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博士(医学)橋本学位論文題名ラット肝移植モデルにおける

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 医 学 ) 橋 本 学 位 論 文 題 名

ラット肝移植モデルにおける

Modified Clamp Technique によるアデノウイルス ベクターを用いた CD40Ig 遺伝子導入法の開発研究

学位論文内容の要旨

序論)

  

急性拒絶反応の成立に重要なT 細胞の活性化には,T ―cell receptor を介したドナー抗原 提示のほ か,副刺激シグナルが必要であるが,この副刺激を遮既することによルドナー抗 原特異的免疫寛容を誘導する試みがなされている,我カはCD40 ―CD154 シグナルをターゲッ トとして

CD40Ig

遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター(AdCD40Ig) を世界に先駆けて 開発し, ラット肝移植モデルにおいて全身投与で用い,移植肝の長期生着とドナー種特異 的な免疫 寛容が導入されることを証明した.しかし,アデノウイルスベクターの全身投与 は,ウイ ルスの全身散布に起因する肝機能障害などの臓器障害や産生物質に対する免疫反 応,それ に引き続き起こる炎症反応などを惹起させることが知られている.従ってこれら の副作用 を軽減させるために,より少ないベクター量でしかも十分な遺伝子導入効率を得 ること丶が重要で,安全な投与経路,投与方法について研究を進める必要がある.今回,我々 はラット 肝移植モデルにおいてAdCD40Ig をClamp Technique(CT) を用いたex ―

VIVO

経路で の遺伝子 導入し,長期生着を得るために必要なベクター量,保存時間について検討した.

本研究で は,より簡便な方法を模索するため,門脈と肝動脈の両脈管より還流液を注入す る

CT

原 法を 改め , 肝動 脈はあらかじめ結紮し還流液全量を門脈 より注入するModified

Clamp Technique(MCT)

を開発した.

方法)

  LEW

ラッ卜,ACI ラットをそれぞれレシピエント,ドナーとして用い同所性肝移植を行っ た.レシピ

i

ントは,投 与するアデノウイルスベクター量,投与経路,そしてMCT 法を用 いた場合にはその保存時間により,8 群に分けられた.対照として無治療群を作 成した

(Groupl)

.レシピェントヘ全身投与する群では,AdCD40Ig をりンゲル液で総量Iml に希 釈した液を肝移植直後に静注した. (Group2: 1Xl09pfu ,Group5: 5xl08pfu). MCT 法を用 いて遺伝子導入した群では,肝摘出後,肝上下の肝静脈を遮断した後,

AdCD40Ig

をりンゲ ル液で摘出肝重量の40 %に相当する量に希釈し門脈より注入した.注入によルグラフトが 膨張 した 後, 門脈 を遮断した

(Group3:lXl09pfu

Group6:5X108pfu)

.これらのグラフ トは4 ℃で10 分間保存し た後,脈管のクランプを解除,リンゲル液を門脈より注入しグラ フト内のウイルス溶液を洗い流した後,レシピェントに同所性に移植した. Group7 (5X

10apfu)

では,CT の作業をりンゲル液の代わりにuw 液を用い,冷保存時間を

3

時間とした.

Flush out

(Group4

:1Xl09pfu ,

Group8:5X10spfu)

に韜いては,脈管の遮断は行わな かったため,門脈より注入したウイルス溶液は肝臓内にトラップされること無く肝静脈よ り排出された.これらのグラフトも10 分の冷保存期 間を経てりンゲル液でwash out した 後,移植した.以上の実験群において,グラフト生存率,血中CD40Ig 濃度(7 日目),肝

343

(2)

機能,遺伝子導入効率(HumanIgG 染色)を検討した,また長期生着をみた群では,ドナー 種特異的免疫寛容導入の有無を確認するため皮膚移植を施行した.皮膚移植片は,肝移植 の ド ナ ー 種 で あ る

ACI

ラ ッ ト と

3rd Party

で あ る

BN

ラ ッ ト の 皮 膚 を 用 い た , 結果)

