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博士(工学)山口 宏 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)山口   宏 学′位論文題名

石 炭液化 プ口セス予熱器および反応器内の スラ リー流動に関する工学的研究

学位論文内容の要旨

  石炭の直接水添液化反応系は固体石炭粒子、スラリー配合油および水素ガスか ら成る高温高圧の気固液三相流動系であり、予熱器や反応器における複雑顔流動 状態を適切に設計、操作できるかどうかが工業プロセスの成否を左右する。しか しながら、これまで高温高圧下の三相流動状態に関する研究は余りにも少なく、

すでに内外のプロセス開発研究において予熱器でのスラリー流の閉塞や反応器で の固体粒子の沈積など、操作トラプルが経験されている。にもかかわらず、これ らの原因を解明する組織的基礎研究はほとんど行われていない。そこで、本研究 は2.4ton/day石炭直接 水添液化プ ロセス開発 用実験装置 (PDU)と大型オー トクレープ装置において系統的な実験を行い、結果に基づいて上記の閉塞や沈積 などを支配する操作因子を検討し、予熱器と反応器の設計と操作に関する工学的 指針を得ることを目的として実施したものである。

  本論文は6章から構成されている。

  第1章では、本研究が行われた背景を概説し、関連する既往の研究をレピュー して工学的課題を摘出し、本研究の目的と本論文の構成について述ぺている。

  第2章では、PDU予熱器 において加 熱中のスラ リーの粘度 変化を推算する方 法を考案し、これに基づいて得られた結果について述ぺている。まず、高圧冷油 およぴ高温高圧熱油運転時の圧力損失の測定結果に基づいて、常温常圧下の気液 二相流圧力損失に関するLockhart―Martinelli法を高温高圧下の圧力損失推算に 適用できるように修正した。この修正法によルスラリーを用いた液化反応運転時 の予熱器加熱管各部における温度と圧力損失データをもとに、スラリーの粘度を 推算した。その結果、スラリー粘度はおもに石炭粒子の膨潤により変化し、スラ リー中の石炭粒子初期体積濃度が小さい場合は濃度および温度とともに増大する が濃度が高い場合には極大値を示すこと、この粘度極大値が表れる温度域は回分 式高温高圧粘度計による温度域と異なることを明らかにした。これは両者のスラ リー加熱速度の相違が主な原因であると推定した。

  第3章は、新規に考案したオートクレーブ装置による予熱器シミュレーション 実験により、スラリーから加熱管内壁表面へのコーキングによる固形物の付着特 性と予熱器操作条件の関係を検討した結果を述べたものである。すなわち、オー

(2)

ト ク レ ー プ に 熱流 束と 表面 温度 をス ラリ ーと は無 関係 に制 御でき る試 験片 接着 電 熱 管 を 設 置 し 、ス ラリ ーか ら試 験片 表面 への 固形 物の 付着 速度を 種々 の条 件で 測 定 し た 。 そ の 結果 、固 形物 の付 着は 通常 の予 熱器 操作 条件 では起 らな いが 、ス ラ リ ー の 流 速 が 約0.2m/s以 下 お よ ぴ バ ル ク 温 度 が720K以 上 と な る と 起 る こ と 、 バ ル ク 温 度 を750Kと し て 試 験 片 表 面 でコ ー キ ン グ さ せ る と 試 験 片 表 面 の 温度 は 固形物の付着とともに上昇し、これより求めた付着速度は約2x10―6g.cm−2minー1. g−coal−1のオ ーダー であ るこ と、 また 石炭 種が 異な る場 合、 付着量は石炭のS/C お よ ぴO/C原 子 数 比 と と も に 増 加 し 、H/C原 子 数 比 と と も に 減 少 す る こ と を明 ら かにして、コーキング発生機構を推定している。

  第4章 は 、PDU反 応 器 内 の 気 泡 体 積 分 率 を ガ ス 遮 断 法 、 中 性 子 減 衰 法 、 ガ ス ノ `一 ジ法 の3種 の方 法に より 冷油 条件 、熱 油条件 およ び液 化反 応条件において測 定 し た 結 果 を 述べ たも ので ある 。ま ず冷 油条 件で は、 気泡 体積分 率は 測定 法に よ り 大 差 な く 、 ガス 空塔 速度 とと もに 増加 する こと 、ま た圧 カが12.8MPaま での 範 囲 で は 圧 カ と とも に増 加す るが 、そ れ以 上の 圧カ では 変化 しない こと を明 らか に し て 、 こ の よ うな 変化 は気 泡径 の変 化を 反映 して いる こと を明ら かに した 。つ い で 、 熱 油 条 件 での 気泡 体積 分率 のガ ス空 塔速 度に よる 変化 は、高 温高 圧下 での ア ン ト ラ セ ン 油 中の 軽質 成分 の気 相へ の蒸 発に よる ガス 密度 、液密 度お よび ガス 空 塔 速 度 の 変 化 を考 慮す ると 、冷 油条 件と ほぽ 同一 の結 果と なるこ と、 さら に液 化 条 件 に お け る 気泡 体積 分率 は、 既往 の液 化条 件お よぴ 高圧 の水/ 空気 系の 測定 結 果とおおよそ一致することを明らかにしている。

