第 7 章 擬微分作用素 87
7.4 擬微分作用素の合成則
この節ではgをadmissible metricでさらに(7.3.16)と(7.3.17)を満たすも のし,miをgadmissibleとするときai ∈S(mi, g)に対してop(a1)op(a2)の
合成則を証明する.まずa(x, ξ),b(x, ξ)∈ S(R2n)とする.op(a)op(b) = op(c) であるとしてc(x, ξ)を求めてみよう.まずop(a)op(b) = op(c)より
(2π)−2n Z
ei(x−y)η+i(y−z)ζa((x+y)/2, η)b((y+z)/2, ζ)u(z)dzdζdydη がすべてのu∈ Sについて
(2π)−n Z
ei(x−z)θc((x+z)/2, θ)u(z)dzdθ に等しいのでR
ei(x−z)θc((x+z)/2, θ)dθは (2π)−n
Z
ei(x−y)η+i(y−z)ζa((x+y)/2, η)b((y+z)/2, ζ)dζdydη に等しい.x+z= 2˜x,z−x= 2˜z,y= ˜yとおきさらにη+ζ= 2˜η,η−ζ= 2 ˜ζ と変数変換するとR
e−2i˜zθc(˜x, θ)dθは π−n
Z
e2i(˜x−y) ˜˜ζ−2i˜z˜ηa((˜x−z˜+ ˜y)/2,η˜+ ˜ζ)b((˜x+ ˜z+ ˜y)/2,η˜−ζ)d˜˜ ydζd˜˜ η と等しい.ところでR
e−2i˜zθc(˜x, θ)dθは(Fc)(2˜z)であるからFourierの反転 公式より
c(˜x, θ) =π−2n Z
e2i(˜x−y) ˜˜ζ−2i˜z( ˜η−θ)a((˜x−˜z+ ˜y)/2,η˜+ ˜ζ)
×b((˜x+ ˜z+ ˜y)/2,η˜−ζ)d˜˜ ydζd˜˜ ηd˜z が従う.η˜→η˜+θ, ˜y→y˜+ ˜xと平行移動すると右辺は
π−2n Z
e−2i˜yζ˜−2i˜z˜ηa(˜x+ (˜y−z)/2,˜ η˜+ ˜ζ+θ)
×b(˜x+ (˜z+ ˜y)/2,η˜−ζ˜+θ)d˜ydζd˜˜ ηd˜z
に等しい.最後にη˜+ ˜ζ=η, ˜η−ζ˜=ζ, ˜y−z˜= 2y, ˜y+ ˜z= 2zと変数変換 してy˜ζ˜+ ˜z˜η=zη−yζに注意すると
c(˜x, θ) =π−2n Z
e−2i(zη−yζ)a(˜x+y, θ+η)b(˜x+z, θ+ζ)dydζdηdz を得る.記号を簡単にするためX = (x, ξ),Y = (y, η),Z = (z, ζ)と書くと
c(X) =π−2n Z
e−2iσ(Y,Z)a(X+Y)b(X+Z)dY dZ とかける.
補題7.4.1. gをR2n上のadmissible metricで(7.3.16),(7.3.17)を満たすと する.またm1,m2をg admissibleとしa∈S(m1, g),b∈S(m2, g)とする.
このとき振動積分で定義される R(X;a, b;θ) =π−2n
Z
e−2iσ(Y,Z)a(X+θY)b(X+Z)dY dZ, |θ| ≤1 (7.4.20) はθに一様にS(m1m2, g)に属す.
証明. 証明ではΘ = (α, β) ∈ N2n, ∂XΘ = ∂αx∂ξβなどと書くことにする.つ ぎに
G(X) = ϕ(X)I O O ψ(X)I
!
, Iはn次単位行列
とおくとgX(t) =hG−1(X)t, G−1(X)ti,gXσ(t) =hG(X)σt, G(X)σti,t∈R2n と表せる.χ(s)∈C0∞(R)を0≤χ(s)≤1で|s| ≤1/2で1,|s| ≥2で0とし
χ(ξ, η) =χ(hηi/chξiγ), χc(ξ, η) = 1−χ(ξ, η) とおく.
補題 7.4.2. |α+β| ≥1のとき
∂ξα∂ηβχ(ξ, η), ∂ξα∂ηβχc(ξ, η)≲ψ(X)−|α+β|. 証明. まず
∂ξα∂ηβχ(ξ, η)≲X χ(k)(hηi/chξiγ)∂ξα1∂ηβ1(hηi/chξiγ)· · ·∂αξk∂ηβk(hηi/chξiγ)
≲X χ(k)(hηi/chξiγ)(hηi/chξiγ)khξi−|γ α|hηi−|β|≲hξi−|γ α|hηi−|β| に注意する.χ(k)(hηi/chξiγ)6= 0,k≥1ならhηi ≈ hξiγ であるから(7.3.16) に注意すればよい.
