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博士(医学)中野 剛 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)中野   剛 学′位論文題名

Role of pulmonary intravascular macrophages     1n anti‑platelet serum − 1nduced pulmonary        hypertension in sheep

(抗血小板血清投与による羊の肺動脈圧上昇における      肺血管内マクロファージの役割)

学位論文内容の要旨

【目的】

近年、肺血管内マクロファージ(以下PIMs) の存在が羊,ヤギ,豚,猫などで あきらかにされ,肺循環における重要性が報告されている.PIMs の分布には種 差があり,PIMs の存在する羊ではエンドトキシンに対するLDso は10pg/kg で,

その量を投与したときの肺動脈圧の上昇は60cmH20 にも達するが,PIMs の存在 しないラットではLDso は10 , 000 〃g/kg で,その量を投与しても肺動脈圧の上昇 は認められない.この違いはエンドトキシンに対するこのような肺循環反応の 相違にもPIMs が関与していることを示唆している.

一方,肺障害における血小板の役割を調べるため,抗血小板抗血清が用いられ てきた.抗羊血小板血清を羊に投与すると一過性の肺動脈圧の上昇がおこる ことが報告されているが機序については解明されていない.その機序を解明す ることは抗羊血小板抗血清を用いた動物実験結果を解釈する上で重要な意味を もつ.本研究ではこの昇圧反応にPIMs が関与することを証明する目的でPIMs の 存 在 す る 羊 及 び PIMs の 存 在 し な い ラ ッ ト を 用 い て 実 験 を 行 っ た ・

【方法ならびに結果】

Binder らの方法により羊洗浄血小板及びラット洗浄血小板を家兎に免疫し抗羊血 小 板血 清 (AsPS) 及 び 抗ラ ット 血小 板血清 (ArPS) を 作成 した. コン ト口 一 ル血清として無処置の家兎血清を用いた.力価はオクタロニー法を用いて測定 し,AsPS 及ぴArPS と同程度であった.

I .羊の実験.右房,肺動脈,大動脈にビニルカテーテルを留置した22 匹の覚醒 羊(体重32.5 土[SD] 2.2 kg) を用いた.

A. 抗羊血小板血清に対する羊肺動脈圧の変化. AsPS は以下の3 種類の方法で

投与した.1 ) AsPS3ml を 1 回動脈内投与・(n=5) , 2 )AsPS0.5ml を繰り返し20

(2)

分 間 隔 で6回 動 脈 内 投 与 (n゜4) ,3)AsPSlOmlを12時 間 で 動 脈 内 持 続投 与

(n―4) . AsPSl回 投 与 後30秒 以 内 に 肺動 脈圧 は上 昇し 始め2分 以内に14土2 mmHgか ら49土2mmHgヘ ピ ー ク に 達 し た . 血 小板 数は 前値 の63.0土4.8 xl04/〃 1か ら1時間 後に は7.7土2.5 xl04/〃1へと減少した.コントロール血清3mll回動 脈 内投 与で は肺 動脈 圧,血 小板 数に は変 化を 認め なか った .AsPS繰り返し投与 で は ,1,2,3回 目 で は 約25mmHgの 肺 動 脈 圧の 上昇 を認 めた が,4回目 以降 肺 動 脈 圧 の 上 昇 は 減 少 し ,6回 目 の 投 与 で は24士l mmHgか ら27土2mmHgとわ ず か に 上 昇 し た の み で あ っ た . 自 血 球 数 は変 化せ ず, 血小 板数 は前 値の56.5土 10.8 xl04/ル1か ら6回投与 後に は5.9土1.3 xl04/ル1へと減少した.初回AsPS投 与 時 に 動 脈 血 , 混 合 静 脈 血 の ト ロ ン ボ キサ ンB2濃度 を測 定し たが ,そ れぞ れ 106土18pg/mlか ら2400土45lpg/ml,68土14pg/mlか ら890土10 5pg/mlへ と 動 脈 血に おけ るト ロン ボキサ ンB2濃度の上昇は混合静脈血の上昇の3倍であった・

持 続 投 与 で は 肺 動 脈 圧 は 前 値20土2mmHgか ら30分で32土3mmHgまで 上昇 した . 血 小板 数は 減少 した が,自 血球 数は 変化 しな かっ た.

B. 抗 羊 血 小板 血清 投与 後の 羊肺 組織 の検討 .PIMsが 抗血 小板 抗体 と結 合し た 血 小 板 を 貪 食 し て い る こ と を 証 明 す る た め に 以 下 の 検 討 を 行 っ た ・ 1)AsPSの 分布 .3頭 の羊 それ ぞれ にAsPS3 ml, コン トロ ール 血清3ml, 生理 食 塩 水3mlを1回 動 脈 内 投 与 し ,1時 間 後 に 肺 をPLP固定 し凍 結包 埋し ,薄 切切 片 をFITC標識 したanti‑rabbit IgGで染色した.AsPS投与した肺実質に螢光の分布 が 認め られ た.

