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博士(歯学) 豊田有希 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)   豊田有希 学位論文題名

各種根管洗浄法の洗浄効果と水酸化カルシウム製剤による      水酸化物イオンの拡散

学位論文内容の要旨

【緒言】

   臨 床 にお いて ,歯根の 外部吸収 の治療には ,根管清 掃および 水酸化カ ルシウ ム製 剤 に よる 根管貼薬 が行われ ている.こ れは,水 酸化物イ オンが歯 根歯質を 通過 し て 歯根 外表面ヘ 拡散し, それにより 破歯細胞 から産出 される酸 を中和す るな ど , 歯根 表面の吸 収プロセ スを抑制す る作用が あると考 えられて いるため であ る . 一方 ,リーミ ング・フ ァイリング により根 管壁に形 成された スミヤー 層は , 象 牙細 管を閉塞 し,根管 貼薬剤の歯 質への浸 透を阻害 する恐れ がある.

した が っ て, 外部吸収 歯に対す る治療効果 を高める ためには ,根管洗 浄によっ てス ミ ヤ ー層 を効果的 に除去し ,歯根外表 面への水 酸化物イ オンの拡 散を促進 させる必要があると考えられる.

   そこで, 本研究は ,永久歯 および乳歯において,歯根歯質への為害性が低く,

なお か つ ,根 管内のス ミヤー層 を効果的に 除去し, 歯根の外 部吸収窩 周囲への 水酸 化 物 イオ ンの拡散 を促進さ せる根管洗 浄法を検 討するこ とを目的 とした.

なお , 本 実験 は,北海 道大学大 学院歯学研 究科臨床 ・疫学研 究倫理審 査委員会 の承認を受けた(承認番号2012 第1 号),

【材料と方法】

   抜 去 ヒト 永久 歯および ヒト乳歯 の歯根部分 を使用し た.根管 形成後, 洗浄法 によルグループ分け(永久歯: G1 ,G2 ,G3 ,G4 ,G5 ,乳歯:Gl ,G2 ,G2 −30 ,G2 一15 , G5 , G5 一30 , G5 − 15) を行った.洗浄法は,Gl :交互洗浄( 5 %NaOCl ,31 % H202 ),

G2 , G2 一30 , G2 − 15 : 5 % NaOCl 超音波洗浄,G3 :5 %EDTA 超音波洗浄, G4 :5 %NaOCl 超音波洗浄→ 5 %EDTA 超音波洗浄, G5 , G5 ―30 , G5 − 15 :5 % EDTA 超音波洗浄 ‑+5 % NaOCl 超音波洗 浄とした .超音波 洗浄は, 洗浄剤を 根管内に みたし,超音波スケ ーラ ー (Osada ENAC 10W) を用 い て 行い , 作 用時 間 は G2 , G3 , G4 , G5 が 45 秒,

G2 − 30 , G5 ー 30 が 30 秒, G2 ー 15 , G5 ー 15 が 15 秒とし,各グループとも最後に交互 洗浄 を 行 った . 実 験 1 と し て ,洗 浄 が 終了 した試料 のうち, 永久歯 35 本 ,乳歯 21 本を歯軸 に沿って 2 分割し, 通法に従 って走査 型電子顕 微鏡用試料を作製し,

根管 内 壁 の観 察を行っ た.得ら れた電子顕 微鏡写真 から象牙 細管開口 率を算出 し た . 実 験 2 と し て , 永 久 歯 25 本 , 乳歯 16 本の 試 料の 歯 根 中央 部 の外 表 面 に 外部 吸 収 を模 して窩洞 を付与し た外部吸収 モデル歯 を作製し ,歯根周 囲の pH 変

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(2)

化 の 観 察 を 行 っ た . 永 久 歯 の 外 部 吸 収 モ デ ル 歯 は ,5グ ル ー プ に 分 類 し , 洗 浄 法 がGlで , 親 水 性 の 水 酸 化 カ ル シ ウ ム 製 剤 ( カ ル シ ペ ッ ク ス u) を 貼 薬 し た グ ル ー プ を GICと し , 以 下 同 様 に , G2C,G3C, G4C,G5Cと し た . 乳 歯 の 外 部 吸 収 モ デ ル 歯 は ,2グ ル ー プ に 分 類 し , 洗 浄 法 が G2―30で , カ ル シ ペ ッ ク スnを 貼 薬 し た グ ル ー プ を G2―30Cと し , 同 じ 洗 浄 法 で 疎 水 性 の 水 酸 化 カ ル シ ウ ム 製 剤 ( ビ タ ベ ッ ク ス ) を 貼 薬 し た グ ル ー プ をG2− 30Vと し た . こ れ ら の 試 料 は , 根 管 内 に 水 酸 化 カ ル シ ウ ム 製 剤 を 貼 薬 し た 後 ,1% フ ェ ノ ー ル フ タ レ イ ン 含 有 寒 天 に 埋 入 し , 1, 2, 3, 4週 後 の 寒 天 の 変 色 の 程 度 か ら 水 酸 化 物 イ オ ン 拡 散 の ス コ ア を 算 出 し た .