次に(7.4.27)を考える.積分の前のπ−2nは評価には関係ないので R(X;a, b;θ) =
Z
e−2iσ(Y,Z)a(X+θY)b(X+Z)dY dZ (7.4.21) とおく.1 =χ(ξ, η) +χ(ξ, ζ)χc(ξ, η) +χc(ξ, η)χc(ξ, ζ)とかいて
R(X;a, b;θ) = Z
e−2iσ(Y,Z)a(X+θY)b(X+Z)χ(ξ, η)dY dZ +
Z
e−2iσ(Y,Z)a(X+θY)b(X+Z)χ(ξ, ζ)χc(ξ, η)dY dZ +
Z
e−2iσ(Y,Z)a(X+θY)b(X+Z)χc(ξ, η)χc(ξ, ζ)dY dZ= I + II + III とおく.ここでσ(Y, Z) =hσY, Ziであった.つぎに
L= 1 + 4−1gXσ(σDY), Φ = 1 +gXσ(Z), M = 1 + 4−1gX(σDZ), Ψ = 1 +gX(Y)
(7.4.22) とおくとΦ−NLNe−2iσ(Y,Z) = e−2iσ(Y,Z)とΨ−ℓMℓe−2iσ(Y,Z) =e−2iσ(Y,Z) は明らか.したがって∂XΘIを評価するには部分積分を行なって次を評価すれ ばよい.Z
e−2iσ(Y,Z)Φ−NLNΨ−ℓMℓ ∂XΘ1a(X+θY)∂XΘ2b(X+Z)∂XΘ3χ(ξ, η) dY dZ.
(7.4.23)
ここでΣiΘi = Θである.gXσ(σDY) = hG(X)DY, G(X)DYiであるから G(X)DY を考えると任意のΘ˜ に対し(G(X)DY)Θ˜Ψ−ℓ≲Ψ−ℓは容易であ る.χ(ξ, η)6= 0なら(7.3.17)より|θ| ≤1に一様にgX ≈gX+θY でありm1は gasmissibleよりm1(X+θY)≲m1(X)(1+gX(Y))N1であるからχ(ξ, η)6= 0 のとき
(G(X)DY)Θ˜∂ΘX1a(X+θY)≲m1(X)(1 +gX(Y))N1Πg1/2X (ti) も容易である.ここで∂ΘX1= Π∂Xti,|ti|= 1,ti∈N2nである.また補題7.4.2 より
(G(X)DY)Θ˜∂XΘ3χ(ξ, η)≲Πg1/2X (tk), ∂XΘ3 = Π∂tXk, |tk|= 1 も明らかである.次にgX(σDZ) =hG−1(X)σDZ, G−1(X)σDZiに注意して G−1(X)σDZを考える.任意のΘ˜ に対して
(G−1(X)σDZ)Θ˜∂XΘ2b(X+Z)≲m2(X+Z)
ΠjgX+Z1/2 (tj)
× 1 +ϕ−1(X)ψ−1(X+Z) +ψ−1(X)ϕ−1(X+Z)|Θ˜|
≲m2(X+Z)
Πg1/2X+Z(tj) 1 +ψ(X)/ψ(X+Z) +ϕ(X)/ϕ(X+Z)|Θ˜|
が従う.ここでϕ−1(X)ψ−1(X) = (supgX/gσX)1/2≤1を使った.また∂XΘ2 = Π∂tXj,|tj|= 1である.m2はg admissibleであるからg緩増加ゆえm2(X+ Z)≲m2(X)(1 +gσX+Z(Z))N2 ≲m2(X)(1 +gσX(Z))N2′ が成り立つ.同様に して
gX+Z(tj)≲gX(tj)(1 +gσX+Z(Z))N3 ≲gX(tj)(1 +gXσ(Z))N3′ (7.4.24) を得る.また(7.1.7)より
ψ(X)/ψ(X+Z) +ϕ(X)/ϕ(X+Z)≲(1 +gX+Zσ (Z))N4 ≲(1 +gXσ(Z))N4′ が成立する.以上から
|(G−1(X)σDZ)Θ˜∂XΘ2b(X+Z)|≲m2(X)(1 +gσX(Z))N5ΠgX1/2(tj) と評価される.ここでN5は|Θ˜| ≤ℓにもよっている.したがって
(7.4.23)の被積分項≲(1 +gσX(Z))−N+N6(Θ,ℓ)(1 +gX(Y))−ℓ+N1
×(m1m2)(X) Π
ig1/2X (ti)Π
jg1/2X (tj)Π
kgX1/2(tk)
が成り立つ.ここでℓをℓ−N1≥n+ 1,NをN−N6(Θ, ℓ)≥n+ 1に選び Z
(1 +gσX(Z))−n−1(1 +gX(Y))−n−1dY dZ <+∞ (X によらない)
に注意すると
∂ΘXI≲(m1m2)(X)ΠgX1/2(tj) (7.4.25) と評価される.ここでも前と同様に∂XΘ= Π∂Xtj,|tj|= 1である.(7.4.22)でY とZを入れ替え,また補題7.4.2と(7.1.9)から|(G−1(X)σDY)Θ˜χc(ξ, η)|≲1 が任意のΘ˜ について成立することに注意して同じ議論を繰り返すことによっ て∂XΘIIについても(7.4.25)と同じ評価を得る.最後に∂XΘIIIを評価しよう.
