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博士(工学)小野信市 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(工学)小野信市 学位論文題名

大型軸材の鍛造における内部空隙圧着に関する研究      学位論文内容の要旨

   近年,発電プラントの出カは発電効率におけるスケールメリットを追求して著しく 大型化する傾向にあり,それとともに使用されるロー夕軸材の胴径も増大してきた.

特 に最近 の改 良沸 騰水型 ( A ー BWR )原 子力発電ブラントの出カは,1350MW にも のぼり,使用される一体型低圧夕―ビン口一夕軸材は,鍛造打上げ胴径が2900mm ,重 量で約350ton もの超大型軸材であり,600ton 鋼塊を用いて製造される.このように打 上げ胴径が大きくなると,鍛造工程での所要荷重が加速的に増大するため,既存の鍛 造設備を用いて鋼塊の軸心部まで十分な鍛造効果を浸透させ,内部のザクと呼ぱれる 不回避的な空隙状欠陥を完全に消滅させることは,プレス容量の制約などから非常に 難しい課題となる.したがって,この工程では据込みや鍛伸などの数多くの鍛造作業 と再加熱の繰返しが余儀なくされるばかりでなく,未圧着空隙残存の危険性きえも懸 念きれる.また数十日にもおよぷ工期の長期化や加熱費の増加,および材料歩留りの 悪 化 を 招 く こ と か ら 製 造 コ ス ト の大 幅 な 上 昇 が 深 刻 な 問 題 と なっ て い た .    本研究は,このような低圧夕―ビン用口一夕軸材の超大型化に対応するため製品の 大きさやプレス設備の容量を考慮して,大型鋼塊に内在する空隙の消滅を効果的に達 成できる大型軸材の鍛造方法の開発を目的として実施されたものである.以下に,本 研究で得られた結果をまとめて示す.

   まず,本研究で解決すべき課題を明らかにするため,近年の大型軸材の背景を紹介 するとともに,これまでの大型軸材鍛造にっいての研究を顧み,本研究の目的と内容 を概説した・

   本論では,最初に軸材の鍛造工程における大型鋼塊の内部空隙の閉鎖から圧着に至 る消滅過程と,それを支配する応カやひずみとの関係を定量的に把握する目的で熱間 鍛造実験と有限要素法解析を実施し,以下の結諭を得た.

( 1 )実用鋼を用いた種々の形態の熱間鍛造実験と3 次元有限要素法解析を行なって,

     素材内部の球状空隙の体積減少率を,空隙の周りに作用する相当ひずみと静水圧      積分とにより直接計算できる空隙閉鎖特性評価式を重回帰分析により導いた.

(2) 人工空隙を内在させた素材や微小空隙を発生させた小型鋼塊の熱聞鍛造実験と有      限要素法解析を実施して,空隙閉鎖後の圧着が完了する応カの限界条件として,

     材 料 の 変 形 抵 抗 の 約 0.8 以 上 の 静 水 圧 応 力 比 の レ ベ ル を 設 定 し た ・    前述の結果をもとに,素材の断面形状や金敷の形状といった形状因子の最適化のた めに,2 次元的なモデル実験をはじめとして,熱間鍛造実験および有限要素法解析に よる直接的ナょ3 次元解析を実施し,以下の結諭を得た・

(1) プラスティシンや多孔質焼結銅の平面ひずみ鍛造実験ではV 金敷と八角形断面素      材の組合わせの空隙閉鎖効果が優れていることがわかった.また,従来型平金敷      と円形断面素材の組合わせでも圧下率を十分に取れぱよいことも明らかにした.

(2) 有限要素法による3 次元解析により各形状因子の素材内部応カやひずみの挙動へ

     の影lI! を明らかし,空隙閉鎖特性評価式を用いて各鍛仲法の比較を行なった.そ

     ―179 −

(2)

    の 結 果 , 広 幅 の 従 来 型 平 金 敷 に 替 っ て 押 込 み 型 平 金 敷 を 提 案 し , こ の 金 敷 に よ り     鍛 伸 す る 場 合 で も 比 較 的 低 い 所 要 荷 重 で 効 果 的 な 空 隙 閉 鎖 が 可 能 で あ る こ と を 示     し た . ま た ,V金 敷 に よ る 強 圧 下 鍛 伸 は 空 隙 閉 鎖 に 必 ず し も 有 効 で な い こ と を も     指 摘 し た .