グラフト生存率:Groupl の移植肝は2 週間以内に全て拒絶された,ベクター量をix 10gpfu に 設 定 し た 群 の う ち |

Group2

( 全 身 投 与 ) で は 全 例が

IGroup3 (MCT

)で は6 匹 中4 匹 に100 日 以上 の長 期生 着を見,而群に有意差は無か った.Group4(Flush out) で は全 ての動物は4 週間以内に死亡した.一方,ベクター量を

5X108pfu

に設定した群のうち,

Group5

(全 身投 与) では

6

匹中

5

匹 が

4

週 以内 に死 亡し た,

Group6 (MCT

) ではグ ラフ ト 生存 の中 央値 は55.5 日 と有 意に 延長 し,

6

匹中

2

匹 は

100

日以上の長期生着をみ た,

Group7 (MCT3

時 間 ) で は 全 例 が

100

日 以 上 生 存 し た ,

Group8(Flush out)

で は , 全ての動物は4 週間以内に死亡した・

血中CD40Ig 濃度:投与方法 に関わらず,移植後

7

日目に ピークに達し,各群の7 日目の血 中 濃度 を比 較し た.

lX l09pfu

に設 定し た群 では ,Group2 (全身投与)とGroup3 (MC

T

)の濃度はほば同等であり,有意差は無かった.一方 ,5Xl08pfu に設定した群では,

Group7 (MCT

法3 時間),Group6 (MCT) ,Group5 (全身投与)の順に高く,この3 群間にはい ずれも有意差を認めた.

肝機能:4 日目のALT ,

AST

を比較した.長期生着の得られた群のうち,全身投与群(Group2 :

1X l09pfu)

では無治療群と 有意差無く高値であったのに対し,MCT 法を用いた操作によル グ ラフ トの 長期 生着 が得 られたGroup3 (

1Xl09pfu)

Group6

(5Xl08pfu) ,Group7 (

5X 108pfu

3

時間冷保存)では,有意に低値であらた.

肝 臓へ の遺 伝子 導入 効率 :ベクター量に関わらず,遺伝子導入効率はMCT 法(Group3 ,

Group6)

がレシピェン卜全身投与(Group2 ,Group5) を上回り,さらに5Xl08pfu (Group7) で は3 時間の冷保存期間をおくことで更に導入効率は向上した.

皮膚移植: Group2 ,3 ,6 ,

7

より計6 匹を選択し皮膚移植を行った.BN の皮膚移植片が全て4 週 間 以 内 に 拒 絶 さ れ た の に 対 し ,

ACI

の 移 植 片 は 全 例 で

40

日 以 上 の 生 着 を み た.

考察)

  

これまでex ー

vivo

経路の遺伝子導入においては,Clamp Technique を用いて3 時間以上の 冷保存時間を設定することによりにより肝細胞とウイルスベクターとの接触機会が増え,

遺伝子導入効率が向上するとの報告がなされていた。今回我々は,ラット肝移植モデルに おいてAdCD40Ig を

MCT

を用いたex −vivo 経路での遺伝子導入し,長期生着を得るために必 要なベクター量,保存時間について検討したが,その結果,保存時間を僅か10 分としても,

全身投与した場合とほば同等の免疫抑制効果を得ることができることを証明した。ウイル スベクターの肝細胞への導入にはCoxsakie ―AdenoviralReceptor (CAR) を介する経路が一 般に知られているが,本実験で見られた極短時間での導入は,CAR 以外に静水圧による物理 的な導入機序の存在を示唆するものと考えられた。今後,移植医療において遺伝子治療が 用いられるためには安全性と簡便性の確保が最も重要である.今回我々が開発したMCT は,

ウイルスベクターの全身散布を避けることができる点,簡便でありわずか10 分の処置によ り十分な遺伝子導入が得られる点,長期の冷保存期間を必要とせず虚血再潅流障害を回避 できる点,肝機能障害が軽減できる点などで,これまでの方法より優れていると考える.

今後,この手法を臨床の移植医療に応用するためには,大動物の移植実験で遺伝子導入効 率 や 免 疫 抑 制 効 果 , そ し て 安 全 性 な ど を 更 に 詳 し く 検 討 す る 必 要 が あ る .