χc(ξ, η)6= 0ならchξiγ ≤2hηiであるから(7.3.16)より gXσ(Y) =ψ2(X)|y|2+ϕ2(X)|η|2
≲hξi2γ|y|2+|η|2≲hηi2|y|2+|η|2≲(1 +|Y|2)2
(7.4.26) が成り立つ.χc(ξ, ζ)6= 0なら同様にgσX(Z)≲(1 +|Z|2)2である.次にL, M を
L= 1 +|DY|2, Φ = (1 +|Z|2), M = 1 +|DZ|2, Ψ = (1 +|Y|2) とすると部分積分を行なって
Z
e−2iσ(Y,Z)Φ−NLNΨ−NMN ∂ΘX1a(X+θY)∂XΘ2b(X+Z)
×∂XΘ3χc(ξ, η)∂XΘ4χc(ξ, ζ)
dY dZ, Σ4i=1Θi= Θ
を評価することになる.任意のΘ˜ に対して|DYΘ˜Ψ−N|≲Ψ−N は明らかであ る.仮定(7.3.16)より,χc(ξ, η)6= 0のときϕ−1(X+θY)≲hξ+θηiδγ ≲hηiδ が成り立つので
DΘY˜∂XΘ1a(X+θY)≲m1(X+θY)
Πg1/2X+θY(ti1) hηiδ|Θ˜|
≲m1(X+θY)
Πg1/2X+θY(ti1) Ψδ|Θ˜|/2, ∂ΘX1= Π∂Xti1
が成立する.また|DΘY˜∂XΘ3χc(ξ, η)| ≲Πg1/2X (ti3), ∂ΘX3 = Π∂Xti3 も補題 7.4.2 から明らかである.χc(ξ, ζ)6= 0のときも同様にして
DΘZ˜∂XΘ2b(X+Z)≲m2(X+Z)
ΠgX+Z1/2 (ti2) Φδ|Θ˜|/2, ∂ΘX2= Π∂Xti2 および|DΘZ˜∂XΘ4χc(ξ, ζ)| ≲ Πg1/2X (ti4), ∂XΘ4 = Π∂tXi4 が成り立つ.mi はg admissible, gは緩増加,また|θ| ≤1なので(7.4.24)を利用すると
被積分項≲(m1m2)(X)
ΠgX1/2(ti1)Πg1/2X (ti2)ΠgX1/2(ti3)Πg1/2X (ti4
×(1 +gσX(θY))N1(1 +gσX(Z))N2Ψ−N(1−δ)Φ−N(1−δ)
≲(m1m2)(X)
ΠgX1/2(ti) Ψ−N(1−δ)+2N1Φ−N(1−δ)+2N2, ∂ΘX= Π∂Xti が得られる.ここで(7.4.26)を使った.NiはΘにも依存している.δ < 1 なのでNをN(1−δ)−2Ni > nとなるようにN を選ぶと∂XΘIIIについて も(7.4.25)と同じ評価が得られる.以上でR(X;a, b;θ)∈S(m1m2, g)がわか る.