  第5章 で は 、PDU反 応 器 内 ス ラ リ ー の サ ン プ リ ン グ に よ り 得 た 試 料 の 性 状 分 析 と 温 度 分 布 測定 から 、ス ラリ ーの 混合 状態 と固 体粒 子濃 度分布 を推 算す る方 法 に つ い て 述 べ てい る。 併せ て、 実験 後の 反応 器内 粒子 沈積 状態の 観察 およ び沈 積 粒 子 の 性 状 分 析か ら粒 子沈 積機 構に つい ても 述ぺ てい る。 反応器 への 吹き 込み ガ ス 流 量 が 通 常 の条 件で ある400Nm311‑1以 上で はス ラリ ーの 混合状 態は 良好 で温 度 分 布 は 均 一 と なり 、沈 積は 起ら ない が、300Nm3}1‑1で はス ラリー の混 合状 態は か な り 悪 化 し 、 石炭 粉砕 用ポ ール ミル から の鉄 片や 触媒 粒子 に由来 する 鉄を 主成 分 と す る 粒 子 群 が沈 積す るこ とを 明ら かに して いる 。さ らに 、粒子 沈積 状態 は液 化 条 件 下 で の 気 液平 衡を 考慮 して 推定 した 気相 およ ぴ液 相の 線速度 、比 重な どを 用 いた沈降拡散モデルにより記述できることを明らかにした。

  第6章 では 、 本 研 究 成 果 を 総 括 し 、 石 炭 直 接水 添液 化プ ロセス の開 発研 究に 対 する本研究成果の寄与と今後の課題にっいて述べている。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

石炭液化プ口セス予熱器および反応器内の スラリー流動に関する工学的研究

  石 炭 の直 接 水 添液 化 反応 系 は 固体 石 炭 粒子 、 スラ リ ー 配合 油 およ び 水 素ガ ス から 成 る高 温 高圧 の 気 固液 三 相流 動 系 であ り 、予 熱 器 や反 応 器 にお け る複 雑 な 流動 状 態 を 適切 に 設計 、 操 作で き るか ど う かが 工 業プ ロ セ スの 成 否 を左 右 する 。 し かし な が ら 、こ れ まで 高 温 高圧 下 の三 相 流 動状 態 に関 す る 研究 は 余 りに も 少な い 。 すで に 内 外 のプ ロ セス 開 発 研究 に おい て 予 熱器 で のス ラ リ ー流 の 閉 塞や 反 応器 で の 固体 粒 子 の 沈積 な ど、 操 作 トラ プ ルが 経 験 され て いる に も かか わ ら ず、 こ れら の 原 因を 解 明 す る 組 織 的 基 礎 研 究 は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い の が 現 状 で あ る 。   本 論 文 は 、2 .4ton/day石 炭 直 接 水 添 液 化 プ ロ セ ス 開 発 用 実 験 装 置 (PDU) と 大 型オ ー 卜ク レ ー ブ装 置に おいて系 統的な実 験を行・ い、上記 の閉塞や 沈積などを 支 配 する 操 作因 子 を 検討 し 、予 熱 器 と反 応 器の 設 計 と操 作 に 関す る 工学 的 指 針を 得 る こ とを 目 的と し て 実施 し た研 究 を 纏め た もの で あ る。