2) 電子 顕微 鏡に よるPIMsの観 察‐6頭の羊それぞれにAsPS3ml (n=2),ニ二rン ト ロ ー ル 血 清3ml (n=2) を1回 動 脈 内 投 与 ,AsPS0.5mLを 繰り 返し20分 間隔 で 6回 動脈内投与(n 1),AsPSlOmLを12時間で動脈「メ、J持続投与(n=l)した.

1時 間後 に肺 を2.5% グルタ ール アルデヒド固定液で4℃で潅流固定した後,各羊 肺 を細 切し 無作 為に10ブロ ック を選 び, 固定 ,包 埋, 超薄 切,染色し電子顕微 鏡H800に て 観察 した .各 ブロ ック1個 につき10個 ,1頭の 羊に つき100個 の核 の あ る面 で切 れて いるPIMを 無作 為に 観察 し, 血小 板,赤 血球 を貪食しているPIM を 数え た. 以下 の表 に示す よう に,AsPS投与 によ り血 小板 を貪食しているPIMs の 比 率 が 増 加 し た が , 赤 血 球 の 貪 食 に は 影 響 を 与 え な か っ た .

羊 No.   処 置   血 小 板 貪 食 ( 十 ) 赤 血 球 貪 食 ( 十 ) 羊1

羊2 羊3 羊4 羊5

    AsPSl回投与     AsPSl回投与

コントロール血清1回投与 コントロール血清1回投与   AsPS繰 り 返 し 投 与

72 83 4 8 98

20 14 18 26 12

   羊 6  AsPS 持 続 投 与   18   .   27 II . ラ ッ ト の 実 験 (PIMs が 存 在 し な ぃ ) .

123

(3)

A.抗ラ ッ卜血小板血清に対するラッ卜肺動脈圧の変化‥肺動脈,大動脈にカ テーテルを留置した8匹の覚醒ラットを用いた.

5匹の覚醒ラット(体重260 ‑ 390g)にArPSl00〃l/kgを1回動脈内投与し肺動 脈圧の変化,投与前,投与後1時間の血小板数,白ifn球数を調べた.肺動脈圧は 投与 後30秒以内に 上昇し始め2分以 内に13土1 mmHgから18士2mmHgへと上昇 したが羊に比べごく軽度であった.血小板数は前値の60.0士4.5 xl04/〃1から1 時間後には9.6土1. 1x l04/彫1へと減少した.抗ラット血小板血清による血小 板数の減少は抗羊血小板血清に比べ同程度であった.別の3匹の覚醒ラットに 同量のコントロール血清を投与したが肺動脈圧,血小板数,白血球数は変化し なかった.

【考案】

本研 究では以下の理由により,抗羊血小板血清による一過性の肺動脈圧の上 昇に肺血管内マクロファージが関与すると結諭した.1)抗羊血小板血清投与 によルトロンボキサン産生を伴う肺動脈圧上昇を伴った.2)抗羊血小板血清 投与後に羊肺組織に抗羊血小板血清の主成分であるウサギIgGの分布が認めら れ,形態学的に肺血管内マクロファージに血小板が多数貪食されていた.3)動 脈血におけるトロンボキサンB2濃度の上昇は混合静脈血の上昇の3倍であルトロ ンボキサンの主な産生部位として肺が推測された.4)肺血管内マクロフアージ の存 在しないラットにおいては抗ラット血小板血清投与後に認められるラッ ト肺動脈圧の上昇が羊肺動脈圧の上昇より極めて小さかった.5)一般的にマク ロファージは異物貪食の際に細胞膜のinternalizationに伴いアラキドン酸代謝産 物を放出すること.6)肺血管内マクロファージはりポソームを異物として貪食 する際トロンボキサン産生を伴う一過性の肺動脈圧上昇を惹起しこれには種差 があることがすでに報告されていること・

肺血管内マクロファージは肺障害モデル実験においては重要な役割をしており,

この 細胞の存在する動物において抗羊血小板血清を用いる場合はその存在を 念頭に実験を行うことが必要である.

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Role of pulmonary intravascular macrophages     1n anti‑platelet serum −1nduced pulmonary        hypertension in sheep

(抗 血 小板 血 清 投与 による羊 の肺動脈圧 上昇にお ける     肺血 管 内マ ク 口 ファ ー ジの 役 割 )

  【 目 的 】近 年,肺血 管内マクロ ファージ が羊など で存在す ること, 及びその 分 布 には 種 差 があルラ ットなどで は存在し ないこと が明らか にされて いる.ま た・

急 性肺 障 害 における 血小板の役 割を調べ るため, 血小板を 減少させ る目的で 抗血 小 板血 清 が 用いられ ており,抗 血小板血 清を羊に 投与する と一過性 の肺動脈 圧上 昇 が報 告 さ れて い るが , そ の上 昇 にお け る 機序 に つ いて は 解明 さ れ ていな い.