定理 7.4.1. gをadmissible metricで(7.3.16),(7.3.17)を満たすとする.ま たm1,m2をg admissibleとしa∈S(m1, g),b∈S(m2, g)とする.このと き振動積分で定義される
c(X) =π−2n Z
e−2iσ(Y,Z)a(X+Y)b(X+Z)dY dZ (7.4.27) はS(m1m2, g)に属す.このcをa#bと表すと
op(a)op(b)u= op(a#b)u, ∀u∈ S
が成り立つ.h2(X) = supgX/gXσ とおくとき任意のNに対して
a#b− X
|α+β|<N
(−1)|α|
(2i)|α+β|α!β!∂ξβ∂xαa ∂ξα∂xβb∈S(hNm1m2, g) (7.4.28) である.また任意のl∈Nに対しC,l′があって
a#b(l)
S(m1m2,g)≤C|a|(lS(m′) 1,g)|b|(lS(m′) 2,g) (7.4.29) が成り立つ.(7.4.28)で|α+β| = kの和をJk(a, b)と表すとJk(a, b) = (−1)kJk(b, a)であるから
a#b−b#a− {a, b}/i∈S(h3m1m2, g), a#b+b#a−2ab∈S(h2m1m2, g), a#b#a−ba2∈S(h2m2m21, g)
(7.4.30)
が成り立つ.
証明. (7.4.28)を示すにはまずa(X+Y)をテイラー展開して a(X+Y) = X
|Θ|<N
1
Θ!∂XΘa(X)YΘ+rN(X, Y, θ) と表す.ここでrN(X, Y, θ) =NP
|Θ|=N 1 Θ!
R1
0(1−θ)N−1∂XΘa(X+θY)dθYΘ である. 和の部分を(7.4.21)に代入すると
X
|Θ|<N
1 Θ!
Z
e−2iσ(Y,Z)∂ΘXa(X)YΘb(X+Z)dY dZ
となる.ここでYΘe−2iσ(Y,Z)= (2i)−|Θ| σ∂Z
Θ
e−2iσ(Y,Z)に注意して部分積 分を行うとR
e−2iσ(Y,Z)dY =π2nδZに注意して π2n X
|Θ|<N
(−1)|Θ|
(2i)|Θ|Θ!∂XΘa(X) σ∂X
Θ
b(X)
が得られる.rN についても代入して同じ計算をすると X
|Θ|=N
N Θ!
Z 1 0
(1−θ)N−1dθ Z
e−2iσ(Y,Z)∂XΘa(X+θY)
× (σ∂X)Θb
(X+Z)dY dZ
= X
|Θ|=N
N Θ!
Z 1 0
(1−θ)N−1R(X;∂XΘa,(σ∂X)Θb;θ)dθ
(7.4.31)
となる.ここで∂XΘa(X)∈S(m1Πg1/2X (ti), g),∂XΘ= Π∂Xtjおよび(σ∂X)Θb(X)∈ S(m2ΠgX1/2(t∗i), g), (σ∂X)Θ= Π∂Xt∗i である.ここでσti=±t∗i に注意すると
g1/2X (ti)gX1/2(t∗i) =ϕ−1(X)ψ−1(X) =h(X)
であるから(7.4.31)の右辺に補題7.4.1 を適用してrN ∈S(m1m2hN, g)が 従う.
命題 7.4.1. gを(7.3.16), (7.3.17)を満たすadmissible metric,miをg ad- missibleでai∈S(mi, g)とする.さらに|α+β|=lのときg admissible な mβi,αについて∂xα∂βξai ∈S(mβi,α, g)とする.このとき次が成立する.
a1#a2− X
|α+β|<l
(−1)|α|
(2i)|α+β|α!β!∂ξβ∂xαa1∂ξα∂βxa2∈ X
|α+β|=l
S mβ1,αmα2,β, g .
特にl= 3として次が成立する.
a1#a2−a2#a1+i{a1, a2} ∈ X
|α+β|=3
S mβ1,αmα2,β, g .
証明. 定理 7.4.1の証明でN = lとして(7.4.31)を考える.Θ = (α, β) と すると仮定より∂XΘa1=∂αx∂ξβa1∈S(mβ1α, g),(σ∂X)Θa2= (−1)|β|∂ξα∂xβa2∈ S(mα2β, g)であるから補題7.4.1よりR(X;∂ΘXa1,(σ∂X)Θa2;θ)∈S(mβ1,αmα2,β, g) を得る.これより主張が従う.
たとえばa∈S(hξisγ,g¯0),b ∈S(m,¯g)とするときhξisγは¯g admissibleで
∂xα∂βξa∈S(hξisγ−|β|,g¯0)⊂S(hξisγ−|β|,¯g)であるから∂xβ∂ξαb∈S(mhξi(γ|β|−|α|)/2,g)¯ より
a#b− X
|α+β|<l
(−1)|α|
(2i)|α+β|α!β!∂ξβ∂αxa ∂ξα∂βxb∈S(hξisγ−l/2m,g)¯ (7.4.32) である.