  得 ら れ た 結 果 に 対 し ,Stat View ( ヒ ュ ー リ ン ク ス , 東 京 ) を 使 用 し て , 統 計 学 的 解 析 を 行 っ た . グ ル ー プ 間 の 比 較 に は 一 元 配 置 分 散 分 析 お よ び ポ ス ト ホ ッ ク テ ス ト と し てBonf erroni/Dunn法 を 用 い た . ま た , グ ル ー プ 間 の 経 時 的 変 化 の 比 較 に は 反 復 測 定 ― 分 散 分 析 法 を 使 用 し た . 有 意 水 準 は 5%以 下 と し た

【 結 果 】

  実 験 1よ り , 永 久 歯 根 中 央 部 に お い て , G3, G4, G5の 試 料 の 根 管 内 壁 は , ス ミ ヤ ー 層 が ほ ば 完 全 に 除 去 さ れ , 多 く の 象 牙 細 管 が 明 瞭 に 開 口 し て い る の が 観 察 さ れ た . 象 牙 細 管 開 口 率 は ,GlがO.13% ,G2が3.55% ,G3が80. 81% ,G4が 82. 52% ,G5が89. 65% で あ っ た ,G3,G4,G5の 象 牙 細 管 開 口 率 は ,Gl,G2と 比 較 し て 有 意 に 高 か っ た (pく 0. 01) . 根 尖 部 に お い て も 根 中 央 部 と 同 様 の 傾 向 を 示 し た が , ど の グ ル ー プ に お い て も , 根 中 央 部 と 比 較 し て 象 牙 細 管 開 口 率 は 低 い 値 を 示 し た .

  乳 歯 根 中 央 部 に お い て ,G2− 30とG2で は , ス ミ ヤ ー 層 は ほ ば 完 全 に 除 去 さ れ , 象 牙 細 管 が 一 部 開 口 し , 管 間 象 牙 質 の 表 面 は 滑 ら か で あ っ た . G5―15,G5−30, G5で は , ス ミ ヤ ー 層 は 除 去 さ れ て い た が 象 牙 細 管 開 口 部 の 開 大 が 認 め ら れ た . 特 に G5で は , 管 周 象 牙 質 と 管 間 象 牙 質 の 溶 解 と い っ た 根 管 象 牙 質 の erosionが 顕 著 に 認 め ら れ た . 象 牙 細 管 開 口 率 は ,Glが1.20%,G2−15が12. 89%,G2ー30が 24. 34%,G2カ ミ38. 65% ,G5―15カ §51. 54%,G5−30カ ミ65. 56%,G5カ §95. 98% と , 洗 浄 剤 の 作 用 時 間 が 長 く な る に っ れ 象 牙 細 管 の 開 口 率 が 上 昇 し た . 根 尖 部 に お い て も 根 中 央 部 と 同 様 の 傾 向 を 示 し た が , ど の グ ル ー プ に お い て も , 根 中 央 部 と 比 較 し て 象 牙 細 管 開 口 率 は 低 い 値 を 示 し た ,

  実 験 2よ り , 永 久 歯 で は , 貼 薬 し て か ら 2週 後 に ス コ ア の ピ ー ク が み ら れ た . 1, 2, 3, 4週 後 に お い て , G5CはGICと 比 較 し て 有 意 に 高 い ス コ ア を 示 し た (p くO.05) . ま た ,2, 3週 後 に お い て ,G5Cは G2Cと 比 較 し て も 有 意 に 高 い ス コ ア を 示 し た (pく0.05) .

  乳 歯 で は , G2− 30Cは 貼 薬 し て か ら 2, 3週 後 に ス コ ア の ピ ー ク が み ら れ た . G2― 30Vは , ス コ ア の 変 化 は み ら れ な か っ た .1,2, 3週 後 に お い て ,G2―30Cは

―370 ‑

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G2 −30V と比較して,有意に高いスコアを示した(p <O .01 ).4 週後においては,

両者の間に有意差は認められなかった,

【考察】

     乳 歯は 永久 歯と 比較し て, 根管 洗浄 剤の作用を受けやすい傾向があること が 示さ れた .そ のた め,洗 浄剤 の選 択と その作用時間に留意が必要であると考 えられる.

