面談者 重信 友里
(2018年社会学科卒業)[写真下段]
※プロフィールは本文後ろに記載 取材・構成・編集
伊藤 小春(社会学科3年)
石岡 里佳子(社会学科3年)
インタビュー日時:
2020年8月10日(月)
16時~17時
言葉を人に届けるお仕事
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─やりがいに感じることはありますか。
取材で会った人に「ありがとう」と言われるの がすごく嬉しくて。イベントなどでは“宣伝”と いうお手伝いしかできませんが、その瞬間に立ち 会えたときは嬉しく感じます。そのイベントを通 して、主催者だけでなく報道を見て足を運んだお 客さんにもプラスになることがあったと思うんで す。人から「ありがとう」って言われる瞬間が嬉 しいです。
視聴者の方からも、取材先で「いつも見ていま す」と言ってもらえると、頑張ろうと思えます。
─お仕事をしている中で、大変だったことはあり ますか。
生放送でハプニングが起きてしまったことで す。テレビでよく見る「ハプニング大賞」のよう なこともよくあって、情報番組の生中継で飲食店 に行ったとき、料理が出てこないとか、食べ過ぎ てしまってしゃべれないとか。これは自分も悪い けど(笑)。
また、大きな事件や事故が起きると現場に行く こともあるので、生活が不規則になってしまいま す。体力は必要な仕事だと感じています。
他にも、新しい土地に慣れるのが大変でした。
初めての土地で、地名も読めず、土地勘もないの で、視聴者の当たり前が、自分にとって当たり前 じゃないことが多々ありました。宮城の地理は特 に勉強が必要で慣れるまでは大変でした。
─あまり知らない地域のことを伝える仕事をする うえで、どのように勉強をしていたんですか。
ニュースは朝の地方紙でカバーできますが、実 際の雰囲気は歩かなきゃわからないと思って、面 接で地方の局に行くときはタクシーを使わずに 公共交通機関を使っていました。目的地が遠くて 40分ほど駅から歩いたこともあります。夏の面接 で、ある会社の最寄り駅でSuicaが使えないこと もありました。駅の回りには何もなく、会社も見
えず、スマホを片手に田んぼの横を2キロくらい 歩き続けて、汗だくになりながら面接に行った思 い出もあります。タクシーを使う学生もいました が、歩いてこそわかることがあると思っていたの で、就活は“空気を感じること”を大事にしてい ました。
入社してからは、新聞をすみずみまで読むよう になりました。当たり前のことでもありますが、
地名の読み方や、場所もわからないので、とにか く調べたり、ほかの放送局のニュースを聞いて読 み方を覚えたり。自分が取材に行くときも車での 移動中はなるべく外を見るようにして、標識を探 して今自分はここにいるんだな、この地名はこう 読むんだなと勉強していました。
─日常から勉強しているんですね。
最初はずっとそうでした。遊びに行ったりドラ イブに行く人もいると思うんですけど、そこまで 頑張れる自信がなくて。頑張りすぎると疲れてし まうと思ったので、一回で覚えるようにしていま した。
─聞いた言葉をメモか何かして詳しく調べるとい うことですか。
メモをしていました。でも、「次は忘れない」と 思っていると、メモをしなくても「あ、また出て きたこの土地!」って覚えていられます。特に、
よく聞く場所は忘れないように気をつけていまし た。
─先ほど生放送の話がありましたが、生放送でハ プニングが起きた時というのは、どういうこと に気を付けて対処するんですか。
私の経験が参考になるかわからないんですけど
(笑)びっくりします。想定外のことなので「どう なっているの?」と思うんですが、慌てないよう にしています。そして焦らない。ハプニングも楽 しむようにしています。
覚えているのは、初めての生中継で、屋外で バーベキューをしていてお肉を食べる時に、偶然 風向きが変わり私の顔に煙が来たんです。私のこ とは煙で見えていないなと思いつつ、それを活 かしてしゃべりました。「煙で今まったく見えな いんです」と言ったら、スタジオが盛り上げてく れて。その時はスタジオの「煙も応援してくれて るね」という言葉に救われました。「えー見えな い!」となって慌ててしまったらもったいないん ですよね。
その状況も楽しめるように、肩の力を抜くとい うのは大事にしています。
焼肉店での中継でお肉が焼けないこともありま した(笑)。終了時刻も決まっているなか、待って いると時間をオーバーしてしまう。とにかく食べ てコーナーを終わらせなきゃと思い、カメラがお 肉を撮ってる間にそのまま飲み込みました。
─すごいですね。
先輩が「私は困ったら飲み込んでいるよ」と言っ ているのを聞いていたので、「どうしよう」と考え た時、その言葉がふと出てきて「あ、飲み込めば いいんだ」と。あとはやっぱり…慌てないことが 大事。
─そういうハプニングが起こった時に平常心を保 つというのはどうやって身につけたんですか。
自分に期待しすぎない。「これだけやったから できる」って思っていると、歯車が狂った時に全 部できなくなってしまうと思っています。
アナウンサーの仕事では『とにかく準備を大事 に』と言われます。生中継もニュース取材も、下 調べをして知識を持って行くようにしています。