344

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ラット肝移植モデルにおける

Modified Clamp Technique によるアデノウイノレス ベクターを用いた CD40Ig 遺伝子導入法の開発研究

抗 原 提 示 に お け る 副 刺 激 を 遮 断 す る こ と に よ ル ド ナ ー 抗 原 特 異 的 免 疫 寛 容 を 誘 導 す る 試 み が な さ れ て い る . こ れ ま でCD40‑CD154シ グ ナ ン レ を タ ー ケ ゛ ッIと し たCD40Ig遺 伝 子 を 組 み 込ん だアテ ゛ノ ウイル スヘ゛ クター(AdCD40Ig)を ラッ1肝移植モデルにおいて全身投与で用い,移植肝の 長 期 生 着と ド ナ ー 種 特異 的 な 免 疫 寛容 が 導 入 さ れる こ と が 証 明 され て い る が 、ヘ ゛ ク タ ー の全 身 投 与 は , ウ イ ル ス の 全 身 散 布 に 起 因 す る 臓 器 障 害 や 免 疫 反 応 を 惹 起 さ せ る こ と が 知 ら れ て い る . これ ら の 副 作 用を 軽 減 さ せ るた め に , よ り少 な い へ ゛ ク ター 量 で 十 分 な遺 伝 子 導 入 効率 を 得 る た め の 研 究 を 進 め る 必 要 が あ る . 本 研 究 で は ラ ッ ト 肝 移 植 モ デ ル に お い てAdCD40Ig をModified Clamp Technique(MCT)を 用 い たex'wvo経 路 で の 遺 伝 子 導 入 し , 長 期 生 着 を 得 る た め に 必 要 な へ ゛ ク タ ー 量 , 保 存 時 間 に つ い て 検 討 し た . そ の 結 果 ,MCTで は 保 存時 間 を 10分 と し て も , ヘ ゛ ク タ ー を 全 身 投 与 し た 場 合 と ほ ぼ 同 等の 免 疫 抑 制 効果 を 得 る こ と がで き , 肝 細 胞 に 対 す る 障 害 も よ り 少 な か っ た . 更 に , 保 存 時 間 を3時 間 と 延 長 さ せ る こ と に よ り 移 植 臓 器 の 長 期 生 着 に 必 要 な へ ゛ ク タ ー 量 を 半 分 に 減 ら す こ と が 可 能 で あ っ た . 審 査 に あ た っ て は 、 ま ず 有 賀 教 授 より 、 (1) 肝臓 の 血 管 内 は 既に 液 体 で 満 たさ れ て い る ため 、 ク ラ ン プ す る こ と に よ り む し ろ へ ゛ ク タ ー が 末 梢 ま で 行 き 届 かな い 可 能 性 があ る の で は ない か

2) 急 性 拒 絶 反 応 を 回 避 で き た 個 体 に つ い て は 、 免 疫 抑 制 作 用 は ど の く ら い 持 続 さ れ るの か 等 の 質 問 が あ っ た 。 そ れ に 対 し 、 (1) 肝 門 部 か ら 末 梢 の 肝 表 面 に か け て 肝 組 織 像 を 切 り出 し 検 鏡 し たが 、 肝 臓 全 体に わ た り 陽 性細 胞 が 分 布 して お り 末 梢 に もへ ゛ ク タ ー が浸 透 し て い るこ と が 確 認 さ れ た こ と (2300日 以 上 を 経 て も 移 植 肝 お よ び 皮 膚 移 植 片 の 生 着 を 見 て お り 、 ラ ッ ト の 平 均 寿 命 が 約2年 で あ る こ と を 考 慮 し た 場 合 、 一 生 涯 に 渡 り 免 疫 抑 制 作 用 が 維 持 さ れ る 可 能 性 が あ る と 解 答 が あ っ た 。 浅 香 教 授 か ら 、 (1) 遺 伝 子 導 入 効 率 を 肝 組 織 の 免 疫 染 色 で 確 認 し て い る が 、 何 ら か の 方 法 で 定 量 化 す べ き で は な い か (2) 臓 器 保 存 時 間 を3時 間 に 延 長 す る こ と で 遺 伝 子 導 入 率 が 向 上 す る メ カ ニ ズ ム は 何 か[3]MCTの 安 全 性 を 肝 機 能 の み で 検 討 し て い る が 、 そ れ の み で 優 位 を 結 論 付 け る の は 拙 速 で は な い か 等 の 質 問 が あ っ た 。 そ れ に 対 し 、 (1) 染 色 の 濃 淡 に よ り 導 入 判 断 が 困 難 な 細 胞 も あ り 正 確 な 導 入 効 率の 算 出 に は 専 用 の 解 析 ソ フ ト の 利 用 を 今 後 検 討 す る (2) 保 存 時 間 が 延 長 さ れ る こ と に よ り 肝細 胞 と ウ イ ルス ヘ ゛ ク タ ーの 接 触 時 間 が長 く な る こ と によ り 感 染 ・ 導入 機 会 が 増 えた 結果 と考え る[3]

