第 5 章 エネルギー評価 43
5.2 基本の metric と非負シンボルの平方根近似
本書で実際に利用するmetricはつぎの簡単なものである.
g0(y, η) =|y|2+hξi−2|η|2, hξi= (1 +|ξ|2)1/2,
¯
g(y, η) =hξiγ|y|2+hξi−γ1|η|2, hξiγ = (γ2+|ξ|2)1/2, γ≥1, gϵ(y, η) =M−2δϵahξiγ|y|2+M−2δϵbhξi−γ1|η|2, γ≥M4, M ≥1,
¯
g0(y, η) =|y|2+hξi−γ2|η|2, γ≥1.
(5.2.9)
ここでgϵは局所座標系の変換(a)と(b)に関係したmetricでϵはϵ=aまた はϵ=bでϵ=ϵ′のときδϵϵ′ = 1でそれ以外はδϵϵ′ = 0と約束する.またg0
は単に¯g0でγを1に固定したものである.またg¯0 ≤gϵ ≤g¯は明らかであ る.g¯やgϵがadmissible metric (定義7.1.3)であることやhξisγ,s∈Rがgϵ
admissible (定義7.1.5) であることなどは第7.3節で確かめる.いま ϵ(α, β) =|α|δϵa+|β|δϵb (5.2.10) とおくとa∈S(m, gϵ)とはCα,βが存在して
∂xα∂ξβa≤Cα,βmM−ϵ(α,β)hξi(γ|α|−|β|)/2, α, β∈Nd
が成立することであるから(定義 7.2.1) 0 ≤ ϵ(α, β) ≤ |α+β|に注意する とM|α+β|hξi−|γ β|≤(M4hξi−γ1)|α+β|/2M−ϵ(α,β)hξi(γ|α|−|β|)/2よりS(m, G)⊂ S(m, gϵ)は明らかである.gϵ ≤ ¯gよりmがgϵ admissible ならmは¯g ad- missible でS(m, gϵ) ⊂S(m,¯g)である.つぎにパラメーターλ ≥ 1を導入 して
b(t, x, ξ) = q(t, x, ξ) +λhξiγ
1/2
(5.2.11)
とおく.ここでλは
λM2≤γ, λ≥1 (5.2.12)
の制限の下で動くものとする.したがってλhξi−γ1≤M−2が成り立っている.
以前に約束したようにこの節では(5.1.1)および(5.2.12)の下で動くパラメー ターλ, M, γによらないCが存在してA≤CBが成り立つときA≲Bと 表す.この節の最後にパラメーターλの値を固定することにする.命題4.3.1 でシンボルψの存在を証明したがこのψに関係するweight の1つを
ω(t, x, ξ) = ((t−ψ(x, ξ))2+hξi−γ1)1/2 (5.2.13) で定義する.ψ ∈ S(M−1, G)なので(5.1.1)と(5.1.4)よりhξi−γ1/2 ≤ ω ≤ CM−1は明らか.ωは(5.1.8)を利用するとλ≥
¯cとして b= q+λhξiγ
1/2
≥ ¯c(t−ψ)2hξi2γ+λhξiγ
1/2
≥√
¯c ω−1hξiγ (t−ψ)2ω2+ω2hξi−γ1
1/2
≥√
¯c ω−1hξiγ |t−ψ|4+hξi−γ2
1/2
≥p
¯c /2ωhξiγ
(5.2.14)
を満たすことがわかる.
補題 5.2.1. hξi−|γ α|∂xα∂ξβq∈S(b,g) (¯ |α+β|= 1),∂tq∈S(hξiγb,¯g)である.