でも、それを全部出そうとすると、空回りしたり 内容を詰め込んでしまうので、「自分はこんなに 準備したのに」と思わないようにしています。「ま あ、これくらいかな」という気持ちでいた方が、
失敗した時や思うようにいかない時にも、切り替 えがしやすいですね。
「こうしゃべらなきゃ、こういう風にやらな きゃ」と思っていると、どこかが崩れた時に絶対 に切り替えができなくなる。だから、考えすぎな いように、(内容を)固めすぎないようにはしてい ます。
─その考え方は就活でも役に立つかなと思いまし た。なにか就活でも役立つようなことってある でしょうか。
就職活動もそうかもしれないです。面接で、「こ れをしゃべらなきゃ」と思うと、想定外の質問に びっくりして、言いたいことの半分も言えないん じゃないかな。
考えることももちろん大事ですが、ちょっとリ ラックスするのが大事。そのために準備は欠かせ ません。たとえば私は、ボーッとテレビを見てい ても「自分がこの質問をされたらなんて答えるだ ろう」と考えています。私ならなんて答えるかな と。そうすると、自然と自分の考えの幅が広がる と感じています。
自己PRや面接で話す内容を考えるときに、文 章にして準備しないことも必要だと思います。
『学生時代何をしていましたか』という質問で
「私はこういう風にしていました」と書くのでは なく、箇条書きで「サークルを頑張った」「○○の 勉強を頑張った」とキーワードで書くようにして いました。文章では書かないことは大事にしてい たし、「これから中継をします」という時も、キー ワードでまとめるようにしています。
─その時出た自然な言葉でつなげていくという感 じですか。
そうです。その内容を話すにはどの言葉が必要 だろうって。面接などで話す順番を間違えてし まっても、箇条書きだと簡単に話の内容を入れ替 えができるんです。「今この話をしなかったから、
後で話そう」って。
自己紹介を文章で暗記してしまうと、間違えた 時に頭が真っ白になってしまって「ああどうしよ
言葉を人に届けるお仕事
118 う、どうしよう」と不安になってしまう、準備は するけど、イメージ通り完璧にやろうとしないこ とが大切だと思います。
準備はリラックスして面接を受けるための安 心材料にはなるのかな。文章で書くのもお守りに はなるけれど、そればかり覚えてしまうと自分の いいところが一割も出せずに終わっちゃうから。
150%の準備をして、100%の力が出せるように、
いろいろな引き出しを用意してほしいです。
─ありがとうございます。覚えておきます。では、
学生時代に力を入れていたことについて教えて ください。
教員免許の取得を目指して、とにかく授業を受 けていました。
─どうして教職をとろうと思ったんですか。
もともと学校が好きで、先生が夢を応援してく れて、楽しい思い出があったから。テレビの世界 に行きたいと思ったのも学校の宿題がきっかけで した。
テレビは視聴者と直接つながっているわけで はないので遅れて反応が来るけど、学校の先生 は、一度にクラスで約40人、学年では200人近い子 どもたちを目の前に、この子たちの人生を変える きっかけを自分にも作れるかもと思い、憧れの職 業でした。
─中学と高校、どちらでしたか。
中高、両方の社会科免許をとりました。教育実習 は母校に行き理系クラスを担当しました。公民に あまり興味のない生徒が多かったものの、彼らを 引き付ける授業内容を考えたり、コミュニケーショ ンがとれる内容にしたり楽しい教育実習でした。
先生も言葉を使う仕事。私の授業で彼らの考え 方が少しでも変わったら、社会に興味を持ってく れたら、私が来た意味があると思って教育実習を やっていたので3週間はあっという間で辛く感じ
ることはなかったです。
今考えると教育実習は自分の中ですごく大きな 出来事でした。先生という立ち位置で高校生と接 することができて、言葉の面白さが分かった瞬間 でもあったのかな。
拙い内容でも最後まで寝ないで授業聞いてくれ たことだけでも、私はすごく嬉しかった。今起き ている様々な問題について一緒に考えてくれた時 に、やっぱり言葉を使う仕事に就きたいと思いま した。
─教員になるだけがすべてじゃないということで すか。
私はそう思いました。先生という夢を持つ学生 もそうでない人も、教職課程をとることに何か理 由や目的があると思います。課程が進むにつれ て、将来の優先順位を考えてやめる人も沢山いま した。そういう選択肢もありだと思っていて、自 分と向き合う時間を作るという意味では価値のあ る時間だと思います。
私は先生への憧れのほかに、就職活動に失敗し たら怖かったので安心材料としても続けていまし た。
─ゼミでは主にどういうことについて勉強しまし たか。
比較的自由なゼミでした。覚えているのは3年 生の夏の合宿で、2日間で本一冊読んだこと。グ ループ分けして、十数章を割り振り、それぞれレ ジュメにまとめて、みんなで討論した時間は、す ごく覚えています。
ゼミは大学で一番勉強したかもしれない。先生 の話は発見の方が多いからすごく楽しくて、英語 の専門書を訳すのは大変だったけれど、学問に一 番触れた時間でした。
─やっぱり終わった時は達成感がありましたか。
ありましたね。ゼミ合宿は、本が厚くてこんな