   根管 内壁 のス ミヤ ー層の 除去 は, 歯根 外表面への水酸化物イオンの拡散を促 進 する こと が示 され た.ま た, 根管 貼薬 剤として,親水性の水酸化カルシウム 製 剤を 選択 する と, 貼薬し てか ら2 〜3 週 間で,外部吸収窩周囲への水酸化物イ オンの拡散が期待できることが示唆された.

【結論】

   永 久 歯 で は , EDTA 単 独 あ る い は EDTA とNaOCl を 併 用し た45 秒 間の 超音 波洗 浄 の後 に交 互洗 浄を 行う方 法が ,根 管壁 のスミヤー層を効果的に除去し,水酸 化 物 イ オ ン の 外 部 吸 収 窩 周 囲 へ の 拡 散 を 促 進 さ せ る こ と が 示 唆 さ れ た .    乳歯 では ,NaOCl 単独での30 秒間の超音波洗浄の後に交互洗浄を行う方法が,

根 管象 牙質 にerosion を引 き起 こす こと なく スミ ヤー層 を除 去し ,水 酸化物イ オンの拡散にも有効であることが示された.

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(4)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    八 若 保 孝 副 査    教 授    川 浪 雅 光 副 査    教 授    佐 野 英 彦

学 位 論 文 題 名

各種根管洗浄法の洗浄効果と水酸化カルシウム製剤による      水酸化物イオンの拡散

  審 査は 、審 査 担当 者全 員 の出 席の 下 に行 われ た 。ま ず申 請 者に 提出 論 文の概要の説明 を求め、次いでそ の 内 容お よび 関 連分 野に つ いて 試問 を 行っ た。

  審 査論 文の 概 要は 以下 の 通り であ る 。

  臨 床に おい て ,歯 根の 外 部吸 収の 治 療に は, 根 管清 掃お よ び水 酸化 カ ルシ ウム 製 剤による根管貼 薬が行 わ れ てい る. こ れは ,象 牙 細管 を経 由 して 水酸 化 物イ オン の 拡散 が生 じ ,そ れに よ り破歯細胞から 産出さ れ る 酸を 中和 す るな ど, 歯 根表 面の 吸 収プ ロセ ス を抑 制す る 作用 があ る と考 えら れ ているためであ る.一 方 , 根管 の機 械 的清 掃に よ って 根管 壁 に形 成さ れ たス ミヤ ー 層は 象牙 細 管を 閉塞 し ,根管貼薬剤の 歯質へ の 浸 透を 阻害 す る恐 れが あ る. そこ で ,本 研究 は ,永 久歯 お よび 乳歯 に おい て, 歯 根歯質への為害 性が低 く , なお かつ , 根管 内の ス ミヤ ー層 を 効果 的に 除 去し ,歯 根 の外 部吸 収 窩周 囲へ の 水酸化物イオン の拡散 を 促 進さ せる 根 管洗 浄法 を 検討 する こ とを 目的 と した .な お ,本 実験 は ,北 海道 大 学大学院歯学研 究科臨 床・ 疫学研究倫理審査 委員会の承認を受け た(承認番号2012第1号).

  抜 去ヒ ト永 久 歯お よび ヒ ト乳 歯の 歯 根部 分を 使 用し た. 根 管形 成後 , 洗浄 法に よ ルグループ分け (永久 歯: Gl,G2,G3,G4,G5,乳歯 :Gl,G2,G2―30,G2―15,G5,G5ー30,G5−15)を行った.洗浄 法は,Gl: 交互 洗浄(5%NaOCl,31%H202),G2,G2―30,G2―15:5%NaOCl超音 波洗浄,G3:5%EDTA超音波 洗浄,G4: 5%NaOCl超音 波 洗浄‑+5%EDTA超 音波 洗浄 ,G5,G5―30,G5―15:5%EDTA超 音波 洗 浄→5%NaOCl超 音波洗 浄 と した .超 音 波洗 浄は , 超音 波ス ケ ーラ ーに ル ート チッ プ を装 着し て 行い ,そ の 作用時間は,G2,G3, G4,G5が45秒 ,G2−30,G5−30が30秒 ,G2−15,G5−15が15秒と し, 各 グル ープ と も最後に交互洗 浄を行 っ た , 実 験1( 根 管 内 壁 の 観 察) とし て ,各 種根 管 洗浄 後の 試 料を 歯軸 に 沿っ て2分 割し , 走査 型電 子 顕 微 鏡(SEM)用 試 料 を 作 製 し , 根 管 内 壁 の 観 察 を 行 っ た . ま た , 得 ら れ たSEM写 真か ら象 牙 細管 開口 率 を 算 出 し た. 実験2(歯 根 周囲 のpH変 化) とし て ,試 料の 歯 根中 央部 の 外表 面に 外 部吸 収を 模 して 窩洞 を 付 与 し た 外 部 吸 収 モ デ ル 歯 を 作製 し ,歯 根周 囲 のpH変化 の 観察 を行 っ た, 外部 吸 収モ デル 歯 の根 管内 に 水 酸化 カル シウム製剤(カノレシペックス゜IIまたはビタペックス゜)を貼薬した後,1%フェノール′フタレイン