(3)押 込 み 型 平 金 敷 鍛 伸 法 の 有 用 性 を 検 証 す る た め に , 新 し く 開 発 し た 等 温 鍛 造 試 験     装 置 を 用 い て 高 い 再 現 精 度 の 熱 間 鍛 造 実 験 を 実 施 し た . そ の 結 果 , 押 込 み 型 平 金     敷 , す な わ ち 金 敷 幅 比 と 金 敷 長 さ 比 が と も に0.5の 上 下 対 称 な 平 金 敷 を 用 い る 鍛     伸 法 が 超 大 型 軸 材 の 内 部 空 隙 閉 鎖 の た め に 有 効 で あ る こ と を 実 証 し た . ま た , こ     の 押 込 み 型 平 金 敷 鍛 伸 法 で は 軸 方 向 伸 び が 抑 え ら れ る た め 据 込 み 工 程 の 省 略 が 期     待 で き る こ と や 定 荷 重 負 荷 試 験 に よ り 圧 下 の 可 能 性 を 予 測 し , こ の 鍛 伸 法 が 総 合     的 ナ ょ 観 点 か ら 最 適 で あ る と 判 断 し た .

  次 に , 空 隙 の 閉 鎖 後 の 圧 着 成 立 に 焦 点 を 絞 り , っ ね に 安 定 し た 圧 着 効 果 を 得 る た め 静 水 圧 応 カ の 向 上 策 に っ い て 熱 間 鍛 造 実 験 お よ び 有 限 要 素 法 解 析 に よ り 行 な っ た . そ の 結 果 , 以 下 の 結 諭 を 得 た .

(1) 提 案 し た 押 込み 型 平 金敷 の 空 隙圧 着 効 果が 必 ず しも 十 分 でナ ょ い こ とを 熱 間 鍛造 し     た 素 材 の 人 工 空 隙 圧 着 部 の 引 張 試 験 に よ り 確 認 し た . そ こ で , 金 敷 の 摩 擦 に よ り     素 材 の 変 形 を 拘 束 す る た め 下 金 敷 の み を 大 き く し た 上 下 非 対 称 金 敷 を 用 い て 軸 心     部 で の 圧 縮 静 水 圧 応 カ の 増 大 効 果 を 探 っ た が , 素 材 内 部 の 相 当 ひ ず み は 大 き く 変     化 す る も の の , 静 水 圧 応 力 比 は い ずれ の 鍛 伸法 で も 圧着 限 界 応 力条 件 を 満足 せ ず ,     安 定 し た 空 隙 圧 着 が 得 ら れ な い こ と を 指 摘 し た .

(2)温 間 鍛 錬 法 の 空 隙 圧 着 効 果 を 定 量 的 に 明 ら か に す る た め , 予 冷 却 に よ り 温 度 勾 配     を 付 与 し た 素 材 の 鍛 伸 の 有 限 要 素 法 解 析 を 実 施 し , こ の 鍛 伸 法 で は 素 材 予 冷 却 時     間 の 増 加 に よ る 軸 心 部 で の ひ ず み の 増 大 は 小 さ い が , 静 水 圧 応 力 比 が 大 幅 に 上 昇     す る た め , 低 い 圧 下 率 で も 空 隙 閉 鎖 を 著 し く 促 進 す る の は も と よ り , 空 隙 圧 着 条     件 を 満 足 で き る 可 能 性 が 高 い こ と も 示 唆 さ れ た .

(3)予 冷 却 素 材 鍛 造 法 に お い て 形 状 因 子 の 最 適 化 に よ り 安 定 し た 空 隙 圧 着 効 果 を 得 る     た め の 検 討 を 行 な い , 正 方 形 断 面 素 材 で は 円 形 断 面 素 材 よ り10% 程 度 高 い 静 水 圧     応 力 比 が 得 ら れ る こ と を 確 認 し た .

