば|{ψ, q}|2≤C|{ψ,{ψ, q}}|qが得られ(4.3.9)より(0, ed)の 近傍を縮めれば右辺第3項はいくらでも小さくできる.したがって(4.3.9)よ りあるc >0があってhHτ±√
ℓ2+q,∇fi≥cが従う.ゆえにτ±p
ℓ2+qの Hamiltonベクトル場(の長さを1に正規化したもの)のf = 0への極限が存
在すれば (実際に存在する)この極限は曲面f = 0と横断的であることがわ
かる.
命題4.3.1の証明: 局所座標系xの線形変換によってξ¯= (0, . . . ,0,1) =edと 仮定できる.またρ= (0,0, ed)∈R1+d×Rd,ρ′= (0, ed)∈Rd×Rdと表す ことにする.補題4.2.2より06=X∈Γ∩ImFp∩ hθiσを選ぶことができる.
(4.2.4)よりXはHϕj(ρ)の1次結合でありX=Pr
j=1αjHϕj(ρ) +α0Hϕ0(ρ) と書けるがX ∈ hθiσより0 =σ(X, θ) =−α0= 0である.fを
f(t, x, ξ) = Xr j=1
αjϕj(t, x, ξ)/|ξ|
で定めるとX =Hf(ρ) =σ∇f(ρ)∈Γより(4.2.5)に注意するとρで∂f /∂t <
0が成り立つ.したがって陰関数定理によればψ(x, ξ)が存在してf(t, x, ξ) = e(t, x, ξ)(t−ψ(x, ξ))と書ける.ここでe(ρ)<0である.(4.2.2) よりc >0 が存在して
a(t, x, ξ)≥c(t−ψ(x, ξ))2|ξ|2 (4.3.12) が成立する.Hf(ρ) =e(ρ)Ht−ψ(ρ)∈Γと(4.2.3)より
1>
Xr j=1
h∇ϕj(ρ), Ht−ψ(ρ)i2= Xr j=1
{ϕj, ψ}2(ρ)
が従う.(4.2.2)を用いて{ψ,{ψ, g}}(ρ) = 0に注意して{ψ,{ψ, a}}を計算す ると∇2g(ρ) =Oより
{ψ,{ψ, a}}(ρ)= 2Xr
j=1
{ψ, ϕj}2(ρ)<2 (4.3.13) が得られる.ここで次のよく知られた補題を準備しよう.
補題 4.3.1. ρ′でdψ 6= 0はdxdに平行ではないとする.このときρ′の周り の局所座標系x= (x1, . . . , xd)をdψ=dξ1またはdψ =dx1+cdxd (c∈R) がρ′で成立するように選べる.
証明. 斉次関数に関するEulerの恒等式より∂ξdψ(ρ′) = 0となるのでρ′ の 周りのTaylor展開よりψ(x, ξ) = h˜a,ξ˜i+h˜b,x˜i+bdxd+r(x, ξ)と書ける.
ここでξ˜= (ξ1, . . . , xd−1), ˜x= (x1, . . . , xd−1)でrはρ′で2次で0になる.
もし˜a = 0なら仮定より˜b 6= 0なので座標系x˜の線形変換を行うとρ′ で dψ =dx1+bddxdとできる.もし˜a 6= 0なら座標xj, 1 ≤j ≤d−1の番 号の付け替えと伸縮でh˜a,ξ˜i=ξ1+· · ·+ξkと仮定してよい.次に座標 xd
をxd−Pk
j=1bjx2j/2に変換するとh˜b,x˜i+bdxd=Pd
j=k+1bjxjと仮定でき,
さらに座標xdをxd−x1
Pd
j=k+1bjxjに変換するとbk+1 =· · ·=bd = 0と できる.最後に座標系(x1, . . . , xk)の線形変換を行うとρ′でdψ =dξ1とな る.
命題4.3.1の証明を続ける.dψがρ′で0あるいはdxdに平行ならばℓ = 0, q = aと選べばよい.実際,Eulerの恒等式より∂ξ2
da(ρ) = 0なので {ψ,{ψ, a}}(ρ) = 0が従う. 次にdψ(ρ′) 6= 0でdxd に平行ではないとす る.補題 4.3.1よりdψ =dξ1またはdψ =dx1+cdxdと仮定できる.まず a≥0,a(ρ) = 0より∇a(ρ) = 0に注意しておく.最初にρ′ でdψ =dξ1 の ときを考えよう.{ψ, a}=∂x1a+rと書けrはρで2次で0になる.従って
∂x21a(ρ) = 0なら{ψ,{ψ, a}}(ρ′) = 0ゆえℓ = 0,q=aと選べる.そうでな ければMalgrangeの準備定理(例えば [6, Theorem 7.5.5])よりρの錐近傍で
a(t, x, ξ) =e(t, x, ξ)((x1−h(t, x′, ξ))2+g(t, x′, ξ)), x′= (x2, . . . , xd) と表すことができる.ここでeはρで正でh, gはρで0でξに関して斉次0 次の滑らかな関数である.ℓとqを
ℓ(t, x, ξ) =e1/2(t, x, ξ)(x1−h(t, x′, ξ)), q(t, x, ξ) =e(t, x, ξ)g(t, x′, ξ) で定義しψ1(t, x′, ξ) =ψ(h(t, x′, ξ), x′, ξ)とおく.このときdψ1(ρ) =dξ1は 明らかである.a(t, h, x′, ξ) =e(t, h, x′, ξ)g(t, x′, ξ)であるから(4.3.12)より
q(t, x, ξ)≥c(t−ψ1(t, x′, ξ))2|ξ|2, c >0
が成り立つ.ρで∂ψ1/∂t= 0であるからt−ψ1(t, x′, ξ)に陰関数定理を適用す るとt−ψ1(t, x′, ξ) =e′(t, x′, ξ)(t−ψ2(x′, ξ))と表せる.dψ2(ρ′) =dψ1(ρ) = dξ1でg ≥ 0はx1によらないので{ψ2,{ψ2, q}}(ρ) = 0は容易である.し たがって(4.3.13)から{ℓ, ψ2}2(ρ)<1が従いこのψ2 が求めるものである.
dψ =dx1+cdxd のときも同様に証明できる.{ψ, a}=−∂ξ1a−c∂ξda+rと 書く.ここでrはρで2次で0になる.Eulerの恒等式によれば∂ξ2
jξda(ρ) = 0 なので∂2ξ1a(ρ) = 0のときは{ψ,{ψ, a}}(ρ) = 0となりℓ = 0,q=aと選べ る.そうでなければMalgrangeの準備定理よりρの錐近傍で
a(t, x, ξ) =e(t, x, ξ)((ξ1−h(t, x, ξ′))2+g(t, x, ξ′)), ξ′= (ξ2, . . . , ξd)
と表すことができる.ℓとqを
ℓ(t, x, ξ) =e1/2(t, x, ξ)(ξ1−h(t, x, ξ′)), q(t, x, ξ) =e(t, x, ξ)g(t, x, ξ′) で定義しψ1(t, x, ξ′) =ψ(x, h(t, x, ξ′), ξ′)とおき,Eulerの恒等式に注意しな がらdψ=dξ1の場合の証明を繰り返えせばよい.最後に補題4.3.1で用いた 座標変換はAを正則行列,q(x)をxの2次形式としてy=Ax+q(x)の形 をしていたのでq(x)をx= 0の小さな近傍の外側で切り落とし,外側に0で 拡張するとこの座標変換はRdの微分同相でx= 0の近傍の外では線形変換 Axとなっている.