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博士(工学)野口 学 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)野口   学 学位論文題名

A STUDY OF THE NONSTOICHIOMETRY OF(Fe, Cr)S AND   DIFFUSION ANALYSIS OF Fe‑Cr ALLOY SULFIDATION

((Fe,Cr)Sの非化学量論組成とFe・Cr合金硫化の動力学的解析に関する研究)

学位論文内容の要旨

  近年、ボイラ−、夕―ビンなどの化石燃料を使用したエネルギ変換装置において、

硫黄による高温腐食が発生しその防食対策が急務となっている。特に、雰囲気の硫黄 分圧がFeSの解離圧直上にあるとき、Fe―Cr合金の硫化腐食速度がFeよりも大きくなる 現象が観察されている。本研究では、腐食生成物(Fe,Cr)Sの非化学量論と化学拡散係 数について実験的に測定した。次いで、これらの物性値を使用レてFe−Cr合金上に形 成される(Fe,Cr)Sスケールの成長動力学を理論的に解明し、実験結果と比較検討する ことによって、硫化腐食機構の解明を行ったもので、全6章より構成されている。

  第1章は硫化腐食の工学的背景と高温腐食研究の歴史的変遷について述べ、合金の 高温酸化理論、特に、スケール中の陽イオン分布に関する理論の展開と実験的検証に つ い て 明 ら か に し た 後 、 本 研 究 の 目 的 に つ い て 言 及 し て い る 。   第2章では、硫黄分圧がFeSの解離圧直上での雰囲気におけるFe―Cr合金(最大25at

%Cr)の硫化腐食挙動(腐食速度定数と濃度分布)を硫黄分圧、合金濃度、温度の関 数として測定した。その結果、腐食は放物線則に従い、得られた速度定数は硫黄分圧、

Cr濃度の増大とともに増大し、さらに、硫黄分圧が比較的高いときは通常の温度依存 性を示すが、低硫黄分圧では温度の上昇とともに低下することを示した。これは、速 度定数は拡散係数とスケ―ル両端の硫黄活量差の積で与えられ、かつ両者の温度依存 性が逆であることによる。さらに、形成した硫化物は(Fe,Cr)Sであり、スケール中の Crと Feは 合 金 側 と ガ ス 側 に そ れ ぞ れ 濃 化 す る こ と を 明 ら か に し た 。   第3章では、(Fe,Cr)Sの欠陥構造が陽イオン副格子に空孔を有するP・型半導体的特 性を有することを示し、熱天秤による質量変化の測定から、化学量論からのずれの量 として定義される非化学量論組成を硫黄分圧、硫化物組成、温度の関数として決定し た。その結果、非化学量論組成は硫黄分圧と組成の増加とともに増大するが、一定の 硫黄分圧と濃度では、.温度の上昇とともに滅少することが示された。金属欠損を有す る硫化物に対して提案されたりボビッチの欠陥構造理論を基礎に、空孔の形成自由エ ネルギと空孔間の相互作用工ネルギを決定した。これらの結果から、空孔間の相互作 用エネルギは正であり、空孔間には反発カが作用していることが明らかとなった。空

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孔の形成エネルギはCr濃度の増大とともに減少し、空孔濃度の硫黄分圧、Cr濃度、温 度による変化はこれらエネルギ変化と密接に関係していることを示した。さらに、Cr は硫化物中ではFeよりも高イオン価数を取ることが相安定性の考察から予想され、空 孔濃度の増大はCr3゛による原子価制御の理論から説明されることを明らかにした。

  第4章では、雰囲気の硫黄分圧を急変させたときに硫化物に観察される質量変化を 連続的に測定し、拡散方程式を使って解析することによって、硫化物中の化学拡散係 数を硫黄分圧、Cr濃度、温度の関数として決定した。さらに、3章に示した結果から、

化学拡散係数を非化学量論組成の関数として示した。化学拡散係数は非化学量諭組成 に対して非依存または緩やかな増加を示した。硫化物中の拡散種は陽イオンであり、

化学拡散係数から陽イオン空孔、さらには陽イオンの自己拡散係数を求めた。この陽 イオンの自己拡散係数は空孔濃度の増大とともに増大するが、Cr濃度に対しては減少 した。これらの結果tま、次章で述べるように、この自己拡散係数にはFeとCrのそれぞ れの自己拡散能が含まれており、Crの添加は空孔濃度を増大させるがCr自身の拡散能 がFeのそれに比較して小さいためである。