(4)素 材 断 面 形 状 を 正 方 形 か ら 矩 形 化 さ せ る こ と に よ り , 押 込 み 型 平 金 敷 特 有 の マ ン     ネ ス マ ン 応 力 打 消 し 効 果 が 増 大 す る た め , 軸 心 部 静 水 圧 応 力 比 が 飛 躍 的 に 上 昇 す     る と い う 極 め て 重 要 な 知 見 を 見 出 し た . ま た , こ の よ う に 素 材 高 さ を 一 定 に し て     縦 横 比 を 増 加 さ せ る と い っ た 断 面 矩 形 化 は , 素 材 断 面 積 の 大 幅 な 増 加 を 可 能 と す     る こ と か ら , 予 冷 却 素 材 鍛 造 法 の 超大 型 軸 材へ の 適 用が 容 易 に なる こ と も示 し た . (5)有 限 要 素 法 解 析 で 得 ら れ た 以 上 の よ う な 予 冷 却 素 材 鍛 造 法 . の 空 隙圧 着 効 果の 高 さ     を 実 用 鋼 に よ る 熱 間 鍛 造 実 験 に よ り 実 証 す る と と も に , 安 定 し た 空 隙 圧 着 が 得 ら     れ る た め の 条 件 を 見 直 し , 静 水 圧 応 力 比0.9以 上 の 応 力 条 件 にひ ず み 効果 を 加 え再   設 定 し た .

  最 後 に , こ れ ら の 知 見 を も と に 軸 材 の 最 適 な 鍛 造 工 程 を 設 計 す る た め の 方 法 を 示 し た . ま た , 本 研 究 の 成 果 を 実 際 の 超 大 型 の 一 体 型 低 圧 タ ー ビ ン 用 口 一 夕 軸 材 の 鍛 造 工 程 に 適 用 し た 事 例 と , 他 の 大 型 軸 材 の 鍛 造 工 程 へ の 波 及 効 果 を 紹 介 し た .

  以 上 , 本 研 究 の 成 果 で あ る 押 込 み 型 平 金敷 鍛 伸 法や 矩 形 断面 素 材 の 予冷 却 鍛 造法 は , 600ton鋼 塊 を 用 い た 超 大 型 の 一 体 型 低 圧 口 ― 夕 軸 材 の 鍛 造 工 程 に お け る 内 部 空 隙 の 確 実 な 圧 着 を 可 能 に し , 安 定 し た 超 大 型 軸 材 の 供 給 体 制 の 確 立 の た め に 重 要 な 一 役 を 担

っている.

(3)

学位論文審査の要旨

     学 位論 文題 名      丶

大型軸材の鍛造における内部空隙圧着 に関する研究

   近年、火カおよび原子力発電プラントの発電機や蒸気夕ーピンに用いられる軸材 は、最高毎分 3000 または3600 回転の厳しい条件で使用されることから、これに対応 できる高強度および高靭性などの優れた内部品質が要求されている。しかも、近年 の発電プラントは発電効率におけるスケールメリットを追求して著しく大型化する 傾向にあり、それとともに使用されるロ―夕軸材の胴径も増大してきている。この ように打上げ胴径が大きくなると、鍛造工程での所要荷重が加速的に増大するため、

既存の鍛造設備を用いて鋼塊の軸心部まで十分な鍛造効果を浸透させ、内部のザク と呼ばれる不回避的な空隙状欠陥を完全に消滅させることは、プレス容量の制約な どから非常に難しい課題となっている。もし、これらの微小空隙が製品に残留する と使用中に致命的な破壊事故を引き起こす原因となる。そのため軸材の鍛錬行程に おいて鋼塊の軸心部まで十分なひずみや圧縮応カを付与することにより、粗大な鋳 造組織を緻密化するとともに、この空隙欠陥を確実に閉鎖圧着させ、健全な内部性 状を得ることが絶対的必要条件である。

   本研究は、大型鋼塊に内在する空隙の消滅を効果的に達成できる大型軸材の鍛造 方法の開発を目的として実施されたものである。本研究で得られた成果は多くの大 型ロー夕軸材の鍛造行程に適用され、工期短縮や材料歩留まりの改善に効果をあげ ている。特に、新しく提案している正方形押し込み型平金敷による鍛伸瘻は600ton 鋼塊を用いた超大型低圧口一夕軸材の鍛錬行程において大きな改善をもたらした。

また、提案した空隙閉鎖特性評価式を用いた鍛造行程の最適化技術も広範囲なサイ ズの軸材の製造コストの低減や省エネに貢献している。本論文は全6 章から構成され ている。