  【 方 法 】本 論文は, 抗血小板血 清投与に よる一過 性の羊肺 動脈圧の 上昇にお け る 肺血 管 内 マクロフ ァージの関 与につい て検討し たもので ある.肺 血管内マ クロ フ ァー ジ の 存在する 羊の実験で は,抗羊 血小板血 清投与後 の羊肺動 脈圧,血 小板 数 ,ト ロ ン ボキサンB2濃度の変化 ,羊肺組 織の抗血 小板抗体 の分布, 肺血管内 マ ク 口フ ァ ー ジについ て観察した .肺血管 内マクロ ファージ の存在し ないラッ トで は 抗ラ ッ ト 血小板血 清授与後の ラット肺 動脈圧, 血小板数 ,ラット 肺組織に つい て検討 した.

  【 結 果 】 抗 羊 血 小 板 血 清(AsPS) 投 与3mll回 投 与 に よ り 羊 肺 動 脈 圧 は14土 2mmHgか ら49土2mmHgと一 過性に上 昇し,血り ヽ板数は63.0土4.8xl04/以1から7.7 土o.ox10 /戸1と 減少した .繰り返し 投与では3回目まで25mmHg程度の肺 動脈圧 上 昇が 認 め られたが ,4回目以降 肺動脈圧 の上昇は 減少し,6回目の投 与では24土 l mmHgか ら27土2mmHgと わ ず か に 上 昇 し た の み で あ っ た . 血 小 板 数 は 前 値 の 06.5土10.8 xl04/メ1か ら6回投与 後には0.9土1.3 xl04//11へと減少した.AsPS投 与 前, 授 与 直後に肺 動脈圧上昇 がピーク に達した ときの動 脈血,混 合静脈血 のト ロ ン ボ キ サ ンB2濃 度 は , そ れ ぞ れ106土18pg/mlか ら2400土451pg/ml,68土

厚 紀

和 知

上 部

川 阿

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

14pg/mlか ら890土105 pg/mlへと 動脈血 にお ける トロ ンボ キサ ンB2濃度 の上 昇は 混合 静脈血 の上 昇の3倍 であ った .AsPS投与 によ り肺 実質 への 抗血 小板 抗体 の分 布, 肺血管 内マ クロ ファ ージ の血 小板 貪食 の増 加が認められた覚醒ラットへの抗 ラ ット 血 小 板 血 清(ArPSlOO/il/kg)1回 動脈 内投 与で は肺 動脈 圧は 投与 後30秒以 内 に 上 昇 し 始 め2分 以 内 に13土l mmHgか ら18土2mmHgへ と 上 昇 し た が 羊 に 比 べ ごく 軽度で あっ た. 血小 板数 は前 値の60.0土4.5 xl04/岸1から1時間後には9.6土 1ユx10^ / 〃1へ と 減 少 し , 減 少 の 程 度 はAsPSに 比 ベ 同 程 度 で あ っ た .   【 結論】1) 抗羊 血小板血清投与によルトロンボキサン産生を伴う肺動脈圧上昇 を伴った.2)抗羊血小板血清投与後に羊肺組織に抗血小板抗体の分布が認められ,

肺血 管内マ クロ ファ ージが血小板を多数貪食していた.3)動脈血におけるトロン ボキ サンB2濃度 の上 昇は 混合 静脈 血の 上昇 の3倍 であ ルト ロン ボキ サン の主 な産 生部 位とし て肺 が推 測された.4)肺血管内マクロファージの存在しないラットに おい ては抗 ラッ ト血 小板 血清 投与 後に 認め られ るラット肺動脈圧の上昇が羊肺動 脈圧 の上昇 より 極め て小さかった,5)一般的にマクロファージは異物貪食の際に 細胞膜のinternalizationに伴いアラキドン酸代謝産物を放出すること,6)肺血管 内マ クロフ ァー ジは りボ ソー ムを 異物 とし て貪 食する際トロンボキサン産生を伴 う一 過性の 肺動 脈圧 上昇 を惹 起し これ には 種差 があることがすでに報告されてい ろこ と.以 上の こと より ,抗 羊血 小板 血清 によ る一過性の肺動脈圧の上昇に肺血 管内マクロファージが関与すると結論した,

  口頭 発表 にあ たり ,阿 部( 和) 教授 より 肺血 管内マクロファージの存在しない 動物の 肝ク ッバ 一細 胞, 脾臓 マク ロフ ァー ジ, 肺胞マクロファージと肺血管内マ クロファージの生物学的特陸の差異,および抗体の生体投与で肺血管内マクロファー ジ以外 のマ クロ ファ ージ に影 響を 与え ない かど うかについて,皆川教授よりこの 論文の 意義 およ びサ イト カイ ンの 関与 につ いて ,西教授より抗体のカ価の測定に ついて ,小 山教 授よ り産 生さ れた トロ ンボ キサ ンの出所についてそれぞれ質問,

コメントがあった,申請者は概ね妥当に答えたと思う.

  また ,阿 部( 和) 教授 ,皆 川教 授よ り個 別に 審査を受け,合格との御返事をい ただいている.

  これまで抗血小板血清投与による羊の肺動脈圧上昇における肺血管内マクロファー ジの役 割に つい ては 明ら かに され てお らず ,肺 循環応答における肺血管内マクロ ファ ー ジ の 意 義 を 示 し た こ と は意 義あ るも のと 考え られ ,よっ て本 論文 は博 士

(医学)に相当するものと認めた,

参照

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