肝機 能には 、拒 絶反応 ・アテ ゛ノウイルスヘ゛クターの細胞障害性 臓器保存に伴う肝細胞障害が複雑に

‑ 345

(4)

関 与 し て お り 、 確 か に 肝 機 能 の み でMCTの 有 意 を 判 断 す る の は 拙 速 で あ る と 考 え る が 、 有 意 性 を 示 す ー つ の 根 拠 に な り う る と 解 答 が あ っ た 。 藤 堂 教 授 か ら 、 (1) 遺 伝 子 治 療 の 安 全 性 を 確 保 す る た め に 、 他 に ど の よ う な 試 み が な さ れ て い る か (2) ク ラ ン プす る こ と に より 何 故 導 入 効 果 が 向 上 す る の か[3JMCTを 臨 床 応 用 す る 場 合 、 実 際 に は ど の よ う な 方 法 が 考 え られ るのか等の質問があった。これに対し、(1)アテ゛ノウイルスヘ゛クターの導入効率を向上させる 試 み と し て ヒ ス ト ン 脱 ア セ チ ル 化 酵 素 阻 害 剤 の 併 用 、 ま たex‑wvo経 路 で 遺 伝 子 導 入 す る 方 法 で は 、 プ ラ ス ミ ド を 用 い た エ レ ク ト ロ ポ レ ー シ ョ ン に よ り 臓 器 に 導 入 す る 方 法 が 研 究 さ れ て い る も の の 、 い ず れ も 十 分 な 効 果 を 挙 げ て お ら ず 未 だ 途 上 段 階 あ る こ と(2)短 時 間 で の 導 入 効 率 の 向 上 は 、 従 来 考 え ら れ て い るCoxsakieAdenoviral Receptorを 介 す る 感 染 経 路 以 外 に 、 静 水 圧 に よ る 物 理 的 な 導 入 機 序 が 働 い た 可 能 性 が 高 い こ と[3]海 外 に お け る 脳 死 肝 移 植 で は8時 間 程 度 の 冷 保 存 時 間 を 経 て 移 植 さ れ て い る 事 実 よ りMCTで の3時 間 冷 保 存 は 実 際 的 で あ る こ と 、 し か し 本 邦 に お け る 生 体 肝 移 植 で は 臓 器 保 存 時 間 は 短 時 間 で あ り 肝 切 離 面 が 広 範 囲 に 露 出 し て い る こ と よ り 、 グ ラ フ 卜 内 に 一 定 の 静 水 圧 を 維 持 す る た め には 特別な 循環回 路の開 発が必 要に なると の解答 があっ た。

  こ の 論 文は 肝 移 植 に 遺伝 子 治 療 を 応用 す る た め に 、ア テ゛ ノウイ ルスの 効率 性を確 保しつ つ、そ の 危 険 性 を 最 小 限 に 抑 え る た め の 遺 伝 子 導 入 を 開 発 し た も の で 、 今 後 、 臨 床 応 用 が 期 待 さ れ る 。 審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑚 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

346

参照

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