また {q, ψ} ∈S(M−1/2b,g).¯
証明. 一般にa∈S(M−1−khξiγ, G)のときb≥(λhξiγ)1/2≥ hξi1/2γ より
|∂xα∂ξβa|≲M−1−k+|α+β|hξi1γ−|β|≲M−k M−2hξiγ
(1−|α+β|)/2
×hξi1/2γ hξi(γ|α|−|β|)/2≲M−kbhξi(γ|α|−|β|)/2, |α+β| ≥1
(5.2.15) に注意する.q∈S(M−2hξi2γ, G)ゆえGlaeserの不等式より|hξi−|γ α|∂xα∂ξβq| ≤ C√q≤Cb(|α+β|= 1)である.またhξi−|γ α|∂xα∂ξβq∈S(M−1hξiγ, G)でもあ るから上の注意をa=hξi−|γ α|∂xα∂βξqとして適用すればよい.∂tq∈S(hξiγb,¯g) の証明も同様である.2番目の主張を示すには命題5.1.1を考慮してa={q, ψ} に上の注意を適用する.(5.2.15)に注意すればよい.
補題 5.2.2. |α+β| ≥1のとき∂xα∂βξ b±1∈S(λ−1/2hξi(γ|α|−|β|)/2b±1,g).¯ 特 にb±1∈S(b±1,g).¯
証明. b=b+1の場合を考えよう.
¯
q=q(t, y(x), η(ξ) +ed), ¯b= (¯q+λhξi−γ1)1/2 (5.2.16) とおくとb = hξiγ¯bである.CM−1 ≥ ¯b ≥ λ1/2hξi−γ1/2 より(¯bλ−1/2)k ≥ hξi−γk/2 (k≥0)は以下よく利用する.¯q∈S(M−2, G)よりGlaeserの不等式 を適用すると
|∂xα∂ξβq¯|≲hξi−|γ β|
√q¯≲hξi−γ1/2
√q¯hξi(γ|α|−|β|)/2, |α+β|= 1 (5.2.17)
が成立する.また|∂ξβλhξi−γ1|は
≲λhξi−γ1−|β|≲λhξi−γ3/2hξi−γ(|α+β|−1)/2hξi(γ|α|−|β|)/2 (5.2.18) と評価される.これより√
¯
q≤¯bおよび(¯bλ−1/2)k ≥ hξi−γk/2に注意すれば
|∂xα∂βξ¯b|≲|∂xα∂ξβ(¯q+λhξi−γ1)|/¯b≲λ−1/2hξi(γ|α|−|β|)/2¯b, |α+β|= 1 (5.2.19) は明らかである.いま1 ≤ |α+β| ≤lのとき(5.2.19)が成立すると仮定す る.定義式¯b2= ¯q+λhξi−γ1を微分すると|α+β|=l+ 1≥2として
¯b ∂αx∂ξβ¯b= X
1≤|α′+β′|≤l
C...∂αx′∂ξβ′¯b·∂xα′′∂ξβ′′¯b+∂xα∂βξq+λ ∂¯ αx∂ξβhξi−γ1 (5.2.20) を得る.ここでq¯∈S(M−2, G)より
|∂xα∂ξβq¯|≲M−2+|α+β|hξi−|γ β|
≲hξi−γ1(M2hξi−γ1)(|α+β|−2)/2hξi(γ|α|−|β|)/2≲¯b2λ−1hξi(γ|α|−|β|)/2
(5.2.21) と評価される.(5.2.20)の右辺第3項には(5.2.18)を利用すればよい.した がって(5.2.20)に帰納法の仮定を用いると(5.2.19)が|α+β|=l+ 1のとき も成立することが分かる.bの評価は(5.2.19)から直ちに従う.∂xα∂ξβb−1の 評価はb−1b= 1を微分すれば∂xα∂ξβbの評価と帰納法から得られる.