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(5)

含有 寒 天 培 地 に埋 入 し,1,2,3,4週後の 寒天の 変色 の程度 から水 酸化物 イオン 拡散 の程度 をスコ ア化し た, 実 験1,2か ら 得 ら れ たデ ー タ に つ いて 統 計 処 理 を行 っ た .

  実 験 の 結果 , 永 久 歯 で は,EDTA単 独 あ る い はEDTAとNaOClを 併 用 し た45秒 問 の 超 音波 洗浄 の後に 交互 洗浄 を 行 う 方 法が , 根管壁 のスミ ヤ一層 を効 果的に 除去し ,水酸 化物 イオン の外部 吸収窩 周囲へ の拡 散を 促進 さ せ る こ とが 示 唆 さ れ た. 乳 歯 で は ,NaOCl単独 での30秒 間の超 音波 洗浄の 後に交 互洗浄 を行う 方法 が, 根 管 象 牙 質にerosion( 管 周象 牙 質 や管 間象 牙質ま で溶解 し,象 牙細 管開口 部を拡 大させ てしま う現 象) を 引 き 起 こす こ となく スミヤ ー層を 除去 し,水 酸化物 イオン の拡 散にも 有効で あるこ とが示 され た.

  本 研 究 の結 果 よ り, 乳歯は 永久 歯と比 較して ,根管 洗浄剤 の作 用を受 けやす い傾向 があ ること が示さ れ た. そ の た め ,洗 浄 剤の選 択とそ の作用 時間 に留意 が必要 である と考 えられ る.根 管内壁 のスミ ヤー 層の 除去 は , 歯 根 外表 面 への水 酸化物 イオン の拡 散を促 進する ことが 示さ れた. また, 根管貼 薬剤と して ,親 水性 の 水 酸 化 カル シ ウ ム 製 剤を 選 択 す る と, 貼 薬 し て か ら2〜3週間で ,外部 吸収窩 周囲 への水 酸化物 イ オン の 拡 散 が 期待 で き る こ とが 示 唆 さ れ た,

  口頭試 問では 、本論 分の 内容と それに 関連し た学 問分野 につい て質疑応答がなされた。

主 な質 問事項 は、

1.  歯根の 外部吸 収の仕 組みに つい て(酸 と酵素 の影響 ) 2.  歯根象 牙質の 透明象 牙質に つい て

3.  erosionについ て(判 断基 準など ) 4.  乳歯の 根管 洗浄時 間の設 定につ いて 5.pHのピー クの解 釈につ いて

6.  寒天培 地と 組織液 にっい て(閉 鎖系と 開放 系の違 い)

7.  ビ タ ペ ッ ク スoに つ い て ( 成 分 , コ ラ ー ゲ ン ヘ の 影 響 、 他 の 研 究 の 有 無 ) 8.  根中央 部と 根尖部 の違い につい て(手 技、 構造)

9.  臨床へ の応 用に関 して 1 0.  今後 の展望

など で あ っ た。 以上の 質問 に対し て、申 請者は 適切に 回答 した。 試問を 通して 、申 請者が 本研究 ならび に 関連 分 野 を 十分 に理解 し、 幅広い 知識を 有して いるこ とが 明らか になっ た,本 研究 のさら なる発 展、今 後 の研 究 が 期 待 され る 。

  以 上 か ら 、審査 担当 者全員 が、本 研究が 学位 論文に 十分に 値し、 申請者 は博 士(歯 学)の 学位を 授与 す る資 格 が あ る と認 め た 。

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参照

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