  1章 で は 、 本 研 究 が 行 わ れ た 背 景 を概 説 し、 関 連 する 既 往の 研 究 の概 要 、 解決 す ぺ き 工 学 的 課 題 お よ び 本 研 究 の 目 的 と 本 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ て い る 。   2章 で は 、PDU予 熱 器 に お い て 加 熱 中 の ス ラ リ ー の 粘 度 変 化 を 推 算 す る 方 法 を 考案 し 、こ れ に 基づ い て得 た 結 果に っ いて 述 ぺ てい る 。 まず 、 高圧 冷 油 およ び 高 圧 熱油 運 転時 の 圧 力損 失 の測 定 結 果に 基 づい て 、 常温 常 圧 下の 気 液二 相 流 圧力 損 失 に 関す る 既存 の 方 法を 高 温高 圧 下 の圧 力 損失 推 算 に拡 張 使 用で き るよ う に 修正 し 、 液 化反 応 運転 時 の 予熱 器 加熱 管 各 部に お ける ス ラ リー の 温 度と 圧 力損 失 デ ータ を も と に、 ス ラリ ー の 粘度 を 推算 し た 。そ の 結果 、 ス ラリ 一 粘 度は お もに 石 炭 粒子 の 膨 潤 によ り 変化 し 、 石炭 粒 子の 初 期 体積 濃 度が 小 さ い場 合 は 濃度 や 温度 と と もに 増 大 す るが 、 濃度 が 高 い場 合 には 極 大 値が 現 れ、 粘 度 極大 値 を 与え る 温度 域 は 回分 式 粘 度 計 で 観 測 さ れ る 温 度 域 と は 異 な る こ と を 明 ら か に し て い る 。   3章 は 、 新 規 に 考 案 し た オ ー ト ク レー プ 装置 に よ る予 熱 器シ ミ ュ レー シ ョ ン実 験 から 、 スラ リ ー から 加 熱管 内 壁 表面 へ のコ ー キ ング に よ る固 形 物の 付 着 特性 と 操

―342−・

徳 俊

博 忠

藤 葉

真 伊

千 篠

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

作条件の関係を検討した結果を述べたものである。すなわち、オートクレープに熱 流束と表面温度をスラリーとは無関係に制御できる試験片接着電熱管を設置し、ス ラリーから試験片表面への固形物の付着速度を種々の条件で測定した。その結果、

固形物 の付着は通 常の工業操 作条件下で は起らなぃ が、スラリ ー流速が約0.2m/s 以下お よび温度が720K以 上になると 起ること、 コーキング に伴って試験片表面温 度が上 昇すること 、730Kにおける付 着速度は約2xlO‑eg.cm‑2min‥.g−coal‑1の オーダ ーであるこ と、また石 炭種が異な る場合、付 着量は石炭 のs/cおよびo/c原 子数比 とともに増 加し、H/C原子数比とともに減少することを明らかにしている。

  第4章は 、PDU反 応器 内 の気 泡 体積 分 率を ガ ス遮断 法、中性子 減衰法、ガ スパ ージ法 の3種の 方法により 冷油条件、熱油条件およぴ液化反応条件において測定し た結果を述べたものである。まず冷油条件では、気泡体積分率は測定法により大差 なく、ガス空塔速度の増加とともに増大することを明らかにしている。さらに、圧 カが12 .8MPaまでの範囲では圧カとともに増加するが、それ以上の圧カでは変化し なぃことを明らかにし、このようを変化が気泡径の変化を反映したものと結諭して いる。ついで、熱油条件での気泡体積分率のガス空塔速度による変化は、高温高圧 下でのアントラセン油中の軽質成分の気相への蒸発によるガス密度、液密度および ガス空塔速度の変化を考慮すると、冷油条件とほぼ同一結果となること、液化条件 における気泡体積分率は既往の液化条件および高圧の水/空気系の測定結果と概ね 一致することを明らかにしている。

  第5章で は 、PDU反応 器 内ス ラ リー の サン プ リング により得た 試料の性状 分析 と温度分布測定からスラリーの混合状態と固体粒子濃度分布を推算している。併せ て、実験後の反応器内粒子沈積状態の観察および沈積粒子の性状分析結果に基づい て粒子沈積機構を明らかにしている。すナょわち、固体粒子の沈積状態は反応器への 吹き込みガス流量に依存するが、液化条件下での気液平衡を考慮して推定した気相 および液相の線速度、比重をどを用いた沈降拡散モデルにより推定できることを明 らかにしている。

  第6章では、本 研究成果を 総括し、石炭直接水添液化プロセスの開発研究に対す る本研究成果の寄与と今後の課題にっいて述べている。

  これを要す るに、著者は、高温高圧の気固液三相系である石炭の直接水添液化反 応轟と予熱器における複雑な流動状態を新規な方法により測定、解析し、物性およ び操作条件との関係を明らかにして、これを安定制御できることを示した。これら の 有 益 な 知 見 は 、 化 学 工 学 、 石 炭 化 学 の 進 歩 に 寄 与 す る と こ ろ 大 で あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認め る。

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参照

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