補題 5.2.3. b±1はg¯admissible (定義7.1.5) でさらにb±1∈S(b±1,g).¯ 証明. b±1∈S(b±1,¯g)は補題5.2.2で示した.hξisγはg¯admissibleであるから
¯bが¯gadmissibleであることを示せばよい.(5.2.17)より|∂xα∂βξq¯|/¯b≲hξi−|γ β|
でまた|∂βξλhξi−γ1| ≲ λhξi−γ1−|β| ≲¯b2hξi−|γ β|であるから|∂xα∂βξ¯b| ≲ hξi−|γ β|
(|α+β|= 1)である.|η| ≤chξiγとすると(7.3.18)よりCが存在して hξ+sηiγ/C≤ hξiγ ≤Chξ+sηiγ, |s| ≤1 (5.2.22) が成立する.したがって有限増分の定理より
|¯b(z+w)−¯b(z)| ≤C(|y|+hξi−γ1|η|)≤Chξi−γ1/2g¯1/2z (w)≤C¯b(z)¯g1/2z (w) すなわち
¯b(z+w)≤C¯b(z)(1 + ¯gz(w))1/2 (5.2.23) が成り立つ.|η| ≥chξiγのときはg¯z(w)≥c2hξiγであるから
¯b(z+w)≤C≤C¯b(z)hξi1/2γ ≤C′¯b(z)(1 + ¯gz(w))1/2
よりこの場合も(5.2.23)が成り立つ.すなわち¯bは¯gadmissibleである.
命題 5.2.1. M およびγによらないλ1≥1 が存在し,λ≥λ1なるλに対し てb#˜b= ˜b#b= 1を満たす˜b∈S(b−1,g)¯ が存在する.
証明. 補題 5.2.3よりb±1はg¯admissible で補題 5.2.2よりb±1∈S(b±1,¯g) でさらに|α+β|= 1のとき∂xα∂βξb±1∈S(λ−1/2hξi(γ|α|−|β|)/2b±1,g)¯ である.
したがって命題 7.4.1よりb#b−1 = 1−r, r∈S(λ−1,¯g) となる.これより λ1が存在しλ≥λ1のとき定理7.6.1が適用できて
˜ r(x, ξ) =
X∞ j=0
r#j∈S(1,g)¯
が成立する.ゆえにb#(b−1#˜r) = 1である.同様にしてˆr∈S(1,g)¯ が存在し てˆr#b−1#b= 1となる.ˆr#b−1#b#(b−1#˜r)#b= 1より(b−1#˜r)#b= 1で もある.いま˜b=b−1#˜r∈S(b−1,¯g)とおけばこれが求めるものである.
補題 5.2.4. M およびγによらないλ2≥λ1 が存在し,λ≥λ2なるλに対 して
(op(q+λhξiγ)v, v) = (op(b2)v, v)≥ kop(b)vk2/2, v∈ S が成立する.
証明. 補題5.2.2より∂xα∂ξβb∈S(λ−1/2hξi(γ|α|−|β|)/2b,g),¯ |α+β|= 2に注意 すると命題7.4.1よりb#b=b2+r,r∈S(λ−1b2,g)¯ である.ここでλ≥λ1
とすると命題 5.2.1の˜b∈S(b−1,¯g)が存在するのでr=b#(˜b#r#˜b)#bと書 くとき˜b#r#˜b ∈S(λ−1,g)¯ で定理7.5.1よりλによらないC >0があって kop(˜b#r#˜b)vk ≤Cλ−1kvk2が成立する.従って|(op(r)v, v)| ≤Cλ−1kop(b)vk2 である.以上より
(op(b2)v, v) =kop(b)vk2−(op(r)v, v)≥(1−Cλ−1)kop(b)vk2 が成立する.ゆえにλ2≥λ1を1−Cλ2≤1/2と選べばよい.
つぎの不等式は強形G˚arding不等式と呼ばれる.
系 5.2.1. a(x, ξ)∈S(hξi2, g0)は非負値a(x, ξ)≥0とする.このときC >0 があって次が成り立つ.
Re(op(a)u, u)≥ −CkhDi1/2uk2, u∈ S.
証明. M = 1, γ≥λ2を固定するとa∈S(hξi2γ, G)であるから補題5.2.4を q=a,λ=λ2として適用すると
(op(a)v, v)≥ kop((a+λ2hξiγ)1/2)vk2/2−λ2khDi1/2γ vk2≥ −CkhDi1/2vk2 を得る.
以下λ= ¯λ≥λ2を1つ選んで固定する.このとき命題5.2.1および補題 5.2.4が共に成立する.M とγは条件(5.1.1)および(5.2.12)の下で動くもの とし,まだ固定しない.