   第1 章は序論であり、これまでの大型軸材鍛造についての研究を顧み、本研究の意 義を述べている。

   第2 章では、空隙の閉鎖圧着と応カひずみの関係に定量的解明を試みるため、熱間 鍛造実験と有限要素法解析を行っている。素材内部の球状空隙の体積減少率を、空 隙の周りに作用する相当ひずみと静水圧積分とにより直接計算できる空隙閉鎖特性 評価式を重回帰分析により導き、空隙閉鎖後の圧着が完了する応カの限界条件とし

‑ 181

將 好

徹 行

博 隆

   

川 飼

口 藤

石 鵜

野 工

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

て、材 料の 変形抵抗の約0.8 以上の静水圧応力比のレベルを設定できることを明らか にしている。

   第3 章で は、素材の断面形状や金敷の形状といった形状因子の最適化をするため、

プラス テイ シン や多 孔質 焼結 銅の 平面 ひずみ鍛造実験を行うとともに有限要素法に よる3 次元 解析 によ り各 形状 因子の 素材 内部 応カ やひ ずみ の挙 動へ の影響を明らか し、空 隙閉 鎖特 性評 価式 を用 いて 各鍛 伸法の比較を行なっている。その結果、広幅 の従来゛型平金敷に替って押込み型平金敷を提案し、この金敷により鍛伸する場合で も比較的低い所要荷重で効果的な空隙閉鎖が可能であることを示している。さらに、

押込み 型平 金敷 鍛伸 法の 有用 性を 検証 するために、新しく開発した等温鍛造試験装 置を用 いて 高い再現精度の熱間鍛造実験を行ってV `る。その結果、押込み型平金敷 が 超 大 型 ・ 軸 材 の 内 部 空 隙 閉 鎖 の た め に 有 効 で あ る こ と を 実 証 し て い る 。    第4 章で1 よ|空隙の閉鎖後の圧着成立に焦点を絞り、っねに安定した圧着効果を得 るため静水圧応カの向上策について熱間鍛造実験および有限要素法解析により行なっ ている。すなわち、   温間鍛錬法の空隙圧着効果を定量的に明らかにするため、予冷 却によ り温 度勾 配を 付与 した 素材 の鍛 伸の有限要素法解析を実施し、この鍛伸法で は素材 予冷 却時 間の 増加 によ る軸 心部 でのひずみの増大は小さいが、静水圧応力比 が大幅 に上 昇す るた め、 低い 圧下 率で も空隙閉鎖を著しく促進することを明らかに している。また、   予冷却素材鍛造法において形状因子の最適化により安定した.空隙 圧着効果を得るための検討を行い、   素材断面形状を正方形から矩形化させることに より、 押込 み型 平金 敷特 有の マン ネス マン応力打消し効果が増大し、軸心部静水圧 応力比 が飛 躍的 に上 昇す ると ぃう 極め て重要な知見を見出している。また、このよ うな断 面矩 形化 は、 素材 断面 積の 大幅 な増加を可能とすることから、予冷却素材鍛 造法の超大型軸材への適用が容易になることも示している。   有限要素法解析で得ら れた以 上の よう な予 冷却 素材 鍛造 法の 空隙圧着効果の高さを実用鋼による熱間鍛造 実験により実証するとともに、安定した空隙圧着が得られるための条件を見直し,静 水 圧 応 力 比 0.9 以 上 の 応 カ 条 件 に ひ ず み 効 果 を 加 え 再 設 定 し て い る 。    第5 章で は、本研究の成果を実際の超大型の一体型低圧夕一ピン用口一夕軸材の鍛 造工程に適用している。

   第6 章は 、結論であり、本研究で得られた主要な新知見と成果をまとめ、その展望 が述べられている。

   これ を要 する に著 者は 、超大 型一体型低圧ターピンロー夕軸材の鍛造における内 部 空隙 圧着 挙動 に関 する 有益な 新知見に基づぃて、押込み型平金敷き鍛造法や矩形 断 面素 材の 予冷 却鍛 造法 などの 新たな提案をしており、塑性加工学の進歩に寄与す る とこ ろ大 なる もの があ る。

   よっ て、 著者 は北 海道 大学博 士(工学)の学位を授与される資格あるものと認め る 。

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