  第5章では、Fe―Cr合金に形成される硫化物の成長速度と(Fe,Cr)Sスケ―ル中の濃 度分布を解析するために、3と4章で得られた結果を使用して硫化物中の拡散流れを 与える微分方程式を導出し、同時に、計算プログラムを作製した。計算により得られ た速度定数は実測値をよく再現しており、本研究で進めてきた非化学量論および拡散 係数の測定および理論式の導出の妥当性が示された。さらに、スケール中の陽イオン 分布の計算では、CrとFeの拡散係数の比(P:DCr/DFe)が0.08〜0. 20で実測値と 一致することが明らかとなった。このことから、(Fe,Cr)S中では、Feの拡散に対して Crは非常に遅いと推定される。一方、第3章に示したように、この硫化物にCrを添加 すると空孔濃度は増大し、かつPの値が増大するのは、Crイオンか移動しようとする とき、空孔との出会いの確率または跳躍の確率がFeのそれらに比較して増大するため である。空孔形成のエネルギがCr濃度とともに減少することもその二因であると考え られる。

  第 6章 は 、 各 章 の ま と め で あ り 、 本 論 文 の 結 論 を 述 べ て い る 。   最後に、Fe・Cr合金の硫化挙動について非化学量論組成と化学拡散係数の測定および 硫化 腐食の実験 的検討の両 面から研究 し、その腐食機構について明らかにした。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

A STUDY OF THE NONSTOICHIOMETRY OF(Fe, Cr)S AND  DIFFUSION ANALYSIS OF Fe ‑ Cr ALLOY SULFIDATION

((Fe,Cr)Sの非化学量論組成とFe・Cr合金硫化の動力学的解析に関する研究)

  近年、ホ゛イラ、タ―ヒ゛ンなどの化石燃料を使用したエネルキ゛変換装置に使用されている 鉄 鋼 材 料 に 硫 化 腐 食 が 発 生 し 、 耐 食 性 を 向 上 す る 元 素 で あ るCrは 腐 食 を む し ろ 促 進 す る 現 象 が 認 め ら れ 、 そ の 腐 食 機 構 の 解 明 が 重 要 な 課 題 と な っ て い る 。   本 論 文 は 、 腐 食 生 成 物(FeCr)Sの 非 化 学 量 論 組 成 と 化 学 拡 散係 数 に つ いて 実 験 的 に 測定 し 、 こ れら の物 性値を 使用し てFe一Cr合 金上に 形成さ れる(Fe,Cr)Sスケ ―ル の 成 長動 力 学 と 陽イ オ ン 分 布を 計 算 に より 求 め 、 実験 結 果 と 比較 す るこ とによ って硫 化 腐 食 機 構 を 明 ら か に し た も の で 、 そ の 主 要 な 成 果 は 、 次 の 点 に 要 約 さ れ る 。

1) 雰 囲 気 の 硫 黄 分 圧 がFeSの 解 離 圧 直上 に あ る とき 、FeーCr合 金の 腐 食 速 度定 数   は 硫 黄 分 圧 、Cr濃 度 の 増 大 と と も に 増 大 し 、 ま た 、 形 成 し た 硫 化 物 (FeCr)S   ス ケ ー ル 中 のCrFeは 合 金 側 と が ス側 に そ れ ぞれ 濃 化 す るこ と を 明 らか に し た 。

2(FeCr)Sの 非 化 学 量 論 組 成と 化 学 拡 散係 数 を 硫 黄分 圧 、 硫 化物 組 成 、 温度 の   関 数 と し て 決 定 し た 。 そ の 結 果 、 非 化 学 量 論 組 成 は 硫 黄 分 圧 とCr濃 度 の 増 加   と と も に 増 大 し 、 化 学 拡 散 係 数 は 非 化 学 量 論 組 成 に 対 し て 非 依 存 ま た は 緩 や か   な 増 加を 示 した 。化学 拡散係 数から 陽イオン 空孔、 陽イオ ンの自 己拡散 係数を 求め、

  陽 イ オ ン の 自 己 拡 散 係 数 は 空孔 濃 度 の 増大 と と も に増 大 す る が、Cr濃 度に 対 し て   は 減 少す る こ と を明 ら か に した 。

4) (FeCr)S硫 化 物 中 の拡 散 流 れ を与 え る 微 分方 程 式 を 導出 し 、 ま た数 値 解 法 の   プ ロ グ ラ ム を 作 製 し て 計 算 した 結 果 は 実測 値 を よ く再 現 し て おり 、 陽 イ オン 分 布   の 解 析 か ら 、CrFeの 拡 散 係 数 の 比 (P=DCrDFe)0080. 20に あ り 、   Feの拡 散 に 比 較し てcrは非 常 に 遅 いと 推 定 さ れる 。

  こ れを 要 す る に` 著 者 は 、合 金 の 硫化腐 食挙動 をシiユ レ−Iす るため の理論 と解法 を 提 案 し 、 腐 食 生 成 物(FeCr)Sの 非 化学 量 論 組 成と 各 種 拡 散係 数 を 求 める こ と に よ っ て そ の 妥 当 性 を 実 証 し た も の で 、 材 料 科 学 と 界 面 制御 工 学 に 寄与 す る と ころ 大 で あ る。

  よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資格 あ る も のと 認 め る 。

夫 雄

浩 明

敏 達

眞 英

田 川

尾 橋

成 石

瀬 高

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

参照

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